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序章 ある研究員の記録『ZERO』IS SLEEPING
第20話 山城基地統合司令区画
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「・・・光男君」
「なんだ?」
「殺しをするために私は今まで様々な施設に侵入してきたんだけど・・・だから言える」
茜は震えながら言った。
「これ、侵入するの無理」
「なんで侵入する前提なんだよ!!!」
しかしこいつにそこまで言わせるとは・・・まあしかし、場所が場所だけに。
「・・・確かに、そうでなくてはならないだろうしな」
5月8日 水曜日 3時34分 山城基地 Aプラント第三層
今までこのAプラントに入ったのは一度。俺がこの世界で目覚めた日、表層部の中央棟にある総司令執務室に入ったきりだ。
だが今回、俺達が来ているのはそこよりももっとヤバイ所だった。
目のゲート。いかにも厚そうな隔壁は恐らく対爆仕様だろう。そしてその前には、大口径機関銃を携行している体格が大きい歩兵が四名。四人とも装甲服を着ている。かなりの重武装だ。
それもその筈。隔壁にはこう書かれていた。
『統合司令区画』
山城基地。いやそれだけではない。
戦略機動隊全軍の作戦を統括、司令する所だ。
話は二日前、5月6日の事である。
俺は学校が終わった後すぐに、山城基地Gプラントにある戦技研の局長執務室に来るように言われていた。
それに従い、学校からそのまま山城基地戦技研の局長執務室に入るとそこにはエルメス局長とレオス総司令がいた。そして総司令に、
「ちょっと公安9課的な事をしてみない?」
と、言われたのが事の発端だ。
最初は何を言っているのかさっぱり分からなかったが、レオス総司令が、
「前の輸送作戦の事、覚えてる?」
と言って、納得がいった。
輸送作戦。
HAKの高級食材を輸送する名目で、HAKレバリスクベースからの『積み荷』を輸送、護衛をする作戦。
問題はその作戦進行中に起きた。
一つ目はその作戦進行中に起きたフリークスの襲撃。そして、そのフリークスが該当データ無しの未確認種(アンノウン)だったのだ。
二つ目は、
「MB(機動砲台)の乗っ取り」
「そう。未確認種の出現に対して投入したHAK製のMBに対しての乗っ取り。いやハッキング。問題はそれだ」
「どこから侵入されたか分かったんですか?」
「まだ何も。ただ、先月の襲撃といい、輸送作戦の件といい・・・ここ最近のフリークスの様子はおかしい」
「MBへのハッキングもフリークスが関与していると?」
「一応。だから色々と今対策打っているわけだけど」
山城型航空巡洋艦の件もそれか。
「今回はその一環だと思って欲しい。エルメス、光男君にあれを」
局長は頷き、一冊の冊子を机から取り出し俺に渡した。タイトルは、
「・・・『戦略情報ネットワーク、及びウィザードシステムの基本理論について』・・・これって!?」
「機密情報だ。くれぐれも扱いに注意するように朽木研究員」
そう言って、エルメス局長は椅子に座り、話し始めた。
「要は、君に戦略情報ネットワーク、及びウィザードシステムの『防壁』を作って欲しいんだ」
「防壁? 俺はハッキングなんか・・・あ」
「そう、君は魔力の専門家だ。その技術力は私が認める。あれは凄いものだ。君ならばあのハッキングについて何か対策を打てるかもしれない」
「しかし・・・システム関係はどうも・・・」
「安心しろ。情報局の支援もある。分からないことは今渡した本か、情報局のスタッフに聞けばいい」
「情報局の・・・どこか特別な所でも使うんですか、対策作りに」
「ああ・・・Aプラント『統合司令区画』を使う」
「・・・あのー、それって・・・」
「君の考えるとおりだよ、光男君」
総司令は言った。
「そこは戦略機動隊の『頭脳』だ・・・ここからの話は絶対に言わないように」
そう前置きして総司令は言った。
「実は戦略機動隊は創設以来、例の一件以前までハッキングを受けたことが無かったんだ」
「衝撃の事実ッ!!」
え? え? 何? ハッキングを受けたことが無い!? それってもしかして、
「それって・・・今までそんな事無かったから・・・何にも対策していなかったんですか!?」
「・・・恥ずかしい限りだけど」
「それじゃあ前のハッキングの時・・・」
「うん。何にも対抗しなかった。いやできなかった」
「・・・・・」
で、今に至る。
「だから光男君が戦略情報ネットワークとウィザードシステムのハッキング対策・・・というか『防壁』作りをすることになったと」
「まあな」
正確には『ハッキング』対策では無く『クラッキング』対策なんだが。まあいいや。
「でも・・・なんで私が?」
「俺のアシスタント。俺が局長に頼んどいた」
「・・・言うと思ったよ・・・あれ、でもそれじゃあアレサちゃんの方が適役なんじゃあ」
「あいつは今朝方、局長に拉致られたから」
「ああ・・・うん」
茜が暗い顔をした・・・そういやこいつ、パソコン苦手だったな。
「・・・で、入らないの?」
「いや、戦技研の特別スタッフが来るそうだからそれを待っているんだけど・・・」
いったい誰だろうか?
「・・・あれ、朽木君?」
名前を呼ばれた。俺は声のした方に振り返る。そこに居たのは、
「ラビー?」
戦技研の制服である白衣を着用した,金髪の背中に羽を生やした天使。ラビラトス・トラスナー。
「・・・もしかして、例の『防壁』作り。朽木君も参加するの?
「ああ・・・お前が戦技研の特別スタッフか?」
「うん。エルメス局長から呼ばれて・・・確か、光男君は魔力の専門家だったね」
「いや、専門家って言うほどではないが・・・お前はどうして?」
「いや、僕のお父さんがHAK国教会の総主教だから・・・自分で言うのもなんだけど、聖術関連に詳しくて」
「聖術・・・確か『霊子』を扱う術だったっけ? そこらへん詳しくないが・・・」
「大体あっているよ。それでお呼びがかかって・・・本当はお父さんが運営しているファノマ大聖堂がシステム関連に関わっているからだろうけど」
「ファノマ大聖堂? それってHAK国教会の」
・・・というか今、こいつ自分の父親の事を何て言った?
「HAK国教会の総主教?」
「うん。僕のお父さんはHAK国教会の総主教だよ」
「・・・・・」
もう、ツッコまない。
「まあ一応・・・よろしくね、朽木君、茜ちゃん!!」
「「え、あ、はい」」
・・・なんだろう、すごく輝いているんだけど。すごくやりにくいんだけど。
これが天使ってやつだろうか。
と言うかこいつ今、茜の事を茜『ちゃん』って言わなかったか!?
「・・・それはそうと光男君、さっきから聞きたかったんだけど、『防壁』ってどう作るの?」
「大変まともな質問だな」
俺は茜の質問に答える。
「分からん」
「ですよね」
予測されていた。けど結構重要だよなこれ、
「取り合えず・・・色々と試してみようと思っている。ラビー。聖術も試してみようと思う」
「分かった。僕の知識をみんなの役に立てるのなら・・・でも、さすがに人数少なくない?」
「・・・いや、最低でも後2人程来る」
「「2人?」」
その時、廊下の向こうから声が聞こえた。
「・・・全く、なんだこの地図は、いい加減すぎるぞ!!」
「それは浅葱が方向音痴なだけなんじゃあ・・・」
「・・・そうかもしれないな」
「認めるんだ・・・あっ、朽木先輩!!」
そいつはこちらを見つけると、挨拶してきた。俺もそれに答える。
「おう、交野」
「済まないな。こんな事に参加させて」
「いいですよ・・・僕だって自分の力を活用できるのなら」
「・・・ありがとう」
こいつは本当にいい奴だ。
「・・・気に食わんな」
黒髪ショートカットの女子。黒崎浅葱は嫌そうに言った。
「まったくなんだこの制服は。迷彩柄のズボンはいいが、上がTシャツだけとは、その上にに白衣だと? 私服ではないか」
「あー、ここでは既存の知識は生かされないのでそのつもりで」
「お前が働きやすそうな所だな」
「・・・・・」
こいつ本当に俺の事嫌ってるようだな・・・正直傷つく。
「でも、ありがとう浅葱。浅葱がいると僕も楽になるよ」
そう交野が言った瞬間、浅葱が頬を林檎のように赤らめた。
「べっ・・・別に勝のためなんか・・・勝のためなんかじゃないんだから!!」
