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フルシュターゼの町編
12
二通目の打診も袖にされ、アルシレイス家は強硬手段に出た。
最初に断られた日程に乗り込んだのだ。アグリューシャの取り巻きの子女たちも引き連れて。支配人は毅然とした態度でアルシレイスたちを追い返そうとするが、リスフォニア領の領主は伯爵。アルシレイスが話を聞くはずもない。そんな騒ぎを聞きつけた双子が、レストーニアに声をかけた。
階段上に並ぶ、ディレイガルド当主と同じ顔がふたつ。子女たちが顔を真っ赤にして色めき立つ。アグリューシャは、声が出せなかった。
なんて、美しさなの。
そして思う。
絶対に手に入れてやるわ。ディレイガルドの当主も、筆頭の座も。
両親や学友たちから聞いていた。ディレイガルドの当主とその子どもは瓜二つだという噂。これ程まで美しいとは。だが子どもを手に入れても面白くない。妻を溺愛しているというその当主を手に入れてこそ、自分の女としての価値を高める。アグリューシャが双子に声をかけようとして、先に双子が口を開いた。
「アルシレイス公爵様。ご挨拶は控えるよう返答したはず。何故こちらへ」
表情のないノアリアストの言葉に、アルシレイスは鼻で嗤う。
「これはこれはディレイガルド公爵のお子様方。私はアルシレイス公爵家の当主だ。キミたちより立場が上になるのだが、そんなことも教わっていないのかね?口を慎みたまえ」
筆頭公爵家だろうと何だろうと、まだ子ども。どんな家柄であれ、当主という立場の者より立場は下になる。しかし相手が悪い。子どもではあるが、ディレイガルドなのだ。
双子はアルシレイスの言葉に口元だけを上げて嗤った。
「何がおかしい!」
敬意を払える人物にはこんな対応はしない、と言外に言われているように感じて、アルシレイスは声を荒らげた。
「レストーニア、下がれ」
ノアリアストの言葉に、レストーニアは一礼して下がる。ノアリアストが階段を下りながらアルシレイスに言った。
「行動を慎めない者の台詞ではない。立場の話をするなら、同じ爵位であってもディレイガルドとアルシレイス、どちらの立場が上か」
ノアリアストの威圧に、アルシレイスは背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
こんな子どもに気圧されてなるものか、そうアルシレイスは自分を奮い立たせ、口を開こうとしたときだ。
「公爵夫人様!いらっしゃるのでしょう!ディレイガルド公爵夫人様!」
アグリューシャが上に向かって声を張り上げた。
「留学から戻ってご挨拶に伺いましたの!公爵夫人様!」
アリスを呼べば、必ず当主が出てくる。アグリューシャは、思い描く未来に胸を膨らませる。
ノアリアストは冷たくアグリューシャを見た。
「気でも狂ったか。無礼にも程がある」
ノアリアストがアグリューシャを黙らせるために近付こうとしたとき、階段上にいるダリアに、人影が近付いた。エリアストの従者ユレスだ。ユレスはダリアに耳打ちをすると、ダリアは頷き、ユレスと戻って行った。少しして、ダリアと入れ替わるように現れた人物に、子女たちは腰を抜かす。
アグリューシャは、雷が落ちたような衝撃を覚えた。
双子と同じ顔だが、全然違う。纏う空気が、冷たい眼差しが、双子では醸し出せない年月を物語っている。深みが、雲泥の差。
アグリューシャの全身が、歓喜に震えた。
ダイヤモンドの髪に、アクアマリンの双眸。大人の色香を纏い、視線ひとつですべてを平伏させる、美しすぎる筆頭公爵家当主。
「我が妻を不躾に呼びつけたのは貴様か」
エリアスト・カーサ・ディレイガルドが、不機嫌に降臨した。
*つづく*
最初に断られた日程に乗り込んだのだ。アグリューシャの取り巻きの子女たちも引き連れて。支配人は毅然とした態度でアルシレイスたちを追い返そうとするが、リスフォニア領の領主は伯爵。アルシレイスが話を聞くはずもない。そんな騒ぎを聞きつけた双子が、レストーニアに声をかけた。
階段上に並ぶ、ディレイガルド当主と同じ顔がふたつ。子女たちが顔を真っ赤にして色めき立つ。アグリューシャは、声が出せなかった。
なんて、美しさなの。
そして思う。
絶対に手に入れてやるわ。ディレイガルドの当主も、筆頭の座も。
両親や学友たちから聞いていた。ディレイガルドの当主とその子どもは瓜二つだという噂。これ程まで美しいとは。だが子どもを手に入れても面白くない。妻を溺愛しているというその当主を手に入れてこそ、自分の女としての価値を高める。アグリューシャが双子に声をかけようとして、先に双子が口を開いた。
「アルシレイス公爵様。ご挨拶は控えるよう返答したはず。何故こちらへ」
表情のないノアリアストの言葉に、アルシレイスは鼻で嗤う。
「これはこれはディレイガルド公爵のお子様方。私はアルシレイス公爵家の当主だ。キミたちより立場が上になるのだが、そんなことも教わっていないのかね?口を慎みたまえ」
筆頭公爵家だろうと何だろうと、まだ子ども。どんな家柄であれ、当主という立場の者より立場は下になる。しかし相手が悪い。子どもではあるが、ディレイガルドなのだ。
双子はアルシレイスの言葉に口元だけを上げて嗤った。
「何がおかしい!」
敬意を払える人物にはこんな対応はしない、と言外に言われているように感じて、アルシレイスは声を荒らげた。
「レストーニア、下がれ」
ノアリアストの言葉に、レストーニアは一礼して下がる。ノアリアストが階段を下りながらアルシレイスに言った。
「行動を慎めない者の台詞ではない。立場の話をするなら、同じ爵位であってもディレイガルドとアルシレイス、どちらの立場が上か」
ノアリアストの威圧に、アルシレイスは背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
こんな子どもに気圧されてなるものか、そうアルシレイスは自分を奮い立たせ、口を開こうとしたときだ。
「公爵夫人様!いらっしゃるのでしょう!ディレイガルド公爵夫人様!」
アグリューシャが上に向かって声を張り上げた。
「留学から戻ってご挨拶に伺いましたの!公爵夫人様!」
アリスを呼べば、必ず当主が出てくる。アグリューシャは、思い描く未来に胸を膨らませる。
ノアリアストは冷たくアグリューシャを見た。
「気でも狂ったか。無礼にも程がある」
ノアリアストがアグリューシャを黙らせるために近付こうとしたとき、階段上にいるダリアに、人影が近付いた。エリアストの従者ユレスだ。ユレスはダリアに耳打ちをすると、ダリアは頷き、ユレスと戻って行った。少しして、ダリアと入れ替わるように現れた人物に、子女たちは腰を抜かす。
アグリューシャは、雷が落ちたような衝撃を覚えた。
双子と同じ顔だが、全然違う。纏う空気が、冷たい眼差しが、双子では醸し出せない年月を物語っている。深みが、雲泥の差。
アグリューシャの全身が、歓喜に震えた。
ダイヤモンドの髪に、アクアマリンの双眸。大人の色香を纏い、視線ひとつですべてを平伏させる、美しすぎる筆頭公爵家当主。
「我が妻を不躾に呼びつけたのは貴様か」
エリアスト・カーサ・ディレイガルドが、不機嫌に降臨した。
*つづく*
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