28 / 33
番外編
判決
しおりを挟む
スウィーディーが刑を言い渡される話です。
残酷な表現、不快な表現あります。
苦手な方はご注意ください。
*∽*∽*∽*∽*
王城の地下には、罪を犯した貴族を、刑が確定するまで収監する牢がある。
それなりに清潔感はあるし、薄暗くはあるが灯りもある。
複数の足音が響く。
その音が止まった鉄格子の前。中には、美しい少女が一人。
「王太子殿下からの沙汰を伝える。ありがたく受け取れ」
王太子リスランの側近候補、アサトが口を開く。
美しい少女、スウィーディーが鉄格子にしがみついた。
「リスラン様に会わせなさいよ!」
すかさずガイアスが鉄格子越しにスウィーディーの喉を締め上げ、苦しさに喘ぐその開かれた口の中に、躊躇いもなく短剣を突っ込んだ。
「次に殿下の名を呼んだら、この口を切り裂く」
ガイアスが短剣を僅かに動かすと、プツリと口の端が切れた。
無口で強面ではあるが、側近候補の中で一番穏やかなガイアスの冷酷さに、さすがのスウィーディーも顔を青くする。
「理解したならゆっくり瞬きを一度しろ」
言った通りの行動を確認し、ガイアスは短剣を退いた。
ズルズルとその場にへたり込む。
切れた口の端から滲む血の味が口の中に広がったが、スウィーディーは何も言えなかった。
「殿下が貴様にかける時間などない」
慈悲の欠片もない、アサトの冷たい声が響く。
「殿下からの沙汰だ。ありがたく聞け。貴様の身勝手な行動により、おまえの生家であるオプト伯爵家は可哀相に、降格だ。男爵位となる」
「はあ?子爵位も飛ばして男爵?まあ騒がせちゃったから家にも責任をってのはわかるけど、降格はないんじゃない?しかもツーランクダウン?あたしが何したって言うのよ!」
自分の理解の範疇を超えると喚き出す彼女に、答える者はいない。
「スウィーディー・オプト。貴様は貴族位剥奪の上、西の砦行きを命じる」
「今後オプト姓を名乗ることは許されん。貴様はもう貴族ではない。言われたことをしっかりやれ。曲解するなよ。言葉通りに受け取れ」
アサトとシュリの言葉に、スウィーディーは血走った目で睨みつけると、膝立ちで再び鉄格子を掴んだ。
「あたしが平民?バッカじゃないの?おまけに西の砦ですって?」
西の砦は、西側の国と戦争をしているわけではない。そもそも西の砦とは、国境にあるものではない。砦の付近は、災害に見舞われやすい場所だ。災害地故、その見張りのために砦を立てた。
災害の多い地は、疫病が蔓延しやすい。
災害のあった地をそのままにしておくと、さらなる災害に繋がる恐れがあるため、元に戻さないといけない。あまりに頻繁に災害に見舞われるので、人を住まわせられない。だが、栄養分を豊富に含んだ泥を運んでも来るので、肥沃な大地となってもいる。
そこで、罪人を災害復興に使い、同時に災害に見舞われないよう整備させることにしたのだ。こうして、西の砦は罪人ひしめく流刑地のようになっていた。
「あたしを誰だと思ってんの?こんなの何かの間違いよ。早くリスラン様を呼ん」
言葉は最後まで続かなかった。続けられなかった。
地下牢に悲鳴が響く。
鉄格子の中で、スウィーディーが口を押さえてのたうち回っている。
ガイアスが握る短剣は、血が滴り落ちていた。
「あーあ。バカだなあ。すぐ言ったこと忘れちゃうんだから」
シュリが嗤う。
「ま、どうせ労働力になんかならないんだ。下の口さえあれば顔なんかどうでもいいからいいけど」
寧ろ、醜女が良い。変に綺麗どころがいると、無駄な諍いが起こる。下手をすれば、女のために殺し合いや暴動にまで発展してしまうから。
「そういう要員のお陰で、ある程度欲が満たされるからな。不満解消に役立つ。貴様のような者でも、しっかり世の中の役に立てるんだ。ありがたいだろう」
「それに、コイツは下手に口が利けない方がいいからね。ガイアス、いい仕事するなあ、ホント」
当然、痛みでそれどころではないスウィーディーの耳には、何一つ入っていなかった。
*おしまい*
残酷な表現、不快な表現あります。
苦手な方はご注意ください。
*∽*∽*∽*∽*
