あなたは一体誰ですか?

らがまふぃん

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番外編 闘技大会 中編

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 皇族が入場してきたことにより、生誕祭で見聞きしたものが夢ではなかったと知る。

 淡い水色の髪が高く結い上げられ、いつも顔を隠していた前髪も両サイドに流され邪魔をしていない。皇家の証である金の瞳は恐ろしいほど怜悧で、けれど隣の妻を見るときは、そこに愛しさがハッキリと見て取れる。目を瞠るほど美しい皇族の中でも、一際美しかった。

 後悔と嫉妬にまみれた女性陣の視線と、格下だと思っていた人物が実はとんでもないと知った男性陣のマズイという視線。

 「この国は、愚か者が多いなあ」

 カダージュの言葉に、レヴェージュは苦笑いをする。

 「そう言うな。どこの国も似たようなものだ」
 「そうですよ。まあ、それも上手に使っていける手腕を身に付ければいいのです」

 セダージュが笑うと、カダージュは背もたれに背を預けてだらしなく座る。

 「セダ兄様は優しすぎ。いつか足下を掬われちゃうよ」

 べ、と舌を出すカダージュに、セダージュは微笑む。

 「そうなったら、カダージュは助けてくれますか?」
 「そうならないように動くよ」

 ム、と頬を膨らませてそっぽを向く可愛い末っ子に、三人の皇子は笑った。
 そんな皇子たちの様子を、やはりまだどこか信じられない様子で、周囲は茫然と見つめていた。

………
……


 闘技大会は刃を落とした模擬剣で行う。死ぬことはないが、当然打撲や骨折はする。試合は四つのブロックに別れ、トーナメント戦を行い、各ブロック上位四名が、決勝トーナメントへと進む方式だ。皇子たちは各ブロックに一人ずつ。

 「じゃあリオ、行ってくるね」
 「あの、お怪我だけは、本当に、くれぐれも」

 そこまで言うと、カダージュは唇の側へくちづける。

 「約束は、守るよ、リオ」

 柔らかく笑うカダージュに、メリオラーザは頬を染め、心配そうに、それでも期待をするように頷いた。

 「いってらっしゃいませ、カダ様」

 メリオラーザをギュッと一度抱き締めると、名残惜しそうに離れた。


 カダージュの初戦は、伯爵家次男。

 「今まで本性を隠していたなんてお人が悪い。ですが、剣は机上とは違いますからね。すぐに降参することになるかもしれませんが、勝負事ですから、恨まないでくださいよ」

 この春、見習いから第三騎士団に配属され、メキメキと頭角を現わしているという噂の人物だ。自信を持つのは良いことだ。
 開始の合図と共に、容赦なく突っ込んできた男に、カダージュはまだ構えすら取れていない。

 「もらったあ!!」

 しっかり体重の乗った剣が迫る。

 だが。
 カダージュの右手が振り抜かれている。

 「ふふ。どうしたの?」

 あっさりと弾かれた剣に、男は茫然とする。笑うカダージュに、男は歯ぎしりをした。

 「うわああああああ!!」

 男の猛攻にも、カダージュは最小限の動きでいなす。
 全力の攻撃が難なく躱されることに、焦燥を滲ませる男は、やがて攻撃の手を止めた。全身で息をする男に、カダージュは息一つ乱さず言った。

 「ねえ、おまえの“すぐ”ってどのくらい?時間の感覚って人それぞれだからさあ」

 クスクスと嗤うカダージュ。
 男はギラリと睨みつける。

 「でもね、僕からしたら、これだけの時間が経っていてまだ、おまえの“すぐ”ではないのなら、おまえはどれだけ仕事が出来ないのかなって思うよ」

 ス、とカダージュは嗤いを潜めた。

 「時間は有限だ」

 その言葉と同時に、男は吹き飛ばされた。



 「カダ様、お怪我は、お怪我はありませんか?」

 真っ先に自分の身を案じてくれる、愛しい愛しい妻に、カダージュは心からの笑みを零すと、愛しく抱き締める。

 「リオ、大丈夫だよ。ありがとう、心配してくれて」

 顔中にくちづけられ、メリオラーザは真っ赤だ。

 「ねえリオ。どうだった、僕の戦い。って言っても、殆ど何もしていないけど」
 「いいえ!あれほどの攻撃を躱せることが凄いです!あの、す、素敵、でした」

 興奮気味に褒めていたメリオラーザの声が、最後だけカダージュに聞こえるように、ぽしょりと囁かれた。
 カダージュは顔を覆って項垂れる。

 「可愛すぎてツラい。ズルい、リオ。ここじゃ、手を出せないのに」
 「ほぇ?」
 「ううん、何でもない。帰ったら、覚悟してね」
 「へえぇ?」



 そして、二回戦の対戦相手は。

 「あは。わかるよぉ。ティシモ家リオの実家をカモにしようとした家だもの」

 カダージュとの婚約発表後、ティシモ家に擦り寄ってきた商家の一つだ。

 「おまえのことは、婚約者も女性遍歴も初恋の相手もわかるよ」

 冷たく睨んで剣を一閃。男は倒れ伏した。



*後編に続く*
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