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終.茉莉花2
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「せめておまえの手で殺してくれ」
その手に導かれ触れた首筋は、ドクンドクンと脈打っていた。
「なぜでしょうか」
茉莉花の言葉に、匡臣は首を傾げる。
「誰を殺しても、何とも思わないのです」
匡臣の手が離れても、茉莉花はその首に手を添えたままだ。
「せめてオレを殺した日は、オレだけを思ってくれ」
さらりと茉莉花の髪を撫でる。頼む。そう、切なげに目を細める。
茉莉花は首を横に振る。
「何とも思わないのに」
茉莉花は首筋に添えた手を首の後ろに回して匡臣を引き寄せた。
バランスを崩して拘束していたもう片方の手も外れる。茉莉花の胸に倒れ込むと、両手で頭を抱き締められた。
「あなた様が死ぬことを考えると」
ギュッと抱き締める腕に力が入る。
「怖い」
匡臣は目を見開いた。
「この気持ちがなんなのか、自由をいただいたときに考えていました。でも」
茉莉花はクルリと匡臣と自分の位置を入れ替えた。匡臣の顔の横に、自分の両手をおいて覗き込むように見つめた。
「わからない」
「茉莉花」
苦しそうに眉を寄せる茉莉花の頬に手を添える。
「あなた様といると、ここが苦しいのです」
茉莉花は自分の胸に手を当てる。
「あなた様と離れても、苦しかった。あなた様と再会したら、もっと苦しくなった。なぜ?あなた様に触れられると、名前を呼ばれると、なぜ、こんなに、苦しいのにっ」
嬉しいのですか。
匡臣は肘をついて上体を起こし、頬に添えていた手で茉莉花の頭を引き寄せると、その唇を自身のそれで塞いだ。茉莉花はその唇から逃れる。
「いやだ、怖い、やだ」
「大丈夫だ、茉莉花」
クルリと、また二人の位置が変わる。
「大丈夫だよ、茉莉花」
ポロポロと涙を零す茉莉花に、優しく触れるだけのキスを繰り返す。何度も何度も。
「茉莉花、怖くなくなるまでキスをしよう」
「やぁ」
「茉莉花、怖くなくなるまで、体を繋げよう」
「やだぁ」
「茉莉花、その気持ちがなんなのか、わかるまで抱き締めてあげる」
「やぁ」
「茉莉花、愛してる。愛してるよ、オレの茉莉花」
*~*~*~*~*
茉莉花自身気付いていないその愛を手に入れた匡臣は、ますます茉莉花に執着した。
誰の目にも触れさせない。自分以外を見て欲しくない。
広すぎる屋敷を、茉莉花の鳥かごにした。
屋敷の敷地内であれば、自由を与えた。
使用人は最小限にし、徹底的に茉莉花との接触を禁じた。
茉莉花の世界はオレだけでいい。
美しい月夜の晩、縁側で茉莉花と二人、月を見ていた。
「あの偽名、どうやってつけたの?」
ふと、聞きそびれていたことを思い出す。
「匡臣様が用意してくださったマンションの、郵便受けにありました。姓と名をそれぞれ、最初に目に入ったもので」
「茉莉花の名前は、嫌だった?」
顔を覗き込むと、茉莉花は視線を逸らすように俯いた。
「あ、の、」
躊躇いがちに言葉を紡ぐ。
「まさ、おみ、様、以外に、呼ばれたく、ありません、でした」
匡臣は自身のそれで茉莉花の唇を塞いだ。そのままゆっくり倒れ込む。両手の指を絡め、唾液すら溢れて逃さないよう深く深く。
「茉莉花の花は、小さな可憐な白い花。その香りは、神の贈り物と言われている」
ようやく離れた唇は、まだまだこれから、というように、額に、瞼に、頬に、首筋に、何度も触れる。
「茉莉花の存在は、正に神からオレへの贈り物だったんだ」
*おわり*
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
あまり深く考えずにお読みいただければと書いた作品です。
なにか思うところがありましても、ご容赦くださいませ。
セレブとのめくるめく恋愛話を想像されていた方には申し訳ありませんでした。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
