38 / 82
リカリエット王国編
8
しおりを挟む
「エルシィ、怪我はないか」
控え室にて。護衛に服などすべて一新され、アリスを抱き締めると、護衛たちはそっと部屋を後にする。
大変なのは自分であるにも関わらず、いつもエリアストは一番にアリスの体を気遣う。その思い遣りに、いつも泣きそうになる。
「はい。旦那様がわたくしを守ってくださいましたもの。いつも、守ってくださいますもの」
微笑むアリスの頬に、一筋、涙が流れた。
「エルシィッ?!すまない、すまない、嫌なものを見せた。すまな」
アリスがエリアストを抱き締める腕に力を込める。エリアストは目を丸くした。
「ごめんなさい、ごめんなさい、エル様、ごめんなさい」
鼻を啜るアリスに、謝るアリスに、エリアストはどうしていいかわからない。
「いつも守ってもらってばかりで、いつもいつもエル様を危ない目に遭わせてっ」
ますますアリスの腕の力が強まる。
「見ていることしか、出来ない自分が、本当に、情けないっ」
慟哭のようなアリスの感情の発露に、エリアストが静かにアリスを呼ぶ。
「アリス」
優しくアリスの背中を撫でる。
「私はアリスを守れることが幸せだ」
アリスは顔を上げてエリアストを見る。優しい目がアリスを見ている。
「守ることの出来るアリスがいることが、本当に幸せなんだ」
エリアストの左手が、アリスの涙をそっと拭い、頬を優しく撫でる。幸せというものを教えてくれた、かけがえのない存在。
「守られてばかりではない。共に戦ってくれている」
アリスを安心させるように、優しく微笑む。
「こうして私の側で、見守ってくれている」
腰を抱き寄せる腕に力を入れ、さらに引き寄せる。
「すべて、目を逸らさずに受け止めてくれている」
だから、そんな風に泣かないで。そんな風に、泣く必要なんてないんだ。
瞼にくちづけを落とす。
「アリスがいるだけで、私は何だって出来る」
きゅうっ、と抱き締める。
「これからも、ずっと私の側で見守ってくれ、アリス」
アリスの目から、さらに涙が溢れた。
「はい、はい、エル様。これからも、ずっとエル様のお側に」
その言葉に、エリアストは嬉しそうに笑った。
愛しいアリス。いつも私のことに心を砕いてくれる。守られることを当然と思わず、共に戦おうとしてくれる。私の体を心配し、私の心を心配する。自分のことは二の次で、いつも私を一番に考えてくれて。アリスの行動すべてが、私を慮っている。
「永遠に一緒だ、アリス」
これ程までに愛おしい存在が、今、腕の中にいる奇跡。
この体が朽ちても、決して離さない。
「泣くな、アリス。私のために泣くアリスも愛おしいが、胸が苦しくなる」
涙を舐めとる。くすぐったそうに笑ったアリスがあまりにも可愛くて、エリアストは深くくちづけた。
「愛している、アリス」
繰り返されるくちづけの合間に、何度も何度もエリアストはそう囁いた。
*つづく*
控え室にて。護衛に服などすべて一新され、アリスを抱き締めると、護衛たちはそっと部屋を後にする。
大変なのは自分であるにも関わらず、いつもエリアストは一番にアリスの体を気遣う。その思い遣りに、いつも泣きそうになる。
「はい。旦那様がわたくしを守ってくださいましたもの。いつも、守ってくださいますもの」
微笑むアリスの頬に、一筋、涙が流れた。
「エルシィッ?!すまない、すまない、嫌なものを見せた。すまな」
アリスがエリアストを抱き締める腕に力を込める。エリアストは目を丸くした。
「ごめんなさい、ごめんなさい、エル様、ごめんなさい」
鼻を啜るアリスに、謝るアリスに、エリアストはどうしていいかわからない。
「いつも守ってもらってばかりで、いつもいつもエル様を危ない目に遭わせてっ」
ますますアリスの腕の力が強まる。
「見ていることしか、出来ない自分が、本当に、情けないっ」
慟哭のようなアリスの感情の発露に、エリアストが静かにアリスを呼ぶ。
「アリス」
優しくアリスの背中を撫でる。
「私はアリスを守れることが幸せだ」
アリスは顔を上げてエリアストを見る。優しい目がアリスを見ている。
「守ることの出来るアリスがいることが、本当に幸せなんだ」
エリアストの左手が、アリスの涙をそっと拭い、頬を優しく撫でる。幸せというものを教えてくれた、かけがえのない存在。
「守られてばかりではない。共に戦ってくれている」
アリスを安心させるように、優しく微笑む。
「こうして私の側で、見守ってくれている」
腰を抱き寄せる腕に力を入れ、さらに引き寄せる。
「すべて、目を逸らさずに受け止めてくれている」
だから、そんな風に泣かないで。そんな風に、泣く必要なんてないんだ。
瞼にくちづけを落とす。
「アリスがいるだけで、私は何だって出来る」
きゅうっ、と抱き締める。
「これからも、ずっと私の側で見守ってくれ、アリス」
アリスの目から、さらに涙が溢れた。
「はい、はい、エル様。これからも、ずっとエル様のお側に」
その言葉に、エリアストは嬉しそうに笑った。
愛しいアリス。いつも私のことに心を砕いてくれる。守られることを当然と思わず、共に戦おうとしてくれる。私の体を心配し、私の心を心配する。自分のことは二の次で、いつも私を一番に考えてくれて。アリスの行動すべてが、私を慮っている。
「永遠に一緒だ、アリス」
これ程までに愛おしい存在が、今、腕の中にいる奇跡。
この体が朽ちても、決して離さない。
「泣くな、アリス。私のために泣くアリスも愛おしいが、胸が苦しくなる」
涙を舐めとる。くすぐったそうに笑ったアリスがあまりにも可愛くて、エリアストは深くくちづけた。
「愛している、アリス」
繰り返されるくちづけの合間に、何度も何度もエリアストはそう囁いた。
*つづく*
166
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる
ラム猫
恋愛
王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています
※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる