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4.儀式と婚約発表と噂
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そんな第四皇子だったが、どんなに見放されていようとも、表舞台へ立たなくてはならない時期が訪れた。
十八の成人の儀だ。皇族が成人するときは、この儀式を必ず行う。皇位継承権のある者として、その証となる冠を授かるのだ。
そして今回の成人の儀は異例だった。婚約発表も兼ねるという。いつの間にか決まっていた婚約者にも驚きだが、どちらも本来国を挙げての式典のはず。それを一度で済ませるというのだ。
どれだけ第四皇子はデキが悪いというのか。そんな皇子を、きっと王命で無理矢理押しつけられたであろう令嬢に、同情を禁じ得なかった。
そんな第四皇子だが、さすがにその時ばかりはキチンとしているだろうと、興味を上手に隠して、貴族たちは儀式に集まる。そして、期待を裏切ってと言うべきか、裏切らないと言うべきか、その姿に、呆れ、或いは安堵をした。
主役として登場したカダージュは、皇族らしからぬ姿勢だった。折角の衣装も台無しにするかのように、背を丸めて歩き、自信のなさそうな足下は覚束ず、俯いているため髪が顔にかかってよく見えない。儀式で述べる口上も、ボソボソと何を言っているか聞き取れないものだった。
貴族たちは嗤う。いつもと変わらないカダージュを。
そして婚約発表では、婚約者として紹介されたメリオラーザの斜め前に立っていたことにも、貴族たちは嗤った。
「何だ、あれは。自分の方が偉いとでも言いたいのか」
「婚約してやったとでも思っているのではないか?愚かしい」
「大人しそうなご令嬢だ。ああいうタイプには強く出られるのだろうな。恥知らずな」
「腐っても皇族。ティシモ家と繋がりを作れば、皇家とパイプが出来るやもしれぬ」
「第四皇子を押しつけたのだ。皇家もティシモ家には甘くならざるを得んのではないか?」
ティシモ家やメリオラーザに同情しつつ、貴族たちのそれぞれの思惑が交錯していた。
ヒオニアリア帝国は、長子が皇帝になるわけではない。血を継ぐ皇子の中から、一番相応しい者が継ぐ。あらゆる条件の中で、皇太子は決められる。後ろ盾もその一つ。野心ある者はその権力を存分に発揮し、狙いの皇子を皇太子にするべく尽力する。そのため、皇子たちは、見定めなくてはならない。自身の後ろ盾になるに、相応しい者たちを。皇子たちは、第四皇子カダージュの後ろ盾になろうとする者たちを、特によく見ていた。
式典後の夜会に、カダージュの姿はない。主役であるにもかかわらず、面倒くさがって引きこもったらしい。皇子たちと言い争う姿が目撃されている。と言っても、相変わらずカダージュは何を言っているかわからなかったが。
「今日くらい最後までいることも出来ないのか」
そう言う第一皇子レヴェージュに、何か言い返す、ということを何度か繰り返し、
「もういい。わかった」
レヴェージュがそう言うと、皇子たちもカダージュの元を去ったという。
その事実に、また貴族たちは嗤うのだった。
*~*~*~*~*
儀式の一月後、第四皇子カダージュが皇位継承権を返上する、というニュースが駆け巡る。
皇位の継承は、成人の儀を行い、継承権を得た上で、継続するか返上するかを決める。継続であれば、皇太子が決まるまで切磋琢磨し、破れたとしても、継承権は残るため、皇帝に万が一があった場合の第二、第三の皇帝候補となる。そんな重責、カダージュには無理だと返上させられたのだろうと囁かれた。
一方、返上をした者は、結婚を機に一代限りの大公の爵位が与えられる。
しかし、カダージュへの爵位について、揉めているという噂も同時に流れた。爵位をもっと下げる、というものだ。この噂に、悪意ある者たちは嗤う。
アレに、大公など過ぎたもの。皇族もそれをわかって身分を抑えようとしているのだ。そもそもアレに爵位などいらないのではないか。