王城の地下には、罪を犯した貴族を、刑が確定するまで収監する牢がある。
それなりに清潔感はあるし、薄暗くはあるが灯りもある。
複数の足音が響く。
その音が止まった鉄格子の前。中には、美しい少女が一人。
「王太子殿下からの沙汰を伝える。ありがたく受け取れ」
王太子リスランの側近候補、アサトが口を開く。
美しい少女、スウィーディーが鉄格子にしがみついた。
「リスラン様に会わせなさいよ!」
すかさずガイアスが鉄格子越しにスウィーディーの喉を締め上げ、苦しさに喘ぐその開かれた口の中に、躊躇いもなく短剣を突っ込んだ。
「次に殿下の名を呼んだら、この口を切り裂く」
ガイアスが短剣を僅かに動かすと、プツリと口の端が切れた。
無口で強面ではあるが、側近候補の中で一番穏やかなガイアスの冷酷さに、さすがのスウィーディーも顔を青くする。
「理解したならゆっくり瞬きを一度しろ」
言った通りの行動を確認し、ガイアスは短剣を退いた。
ズルズルとその場にへたり込む。
切れた口の端から滲む血の味が口の中に広がったが、スウィーディーは何も言えなかった。
「殿下が貴様にかける時間などない」
慈悲の欠片もない、アサトの冷たい声が響く。
「殿下からの沙汰だ。ありがたく聞け。貴様の身勝手な行動により、おまえの生家であるオプト伯爵家は可哀相に、降格だ。男爵位となる」
「はあ?子爵位も飛ばして男爵?まあ騒がせちゃったから家にも責任をってのはわかるけど、降格はないんじゃない?しかもツーランクダウン?あたしが何したって言うのよ!」
自分の理解の範疇を超えると喚き出す彼女に、答える者はいない。
「スウィーディー・オプト。貴様は貴族位剥奪の上、西の砦行きを命じる」
「今後オプト姓を名乗ることは許されん。貴様はもう貴族ではない。言われたことをしっかりやれ。曲解するなよ。言葉通りに受け取れ」
アサトとシュリの言葉に、スウィーディーは血走った目で睨みつけると、膝立ちで再び鉄格子を掴んだ。
「あたしが平民?バッカじゃないの?おまけに西の砦ですって?」
西の砦は、西側の国と戦争をしているわけではない。そもそも西の砦とは、国境にあるものではない。砦の付近は、災害に見舞われやすい場所だ。災害地故、その見張りのために砦を立てた。
災害の多い地は、疫病が蔓延しやすい。
災害のあった地をそのままにしておくと、さらなる災害に繋がる恐れがあるため、元に戻さないといけない。あまりに頻繁に災害に見舞われるので、人を住まわせられない。だが、栄養分を豊富に含んだ泥を運んでも来るので、肥沃な大地となってもいる。
そこで、罪人を災害復興に使い、同時に災害に見舞われないよう整備させることにしたのだ。こうして、西の砦は罪人ひしめく流刑地のようになっていた。
「あたしを誰だと思ってんの?こんなの何かの間違いよ。早くリスラン様を呼ん」
言葉は最後まで続かなかった。続けられなかった。
地下牢に悲鳴が響く。
鉄格子の中で、スウィーディーが口を押さえてのたうち回っている。
ガイアスが握る短剣は、血が滴り落ちていた。
「あーあ。バカだなあ。すぐ言ったこと忘れちゃうんだから」
シュリが嗤う。
「ま、どうせ労働力になんかならないんだ。下の口さえあれば顔なんかどうでもいいからいいけど」
寧ろ、醜女が良い。変に綺麗どころがいると、無駄な諍いが起こる。下手をすれば、女のために殺し合いや暴動にまで発展してしまうから。
「そういう要員のお陰で、ある程度欲が満たされるからな。不満解消に役立つ。貴様のような者でも、しっかり世の中の役に立てるんだ。ありがたいだろう」
「それに、コイツは下手に口が利けない方がいいからね。ガイアス、いい仕事するなあ、ホント」
当然、痛みでそれどころではないスウィーディーの耳には、何一つ入っていなかった。
*おしまい*
461
あなたにおすすめの小説
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
【完結】私が重すぎ?軽い方だと思いますが、そう仰るなら婚約破棄を受け入れます。 それなのに、あなたはなぜ私に付きまとうのですか?