(((うわあデレたよ)))
こいつ、勝に対してはすごく甘い。その上で殺しにかかってるのがまたアレなんだが。
「で、光男君。なんで私の愚妹を呼んだのって言うか・・・まあ当然だよね」
「ああ」
この2人に来てもらったのは訳がある。
「一応聞こう・・・あの後『声』は聞こえたか?」
「いいえ・・・浅葱は?」
「私も聞いていない・・・ただ、あの時聞いた声はなんと言うか・・・」
「何だ?」
「・・・分からない」
こいつが『分からない』と、言うか・・・
「・・・あのー朽木君。もしかして、浅葱ちゃんや交野君と知り合い?」
「そうだ」
そう言うのは浅葱だ。彼女は急に真剣な顔をして言い。
「私と勝はこいつの立てた作戦にk」
きれなかった。
何故なら、その首が黒髪ロングの女子・・・茜の手によってしっかりと掴まれていたからだ。片手で。
茜は満面の笑みで、
「・・・あまりおねーちゃんに殺しをさせないでくれるかな?」
「ハ・・・ハイ」
そう言った浅葱を、茜は片手で壁に投げ飛ばした。これでも姉妹である。
でも、例え同じ家の者でも敵とあらば躊躇無く殺せ、そう教え込まれたらしい。恐るべし黒崎家。
茜はその笑顔のままで、
「ラビラトス君」
「は、はい」
「私たちは、ただの知り合い。いいね?」
「う、うん」
天使を笑顔で納得させる殺し屋がここにいた。俺の彼女である。
「・・・終わったか?」
そう言うのは、
「エルメス局長」
「うーろんちゃ」
『声紋照合。終了。確認。ようこそ、エルメス・アーノイド戦技研局長』
ゲートの横にある開錠システム端末から局長が離れると、隔壁の中から何かが動く音がして、開いた。
「五重の対爆術式に十本のロックボルト。隔壁の素材には航空艦の先端部分に使われるものを使用している」
そう言って局長は歩き出し、俺達もそれに続いた。
隔壁の中は廊下だった。そして、その突き当たり、そこにある隔壁を局長がIDカードを通して開けると、
ケーブルだらけだった。
(((密林!?)))
壁や天井だけではない。床にもケーブルが増設されている。
俺達はその上に設置された橋の様な物を渡る。相当広い空間のようだ。
「前はもっと広かったんだがな・・・色々と増設した結果がこれだよ」
「増設しすぎでしょうに」
「まあな・・・ああ気をつけろ。ここから落ちると50メートルほど下まで落ちるから」
「ここ空中なんですか!?」
「ああ。高さ75メートル、円柱型の空間だここは。下にはウィザードコンピュータが密集している。落ちたら回収まで三日は最低でも要するぞ」
「・・・気をつけます」
その橋を渡りきった先は、また廊下だった。そして突き当たりに、大きな円型の隔壁があり、その周りを大量のロックボルトが囲んでいた。隔壁自体も高度な術式で守られているようだ。大規模魔方陣が描かれている。
「ここを抜けると『統合司令区画』だ。その前に、君達に確認しておく」
「「「?」」」
「多分、密林とかそんなレベルじゃない。もはや『迷宮』だ。覚悟するように」
「「「え、あ、はい」」」
『迷宮』? どういうことだ?