様々な思惑が蠢く中、第一皇子レヴェージュの生誕祭で、それは起きた。
*つづく*
十八の成人の儀だ。皇族が成人するときは、この儀式を必ず行う。皇位継承権のある者として、その証となる冠を授かるのだ。
そして今回の成人の儀は異例だった。婚約発表も兼ねるという。いつの間にか決まっていた婚約者にも驚きだが、どちらも本来国を挙げての式典のはず。それを一度で済ませるというのだ。
どれだけ第四皇子はデキが悪いというのか。そんな皇子を、きっと王命で無理矢理押しつけられたであろう令嬢に、同情を禁じ得なかった。
そんな第四皇子だが、さすがにその時ばかりはキチンとしているだろうと、興味を上手に隠して、貴族たちは儀式に集まる。そして、期待を裏切ってと言うべきか、裏切らないと言うべきか、その姿に、呆れ、或いは安堵をした。
主役として登場したカダージュは、皇族らしからぬ姿勢だった。折角の衣装も台無しにするかのように、背を丸めて歩き、自信のなさそうな足下は覚束ず、俯いているため髪が顔にかかってよく見えない。儀式で述べる口上も、ボソボソと何を言っているか聞き取れないものだった。
貴族たちは嗤う。いつもと変わらないカダージュを。
そして婚約発表では、婚約者として紹介されたメリオラーザの斜め前に立っていたことにも、貴族たちは嗤った。
「何だ、あれは。自分の方が偉いとでも言いたいのか」
「婚約してやったとでも思っているのではないか?愚かしい」
「大人しそうなご令嬢だ。ああいうタイプには強く出られるのだろうな。恥知らずな」
「腐っても皇族。ティシモ家と繋がりを作れば、皇家とパイプが出来るやもしれぬ」
「第四皇子を押しつけたのだ。皇家もティシモ家には甘くならざるを得んのではないか?」
ティシモ家やメリオラーザに同情しつつ、貴族たちのそれぞれの思惑が交錯していた。
ヒオニアリア帝国は、長子が皇帝になるわけではない。血を継ぐ皇子の中から、一番相応しい者が継ぐ。あらゆる条件の中で、皇太子は決められる。後ろ盾もその一つ。野心ある者はその権力を存分に発揮し、狙いの皇子を皇太子にするべく尽力する。そのため、皇子たちは、見定めなくてはならない。自身の後ろ盾になるに、相応しい者たちを。皇子たちは、第四皇子カダージュの後ろ盾になろうとする者たちを、特によく見ていた。
式典後の夜会に、カダージュの姿はない。主役であるにもかかわらず、面倒くさがって引きこもったらしい。皇子たちと言い争う姿が目撃されている。と言っても、相変わらずカダージュは何を言っているかわからなかったが。
「今日くらい最後までいることも出来ないのか」
そう言う第一皇子レヴェージュに、何か言い返す、ということを何度か繰り返し、
「もういい。わかった」
レヴェージュがそう言うと、皇子たちもカダージュの元を去ったという。
その事実に、また貴族たちは嗤うのだった。
*~*~*~*~*
儀式の一月後、第四皇子カダージュが皇位継承権を返上する、というニュースが駆け巡る。
皇位の継承は、成人の儀を行い、継承権を得た上で、継続するか返上するかを決める。継続であれば、皇太子が決まるまで切磋琢磨し、破れたとしても、継承権は残るため、皇帝に万が一があった場合の第二、第三の皇帝候補となる。そんな重責、カダージュには無理だと返上させられたのだろうと囁かれた。
一方、返上をした者は、結婚を機に一代限りの大公の爵位が与えられる。
しかし、カダージュへの爵位について、揉めているという噂も同時に流れた。爵位をもっと下げる、というものだ。この噂に、悪意ある者たちは嗤う。
アレに、大公など過ぎたもの。皇族もそれをわかって身分を抑えようとしているのだ。そもそもアレに爵位などいらないのではないか。
様々な思惑が蠢く中、第一皇子レヴェージュの生誕祭で、それは起きた。
*つづく*
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