婚約破棄をしようとしたら

らがまふぃん

文字の大きさ
13 / 17

番外編 狂愛1

しおりを挟む
 アウラはジュエルに、そのすべてを捧げると誓った。



 アウラは魔法の国において、劣等生だった。魔力量も乏しく、家も貧しい。周りにバカにされ続け、見下され続けた。それでも同族として、殺されることはなかった。ただ、魔法の実験台にされ続ける日々。最後に必ず治癒魔法を施されるが、痛みのない日はなかった。

 ある日、本当に偶然、遠目ではあるが覇王ジュエルを見た。

 すべてに圧倒された。

 いつも自分を見下している者たちも、恍惚とジュエルを見つめていた。

 その日を堺に、アウラは十六歳成人を迎えたら、ジュエルに自分のすべてをもらってもらうことを夢見た。
 同族殺しは禁忌だが、望んでその身を差し出すことは容認されている。

 ジュエルの魔力の微かなものになれたら。

 それだけを、ジュエルの微かな一部になることだけを、夢見た。
 成人を迎えるとき、自分のような底辺の人間でも一度だけ、覇王に挨拶が出来る。

 その日が、アウラの最期の日となる。

 ジュエルの微かな一部となるために。


*~*~*~*~*


 今日は自分の誕生日。十六歳の、誕生日。

 「そう。私は、また、生まれる」

 覇王ジュエルの一部となって、生まれ変わる。

 一瞬で使われてしまう魔力でしかないが、僅かにでもジュエルと交われると思うだけで、こんなにも幸せでいいのだろうかと怖くなった。

 王都に着くと、アウラは街の人々から、うっとりとした目で見つめられた。途中の街々でもそうだった。けれどそのなかで、時々ギョッとした顔をする人もいた。
 好意的に見てくれる人もいるから大丈夫だと思ったけれど、驚かれることもある。驚く人にとっては、自分の格好はそんなにみすぼらしいだろうか。

 生まれ育った村で虐げられていたアウラは、自分の容姿に気付いていなかった。
 アウラはこの日のために、自分に出来る精一杯の恥ずかしくない服を買うために、頑張った。王都に入る前に身綺麗にし、丁寧にその服を着た。

 王都では、これでもダメだったのかもしれない。

 それでもアウラは行くしかなかった。

 自分の精一杯を、見ていただくしかない。


………
……



 王城に着くと、門番が明らかに動揺している。ヒソヒソともう一人と話をし、頷き合うと、一人が中へ駆けて行く。

 「申し訳ないのですが、このままお待ちいただけますか?」

 こんな自分にも丁寧に話してくれるなんて、王都は格が違うな、とアウラは思った。門番の顔色が悪いことには気付かない。
 少しすると、何も知らないアウラでさえ、質が高いとわかる服を着た男性が現れた。その男は驚きに目を開くと、大きく頷いた。

 「お待たせいたしました。私は宰相のハデスと申します。王がお待ちです。こちらへどうぞ」

 宰相の言葉に、アウラは茫然とする。この国のナンバー2ではないか。そんな凄い人が案内をするなんて、と放心状態でアウラは後ろをついて行った。


………
……



 アウラが連れて来られたのは応接室。通常成人の挨拶は玉座の間で行われるのだが、アウラが知るはずもない。ここで待つよう言われ、アウラはソファの側に立っていた。そうして暫くすると、扉が開かれた。

 「おや。立って待っているとは感心だ。だが良い。楽にせよ」

 焦がれて止まない、覇王ジュエルがいた。



*2へつづく*
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。

当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。 しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。 最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。 それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。 婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。 だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。 これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。

【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。

銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。 しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。 しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……

たいした苦悩じゃないのよね?

ぽんぽこ狸
恋愛
 シェリルは、朝の日課である魔力の奉納をおこなった。    潤沢に満ちていた魔力はあっという間に吸い出され、すっからかんになって体が酷く重たくなり、足元はふらつき気分も悪い。  それでもこれはとても重要な役目であり、体にどれだけ負担がかかろうとも唯一無二の人々を守ることができる仕事だった。  けれども婚約者であるアルバートは、体が自由に動かない苦痛もシェリルの気持ちも理解せずに、幼いころからやっているという事実を盾にして「たいしたことない癖に、大袈裟だ」と罵る。  彼の友人は、シェリルの仕事に理解を示してアルバートを窘めようとするが怒鳴り散らして聞く耳を持たない。その様子を見てやっとシェリルは彼の真意に気がついたのだった。

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

【完結】顔が良ければそれでいいと思っていたけれど、気づけば彼に本気で恋していました。

朝日みらい
恋愛
魔物を討伐し国を救った若き魔術師アリア・フェルディナンド。 国王から「望むものを何でも与える」と言われた彼女が選んだ褒美は―― 「国一番の美男子を、夫にください」 という前代未聞のひと言だった。 急遽開かれた婿候補サロンで、アリアが一目で心を奪われたのは、 “夜の街の帝王”と呼ばれる美貌の青年ルシアン・クロード。 女たらし、金遣いが荒い、家の恥―― そんな悪評だらけの彼を、アリアは迷わず指名する。 「顔が好きだからです」 直球すぎる理由に戸惑うルシアン。 だが彼には、誰にも言えない孤独と過去があった。 これは、 顔だけで選んだはずの英雄と、 誰にも本気で愛されたことのない美貌の青年が、 “契約婚”から始める恋の物語。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

【完結】あなたのいない世界、うふふ。

やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。 しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。 とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。 =========== 感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。 4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。

処理中です...