そう思っているうちに、局長が隔壁横の操作パネルを操作した。
『汝、迷宮に入る覚悟はあるか?』
「無い」
(((無いんだ・・・)))
その時、隔壁のボルトが動き出し、隔壁から引き抜かれていった。
続いて隔壁の魔方陣が光り、動き出して、消えた。そして隔壁がせり出し、開いた。
隔壁が開くと、そこは迷宮だった。
「なんだ?」
「殺しをするために私は今まで様々な施設に侵入してきたんだけど・・・だから言える」
茜は震えながら言った。
「これ、侵入するの無理」
「なんで侵入する前提なんだよ!!!」
しかしこいつにそこまで言わせるとは・・・まあしかし、場所が場所だけに。
「・・・確かに、そうでなくてはならないだろうしな」
5月8日 水曜日 3時34分 山城基地 Aプラント第三層
今までこのAプラントに入ったのは一度。俺がこの世界で目覚めた日、表層部の中央棟にある総司令執務室に入ったきりだ。
だが今回、俺達が来ているのはそこよりももっとヤバイ所だった。
目のゲート。いかにも厚そうな隔壁は恐らく対爆仕様だろう。そしてその前には、大口径機関銃を携行している体格が大きい歩兵が四名。四人とも装甲服を着ている。かなりの重武装だ。
それもその筈。隔壁にはこう書かれていた。
『統合司令区画』
山城基地。いやそれだけではない。
戦略機動隊全軍の作戦を統括、司令する所だ。
話は二日前、5月6日の事である。
俺は学校が終わった後すぐに、山城基地Gプラントにある戦技研の局長執務室に来るように言われていた。
それに従い、学校からそのまま山城基地戦技研の局長執務室に入るとそこにはエルメス局長とレオス総司令がいた。そして総司令に、
「ちょっと公安9課的な事をしてみない?」
と、言われたのが事の発端だ。
最初は何を言っているのかさっぱり分からなかったが、レオス総司令が、
「前の輸送作戦の事、覚えてる?」
と言って、納得がいった。
輸送作戦。
HAKの高級食材を輸送する名目で、HAKレバリスクベースからの『積み荷』を輸送、護衛をする作戦。
問題はその作戦進行中に起きた。
一つ目はその作戦進行中に起きたフリークスの襲撃。そして、そのフリークスが該当データ無しの未確認種(アンノウン)だったのだ。
二つ目は、
「MB(機動砲台)の乗っ取り」
「そう。未確認種の出現に対して投入したHAK製のMBに対しての乗っ取り。いやハッキング。問題はそれだ」
「どこから侵入されたか分かったんですか?」
「まだ何も。ただ、先月の襲撃といい、輸送作戦の件といい・・・ここ最近のフリークスの様子はおかしい」
「MBへのハッキングもフリークスが関与していると?」
「一応。だから色々と今対策打っているわけだけど」
山城型航空巡洋艦の件もそれか。
「今回はその一環だと思って欲しい。エルメス、光男君にあれを」
局長は頷き、一冊の冊子を机から取り出し俺に渡した。タイトルは、
「・・・『戦略情報ネットワーク、及びウィザードシステムの基本理論について』・・・これって!?」
「機密情報だ。くれぐれも扱いに注意するように朽木研究員」
そう言って、エルメス局長は椅子に座り、話し始めた。
「要は、君に戦略情報ネットワーク、及びウィザードシステムの『防壁』を作って欲しいんだ」
「防壁? 俺はハッキングなんか・・・あ」
「そう、君は魔力の専門家だ。その技術力は私が認める。あれは凄いものだ。君ならばあのハッキングについて何か対策を打てるかもしれない」
「しかし・・・システム関係はどうも・・・」
「安心しろ。情報局の支援もある。分からないことは今渡した本か、情報局のスタッフに聞けばいい」
「情報局の・・・どこか特別な所でも使うんですか、対策作りに」
「ああ・・・Aプラント『統合司令区画』を使う」
「・・・あのー、それって・・・」
「君の考えるとおりだよ、光男君」
総司令は言った。
「そこは戦略機動隊の『頭脳』だ・・・ここからの話は絶対に言わないように」
そう前置きして総司令は言った。
「実は戦略機動隊は創設以来、例の一件以前までハッキングを受けたことが無かったんだ」
「衝撃の事実ッ!!」
え? え? 何? ハッキングを受けたことが無い!? それってもしかして、
「それって・・・今までそんな事無かったから・・・何にも対策していなかったんですか!?」
「・・・恥ずかしい限りだけど」
「それじゃあ前のハッキングの時・・・」
「うん。何にも対抗しなかった。いやできなかった」
「・・・・・」
で、今に至る。
「だから光男君が戦略情報ネットワークとウィザードシステムのハッキング対策・・・というか『防壁』作りをすることになったと」
「まあな」
正確には『ハッキング』対策では無く『クラッキング』対策なんだが。まあいいや。
「でも・・・なんで私が?」
「俺のアシスタント。俺が局長に頼んどいた」
「・・・言うと思ったよ・・・あれ、でもそれじゃあアレサちゃんの方が適役なんじゃあ」
「あいつは今朝方、局長に拉致られたから」
「ああ・・・うん」
茜が暗い顔をした・・・そういやこいつ、パソコン苦手だったな。
「・・・で、入らないの?」
「いや、戦技研の特別スタッフが来るそうだからそれを待っているんだけど・・・」
いったい誰だろうか?
