《SSTG》『セハザ《no1》-(3)-』

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第2記

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 ―――――YOhYOHyOhっ!YHHOOOOOハぁグリぃッジョオ!!
みんな!今日も生きてるかぁあ!?俺は今日もゲ・ン・キ・ダ!ハごペンガだぁあ!!
俺のベストマイフレンド!オブ、フレンド!!おいサンチョ!起きてるかサンチョ!
おい、サンチョ!!
・・サンチョ!?おいサンチョ!サンチョ、生きてるか?死ぬな!?死ぬんじゃねぇええぇぇぇ・・・!サンチョおぉおぉぉぉ・・・・・!?・・なんてびびったか!??
YOサンチョ!!俺の頭の上でなステップ踏んでんでよ!ずっとさっきからミニダンス絶好調のご機嫌ペンギンスタイル!見てくれよこのノリノリのボックススタイル!っての!?まーどうでもいいけど!!
イケてんだろ!?
・・はぁあぁぁーーっ・・・はぁあぁ、つうかぁあー?それよりリスナーのみんなぁあよぉお?最近どうぉーよぉお?
俺らの不夜城リリー・スピアーズじゃあいろんな事件が毎日マイニチ起きてんだぁ、って聞くじゃんかよぉおお?俺らったら、なんつーのぉお?『退屈』なんだよなあぁぁああ?はぁああぁぁぁ・・・、どこかにそんな面白そうな・・・はぁあぁあぁ・・・っ。刺激的な事件がさぁああぁぁぁ・・・・??起ぉおきないかなぁああ~~?
真っ裸なプールに飛び込んでセレブリティパーティーでフィぇえーーーっってやってみたいもんだぜぇえぇ・・・ぃい?あん?憧れが古いって?うっるぅせえぇえっよぉおおっ!!?
んなこたどうでもいいってよぉ!親愛なるリスナーどもにはよおぉぉ!んじゃあ今日も色んなフレッシュなニュースでもお話してお届けしてやんよ!!
おっとその前にぃ!俺のサ・ブ・ス・ク・よ・ろ・し・くううぅ!!
んでさあ?
ちょっと前にゃあ荒野の外で謎のヒステリー集団みたいなのが攻めてきたとかさあぁあ??市長の可愛いペットのワニが逃げ出して下水道に住み着きましたとかさあぁあ?なんかどっかで聞いた話だな??ってさ!?本当かどうかもわかんねぇニュースが飛び交って世も末っていうかぁあ・・!なに?またSNSで俺の落書きされてるって?んなこたどうでもいい日常なんだなぁ!!
ニュースってのはもっとそんなあれだあれだ!!ワニとか人食いザメとか刺激的なもんが出てくるもんなんだよ!!
だがそんなんがたくさんあっても、今日もお前らが送るのはいつものな日常だぁあ!
うはぁははっは!・・あぁん?なんだって?
・・・お前らはまぁだ、ちょー退屈ぅうぅ!??
はあぁあぁ、仕方ねえなあ。俺が、オレがだな、お前ら親愛なるリスナーたちに今日はとっておきのお話をしたいと思いまス!
そんな俺が『はごペンが』だ!!じっくり聞けよぉお!

えー。
”昔々、ある日ある日、路地裏に腹を空かせた一匹の猫がいました”

ぅおっと!勘違いすんなよ!?これはただの野良猫の話じゃあねぇんだぜ?特別な異常な特能力な路地裏の猫の話だぁぁああぁぁぁ――――――――!!



