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序章 ある研究員の記録『ZERO』IS SLEEPING
第2話 初陣
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コックピットの中は意外と広かった。
左右にそれぞれレバー、ペダルなどその他計器類が設置されていた
(まるで戦闘機だな)
「で、どうやって操縦するんですか?」
「とりあえず席に座ってシートベルトをしめてくれ」
総司令の指示に従い、僕はシートに座りシートベルトをしめる。
「よし、ハッチを閉めろ!」
胸部装甲が閉まり、コックピットが暗くなる。同時に計器のランプが点灯する。
低い駆動音が次第に高くなっていく。
『メインシステム起動シークエンスを開始、ジュネレーター出力上昇、主モニター点灯、戦略情報ネットワークに接続』
システム音声とともにモニターが点灯し、外の様子をうつす。
格納庫内では作業員がテストの準備をしているらしく、慌しく動いていた。
「マイクテスト、テステス。光男君聞こえるか?」
格納庫内の上部に設置されている箱のような部屋、窓からはヘッドセットをつけた総司令がいた
「はい、ばっちり聞こえます」
「それはよかった、早速だけどそこにヘッドセット無い?」
「ヘッドセット・・・このイヤホンとマイクがセットになったようなものですか?」
「そうそれ、早速着けてくれ」
ヘッドセットをつける。瞬間、機体の状況、武装及び残弾などの情報が頭に入ってくる。
(なにかに繋がっている?)
この感覚は前にもあった。
「接続終了、うまくいったようだね、それはC‐MOSと言って・・・早い話が機体と操縦者をつなぐシステムなんだ」
「機体と操縦者を繋ぐ・・・あの、これって」
「うん、一応WGには魔法技術も使われているよ、そうでもしないと操縦なんて、ましてや全高約12メートルの二足歩行型ロボットなんて作れる訳がないよ。基本的には君は操縦する際思考するだけでいい、まあ別にペダルやらレバーを使っても構わないけど」
魔法技術も使われている。
もしかして、このC-MOSは前に俺がやっていたように、機体に張り巡らせた魔力回路を搭乗者自身の魔力回路でつなぎ、機体を搭乗者の一部のような状態にする原理を使っているのか?もしあの強引な技をシステム化したのがこのC-MOSだというのなら。この世界の魔法技術はに前居た世界より相当進んでいる。
「そういえば総司令、僕ヘルメットとか耐Gスーツとかないんですが」
マッハ2あたりは相当のGがかかるはず、何も装備せずにいったら内臓破裂どころの話ではない。
ジュースになる(と思う)
「ああ、そんなものは必要ないよ。コックピット周辺に魔法術式をかけているから」
「魔法っての力ってすげー」
魔術師の俺が家に生まれ、散々魔法術式をかけられ、文字通り魔改造された戦闘機(F-14)で戦っていた俺が言うのもあれだが。
「よし、それでは試験を開始する。まず始めに歩いて格納庫の外に出てもらおう」
「了解」
まあ、最初はそうなるよな、脚がついているのに歩けないのでは意味が無い。でなければ脚はただの飾りだ。
僕は歩くように思考する。
すると、鋼鉄の右脚が動き一歩踏み出す、続いて左脚が動き・・・歩行する。
「続いて、右腕・・・は武器を持っているから、左腕を動かしてみて」
頭の中で思考すると、WGの左腕が動き、更に指を動かす思考をすると、連動してWGの指が動いた。
(F-14を動かしていたときと同じだ)
感覚もまるで同じだ。頭の中で思考したように、イメージ通りにうごく。さっきの仮説は間違っていなかったということだ。
「初搭乗で歩行ができるとは・・・よし、じゃあ次飛ぼうか」
「いきなり!?」
「前にF-14を乗り回していたんでしょ」
いやまあ、たしかに乗り回していたけど、竜と派手な空中戦を繰り広げたこともあるけど・・・新品のF-35で見事なベイルアウト(緊急脱出)を披露したこともあるけど。
「大丈夫、初搭乗で歩行できるんなら十分だ。それにこれからフリークスの群れに突入するわけだけど、歩くことが出来るなら余裕で殲滅できるから」
飛行した後にそのまま敵の群れに突入して殲滅するってそれもう実戦だろオイ。
(まあいい)
感覚は掴んだ。
「分かりました、やってみます」
「よろしい、ではルートを表示する。それにそって移動しろ」
「了解」
表示されたルートにそって滑走路をWGを二足歩行しながら考える。
それは、初めてF-14を飛ばした時に考えたことと同じだった。
(魔法を行使するときと同じだな・・・魔法を行使しているわけでもないのに)
今、俺は『歩く』をという思考しているわけだが、実際魔法を行使する際も同じことが必要だ。
魔法を行使する際、必要なのは術式または詠唱、魔力などが必要になるが、最も重要なのは思考すること、頭の中に明確なイメージを持つことである。
(しかしこの右手の傷を見る限り、どうも魔力回路が暴走したっぽいんだよな・・・)
あの時、右手にある魔力回路が暴走してこの事態、つまりは俺の世界線移動の原因のトリガーを引いた可能性は十分ある。しかし、魔力回路だけでは魔法を行使することは理論上できない。いや絶対に出来ない。魔力回路は魔力の流れを制御するだけだ。
魔法を行使するための魔術回路、またはそれに準ずる魔方陣、術式などがないと魔法は行使できない。何か別の要因がある。
・・・といっても、何か思い当たる節がある訳ではない。
(携帯と電子レンジをくっつけた訳でもないしな)
そうしているうちに目的地に到着した。前には滑走路が伸びている。
「よし、それではこちらの指示にしたがって離陸してくれ」
「了解・・・そんなに簡単に出来るものなんですか?」
