38 / 76
リカリエット王国編
8
しおりを挟む
「エルシィ、怪我はないか」
控え室にて。護衛に服などすべて一新され、アリスを抱き締めると、護衛たちはそっと部屋を後にする。
大変なのは自分であるにも関わらず、いつもエリアストは一番にアリスの体を気遣う。その思い遣りに、いつも泣きそうになる。
「はい。旦那様がわたくしを守ってくださいましたもの。いつも、守ってくださいますもの」
微笑むアリスの頬に、一筋、涙が流れた。
「エルシィッ?!すまない、すまない、嫌なものを見せた。すまな」
アリスがエリアストを抱き締める腕に力を込める。エリアストは目を丸くした。
「ごめんなさい、ごめんなさい、エル様、ごめんなさい」
鼻を啜るアリスに、謝るアリスに、エリアストはどうしていいかわからない。
「いつも守ってもらってばかりで、いつもいつもエル様を危ない目に遭わせてっ」
ますますアリスの腕の力が強まる。
「見ていることしか、出来ない自分が、本当に、情けないっ」
慟哭のようなアリスの感情の発露に、エリアストが静かにアリスを呼ぶ。
「アリス」
優しくアリスの背中を撫でる。
「私はアリスを守れることが幸せだ」
アリスは顔を上げてエリアストを見る。優しい目がアリスを見ている。
「守ることの出来るアリスがいることが、本当に幸せなんだ」
エリアストの左手が、アリスの涙をそっと拭い、頬を優しく撫でる。幸せというものを教えてくれた、かけがえのない存在。
「守られてばかりではない。共に戦ってくれている」
アリスを安心させるように、優しく微笑む。
「こうして私の側で、見守ってくれている」
腰を抱き寄せる腕に力を入れ、さらに引き寄せる。
「すべて、目を逸らさずに受け止めてくれている」
だから、そんな風に泣かないで。そんな風に、泣く必要なんてないんだ。
瞼にくちづけを落とす。
「アリスがいるだけで、私は何だって出来る」
きゅうっ、と抱き締める。
「これからも、ずっと私の側で見守ってくれ、アリス」
アリスの目から、さらに涙が溢れた。
「はい、はい、エル様。これからも、ずっとエル様のお側に」
その言葉に、エリアストは嬉しそうに笑った。
愛しいアリス。いつも私のことに心を砕いてくれる。守られることを当然と思わず、共に戦おうとしてくれる。私の体を心配し、私の心を心配する。自分のことは二の次で、いつも私を一番に考えてくれて。アリスの行動すべてが、私を慮っている。
「永遠に一緒だ、アリス」
これ程までに愛おしい存在が、今、腕の中にいる奇跡。
この体が朽ちても、決して離さない。
「泣くな、アリス。私のために泣くアリスも愛おしいが、胸が苦しくなる」
涙を舐めとる。くすぐったそうに笑ったアリスがあまりにも可愛くて、エリアストは深くくちづけた。
「愛している、アリス」
繰り返されるくちづけの合間に、何度も何度もエリアストはそう囁いた。
*つづく*
控え室にて。護衛に服などすべて一新され、アリスを抱き締めると、護衛たちはそっと部屋を後にする。
大変なのは自分であるにも関わらず、いつもエリアストは一番にアリスの体を気遣う。その思い遣りに、いつも泣きそうになる。
「はい。旦那様がわたくしを守ってくださいましたもの。いつも、守ってくださいますもの」
微笑むアリスの頬に、一筋、涙が流れた。
「エルシィッ?!すまない、すまない、嫌なものを見せた。すまな」
アリスがエリアストを抱き締める腕に力を込める。エリアストは目を丸くした。
「ごめんなさい、ごめんなさい、エル様、ごめんなさい」
鼻を啜るアリスに、謝るアリスに、エリアストはどうしていいかわからない。
「いつも守ってもらってばかりで、いつもいつもエル様を危ない目に遭わせてっ」
ますますアリスの腕の力が強まる。
「見ていることしか、出来ない自分が、本当に、情けないっ」
慟哭のようなアリスの感情の発露に、エリアストが静かにアリスを呼ぶ。
「アリス」
優しくアリスの背中を撫でる。
「私はアリスを守れることが幸せだ」
アリスは顔を上げてエリアストを見る。優しい目がアリスを見ている。
「守ることの出来るアリスがいることが、本当に幸せなんだ」
エリアストの左手が、アリスの涙をそっと拭い、頬を優しく撫でる。幸せというものを教えてくれた、かけがえのない存在。
「守られてばかりではない。共に戦ってくれている」
アリスを安心させるように、優しく微笑む。
「こうして私の側で、見守ってくれている」
腰を抱き寄せる腕に力を入れ、さらに引き寄せる。
「すべて、目を逸らさずに受け止めてくれている」
だから、そんな風に泣かないで。そんな風に、泣く必要なんてないんだ。
瞼にくちづけを落とす。
「アリスがいるだけで、私は何だって出来る」
きゅうっ、と抱き締める。
「これからも、ずっと私の側で見守ってくれ、アリス」
アリスの目から、さらに涙が溢れた。
「はい、はい、エル様。これからも、ずっとエル様のお側に」
その言葉に、エリアストは嬉しそうに笑った。
愛しいアリス。いつも私のことに心を砕いてくれる。守られることを当然と思わず、共に戦おうとしてくれる。私の体を心配し、私の心を心配する。自分のことは二の次で、いつも私を一番に考えてくれて。アリスの行動すべてが、私を慮っている。
「永遠に一緒だ、アリス」
これ程までに愛おしい存在が、今、腕の中にいる奇跡。
この体が朽ちても、決して離さない。
「泣くな、アリス。私のために泣くアリスも愛おしいが、胸が苦しくなる」
涙を舐めとる。くすぐったそうに笑ったアリスがあまりにも可愛くて、エリアストは深くくちづけた。
「愛している、アリス」
繰り返されるくちづけの合間に、何度も何度もエリアストはそう囁いた。
*つづく*
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
300
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる