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28 ~ウェンリアインside~
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ブルーエイ家に考える時間を与えないため、突然の使者に突然の呼び出しをさせた。あの家は、誰も侯爵に苦言を呈さない。顔色を窺う者ばかりだから、おかしな事にも口を挟むことはないだろう。
やって来た侯爵家の面々は、初めてシラユキを見るかのように、驚いたように目を見開いている。実際、初対面に近いのだろうね。でもその表情は、どういう意味だい?まさか、見とれている、なんてこと、ないよね?ブルーエイの息子、自分の妹だって知ったらどんな顔するのかな。シラユキに熱のある視線を送っているようだけど。気のせいならいいね。そんな感情を抱いていると知ったら、なぜか全力で叩き潰したい衝動に駆られそうだから。少し、牽制はさせてもらったけどね。そうしたらシラユキに、汚いから止めてください、と言われた。いい匂いだと伝えると、シラユキはまた前を向いてしまった。その行動に思わず微笑む。でも今考えると、汚いのは私の方、なんてことはないよね?あれ、そんなことないよね?話が通じない、と呆れて会話を終わらせたの?シラユキならあり得る。そうだとしたら、いや、そうとしか思えなくなってきたが、そんな反応初めてだ。この私を汚いと。ふふ。本当にひどい子だね、シラユキ。
久しぶりの家族の再会、と言っても、家にいたときからシラユキの顔を見ることもなかったから、記憶にすらないようだ。ただ、金の髪に紫の瞳、としか覚えていないだろう。その金の髪に紫の瞳の少女が目の前にいるというのに、娘が見つかったと報告を受けているにもかかわらず、自分たちの娘と認識出来ないとは。まあ、おまえたちの要素が一切ないからね。おまえたちからこれ程美しい少女が生まれたことが、奇跡だ。シラユキの兄姉とも似てもいない。不貞というより、取り違えかもね。
私は自分が美しいと認識している。己を知り、武器となり得るものは、あらゆる場面で使っていかなくては、王族、況して王太子など務まらない。美しさとて武器の一つ。己を知る自分でさえ、シラユキは美しいと思う。表情がないことが精巧な人形のようにも見え、その人間味のなさが、また一段とその美しさに拍車をかけている。
シラユキの幼少期の話は、垣間見るだけでも酷いものだ。それがこの乏しい表情を形成したに違いない。
その人間味のない表情が動いたら。
あの空虚な紫玉の瞳に感情が宿ったら。
それを、私に向けてくれたら。
そう思うだけで、歓喜に全身が震える。
今も伏し目がちに少し俯き加減で私の横に立つシラユキのその横顔は、どんなに腕のいい画家にも描くことは出来ない儚さを纏っている。
何を考えているの。どうして欲しいの。
こんなにも夢中になれるものがあったなんて知らなかった。
シラユキは愚か者ではない。私の性癖から外れているはずなのに。自ら性癖を否定したくなるほど、あれ程楽しかったサリュアとの交流が、急速につまらないものになっていく。
ああ、そうか。
私は私をまた一つ、理解した。
私は愚か者が好きなのではない。自分の予想もしない行動をする者が好きなのだ。
*つづく*
やって来た侯爵家の面々は、初めてシラユキを見るかのように、驚いたように目を見開いている。実際、初対面に近いのだろうね。でもその表情は、どういう意味だい?まさか、見とれている、なんてこと、ないよね?ブルーエイの息子、自分の妹だって知ったらどんな顔するのかな。シラユキに熱のある視線を送っているようだけど。気のせいならいいね。そんな感情を抱いていると知ったら、なぜか全力で叩き潰したい衝動に駆られそうだから。少し、牽制はさせてもらったけどね。そうしたらシラユキに、汚いから止めてください、と言われた。いい匂いだと伝えると、シラユキはまた前を向いてしまった。その行動に思わず微笑む。でも今考えると、汚いのは私の方、なんてことはないよね?あれ、そんなことないよね?話が通じない、と呆れて会話を終わらせたの?シラユキならあり得る。そうだとしたら、いや、そうとしか思えなくなってきたが、そんな反応初めてだ。この私を汚いと。ふふ。本当にひどい子だね、シラユキ。
久しぶりの家族の再会、と言っても、家にいたときからシラユキの顔を見ることもなかったから、記憶にすらないようだ。ただ、金の髪に紫の瞳、としか覚えていないだろう。その金の髪に紫の瞳の少女が目の前にいるというのに、娘が見つかったと報告を受けているにもかかわらず、自分たちの娘と認識出来ないとは。まあ、おまえたちの要素が一切ないからね。おまえたちからこれ程美しい少女が生まれたことが、奇跡だ。シラユキの兄姉とも似てもいない。不貞というより、取り違えかもね。
私は自分が美しいと認識している。己を知り、武器となり得るものは、あらゆる場面で使っていかなくては、王族、況して王太子など務まらない。美しさとて武器の一つ。己を知る自分でさえ、シラユキは美しいと思う。表情がないことが精巧な人形のようにも見え、その人間味のなさが、また一段とその美しさに拍車をかけている。
シラユキの幼少期の話は、垣間見るだけでも酷いものだ。それがこの乏しい表情を形成したに違いない。
その人間味のない表情が動いたら。
あの空虚な紫玉の瞳に感情が宿ったら。
それを、私に向けてくれたら。
そう思うだけで、歓喜に全身が震える。
今も伏し目がちに少し俯き加減で私の横に立つシラユキのその横顔は、どんなに腕のいい画家にも描くことは出来ない儚さを纏っている。
何を考えているの。どうして欲しいの。
こんなにも夢中になれるものがあったなんて知らなかった。
シラユキは愚か者ではない。私の性癖から外れているはずなのに。自ら性癖を否定したくなるほど、あれ程楽しかったサリュアとの交流が、急速につまらないものになっていく。
ああ、そうか。
私は私をまた一つ、理解した。
私は愚か者が好きなのではない。自分の予想もしない行動をする者が好きなのだ。
*つづく*
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