「まあな、そうでもしないと迅速な展開が出来ないからな。よし、脚部の高速軌道輪を展開しブースタースイッチをオンにしてくれ」
「脚部の高速軌道輪を展開し、ブースタースイッチをオン・・・こうですか?」
脚部の高速軌道輪(キャタピラ)が展開し、背中と脚のブースターに緑色の光が集まっていく
「よろしい、離陸する際はペダルを踏み込むんだ。あとは機械が勝手にやってくれる。戦闘機の操縦よりか遥かに楽だろう。では後は管制塔の指示に従って離陸しろ。君のコールサインは[ルーキー1]、管制塔のコールサインは[ヤマシロ・タワー]だ。離陸後、目的地までの航路はマーカーが示してくれる。マーカーを伝って行くんだ。作戦領域到達したら、そのまま領域内の敵を殲滅しろ」
「了解・・・じゃなかったルーキー1了解」
「その調子だ。いつもこの時間帯は輸送機とかで混んでいるけど、今日は珍しく混んでないからすぐにくると思うよ。じゃあまた後で」
事実そうだった。一分もしないうちに管制塔から通信が入った。流暢な日本語だった。
「ルーキー1、こちらヤマシロ・タワー。聞こえますか?」
「ルーキー1よりヤマシロ・タワー、感度良好です」
「ヤマシロ・タワーよりルーキー1、これより滑走路へ誘導、離陸には5番滑走路を使用します」
「ルーキー1了解」
表示されたルートを走行し、5番滑走路に着く。
「ヤマシロ・タワーよりルーキー1へ、離陸を許可します」
「ルーキー1了解」
一回だけ深呼吸し、しっかりと前を見据える。空は青く澄んでいた。
(初めてF-14を飛ばした時は、夜だったな)
「ルーキー1、テイクオフッ!!」
ブースターから緑色の光が噴き、鋼色の巨体が猛スピードで滑走路を移動し、飛んだ。
機体はどんどん加速し、高度を上げていった。
「うわあ・・・」
F-14を飛ばしていたときと同じ要領でマーカーを辿っていくと、そこにあったのは都市だった。
機体を慎重にホバリングさせつつ、下をよく見ると、そこには道路や車、線路らしきものがあった。
間違いなく、ここは現代の、人間界の物だ。
(異世界になんでこんなものが・・・ていうかどっかで見た気が)
「あーあー、テステス。光男君、聞こえる?」
「はい、聞こえます」
「よろしい。まず君が居る場所、つまり作戦領域なんだけれども・・・実は人間界の東京なんだよね。」
「東京?」
なるほど、道理でビルの数が多いと思った・・・て
「なんでそんなものがこの世界に?」
「『南極事件』の際おきた重力震やらなにかよく分からない何かのせいで人間界がこちらの世界に侵食し、地形やら建築物がこちらに再現された・・・というのが我々の見解だ」
「詳しいことは分かっていない。そういう認識でいいですね」
「いいよ別に。しかし、再現度が凄いよそこ。前に調査したら。実際の建物と寸分違わなかったよ」
「まるで精巧に作られた特撮用のセットみたいですね」
しかし厄介だな・・・
「こんなところで戦闘をするとビルに激突しそうなんですけど」
「まあ、ビル程度ではその機体は壊れないから安心して、ああそれで、一つ重要なことを言い忘れていてね。だからこうして通信している訳だが」
「なんですか?」
「攻撃するときは、武装を選択して、ちゃんとロックオンしてから撃つこと。照準マーカーが赤になった時にトリガーを引くだけでいいから」
「それ普通発進する前に言う事柄ですよね!?」
まあいい。それはそうと。
「総司令、この機体、稼動時間はどれくらいですか?」
「それに関しては気にしなくてはいい、半永久機関の一種を搭載しているから一応稼動時間は無限だよ」
さらっと凄い事を言った気がするが、レーダーを見てすぐに頭の外に追いやった。
レーダーに感、高速で飛来する物体が5、前方から突っ込んでくる。さらに周辺からも多数の反応、
ロックオンしてトリガーを引き、迎撃。
連射するのではなく、一発一発丁寧に。
迎撃の後、急速上昇、慣れた感覚だ。
上昇しつつ突撃砲を背部に懸架、同時に、背部に懸架されていた10式榴弾砲に換装し、発砲。
辺りに集まってきた敵を一掃、更に一発打ち込み、機関砲に換装しようとしたところで、敵からの対空砲火、ビームのようだ。
左腕の盾を前面に押し出しながら機関砲を発射しつつ接敵、至近距離に近ずき右腕に内蔵されたブレードで切り裂こうとしたとき、
初めて敵の姿を、フリークスを見た。人型のそれは生物のようで、機械にも思えた。そして、叫び声を聞いた。
「XXXXXXXXXX!!!」
ブレードで切り裂き、離脱。同時に2体、こちらに突っ込んでくる。
ブースターを切り、道路に回転しながら着地しながら榴弾砲に換装、キャタピラでバランスをとりつつ発射、間髪いれず次の行動に移る。
左腕部のアンカーを射出しビル群を駆け上がりつつ、後から来た群れに対して機関砲を発射し、そのまま空中に踊りでて、肩部に内蔵されたマイクロミサイルをばら撒く。
(大切なのは、常に移動すること)
敵に狙いを定めさせないこと。再現された東京のビルの合間をくぐりぬけながら戦う。
考えるな。
(いったいどこから魔力を供給しているのだろう)
銃や剣のようなもので武装し、魔法のようなものを使う人型(正式には人型レベル3と言うらしい)フリークス3体を同時に相手するという地味に凄いことをしながらそう思う・・・てかこの三体に強くないか?あきらかに他の人型に比べて動きが違う。
地味にジェットストリームアタックのような攻撃仕掛けてくるし、フリークスの中にも特別な個体がいるのだろうか。ブースターを吹かして後方にそのままの姿勢で飛翔しながら、左腕に装備された盾で銃撃(地味に精度が高い)を防御し、右手に内蔵されたブレードで剣による攻撃を裁き、後のほうからの砲撃をよけながら、
(これで終わらせる!!)
隙を見てミサイルを叩き込んで決着をつける。人型の三体は回避行動をとるが間に合わなかったらしく、ミサイルのいくつかが当たり、三体とも爆散した。そしてその後ろからまたもや小型種の群れが突撃してきた。
落ち着きながら集中し、各個撃破していくが、しだいにある事に気付く。
(おかしい)
あきらかに敵の数が増えてる。さっきレーダーで感知した数より多い。
「敵の増援か・・・しかし、いったいどこから」
突撃砲もそろそろ残弾がまずくなってきた。榴弾砲も同様にあと一発のみだ
増援元を潰すのがこの場合もっとも有効な手段だろう。そう思ったとき、通信が入る
「あールーキー1、戦闘中すまないけど・・・ちょっといいかな」
「なんですか?」
「実は・・・ちょっとまずい事態が発生してね」
「まずい事態?」
次の瞬間、その『まずい事態』がビル群を吹っ飛ばしてでてきた。
あたりに立ち込める土煙、視界が完全にシャットアウトされる。そのときレーダーに反応、識別は、敵、フリークス。
「・・・ちょっと大型なのが来ちゃってね」
大型・・・えーとそれもしかして
土煙の中から巨大な何かが出てきた。その形状は、まるで巨大な竜、いや『巨大な竜のようなもの』というのが正しい。
目測だけで500メートルは悠に超えている。敵の詳細が表示される。
『タイプ:ワイバーン レベル3 フリークス』
突然起こった出来事に混乱しつつも、僕は叫ぶ。
「いや、レベル3とかそういうレベルじゃねえぞこれええええ」
レベル4はあれか、某怪獣王か!?
機体を反転して逃げた。そして、その判断は正しかった。
「突っ込んできた!?」
ワイバーン型はこちらを見つけるなり、背中の翼を羽ばたき、辺りのビルを壊しながらこちらに突っ込んできた。というかあの巨体で飛ぶのかよ!?
こちらに体当たりするつもりなのだろうか、そう思ったとき、ワイバーン型の口から大量の小型種がでてきた。
(増援はコイツからか!!)
ただ体当たりをする訳ではないらしい。だがすぐに対処する。肩部マイクロミサイルを発射し出てきたフリークスを一掃し、機関砲を発射、しかし、はじかれる。
(硬い・・・)
体内に直接攻撃を与えるしかなさそうだ。見ればワイバーン型の口らしきところがあいている。あそこならばダメージを与えられそうだ。
しかしどうやって・・・
その時、またもやワイバーン型の中から大量の小型種が突撃してきた。機関砲で応戦し、すべて撃破する。しかし、
「弾切れ・・・」
残弾0、機関砲を母艦目掛けて投げつけ、道路を疾走、キャタピラが火花を散らす。
アンカーで方向転換しつつ考える。得た情報を元に、考え、思考しようとしたとき、更に想定外の事態が起きる。何かが後ろに当たったような衝撃、そして
「榴弾砲が!?」
背後からの攻撃だろうか、榴弾砲が爆発した。
(いったいどこから)
背後を見て、自分の勘違いに気づく。根本的なことを忘れていた。たしかに相手は竜のようだ。ただし、それは形だけの話だ。
中身まではそうとは限らない。
(触手!?)
竜の形をとるワイバーン型の口から何本もの触手のようなものがでていた。
「でかいだけではなさそうだな・・・」
そう思っている内に触手の第2波が来る。明らかにさきほどの攻撃より触手の数が増えてる。
「数で攻める気か!?」
さらに触手の展開と同時に小型種が口の中から突撃してくる。路面をけって跳躍し、そのままブースターで機体をビル群の上まで上昇しながら触手をよける。踊るように空中で回避行動、一つ、二つ、三つ、四つ・・・全部避け、そのまま反転。
「フルファイア!!」
ミサイルの残弾全てを発射する。小型にミサイルのシャワーを浴びせる。同時に盾を構えながら突撃、後ろから回り込むように来た2本の触手に対してミサイルコンテナをパージし、ぶつける。右腕の内蔵ブレードを展開、敵はもうすぐ目の前だ。
(後100m・・・)
下降し、ワイバーン型の正面に突撃する。しかし、あることに気づく。ワイバーン型の口から紫色の光が・・・
「回避(ブレイク)!!」
後一秒、反応が遅れていれば死んでいた。すんでのところで右側に機体をそらす。そこにワイバーン型の口から放たれた紫色のビームが、放たれる。左腕をもっていかれる。警告が鳴り響く。無視してワイバーン型の横を通り抜け、直後、触手が追い討ちをかけてきた。回避しようとするが、左腕を失ったせいで重心が傾く。それでも可能な限り避ける。急激な、変則的な回避運動。フレームが軋む。そして、
「えっ・・・」
接続が外れた。
「システムエラー!?原因はなんだ?」
「分かりません。何かに機体との接続を邪魔されているようです」
「衝撃でC-MOS本体が壊れたというわけではないのか?」
「ええ、そのようです。しかし何がどうなって・・・」
「検証は後だ、試験を中止、武蔵野基地群に出動命令!!総司令権限を使っても構わない」
「了解、武蔵野基地群に通信、送ります!!」
制御を失った機体はそのままビルに突っ込んだ。衝撃のあと、自分の体の状態を確認する。
(骨は折れていないようだ)
しかし、何故機体が制御できなくなってしまったのだろうか、頭から落ちたヘッドセットは、見たところ無事らしい、
「システムが壊れたという訳では・・・!!」
そのとき、様々なことが同時に起こった。一つ目は右手の魔力回路が再起したこと、二つ目はその直後、ヘッドセットを付けていないにも関わらず機体との接続が回復したこと、三つ目は接続が回復して分かったことだが、触手がもう目の前に来ていたこと、四つ目は・・・周囲の時間が停滞した。
全てがゆっくりと動く。
機体も、
触手も、
俺の動きも。
ゆっくりと、しかし確実に動いていく。
まさかと思いつつ俺は慎重にスローモーションで飛来してくる触手を的確に(といってもこちらの動きも遅くなっているのだが)避ける。その瞬間、時が本来の速さになり、さっきまでいたビルが触手によって破壊されたのを確認すると、そのまま距離を取る。追撃、触手は六本
「避けて見せる!!」
速度を落とさず機体を微妙にずらし対処。触手が反転して正面から突っ込んでくる。
「思考爆発(シンキングバースト!!」
瞬間、時が再び停滞する。
いや、自分の思考が速くなっている。
爆発している。
右腕に内蔵されたブレードを展開し、スローモーションで突っ込んでくる触手を切り裂く。そして、時は元の速さに戻る。
「まちがいない。『眼』の能力だ」
眼、失われた右目の能力。眼が能力を持っているのでは無かったのか?