 ――――――目の前に影が近づいて来て、急に視界の中に、顔を覗かせてきたその青年に・・、彼は見ていた携帯の画面から反射的に顔を上げたが。
「お前、『ハコペンが』なんか見てんの?」
覗き込んだそいつは正面の席へ、朝食のパンやチーズ&エッグやらを乗せたトレイを卓上に置いて座っていた。
まだあくび交じりのその食堂のテーブルでは、さっきから朝の起き抜けの奴らが飯を食いに集まって来ているが、広いので人が満員にもならないままそろそろピークを過ぎる頃だろう。
その寮内に併設された食堂は『ラブリブ』という、EAUの関係者以外は立ち入れない場所にある。
「おっす。『ハごペンが』だよ。ダサくて面白くね?・・ふぁ・・ぅ」
急にしたくなる欠伸を噛みながら彼は、携帯の画面の中で派手で奇抜な色合いの格好をした、1人でグラスを呷《あお》ってパーティやってるハイテンションなその男『ハごペンが』を見ながらサンドイッチを齧る。
そういや、彼は酒じゃないと以前に配信でニヤけながら言ってたから、たぶん酒じゃないんだろう、知らんが。
「もっと他にストリーマー配信者いんだろ?朝っぱらからそのテンションはきつくねぇか?」
「朝からやってんだもんよ、」
「俺ならやかましすぎて無理だね」
それでも話しかけてくるそいつは寝起きで機嫌が悪そうで、そういやさっきからニコリともしていないようだ。
確かに、もし『ハごペンが』が目の前にいてこのテンションで喋ってきたら、こいつならキレるかもしれない、って想像した。
なので、携帯をそいつにも見えるように卓上の端に立てかけて置いてみる彼は、面白くなるのをちょっと期待しつつ、そのまま動画に目をやりながら薄く切ってあるサンドイッチの残りを口に放り込むように一枚を食べ切った。

「俺なら他の、『エコベッチ』とか『マンマノ』とか、朝シャベよくやってるから・・」
って、勝手に携帯へ手を伸ばすから。
「おい、勝手にいじるなよ、」
手を伸ばして自分の携帯を守る彼で。
「面白いからよ、つうか『エン』は癒される」
「自分のでやれよ。生配信中だぞ、」
「んん?」
「おぉ?」
携帯を取り合って、腕を掴み合った彼らはちょっと威嚇し合いの・・。
「なにやってんだ?」
不意に、その携帯を覗き込んだ黒髪黒瞳の青年がいた。
「よおケイジ。ハごペンがの話」
「違ぇだろ、」
そっちの分からず屋には否定されたが、そいつを軽く振り払えば簡単に手を放したが、肩を竦めたようで、そのまま朝食の皿の卵にフォークを刺してた。
「なんだそれ?」
「え、知らねぇの?ハごペンが、ちょー流行ってんだろ?」
「知らね、」
「ほら知らねってよ」
「『ハごペンが』だよ、見てみろよ、」
「んんん?知らねぇ」
画面を覗き込んで眉を寄せても、全くわからないらしいケイジみたいだ。
「ほら、すげぇ恰好だろ」
「格好だけかよ、アピールポイントは」
「うっせ」
「オレ今からメシ食う」
つうか、明らかに興味なしのケイジがちょっと変な発音で行きかけるんで。
「んじゃリンク送っとくぞ」
彼が携帯を操作して送ってきたデータがケイジの携帯に届いたから。
とりあえずケイジは、トレイを片手で持って落ちないよう身体で固定して。
それから、左腕で自分のポケットから携帯を取り出した。
その携帯のリンクを辿れば、さっきの『ハごペンが』ってヤツが画面内で動いてこっちへ話してる。
『野良猫は言いましたとさ!お前は黒いのか白いのか!?はっきりしろよ!!?はっきりしなきゃこの路地裏じゃやっていけねぇええよ!??』
とりあえずケイジは、さっと指で携帯の音量をさっそく下げた。
「どうよ?ケイジ?」
「いや、さっきからやかましいだろ、こいつ」
とっても素直な第一印象だ。
「だろう。」
なぜか彼はニヤリと、少し嬉しそうにしていたが。
「まあ聞いてりゃ、なんかあれだ、あれがあれして、なんかアアってなるから、」
「お前のツボがわかんねぇよ、いいから他のを推して・・・」
「まいいや、んじゃな。」
「おいケイジ、」
って呼び止められたケイジは。
「後で感想聞くぞ」
足を止めずに歩き出していたケイジは、正直に嫌そうな横顔を見せたが、携帯を軽く振るように後ろ手を見せて返しといた。


