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日常編
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こちらは、以前投稿いたしました拙作、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。こちらだけでも楽しんでいただけるとは思いますが、前作をお読みいただくと、よりわかりやすいかと思います。お時間の都合のつく方は、是非お読みいただけると嬉しいです。
残酷な表現もございますので、苦手な方はお控え下さい。
*~*~*~*~*
エリアスト・カーサ・ディレイガルドと、アリス・コーサ・ファナトラタが結婚をして四年後、双子の子どもが生まれる。更にその十一年後、エリアストがディレイガルドを継承した。
ライリアスト・カーサ・ディレイガルドは当主の座をエリアストに譲位すると共に、騎士団長も退く。これからの余生は妻アイリッシュだけを守って生きていくと、あっさり領地に引っ込んだ。
アリスたちの子どもは、男女の双子。名を、ノアリアスト、ダリアという。二人ともエリアストにそっくりであり、その瞳だけ、アリスの要素を受け継いでいる。瞳だけ。おわかりだろうか。そう、その性格まで、エリアストなのだ。ただし、両親への配慮は限りなくあり、若干外面を装うことは出来る。
まあそうなると、何が起こるか。
アリス争奪戦。
毎日毎日、ことあるごとに争いが勃発する。おはようのキスの順番から食事の席、どちらが先に話を聞いてもらうか、散歩の日傘を持ってあげるのは、馬車に乗る順番等々等々。うるさく騒ぐわけではない。静かな火花が散るのだ。特に、父であるエリアストには嫉妬が凄い。もちろん畏敬の念が大きい。だが、アリスに関してだけは、独り占めをするエリアストに嫉妬の炎が燃え上がる。そんな時だけ、双子は結託する。あの手この手でアリスを引き留め、エリアストとの二人きりの時間を少しでも減らそうと画策する。だが、引き際は間違えない。エリアストから何やら不穏なものを微かに感じ取ると、双子はサッと引く。双子の年齢が十三歳になった今も、変わらない。これが、ディレイガルド邸の日常だった。
「エルシィ、おはよう」
朝から太陽より眩しい笑顔のエリアストに、アリスは穏やかに微笑み返す。
「エル様、おはようございます」
結婚してから、人前では旦那様と呼ぶようになったアリスだが、二人きりのときは、変わらず愛称で呼ぶ。旦那様と呼ばれれば、結婚して夫婦になった喜びが支配し、エル様と呼ばれれば、誰にも邪魔をされず二人きりなのだと独占欲が満たされる。どちらもアリスにしか出来ないことで、どちらで呼ばれてもエリアストは最高に幸せだった。
結婚して十七年が経つというのに、アリスへの愛しさは募るばかり。
一日の最後に目に出来ることも、抱き締めて眠れることも、一日の最初に目に出来ることも、幸せで仕方がなかった。アリスが眠るまで見つめ、アリスが起きるのを見つめて待つ。時々、眠るアリスがもぞもぞと動き、エリアストの胸に擦り寄ると、エリアストの理性は崩壊する。
十七年、新婚生活が続いている。
「エルシィ、今日は少し街に用事がある。エルシィが戻る頃には私も戻れる予定だ」
玄関で見送る際、エリアストがそんなことを言った。街に用事とは珍しい、とアリスは目を丸くした。
「まあ、旦那様。わたくしが参りましょうか?お仕事の後では大変でしょう」
エリアストはアリスの頬を優しく撫でた。
「いや、これは私が行かなくてはならないものだから大丈夫だ。安心して待っていてくれ。すぐに帰る、エルシィ」
そっと唇が重なった。毎日の日課、いってらっしゃいの挨拶なのだが、アリスは未だに顔を赤く染める。何年経っても初々しい新妻に、エリアストはいつもいつも後ろ髪を引かれる。アリスと離れなくてはならないこの時間だけは、大嫌いだった。
*つづく*
残酷な表現もございますので、苦手な方はお控え下さい。
*~*~*~*~*
エリアスト・カーサ・ディレイガルドと、アリス・コーサ・ファナトラタが結婚をして四年後、双子の子どもが生まれる。更にその十一年後、エリアストがディレイガルドを継承した。
ライリアスト・カーサ・ディレイガルドは当主の座をエリアストに譲位すると共に、騎士団長も退く。これからの余生は妻アイリッシュだけを守って生きていくと、あっさり領地に引っ込んだ。
アリスたちの子どもは、男女の双子。名を、ノアリアスト、ダリアという。二人ともエリアストにそっくりであり、その瞳だけ、アリスの要素を受け継いでいる。瞳だけ。おわかりだろうか。そう、その性格まで、エリアストなのだ。ただし、両親への配慮は限りなくあり、若干外面を装うことは出来る。
まあそうなると、何が起こるか。
アリス争奪戦。
毎日毎日、ことあるごとに争いが勃発する。おはようのキスの順番から食事の席、どちらが先に話を聞いてもらうか、散歩の日傘を持ってあげるのは、馬車に乗る順番等々等々。うるさく騒ぐわけではない。静かな火花が散るのだ。特に、父であるエリアストには嫉妬が凄い。もちろん畏敬の念が大きい。だが、アリスに関してだけは、独り占めをするエリアストに嫉妬の炎が燃え上がる。そんな時だけ、双子は結託する。あの手この手でアリスを引き留め、エリアストとの二人きりの時間を少しでも減らそうと画策する。だが、引き際は間違えない。エリアストから何やら不穏なものを微かに感じ取ると、双子はサッと引く。双子の年齢が十三歳になった今も、変わらない。これが、ディレイガルド邸の日常だった。
「エルシィ、おはよう」
朝から太陽より眩しい笑顔のエリアストに、アリスは穏やかに微笑み返す。
「エル様、おはようございます」
結婚してから、人前では旦那様と呼ぶようになったアリスだが、二人きりのときは、変わらず愛称で呼ぶ。旦那様と呼ばれれば、結婚して夫婦になった喜びが支配し、エル様と呼ばれれば、誰にも邪魔をされず二人きりなのだと独占欲が満たされる。どちらもアリスにしか出来ないことで、どちらで呼ばれてもエリアストは最高に幸せだった。
結婚して十七年が経つというのに、アリスへの愛しさは募るばかり。
一日の最後に目に出来ることも、抱き締めて眠れることも、一日の最初に目に出来ることも、幸せで仕方がなかった。アリスが眠るまで見つめ、アリスが起きるのを見つめて待つ。時々、眠るアリスがもぞもぞと動き、エリアストの胸に擦り寄ると、エリアストの理性は崩壊する。
十七年、新婚生活が続いている。
「エルシィ、今日は少し街に用事がある。エルシィが戻る頃には私も戻れる予定だ」
玄関で見送る際、エリアストがそんなことを言った。街に用事とは珍しい、とアリスは目を丸くした。
「まあ、旦那様。わたくしが参りましょうか?お仕事の後では大変でしょう」
エリアストはアリスの頬を優しく撫でた。
「いや、これは私が行かなくてはならないものだから大丈夫だ。安心して待っていてくれ。すぐに帰る、エルシィ」
そっと唇が重なった。毎日の日課、いってらっしゃいの挨拶なのだが、アリスは未だに顔を赤く染める。何年経っても初々しい新妻に、エリアストはいつもいつも後ろ髪を引かれる。アリスと離れなくてはならないこの時間だけは、大嫌いだった。
*つづく*
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