その手に導かれ触れた首筋は、ドクンドクンと脈打っていた。
「なぜでしょうか」
茉莉花の言葉に、匡臣は首を傾げる。
「誰を殺しても、何とも思わないのです」
匡臣の手が離れても、茉莉花はその首に手を添えたままだ。
「せめてオレを殺した日は、オレだけを思ってくれ」
さらりと茉莉花の髪を撫でる。頼む。そう、切なげに目を細める。
茉莉花は首を横に振る。
「何とも思わないのに」
茉莉花は首筋に添えた手を首の後ろに回して匡臣を引き寄せた。
バランスを崩して拘束していたもう片方の手も外れる。茉莉花の胸に倒れ込むと、両手で頭を抱き締められた。
「あなた様が死ぬことを考えると」
ギュッと抱き締める腕に力が入る。
「怖い」
匡臣は目を見開いた。
「この気持ちがなんなのか、自由をいただいたときに考えていました。でも」
茉莉花はクルリと匡臣と自分の位置を入れ替えた。匡臣の顔の横に、自分の両手をおいて覗き込むように見つめた。
「わからない」
「茉莉花」
苦しそうに眉を寄せる茉莉花の頬に手を添える。
「あなた様といると、ここが苦しいのです」
茉莉花は自分の胸に手を当てる。
「あなた様と離れても、苦しかった。あなた様と再会したら、もっと苦しくなった。なぜ?あなた様に触れられると、名前を呼ばれると、なぜ、こんなに、苦しいのにっ」
嬉しいのですか。
匡臣は肘をついて上体を起こし、頬に添えていた手で茉莉花の頭を引き寄せると、その唇を自身のそれで塞いだ。茉莉花はその唇から逃れる。
「いやだ、怖い、やだ」
「大丈夫だ、茉莉花」
クルリと、また二人の位置が変わる。
「大丈夫だよ、茉莉花」
ポロポロと涙を零す茉莉花に、優しく触れるだけのキスを繰り返す。何度も何度も。
「茉莉花、怖くなくなるまでキスをしよう」
「やぁ」
「茉莉花、怖くなくなるまで、体を繋げよう」
「やだぁ」
「茉莉花、その気持ちがなんなのか、わかるまで抱き締めてあげる」
「やぁ」
「茉莉花、愛してる。愛してるよ、オレの茉莉花」
*~*~*~*~*
茉莉花自身気付いていないその愛を手に入れた匡臣は、ますます茉莉花に執着した。
誰の目にも触れさせない。自分以外を見て欲しくない。
広すぎる屋敷を、茉莉花の鳥かごにした。
屋敷の敷地内であれば、自由を与えた。
使用人は最小限にし、徹底的に茉莉花との接触を禁じた。
茉莉花の世界はオレだけでいい。
美しい月夜の晩、縁側で茉莉花と二人、月を見ていた。
「あの偽名、どうやってつけたの?」
ふと、聞きそびれていたことを思い出す。
「匡臣様が用意してくださったマンションの、郵便受けにありました。姓と名をそれぞれ、最初に目に入ったもので」
「茉莉花の名前は、嫌だった?」
顔を覗き込むと、茉莉花は視線を逸らすように俯いた。
「あ、の、」
躊躇いがちに言葉を紡ぐ。
「まさ、おみ、様、以外に、呼ばれたく、ありません、でした」
匡臣は自身のそれで茉莉花の唇を塞いだ。そのままゆっくり倒れ込む。両手の指を絡め、唾液すら溢れて逃さないよう深く深く。
「茉莉花の花は、小さな可憐な白い花。その香りは、神の贈り物と言われている」
ようやく離れた唇は、まだまだこれから、というように、額に、瞼に、頬に、首筋に、何度も触れる。
「茉莉花の存在は、正に神からオレへの贈り物だったんだ」
*おわり*
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
あまり深く考えずにお読みいただければと書いた作品です。
なにか思うところがありましても、ご容赦くださいませ。
セレブとのめくるめく恋愛話を想像されていた方には申し訳ありませんでした。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
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