 携帯を見ながら歩くケイジは食堂を横断していて、そこの真ん中の、知ってる顔のいるテーブルはすでに知っていたので、戻ってきたそこへ朝食のトレイを置いて、どっかりと席へ座った。
「ん?」
と、隣の、気が付いたミリアが振り返ってた。
「あれ、少ないね」
ミリアはその自分の口へ、フォークに刺したクリームパスタを入れる前に聞いてた。
「ん、リースが持ってくる」
朝食の皿に興味ないようなケイジは、ずっと携帯をじっと見ているので。
「何見てるの?」
『・・ぅか、マジな質問してくる奴がいるからさ、呆れるんだけどよ。『動物が特能力持てるんですか?』ってさ。・・しいぃらねえぇえよおおおぉお!??』
ミリアはその強烈な人を見て、瞬くしかない。
「なんか流行っているらしい。」
と、ケイジがちょっと、顔が近い気がしたミリアを嫌がって画面を離していたが。
「ふーん、」
鼻を鳴らすように、ミリアはすぐ離れてまた自分の朝食、クリームマカロニを口に詰めた。
「なあ、」
と、向かいの席のガイが。
「今日は定時で入ればいいんだよな?予定は他にないもんな?」
って、携帯を片手にそう聞いてきてた。
「うん、ちームひゃ追ふぁの予へぇはふふぁっふぁふ」
ミリアが口の中をなんとかして答えてる間にも、やっぱり手をちょっと添えて隠しかけるけども。
「おう、わかった」
ガイは頷いて、携帯で誰か友人とでも連絡を取っているみたいだ。
その傍で、なんか動画に熱中しているケイジに、向こうから歩いてきていたリースがカップをそっと置いてくれた。
「お、あんがと、」
気が付いたケイジは、テーブルに携帯を立てて見れるようにして、自分で持ってきた朝食のパンを掴んで口へ運んで食べ始めてて。
その席の前にリースが持ってきたケイジの分の朝食トレイが置かれる。
「またリースに持って来させたの、」
「そんなんじゃねぇって、」
ミリアに言われたケイジはそう返したけれど。
ケイジはなんかぶらぶらしてる感じだし、自分で持ってきたお皿は少ない量で、あとから気ままに好きな物を追加で買ったんだろう、メインのお皿はリースに買って来てもらって。
リースは大人しくてよくケイジに従順にしてるので、ミリアもつい口を出したくなる。
まあ、リース本人は全くそんな事気にしてないようなんだけど。
ケイジが一口飲みかけたそのカップを、ぐほっ、と。
「っつうか、なんでミルク入り野菜ジュースなんだよっ、」
って、苦い顔して文句言っていた。
「・・・?」
いつも眠そうに大人しいリースが、かろうじて不思議そうな顔をしてた。
たしか、『甘さ控えめ生搾り』っていう名前の野菜スムージーで、ミルクが入ってるピンクのクリーミーな色を前にケイジが嫌悪な顔をしてる。
ちなみに、リースは朝は低血圧らしい。
朝だけじゃなくて、いつもそうだと思うけど。
「いいじゃない、栄養、」
ミリアはフォークでソイペーストを口に運びつつ。
「お前にやるよ」
「いやいい」
「お前も嫌なんだろ」
ミリアは、とりあえず返事を後回しに、次はマカロニの付け合わせの野菜ペーストをスプーンで掬《すく》って口に運んでた。
「・・・」
返事が無いからかケイジが眉を顰《ひそ》めていたが、ミリアは気にしない。
ケイジは手に持ったその野菜ミルクのカップに目を戻してもまだ、同じような顔をしている。
「いいから飲みなよ、」
「・・・」
ケイジが横目で嫌そうに見てくるので、ミリアはにやりとしてた。

それがまた嫌だったみたいで、ケイジが、また眉を顰《ひそ》めていた。
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