「・・・あれ、朽木君?」
名前を呼ばれた。俺は声のした方に振り返る。そこに居たのは、
「ラビー?」
戦技研の制服である白衣を着用した,金髪の背中に羽を生やした天使。ラビラトス・トラスナー。
「・・・もしかして、例の『防壁』作り。朽木君も参加するの?
「ああ・・・お前が戦技研の特別スタッフか?」
「うん。エルメス局長から呼ばれて・・・確か、光男君は魔力の専門家だったね」
「いや、専門家って言うほどではないが・・・お前はどうして?」
「いや、僕のお父さんがHAK国教会の総主教だから・・・自分で言うのもなんだけど、聖術関連に詳しくて」
「聖術・・・確か『霊子』を扱う術だったっけ? そこらへん詳しくないが・・・」
「大体あっているよ。それでお呼びがかかって・・・本当はお父さんが運営しているファノマ大聖堂がシステム関連に関わっているからだろうけど」
「ファノマ大聖堂? それってHAK国教会の」
・・・というか今、こいつ自分の父親の事を何て言った?
「HAK国教会の総主教?」
「うん。僕のお父さんはHAK国教会の総主教だよ」
「・・・・・」
もう、ツッコまない。
「まあ一応・・・よろしくね、朽木君、茜ちゃん!!」
「「え、あ、はい」」
・・・なんだろう、すごく輝いているんだけど。すごくやりにくいんだけど。
これが天使ってやつだろうか。
と言うかこいつ今、茜の事を茜『ちゃん』って言わなかったか!?
「・・・それはそうと光男君、さっきから聞きたかったんだけど、『防壁』ってどう作るの?」
「大変まともな質問だな」
俺は茜の質問に答える。
「分からん」
「ですよね」
予測されていた。けど結構重要だよなこれ、
「取り合えず・・・色々と試してみようと思っている。ラビー。聖術も試してみようと思う」
「分かった。僕の知識をみんなの役に立てるのなら・・・でも、さすがに人数少なくない?」
「・・・いや、最低でも後2人程来る」
「「2人?」」
その時、廊下の向こうから声が聞こえた。
「・・・全く、なんだこの地図は、いい加減すぎるぞ!!」
「それは浅葱が方向音痴なだけなんじゃあ・・・」
「・・・そうかもしれないな」
「認めるんだ・・・あっ、朽木先輩!!」
そいつはこちらを見つけると、挨拶してきた。俺もそれに答える。
「おう、交野」
「済まないな。こんな事に参加させて」
「いいですよ・・・僕だって自分の力を活用できるのなら」
「・・・ありがとう」
こいつは本当にいい奴だ。
「・・・気に食わんな」
黒髪ショートカットの女子。黒崎浅葱は嫌そうに言った。
「まったくなんだこの制服は。迷彩柄のズボンはいいが、上がTシャツだけとは、その上にに白衣だと? 私服ではないか」
「あー、ここでは既存の知識は生かされないのでそのつもりで」
「お前が働きやすそうな所だな」
「・・・・・」
こいつ本当に俺の事嫌ってるようだな・・・正直傷つく。
「でも、ありがとう浅葱。浅葱がいると僕も楽になるよ」
そう交野が言った瞬間、浅葱が頬を林檎のように赤らめた。
「べっ・・・別に勝のためなんか・・・勝のためなんかじゃないんだから!!」
(((うわあデレたよ)))
こいつ、勝に対してはすごく甘い。その上で殺しにかかってるのがまたアレなんだが。
「で、光男君。なんで私の愚妹を呼んだのって言うか・・・まあ当然だよね」
「ああ」
この2人に来てもらったのは訳がある。
「一応聞こう・・・あの後『声』は聞こえたか?」
「いいえ・・・浅葱は?」