いや、それ以前になぜ俺は機体を制御できているんだ?ヘッドセットはつけていないのに。
「魔力回路が本来の機能を取り戻し、C‐MOS制御を奪ったのか!?」
ふと、足元から膨大な魔力を感じ、察す。
(魔力生成機関!?)
夢の機関、半永久機関。そしてだれもが製作に失敗した。
エネルギーの法則ガン無視である。
俺は妙案を思いつく。
もしかしたら、ワイバーン型に相当なダメージを、いや一撃で倒せるかもしれない。
成功率は高いとは言えないが、手段を選んでいる暇は無い。
最大速度で飛ぶ、ワイバーン型に対して十分な距離をとり、コントロールパネルを操作する。
(機体外魔力粒子放出量・・・これか)
操作すると機体各所から緑色の粒子が溢れだし、やがてあたり一面に広がる・・・というか、なんか広がるの早くないか?
魔力を粒子化するにしたって相当な魔力を必要とする筈だ。
(いったいどんな構造しているのだろう)
後で調べる必要がある。そうしている内にワイバーン型が突っ込んできた。
「うまくいくといいが・・・」
あの時は完全に事故だったからなあ、しかし、今回は魔力回路が、それも大量にあるから重要なことはいかに強く思考すること。そう思い、思考する。
「爆ぜろ!!」
瞬間、辺り一面が緑色の光に飲み込まれ、爆発する。
そのとき、何かが機体に突き刺さった。
俺の初陣は呆気なく終わった。
「よし、試験終了、お疲れ様・・・しかし初戦でワイバーン型を撃破、しかも一撃とは、なかなかやるじゃないか」
「ええまあ・・・でもまさか一撃で終わるとは思っても見ませんせしたよ」
4時間後、格納庫で左腕が無くなり、頭部にワイバーン型の残骸が突き刺さった1式の前で休憩しながらレオス総司令と会話していた。
「しかしあの最後の技、あれってもしかして魔力爆発?」
「ええそうです。前にちょっとした事件で偶然起こしてしまったんですよ。さっきのあれはそれを再現したんですよ」
さっきのようにあそこまで広範囲に爆発しなかったがな!!
「その時の経験を活用した訳か。まあでも、君、よくあそこまで戦えたね。なにか秘訣でも」
「極力考えないようにしているんですよ・・・そうでもしないと集中できないんで」
自分には一つの物事に対して考えすぎる節がある。そのせいか、二つ以上の事に対処するのが難しい。
「小説に例えるなら、状況描写を書きすぎてしまうんですよ」
だから、極力思考を短く、状況描写は必要最低限にする。あることを体得する途上において見つけた戦法だ。
「それに、前は魔改造したF-14戦闘機で常時マッハ2以上で戦っていましたからね、空中戦には慣れてます」
「・・・なるほど、なら尚更この職は向いているだろう」
向いているとは、どういうことか。直後、総司令が解答した。
「君は合格だよ」
総司令は笑顔でそう言った。
「・・・合格?」
「うん」
「えーとそれってつまり」
「そう。君はいまから戦略機動隊の一員だ」
・・・軍人になりました。
「これが、制服か・・・」
総合棟の人事課前の廊下、夕方。謎の情報端末らしきもの、IDカードと時計、(と新しいメガネ、いつの間に作っていた?)、そして拳銃とナイフを支給された。その後同時にもらった制服に着替え、制服を検分していた。(ぼろぼろになった学生服と壊れたメガネはそのまま引き取った。ちなみに、一式に付いていたフリークスの残骸の一部を記念品としてもらった。
大丈夫なのだろうか)
迷彩柄のズボンに白地のシャツ、そして緑色の上着。前のボタンはしめなくていいらしい。
(意外とラフだなおい・・・)
そう思いつつ、自分は自分の写真が貼られたIDカードを見る。
「戦略機動隊か・・・」
就職先が軍隊、それも正体不明の敵とロボットで戦う軍隊か・・・
「あいつが聞いたら、笑うのかな」
似合っているというのか。それとも、
(#葛葉_くずは_#には、葛葉なりの道があったんだろうな)
結果として、僕は要らないから、邪魔だから、殺したのだろう。まあ、そのことについてはなんにも恨んではいない。
だって、俺は生きているから。生きているのならば、問題はない。生きていればよかろうなのだ。
「でもまあ、殺されるという経験はもうしたくないがな!!」
「それは無理な話だなー。だって、私が光男君を殺すから」
聞き覚えのある声、振り向く前に拳銃を掴み、振り向
「相変わらずワンパターンなんだから、光男君」
けなかった。代わりに背後から抱きつかれ、両腕の自由を奪われ、俺の喉にナイフがあたる・・・が、そこまでは想定内だ。
体はただ添えるだけ。体を後ろに落とし、相手の足を引っ掛ける。
相手がバランスを崩したその隙に距離を置き、銃を構える。だが、その手が震える。
初めて銃を握ったからではない。ただ、相手が怖い、それだけだ。
「あーあー、逃げられちゃった・・・まあ、いつもやっていることだし、まあ元気そうでよかった。まだ心は壊れているけど」
ソイツはこっちに向かってきた。
「やあ、光男君」
そう、メガネをかけた黒髪の彼女は、笑顔でそう言った。
そこに居たのは、もう二度と会えなかったはずで、もう二度と会いたくなかった。
俺が最も恐れている。
「殺しに来たよ」
#黒崎_くろさき_##茜_あかね_#だった。
俺の楽しい異世界生活終了のお知らせ。
左右にそれぞれレバー、ペダルなどその他計器類が設置されていた
(まるで戦闘機だな)
「で、どうやって操縦するんですか?」
「とりあえず席に座ってシートベルトをしめてくれ」
総司令の指示に従い、僕はシートに座りシートベルトをしめる。
「よし、ハッチを閉めろ!」
胸部装甲が閉まり、コックピットが暗くなる。同時に計器のランプが点灯する。
低い駆動音が次第に高くなっていく。
『メインシステム起動シークエンスを開始、ジュネレーター出力上昇、主モニター点灯、戦略情報ネットワークに接続』
システム音声とともにモニターが点灯し、外の様子をうつす。
格納庫内では作業員がテストの準備をしているらしく、慌しく動いていた。
「マイクテスト、テステス。光男君聞こえるか?」
格納庫内の上部に設置されている箱のような部屋、窓からはヘッドセットをつけた総司令がいた
「はい、ばっちり聞こえます」
「それはよかった、早速だけどそこにヘッドセット無い?」
「ヘッドセット・・・このイヤホンとマイクがセットになったようなものですか?」
「そうそれ、早速着けてくれ」
ヘッドセットをつける。瞬間、機体の状況、武装及び残弾などの情報が頭に入ってくる。
(なにかに繋がっている?)