西東友一
恋愛
「お前、重すぎんだよ」
婚約したら将来の話をするのは当然だと思っていたジャンヌは、婚約者のジェダインに婚約破棄を言い渡されてしまう。しかし、しばらくしてジェダインが寄りを戻そうと行ってきて―――
※※
元サヤが嫌いな方、女主人公がハーレムっぽくなるのが嫌いな方、恋愛は王道以外は認めない方はご遠慮ください。
最後のオチに「えーーっ」となるかもしれませんし、「ふっ」となるかもしれません。
気楽にお読みください。
この作品に関して率直な感想を言いたくなったら、否定的な意見でも気軽に感想を書いてください。
感想に関して返信すると、気を遣って自由に言いたいことを言えなくなるかもしれないので、この作品の感想の返信は一律でしませんので、ご容赦ください。
【完結】両親が亡くなったら、婚約破棄されて追放されました。他国に亡命します。
西東友一
恋愛
両親が亡くなった途端、私の家の資産を奪った挙句、婚約破棄をしたエドワード王子。
路頭に迷う中、以前から懇意にしていた隣国のリチャード王子に拾われた私。
実はリチャード王子は私のことが好きだったらしく―――
※※
皆様に助けられ、応援され、読んでいただき、令和3年7月17日に完結することができました。
本当にありがとうございました。
【完結】なんで、あなたが王様になろうとしているのです?そんな方とはこっちから婚約破棄です。
西東友一
恋愛
現国王である私のお父様が病に伏せられました。
「はっはっはっ。いよいよ俺の出番だな。みなさま、心配なさるなっ!! ヴィクトリアと婚約関係にある、俺に任せろっ!!」
わたくしと婚約関係にあった貴族のネロ。
「婚約破棄ですわ」
「なっ!?」
「はぁ・・・っ」
わたくしの言いたいことが全くわからないようですね。
では、順を追ってご説明致しましょうか。
★★★
1万字をわずかに切るぐらいの量です。
R3.10.9に完結予定です。
ヴィクトリア女王やエリザベス女王とか好きです。
そして、主夫が大好きです!!
婚約破棄ざまぁの発展系かもしれませんし、後退系かもしれません。
婚約破棄の王道が好きな方は「箸休め」にお読みください。
妹は奪わない
緑谷めい
恋愛
妹はいつも奪っていく。私のお気に入りのモノを……
私は伯爵家の長女パニーラ。2つ年下の妹アリスは、幼い頃から私のお気に入りのモノを必ず欲しがり、奪っていく――――――な~んてね!?
【完結】親の理想は都合の良い令嬢~愛されることを諦めて毒親から逃げたら幸せになれました。後悔はしません。
涼石
恋愛
毒親の自覚がないオリスナ=クルード子爵とその妻マリア。
その長女アリシアは両親からの愛情に飢えていた。
親の都合に振り回され、親の決めた相手と結婚するが、これがクズな男で大失敗。
家族と離れて暮らすようになったアリシアの元に、死の間際だという父オリスナが書いた手紙が届く。
その手紙はアリシアを激怒させる。
書きたいものを心のままに書いた話です。
毒親に悩まされている人たちが、一日でも早く毒親と絶縁できますように。
本編終了しました。
本編に登場したエミリア視点で追加の話を書き終えました。
本編を補足した感じになってます。@全4話
悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する
青の雀
恋愛
公爵令嬢のマリアベルーナは、厳しい母の躾により、完ぺきな淑女として生まれ育つ。
両親は政略結婚で、父は母以外の女性を囲っていた。
母の死後1年も経たないうちに、その愛人を公爵家に入れ、同い年のリリアーヌが異母妹となった。
リリアーヌは、自分こそが公爵家の一人娘だと言わんばかりにわが物顔で振る舞いマリアベルーナに迷惑をかける。
マリアベルーナには、5歳の頃より婚約者がいて、第1王子のレオンハルト殿下も、次第にリリアーヌに魅了されてしまい、ついには婚約破棄されてしまう。
すべてを失ったマリアベルーナは悲しみのあまり、修道院へ自ら行く。
修道院で聖女様に覚醒して……
大慌てになるレオンハルトと公爵家の人々は、なんとかマリアベルーナに戻ってきてもらおうとあの手この手を画策するが
マリアベルーナを巡って、各国で戦争が起こるかもしれない
完ぺきな淑女の上に、完ぺきなボディライン、完ぺきなお妃教育を持った聖女様は、自由に羽ばたいていく
今回も短編です
誰と結ばれるかは、ご想像にお任せします♡
【26話完結】日照りだから帰ってこい?泣きつかれても、貴方のために流す涙はございません。婚約破棄された私は砂漠の王と結婚します。
西東友一
恋愛
「やっぱり、お前といると辛気臭くなるから婚約破棄な?あと、お前がいると雨ばっかで気が滅入るからこの国から出てってくんない?」
雨乞いの巫女で、涙と共に雨を降らせる能力があると言われている主人公のミシェルは、緑豊かな国エバーガーデニアの王子ジェイドにそう言われて、婚約破棄されてしまう。大人しい彼女はそのままジェイドの言葉を受け入れて一人涙を流していた。
するとその日に滝のような雨がエバーガーデニアに降り続いた。そんな雨の中、ミシェルが泣いていると、一人の男がハンカチを渡してくれた。
ミシェルはその男マハラジャと共に砂漠の国ガラハラを目指すことに決めた。
すると、不思議なことにエバーガーデニアの雨雲に異変が・・・
ミシェルの運命は?エバーガーデニアとガラハラはどうなっていくのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる