=KBOC= 『セハザ《no1》-(1)- 』s

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第14記

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 ミリア達4人は昼まで村を歩き回り、またリースを休ませて日陰の涼しいところで少し寝かせてあげたりしながら、いろいろな所や景色を見たり村の人たちの生活の様子を眺めたりして、話しかけてみれば大体の人から嫌な顔せず同じような話を聞く事ができた。
あの少女から聞いた話に加え、この場所に住んで長いこと、村が崖の麓にある理由、昔はあそこの洞窟で生活をしていた時期があるから、とか村にまつわる話をいくつか聞けた。
みんなが同じような事を言うなら、そういった話は凡《おおよ》そは信用していいだろう。
でも、村に対して抱く不思議な感覚がなんとなくあって。
村の観察や聞き込みは何かしらに繋がるかと思ったけど、まったくだった。
そんな時に無線連絡をもらって、散策を切り上げて村長宅で昼食のパンとチーズにベーコン、野菜のスープに、まだ残ってる昨日の料理の残りを頂いた。
料理は独特の味付けもあるけど、なんとなく食べ慣れてきた料理になってきたので新しい味わいを発見している。
ケイジが同じテーブルで食べてる村長さん達に言って、パンにその肉料理とかを挟んでサンドイッチを作り始めたのを見て、ミリアもサンドイッチを作ってみて被りついたら、がぶりと美味しい食感と味が口の中で広がる、のと同時に無線機の呼び出し音がほぼ同時に鳴った。
アシャカから手渡された無線機は、ビーと音を上げて、ガイが隅に置いていた携行バッグの中にあったが、その音に驚いた村長がびくんっと震えたのは目の端にさておいて、ミリアはガイから無線機を受け取る。
『ザザッ・・ミリア殿。今、来れるか?』
ミリア、『殿』・・・?
「えーと、食事中で、」
『マダックの所か?』
「はい、村長の所です」
『ふむ、わかった。今からそちらへ行く』
「え?はい・・」
そう言って無線が切れた。
「あのでっかいボスか?」
聞き耳を立てていたケイジが無遠慮に聞いてくる。
「そう、今こっちに来るって」
ミリアは村長の方に視線を送るが、その意味に気が付いた彼も、わからないと言った風に小首を傾げて返すだけだった。
とりあえず、注意はされなかったので、お腹にサンドイッチを詰め込んでいく4人だ。
「いやぁ、食いっぷりがいいですなぁ、みなさん」
マドック村長も笑顔だ。
同じ席のおばさんやジョッサさんも笑っている。
「あ、俺のタマゴ焼き・・っ」
「え、別に誰のでもないでしょ」
「こっちに寄せといたんだよっ、あ、俺の焼いたベーコン!」
「早いもん勝ちだ」
熾烈しれつな戦場の様相を呈してきてたテーブルの席だったけれど。
リースは、我関せず、目を細めたまま手に持ってる自分のサンドイッチを小さな口でかじって、もくもくとマイペースに食べてた。


「ジョッサは私の娘ですよ、」
「え、そうなんですか、」
ジョッサさんがおばさんの娘、つまり村長の孫娘であることを聞いて驚くミリアだけれど。
じっと見ているケイジが、なんか失礼な事を言いそうな感じがしているけれど。
「失礼するぞ、」
と、暫くして言ったとおりに、扉を開けて昼食中のリビングの食卓に現れたアシャカさんとダーナトゥさんが、こちらを見つけた。
「アシャカ、何事だ?」
村長が当然の疑問をアシャカさんに尋ねると、彼はにっと笑った。
「作戦会議だよ」
マジか?と、ケイジはちょっと嫌な顔で反応したが、昼飯はそろそろお腹を満足させてきてるので、背もたれに背中を預けて深く息を吐いた。
ミリアはアシャカさんを見ていたが、顔は笑っても冗談を言っているわけでもないらしい。
ミリアが仲間の3人を一応見回しても、ガイが肩を軽く竦めたくらいだった。
「ほら、あれあったろ、ボード。あれで簡単に説明するつもりだ」
「全く、食事中だというのに無粋な男たちだよ」
そう、呆れたような物言いをわざとしたような村長は奥に引っ込んでいった。
「俺らにも摘まませてくれ」
「はいよ、座って座って、」
「あ、私がやるよ」
お皿とか食器を取りにジョッサさんたちが席を立ってて。
やっぱり仲が良いみたいだ。
「食事は続けてくれていい」
気にした風でもなくアシャカさんは、空いていた椅子にどっかりと腰を下ろした。
それから、漬物を摘まむケイジがもぐもぐと口を動かし続けていたり、他の3人も瞬くような表情でもぐもぐしている姿を見回した。