この感覚は前にもあった。
「接続終了、うまくいったようだね、それはC‐MOSと言って・・・早い話が機体と操縦者をつなぐシステムなんだ」
「機体と操縦者を繋ぐ・・・あの、これって」
「うん、一応WGには魔法技術も使われているよ、そうでもしないと操縦なんて、ましてや全高約12メートルの二足歩行型ロボットなんて作れる訳がないよ。基本的には君は操縦する際思考するだけでいい、まあ別にペダルやらレバーを使っても構わないけど」
魔法技術も使われている。
もしかして、このC-MOSは前に俺がやっていたように、機体に張り巡らせた魔力回路を搭乗者自身の魔力回路でつなぎ、機体を搭乗者の一部のような状態にする原理を使っているのか?もしあの強引な技をシステム化したのがこのC-MOSだというのなら。この世界の魔法技術はに前居た世界より相当進んでいる。
「そういえば総司令、僕ヘルメットとか耐Gスーツとかないんですが」
マッハ2あたりは相当のGがかかるはず、何も装備せずにいったら内臓破裂どころの話ではない。
ジュースになる(と思う)
「ああ、そんなものは必要ないよ。コックピット周辺に魔法術式をかけているから」
「魔法っての力ってすげー」
魔術師の俺が家に生まれ、散々魔法術式をかけられ、文字通り魔改造された戦闘機(F-14)で戦っていた俺が言うのもあれだが。
「よし、それでは試験を開始する。まず始めに歩いて格納庫の外に出てもらおう」
「了解」
まあ、最初はそうなるよな、脚がついているのに歩けないのでは意味が無い。でなければ脚はただの飾りだ。
僕は歩くように思考する。
すると、鋼鉄の右脚が動き一歩踏み出す、続いて左脚が動き・・・歩行する。
「続いて、右腕・・・は武器を持っているから、左腕を動かしてみて」
頭の中で思考すると、WGの左腕が動き、更に指を動かす思考をすると、連動してWGの指が動いた。
(F-14を動かしていたときと同じだ)
感覚もまるで同じだ。頭の中で思考したように、イメージ通りにうごく。さっきの仮説は間違っていなかったということだ。
「初搭乗で歩行ができるとは・・・よし、じゃあ次飛ぼうか」
「いきなり!?」
「前にF-14を乗り回していたんでしょ」
いやまあ、たしかに乗り回していたけど、竜と派手な空中戦を繰り広げたこともあるけど・・・新品のF-35で見事なベイルアウト(緊急脱出)を披露したこともあるけど。
「大丈夫、初搭乗で歩行できるんなら十分だ。それにこれからフリークスの群れに突入するわけだけど、歩くことが出来るなら余裕で殲滅できるから」
飛行した後にそのまま敵の群れに突入して殲滅するってそれもう実戦だろオイ。
(まあいい)
感覚は掴んだ。
「分かりました、やってみます」
「よろしい、ではルートを表示する。それにそって移動しろ」
「了解」
表示されたルートにそって滑走路をWGを二足歩行しながら考える。
それは、初めてF-14を飛ばした時に考えたことと同じだった。
(魔法を行使するときと同じだな・・・魔法を行使しているわけでもないのに)
今、俺は『歩く』をという思考しているわけだが、実際魔法を行使する際も同じことが必要だ。
魔法を行使する際、必要なのは術式または詠唱、魔力などが必要になるが、最も重要なのは思考すること、頭の中に明確なイメージを持つことである。
(しかしこの右手の傷を見る限り、どうも魔力回路が暴走したっぽいんだよな・・・)
あの時、右手にある魔力回路が暴走してこの事態、つまりは俺の世界線移動の原因のトリガーを引いた可能性は十分ある。しかし、魔力回路だけでは魔法を行使することは理論上できない。いや絶対に出来ない。魔力回路は魔力の流れを制御するだけだ。
魔法を行使するための魔術回路、またはそれに準ずる魔方陣、術式などがないと魔法は行使できない。何か別の要因がある。
・・・といっても、何か思い当たる節がある訳ではない。
(携帯と電子レンジをくっつけた訳でもないしな)
そうしているうちに目的地に到着した。前には滑走路が伸びている。
「よし、それではこちらの指示にしたがって離陸してくれ」
「了解・・・そんなに簡単に出来るものなんですか?」
「まあな、そうでもしないと迅速な展開が出来ないからな。よし、脚部の高速軌道輪を展開しブースタースイッチをオンにしてくれ」
「脚部の高速軌道輪を展開し、ブースタースイッチをオン・・・こうですか?」
脚部の高速軌道輪(キャタピラ)が展開し、背中と脚のブースターに緑色の光が集まっていく
「よろしい、離陸する際はペダルを踏み込むんだ。あとは機械が勝手にやってくれる。戦闘機の操縦よりか遥かに楽だろう。では後は管制塔の指示に従って離陸しろ。君のコールサインは[ルーキー1]、管制塔のコールサインは[ヤマシロ・タワー]だ。離陸後、目的地までの航路はマーカーが示してくれる。マーカーを伝って行くんだ。作戦領域到達したら、そのまま領域内の敵を殲滅しろ」
「了解・・・じゃなかったルーキー1了解」