「私も聞いていない・・・ただ、あの時聞いた声はなんと言うか・・・」
「何だ?」
「・・・分からない」
こいつが『分からない』と、言うか・・・
「・・・あのー朽木君。もしかして、浅葱ちゃんや交野君と知り合い?」
「そうだ」
そう言うのは浅葱だ。彼女は急に真剣な顔をして言い。
「私と勝はこいつの立てた作戦にk」
きれなかった。
何故なら、その首が黒髪ロングの女子・・・茜の手によってしっかりと掴まれていたからだ。片手で。
茜は満面の笑みで、
「・・・あまりおねーちゃんに殺しをさせないでくれるかな?」
「ハ・・・ハイ」
そう言った浅葱を、茜は片手で壁に投げ飛ばした。これでも姉妹である。
でも、例え同じ家の者でも敵とあらば躊躇無く殺せ、そう教え込まれたらしい。恐るべし黒崎家。
茜はその笑顔のままで、
「ラビラトス君」
「は、はい」
「私たちは、ただの知り合い。いいね?」
「う、うん」
天使を笑顔で納得させる殺し屋がここにいた。俺の彼女である。
「・・・終わったか?」
そう言うのは、
「エルメス局長」
「うーろんちゃ」
『声紋照合。終了。確認。ようこそ、エルメス・アーノイド戦技研局長』
ゲートの横にある開錠システム端末から局長が離れると、隔壁の中から何かが動く音がして、開いた。
「五重の対爆術式に十本のロックボルト。隔壁の素材には航空艦の先端部分に使われるものを使用している」
そう言って局長は歩き出し、俺達もそれに続いた。
隔壁の中は廊下だった。そして、その突き当たり、そこにある隔壁を局長がIDカードを通して開けると、
ケーブルだらけだった。
(((密林!?)))
壁や天井だけではない。床にもケーブルが増設されている。
俺達はその上に設置された橋の様な物を渡る。相当広い空間のようだ。
「前はもっと広かったんだがな・・・色々と増設した結果がこれだよ」
「増設しすぎでしょうに」
「まあな・・・ああ気をつけろ。ここから落ちると50メートルほど下まで落ちるから」
「ここ空中なんですか!?」
「ああ。高さ75メートル、円柱型の空間だここは。下にはウィザードコンピュータが密集している。落ちたら回収まで三日は最低でも要するぞ」
「・・・気をつけます」
その橋を渡りきった先は、また廊下だった。そして突き当たりに、大きな円型の隔壁があり、その周りを大量のロックボルトが囲んでいた。隔壁自体も高度な術式で守られているようだ。大規模魔方陣が描かれている。
「ここを抜けると『統合司令区画』だ。その前に、君達に確認しておく」
「「「?」」」
「多分、密林とかそんなレベルじゃない。もはや『迷宮』だ。覚悟するように」
「「「え、あ、はい」」」
『迷宮』? どういうことだ?
そう思っているうちに、局長が隔壁横の操作パネルを操作した。
『汝、迷宮に入る覚悟はあるか?』
「無い」
(((無いんだ・・・)))
その時、隔壁のボルトが動き出し、隔壁から引き抜かれていった。
続いて隔壁の魔方陣が光り、動き出して、消えた。そして隔壁がせり出し、開いた。
隔壁が開くと、そこは迷宮だった。
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フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
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