いま村長が持ってきたボードと専用のペンで、テーブルの一角が作戦会議場になる、・・と言っても。
ダーナトゥさんがペンを取り、説明を始めたのは作戦についてよりも、先ずは知っておいた方が良いと言うブルーレイクの現在状況についてだった。
「普段は、俺たちCross Handerが村の周りを囲むようにして居座っている。
ここに大まかな地図を描いたが、『ここ』と『ここ』、『ここ』と『ここ』、そして『ここ』だ。
この崖以外は、普段の生活の中で見張り場を兼ねている。
緊急の戦闘に際して迅速に対処できるように戦士も常時いる。
他にも、・・・、俺たちは『嫌な予感』って呼んでいるんだがな。」
ボードを立てて、ダーナトゥさんが書き込んだ簡単な村の略図をミリア達4人は覗き込んでいたが。
「予感?嫌な?」
ミリアが聞き返したのは、彼が引っかかる単語を言ったからだ、・・単語なのかわからないけど。
「Cross Handerの『嫌な予感』。今回急遽、君たちに来てもらったのもこれが理由だ。」
「・・・はぁ、」
嫌な予感がしたから、私たち警備部のパトロールを呼んだ、そんなわけがない。
・・なにかの暗喩メタファーなのかもしれない。
彼が言う『嫌な予感』とは私たちを呼んだ理由、つまり私たちに話せないを指していると思って間違いなさそうだ。
ミリアは訝《いぶか》しみが解けないままだが、ダーナトゥさんもアシャカさんも顔色一つ変えない。
「君たちもこの村を一通り見て回ったとは思うが、まずは念のため我々の陣地の把握と基本戦術を教えよう」
『嫌な予感』については説明もないし、尋ねても答えはしないだろう。
それと、私たちが散策してたのもちゃんと向こうに伝わっているようだ。
「ちょっと待ってください?私たちも戦力に含まれてるんですか?」
「・・いや、あくまで把握しておいてほしいだけだ。その方がそちらも方針が決めやすいと思ったからだ。」
まあ、アシャカさんが言う事ももっともだ。
「そうですね、」
「これは、この村の地図だ。」
アシャカさんが指し示したボードは少し小さいが、この場にいる全員が覗き込んで注目する。
「来る時に実際見たはずだ、村の周囲をぐるっとバリケードが囲んでいる。
有刺鉄線付きの金網だ。
それにフェンスもある。
このフェンスと村の領分の間は空き地帯となっていて、フェンスからおよそ100m離れた場所に幾つか塹壕も作ってある。
また、このやや後方にフェンスまでは届くライトを等間隔に幾つか設置している。」
それは、夜間でも戦えるということだ。
もちろん日が出ているときよりも視界は良くないだろうが、彼らを信用するなら実用に耐えうる性能なんだろう、・・たぶん。
そして、アシャカさんは地図の一箇所を指す。
「フェンスを抜ける入り口はここ1つだけ。
これも来る時に見ただろう。
勿論、村の非常時にはここも塞いでおく。
これでフェンスの安易な突破は不可能になる。
俺たちは丁度狙い撃ちができる距離に壁、塹壕だな、さっき言った、これを作り、そこから射撃をすれば良い。
威嚇でも何でもしていれば大抵のやつらはその内諦める。
もし突っ込んでこようとしてもフェンスに手間取っている間に掃討するだけだ。」
その後は通報したリリー・スピアーズの警備部に対処してもらう、という流れなんだろう。
この戦法はとても堅実だ。
実際に、被害を最小に村を防衛するという目的なら、理にかなっているだろう。
――――ミリアは手の甲を唇に当てて、考えている。
何回か頷いていて、言葉を口にすること無く、アシャカを見て説明を聞いている。
「これがいつもの戦いの展開だ。
が、これまでには何度か車両で突っ込まれる事もあった。
その時は、この有刺鉄線と金網のフェンスを突破され、そこから敵がなだれ込もうとするんだが、なんせ、見晴らしの良すぎるこのフェンスと俺たちの壕との距離だ。
無闇に突っ込んできても、途中で死ぬのがオチだ。
車さえ止めれば俺たちの勝ちだった。
それにそんな事をするのは頭の悪い奴ら、だけだろう」
なるほど、フェンスが錆ついていただけではなく、所々大きな範囲で補修した跡があったのも納得できる。
今までに破壊されたものを補修して凌《しの》いできたのだろう。
まあ、長年の戦いの蓄積という感じだったが。
例えば、いま簡略的に仮想する敵性勢力は、村を占領でもするつもりなのか、車が無ければ、この村を離れる時にはこの砂漠の中での移動が困難になる。
車両はフェンス突撃時に無傷では済まされない。
車両が破壊されれば彼らは投降するか、最後まで抵抗して全滅するしかなくなる。
だから、敵性勢力が充分な物資を用意していても、車両で村に突っ込むなんて、どんな状況を仮定しても作戦としては悪手《あくしゅ》だ。
納得するミリアはアシャカさんに1つ頷いたが。
「車を止めるって、破壊するってことですか?」
「おう、対重車両用のランチャーが数発ある。ドームとの交流のお陰だな。」
「数発・・・」
「すごいですね、」
「使うつもりは無い。村が爆発しても困るからな。」
にっと笑うアシャカさんだけど。
たしかに誤射は怖いだろう。
「まぁ、車なんて高価で貴重なもん持ってるゴロツキなんてな。
フェンスに衝突させて車も壊しちまうのも勿体無いって考えるだろう。
フェンスはボロっちく見えるが、無傷じゃ済まないってわかるだろう。
それにやつらの移動手段でもあるからな、生命線を捨ててまで・・、とまあ、そこまで言わなくてもわかっているか。
あんた達にはそんな事は。
あーと・・、さっきライフルと言ったが、これも充分に整えさせてもらっている。
ドームのお陰でな。」
アシャカさんが間を少し空けたので、ミリアは手書きの地図を見ていた視線を移してアシャカさんを見る。
アシャカさんの視線とミリアの視線がぶつかった。
「そちらの戦力は?」
ミリアの問いに。
「あとで話そう。」
アシャカさんは短く答えた。
「よくある展開はこんな感じだ。俺たちは遮蔽物に潜んで飛んでくる弾にさえ注意していればいい。ただし、」
アシャカがいんを強く発する。
「今回のは『嫌な予感』だ。」
――――さっきから何度か出ていた、その不可思議な言葉。
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