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63 ~ウェンリアイン、サリュアside~

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~ウェンリアインside~

 神獣が神騎しんきだとバレてしまった。これでシラユキを見る目が信徒のそれになるだろう。神だと思ったに違いないからね。シラユキを見て欲しくないから、神獣を小さくさせていたのに。まあ仕方ない。周囲には私がシラユキに執心だとわからせている。下手なことをする愚か者がいたら、どんな末路を辿らせようか。
 楽しく妄想していたら、おっと、目覚めそうだ。
 「やあ、サリュア。目が覚めたかい」
 「ウェンリ、アイン、様」
 「ねえ、サリュア。いいね、シラユキは。シラユキは、とてもいい」
 「ウェンリ、アイン、様?」
 「キミなんて目じゃないよ、サリュア」
 「そ、んな、そんな、ウェンリアイン様っ」
 「ああ、気安く呼ばないでくれるかい?不敬だよ」
 「だって、だって、約束したじゃない!ずっと、ずっと側にいてくれるって!」
 「してないよ。そうなるといいね、とは言ったけれど。キミが私の心を繋ぎ止められていたら、そうなっていただろう。けれど、キミにはそれが出来なかった。私はもうおまえになど興味はない」
 「ま、待って!私、あなたのために」
 「そう。じゃあ、私のために消えてくれるかな」
 「ウェンリアイン様ぁっ!」
 これでいい。
 愚かなサリュア。
 きっとキミは逆恨みをしてシラユキに再び挑むだろう。彼我ひがの力量差もわからずに。
 そうすれば、今度こそ邪魔が入ることなく、シラユキの憂いを晴らすことが出来るだろう。
 ああ、シラユキ。
 その無慈悲な心も、堪らなく愛しているよ。
 ひとり、廊下を歩く。ふと立ち止まり、両手を見る。
 「シラユキ」
 両腕を抱き締める。
 早く、この腕の中に。
 「シラユキッ」
 私のすべてでおまえを愛している。


*~*~*~*~*


~サリュアside~

 体中が痛い。なんで、こんなことになっているのかしら。
 「やあ、サリュア。目が覚めたかい」
 痛みに目を覚ますと、目映い美貌の王太子、ウェンリアイン様がいた。どうやら怪我をしたらしい私を心配して、ずっと付き添ってくれていたみたい。ああ、なんて幸せ。私、こんなにも愛されていたのね。
 「ウェンリ、アイン、様」
 安心させるように、微笑みながら愛しい人の名前を呼ぶ。体中痛くて、上手く言葉が出てこない。だけど、私はこの後の展開を知っている。だから、こんな痛み、何でもないわ。ウェンリアイン様、サリュア、心の準備は出来ています。
 「ねえ、サリュア」
 心臓が高鳴る。ああ、ウェンリアイン様。サリュアの返事は、うの昔に決まっています。
 「いいね、シラユキは」
 え?
 「シラユキは、とてもいい」
 「ウェンリ、アイン、様?」
 何を、言っているの?
 「キミなんて目じゃないよ、サリュア」
 違う。違う違う違う違う、違う!無くすかも知れないと、失うかも知れないと、私の存在の大きさに気付いて愛を告白するはずでしょう?!
 痛みも忘れて起き上がる。ウェンリアイン様の方へ身を乗り出して、気付く。
 目が、冷たい。
 愛しい人を、見る目じゃない。これは。
 「そ、んな、そんな、ウェンリアイン様っ」
 「ああ、気安く呼ばないでくれるかい?不敬だよ」
 唾棄すべきものを見る目。
 いや、いやよ。そんなはずない。そんなはずないわ。そうよ。
 「だって、だって、約束したじゃない!ずっと、ずっと側にいてくれるって!」
 私の頬を優しく撫でて、微笑んでくれたわ!それなのに。
 「してないよ。そうなるといいね、とは言ったけれど。キミが私の心を繋ぎ止められていたら、そうなっていただろう。けれど、キミにはそれが出来なかった。私はもうおまえになど興味はない」
 何がいけなかったの。どうすれば良かったの。
 「ま、待って!私、あなたのために」
 「そう。じゃあ、私のために消えてくれるかな」
 優しい笑顔。優しい笑顔で、私を不要だと切り捨てる。
 「ウェンリアイン様ぁっ!」
 去って行く背中に手を伸ばすことしか出来ない。
 どうして?どうしてこうなったの?
 ああ、そうよ。あの女のせいよ。私が今こんなに痛い思いをしているのも、神官や聖女たちが私を遠巻きにするようになったのも、王太子妃になれないのも、ウェンリアイン様を狂わせたのも。
 「シラユキッ、赦さないからっ」
 絶対に、赦さない!


*つづく*
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