「その調子だ。いつもこの時間帯は輸送機とかで混んでいるけど、今日は珍しく混んでないからすぐにくると思うよ。じゃあまた後で」
事実そうだった。一分もしないうちに管制塔から通信が入った。流暢な日本語だった。
「ルーキー1、こちらヤマシロ・タワー。聞こえますか?」
「ルーキー1よりヤマシロ・タワー、感度良好です」
「ヤマシロ・タワーよりルーキー1、これより滑走路へ誘導、離陸には5番滑走路を使用します」
「ルーキー1了解」
表示されたルートを走行し、5番滑走路に着く。
「ヤマシロ・タワーよりルーキー1へ、離陸を許可します」
「ルーキー1了解」
一回だけ深呼吸し、しっかりと前を見据える。空は青く澄んでいた。
(初めてF-14を飛ばした時は、夜だったな)
「ルーキー1、テイクオフッ!!」
ブースターから緑色の光が噴き、鋼色の巨体が猛スピードで滑走路を移動し、飛んだ。
機体はどんどん加速し、高度を上げていった。
「うわあ・・・」
F-14を飛ばしていたときと同じ要領でマーカーを辿っていくと、そこにあったのは都市だった。
機体を慎重にホバリングさせつつ、下をよく見ると、そこには道路や車、線路らしきものがあった。
間違いなく、ここは現代の、人間界の物だ。
(異世界になんでこんなものが・・・ていうかどっかで見た気が)
「あーあー、テステス。光男君、聞こえる?」
「はい、聞こえます」
「よろしい。まず君が居る場所、つまり作戦領域なんだけれども・・・実は人間界の東京なんだよね。」
「東京?」
なるほど、道理でビルの数が多いと思った・・・て
「なんでそんなものがこの世界に?」
「『南極事件』の際おきた重力震やらなにかよく分からない何かのせいで人間界がこちらの世界に侵食し、地形やら建築物がこちらに再現された・・・というのが我々の見解だ」
「詳しいことは分かっていない。そういう認識でいいですね」
「いいよ別に。しかし、再現度が凄いよそこ。前に調査したら。実際の建物と寸分違わなかったよ」
「まるで精巧に作られた特撮用のセットみたいですね」
しかし厄介だな・・・
「こんなところで戦闘をするとビルに激突しそうなんですけど」
「まあ、ビル程度ではその機体は壊れないから安心して、ああそれで、一つ重要なことを言い忘れていてね。だからこうして通信している訳だが」
「なんですか?」
「攻撃するときは、武装を選択して、ちゃんとロックオンしてから撃つこと。照準マーカーが赤になった時にトリガーを引くだけでいいから」
「それ普通発進する前に言う事柄ですよね!?」
まあいい。それはそうと。
「総司令、この機体、稼動時間はどれくらいですか?」
「それに関しては気にしなくてはいい、半永久機関の一種を搭載しているから一応稼動時間は無限だよ」
さらっと凄い事を言った気がするが、レーダーを見てすぐに頭の外に追いやった。
レーダーに感、高速で飛来する物体が5、前方から突っ込んでくる。さらに周辺からも多数の反応、
ロックオンしてトリガーを引き、迎撃。
連射するのではなく、一発一発丁寧に。
迎撃の後、急速上昇、慣れた感覚だ。
上昇しつつ突撃砲を背部に懸架、同時に、背部に懸架されていた10式榴弾砲に換装し、発砲。
辺りに集まってきた敵を一掃、更に一発打ち込み、機関砲に換装しようとしたところで、敵からの対空砲火、ビームのようだ。
左腕の盾を前面に押し出しながら機関砲を発射しつつ接敵、至近距離に近ずき右腕に内蔵されたブレードで切り裂こうとしたとき、
初めて敵の姿を、フリークスを見た。人型のそれは生物のようで、機械にも思えた。そして、叫び声を聞いた。
「XXXXXXXXXX!!!」
ブレードで切り裂き、離脱。同時に2体、こちらに突っ込んでくる。
ブースターを切り、道路に回転しながら着地しながら榴弾砲に換装、キャタピラでバランスをとりつつ発射、間髪いれず次の行動に移る。
左腕部のアンカーを射出しビル群を駆け上がりつつ、後から来た群れに対して機関砲を発射し、そのまま空中に踊りでて、肩部に内蔵されたマイクロミサイルをばら撒く。
(大切なのは、常に移動すること)
敵に狙いを定めさせないこと。再現された東京のビルの合間をくぐりぬけながら戦う。
考えるな。
(いったいどこから魔力を供給しているのだろう)
銃や剣のようなもので武装し、魔法のようなものを使う人型(正式には人型レベル3と言うらしい)フリークス3体を同時に相手するという地味に凄いことをしながらそう思う・・・てかこの三体に強くないか?あきらかに他の人型に比べて動きが違う。
地味にジェットストリームアタックのような攻撃仕掛けてくるし、フリークスの中にも特別な個体がいるのだろうか。ブースターを吹かして後方にそのままの姿勢で飛翔しながら、左腕に装備された盾で銃撃(地味に精度が高い)を防御し、右手に内蔵されたブレードで剣による攻撃を裁き、後のほうからの砲撃をよけながら、
(これで終わらせる!!)
隙を見てミサイルを叩き込んで決着をつける。人型の三体は回避行動をとるが間に合わなかったらしく、ミサイルのいくつかが当たり、三体とも爆散した。そしてその後ろからまたもや小型種の群れが突撃してきた。
落ち着きながら集中し、各個撃破していくが、しだいにある事に気付く。
(おかしい)
あきらかに敵の数が増えてる。さっきレーダーで感知した数より多い。
「敵の増援か・・・しかし、いったいどこから」
突撃砲もそろそろ残弾がまずくなってきた。榴弾砲も同様にあと一発のみだ
増援元を潰すのがこの場合もっとも有効な手段だろう。そう思ったとき、通信が入る
「あールーキー1、戦闘中すまないけど・・・ちょっといいかな」
「なんですか?」
「実は・・・ちょっとまずい事態が発生してね」
「まずい事態?」
次の瞬間、その『まずい事態』がビル群を吹っ飛ばしてでてきた。
あたりに立ち込める土煙、視界が完全にシャットアウトされる。そのときレーダーに反応、識別は、敵、フリークス。
「・・・ちょっと大型なのが来ちゃってね」
大型・・・えーとそれもしかして
土煙の中から巨大な何かが出てきた。その形状は、まるで巨大な竜、いや『巨大な竜のようなもの』というのが正しい。
目測だけで500メートルは悠に超えている。敵の詳細が表示される。
『タイプ:ワイバーン レベル3 フリークス』
突然起こった出来事に混乱しつつも、僕は叫ぶ。
「いや、レベル3とかそういうレベルじゃねえぞこれええええ」
レベル4はあれか、某怪獣王か!?
機体を反転して逃げた。そして、その判断は正しかった。
「突っ込んできた!?」
ワイバーン型はこちらを見つけるなり、背中の翼を羽ばたき、辺りのビルを壊しながらこちらに突っ込んできた。というかあの巨体で飛ぶのかよ!?
こちらに体当たりするつもりなのだろうか、そう思ったとき、ワイバーン型の口から大量の小型種がでてきた。
(増援はコイツからか!!)
ただ体当たりをする訳ではないらしい。だがすぐに対処する。肩部マイクロミサイルを発射し出てきたフリークスを一掃し、機関砲を発射、しかし、はじかれる。
(硬い・・・)
体内に直接攻撃を与えるしかなさそうだ。見ればワイバーン型の口らしきところがあいている。あそこならばダメージを与えられそうだ。
しかしどうやって・・・
その時、またもやワイバーン型の中から大量の小型種が突撃してきた。機関砲で応戦し、すべて撃破する。しかし、
「弾切れ・・・」
残弾0、機関砲を母艦目掛けて投げつけ、道路を疾走、キャタピラが火花を散らす。
アンカーで方向転換しつつ考える。得た情報を元に、考え、思考しようとしたとき、更に想定外の事態が起きる。何かが後ろに当たったような衝撃、そして
「榴弾砲が!?」
背後からの攻撃だろうか、榴弾砲が爆発した。
(いったいどこから)
背後を見て、自分の勘違いに気づく。根本的なことを忘れていた。たしかに相手は竜のようだ。ただし、それは形だけの話だ。
中身まではそうとは限らない。
(触手!?)
竜の形をとるワイバーン型の口から何本もの触手のようなものがでていた。
「でかいだけではなさそうだな・・・」
そう思っている内に触手の第2波が来る。明らかにさきほどの攻撃より触手の数が増えてる。
「数で攻める気か!?」
さらに触手の展開と同時に小型種が口の中から突撃してくる。路面をけって跳躍し、そのままブースターで機体をビル群の上まで上昇しながら触手をよける。踊るように空中で回避行動、一つ、二つ、三つ、四つ・・・全部避け、そのまま反転。
「フルファイア!!」
ミサイルの残弾全てを発射する。小型にミサイルのシャワーを浴びせる。同時に盾を構えながら突撃、後ろから回り込むように来た2本の触手に対してミサイルコンテナをパージし、ぶつける。右腕の内蔵ブレードを展開、敵はもうすぐ目の前だ。
(後100m・・・)
下降し、ワイバーン型の正面に突撃する。しかし、あることに気づく。ワイバーン型の口から紫色の光が・・・
「回避(ブレイク)!!」
後一秒、反応が遅れていれば死んでいた。すんでのところで右側に機体をそらす。そこにワイバーン型の口から放たれた紫色のビームが、放たれる。左腕をもっていかれる。警告が鳴り響く。無視してワイバーン型の横を通り抜け、直後、触手が追い討ちをかけてきた。回避しようとするが、左腕を失ったせいで重心が傾く。それでも可能な限り避ける。急激な、変則的な回避運動。フレームが軋む。そして、
「えっ・・・」
接続が外れた。
「システムエラー!?原因はなんだ?」
「分かりません。何かに機体との接続を邪魔されているようです」
「衝撃でC-MOS本体が壊れたというわけではないのか?」
「ええ、そのようです。しかし何がどうなって・・・」
「検証は後だ、試験を中止、武蔵野基地群に出動命令!!総司令権限を使っても構わない」
「了解、武蔵野基地群に通信、送ります!!」
制御を失った機体はそのままビルに突っ込んだ。衝撃のあと、自分の体の状態を確認する。
(骨は折れていないようだ)
しかし、何故機体が制御できなくなってしまったのだろうか、頭から落ちたヘッドセットは、見たところ無事らしい、
「システムが壊れたという訳では・・・!!」
そのとき、様々なことが同時に起こった。一つ目は右手の魔力回路が再起したこと、二つ目はその直後、ヘッドセットを付けていないにも関わらず機体との接続が回復したこと、三つ目は接続が回復して分かったことだが、触手がもう目の前に来ていたこと、四つ目は・・・周囲の時間が停滞した。
全てがゆっくりと動く。
機体も、
触手も、
俺の動きも。
ゆっくりと、しかし確実に動いていく。
まさかと思いつつ俺は慎重にスローモーションで飛来してくる触手を的確に(といってもこちらの動きも遅くなっているのだが)避ける。その瞬間、時が本来の速さになり、さっきまでいたビルが触手によって破壊されたのを確認すると、そのまま距離を取る。追撃、触手は六本
「避けて見せる!!」
速度を落とさず機体を微妙にずらし対処。触手が反転して正面から突っ込んでくる。
「思考爆発(シンキングバースト!!」
瞬間、時が再び停滞する。
いや、自分の思考が速くなっている。
爆発している。
右腕に内蔵されたブレードを展開し、スローモーションで突っ込んでくる触手を切り裂く。そして、時は元の速さに戻る。
「まちがいない。『眼』の能力だ」
眼、失われた右目の能力。眼が能力を持っているのでは無かったのか?
いや、それ以前になぜ俺は機体を制御できているんだ?ヘッドセットはつけていないのに。
「魔力回路が本来の機能を取り戻し、C‐MOS制御を奪ったのか!?」
ふと、足元から膨大な魔力を感じ、察す。
(魔力生成機関!?)
夢の機関、半永久機関。そしてだれもが製作に失敗した。
エネルギーの法則ガン無視である。
俺は妙案を思いつく。
もしかしたら、ワイバーン型に相当なダメージを、いや一撃で倒せるかもしれない。
成功率は高いとは言えないが、手段を選んでいる暇は無い。
最大速度で飛ぶ、ワイバーン型に対して十分な距離をとり、コントロールパネルを操作する。
(機体外魔力粒子放出量・・・これか)
操作すると機体各所から緑色の粒子が溢れだし、やがてあたり一面に広がる・・・というか、なんか広がるの早くないか?
魔力を粒子化するにしたって相当な魔力を必要とする筈だ。
(いったいどんな構造しているのだろう)
後で調べる必要がある。そうしている内にワイバーン型が突っ込んできた。
「うまくいくといいが・・・」
あの時は完全に事故だったからなあ、しかし、今回は魔力回路が、それも大量にあるから重要なことはいかに強く思考すること。そう思い、思考する。
「爆ぜろ!!」
瞬間、辺り一面が緑色の光に飲み込まれ、爆発する。
そのとき、何かが機体に突き刺さった。
俺の初陣は呆気なく終わった。
「よし、試験終了、お疲れ様・・・しかし初戦でワイバーン型を撃破、しかも一撃とは、なかなかやるじゃないか」
「ええまあ・・・でもまさか一撃で終わるとは思っても見ませんせしたよ」
4時間後、格納庫で左腕が無くなり、頭部にワイバーン型の残骸が突き刺さった1式の前で休憩しながらレオス総司令と会話していた。
「しかしあの最後の技、あれってもしかして魔力爆発?」
「ええそうです。前にちょっとした事件で偶然起こしてしまったんですよ。さっきのあれはそれを再現したんですよ」
さっきのようにあそこまで広範囲に爆発しなかったがな!!
「その時の経験を活用した訳か。まあでも、君、よくあそこまで戦えたね。なにか秘訣でも」
「極力考えないようにしているんですよ・・・そうでもしないと集中できないんで」
自分には一つの物事に対して考えすぎる節がある。そのせいか、二つ以上の事に対処するのが難しい。
「小説に例えるなら、状況描写を書きすぎてしまうんですよ」
だから、極力思考を短く、状況描写は必要最低限にする。あることを体得する途上において見つけた戦法だ。
「それに、前は魔改造したF-14戦闘機で常時マッハ2以上で戦っていましたからね、空中戦には慣れてます」
「・・・なるほど、なら尚更この職は向いているだろう」
向いているとは、どういうことか。直後、総司令が解答した。
「君は合格だよ」
総司令は笑顔でそう言った。
「・・・合格?」
「うん」
「えーとそれってつまり」
「そう。君はいまから戦略機動隊の一員だ」
・・・軍人になりました。
「これが、制服か・・・」
総合棟の人事課前の廊下、夕方。謎の情報端末らしきもの、IDカードと時計、(と新しいメガネ、いつの間に作っていた?)、そして拳銃とナイフを支給された。その後同時にもらった制服に着替え、制服を検分していた。(ぼろぼろになった学生服と壊れたメガネはそのまま引き取った。ちなみに、一式に付いていたフリークスの残骸の一部を記念品としてもらった。
大丈夫なのだろうか)
迷彩柄のズボンに白地のシャツ、そして緑色の上着。前のボタンはしめなくていいらしい。
(意外とラフだなおい・・・)
そう思いつつ、自分は自分の写真が貼られたIDカードを見る。
「戦略機動隊か・・・」
就職先が軍隊、それも正体不明の敵とロボットで戦う軍隊か・・・
「あいつが聞いたら、笑うのかな」
似合っているというのか。それとも、
(#葛葉_くずは_#には、葛葉なりの道があったんだろうな)
結果として、僕は要らないから、邪魔だから、殺したのだろう。まあ、そのことについてはなんにも恨んではいない。
だって、俺は生きているから。生きているのならば、問題はない。生きていればよかろうなのだ。
「でもまあ、殺されるという経験はもうしたくないがな!!」
「それは無理な話だなー。だって、私が光男君を殺すから」
聞き覚えのある声、振り向く前に拳銃を掴み、振り向
「相変わらずワンパターンなんだから、光男君」
けなかった。代わりに背後から抱きつかれ、両腕の自由を奪われ、俺の喉にナイフがあたる・・・が、そこまでは想定内だ。
体はただ添えるだけ。体を後ろに落とし、相手の足を引っ掛ける。
相手がバランスを崩したその隙に距離を置き、銃を構える。だが、その手が震える。
初めて銃を握ったからではない。ただ、相手が怖い、それだけだ。
「あーあー、逃げられちゃった・・・まあ、いつもやっていることだし、まあ元気そうでよかった。まだ心は壊れているけど」
ソイツはこっちに向かってきた。
「やあ、光男君」
そう、メガネをかけた黒髪の彼女は、笑顔でそう言った。
そこに居たのは、もう二度と会えなかったはずで、もう二度と会いたくなかった。
俺が最も恐れている。
「殺しに来たよ」
#黒崎_くろさき_##茜_あかね_#だった。
俺の楽しい異世界生活終了のお知らせ。
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