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兄が聞き捨てならぬことを言った。パーティーとは。そして明日とは。
「まあ、シラユキは私と一緒に会場に入って、母上の隣に座っていてくれればいいだけなんだけどね」
たくさんの人物が一堂に会するあれですか。
「聞いていませんが」
「今言ったよ」
「明日の話を今ですか」
「そう。明日のことだよ」
ハゲろハゲろハゲろハゲろハゲろハゲろハゲろハゲろハゲろハゲろ。
「ん?何かな?謹慎延ばす?」
何で心の声がわかるんだよ。やっと一ヶ月が終わって折り返し地点なのに、これ以上延びたら発狂する。
「何もしなくていいんですね」
「そう。シラユキは私の隣にいるだけ。誰かに話しかけられても何も答えなくていい。寧ろ答えてはダメだよ」
口を開いたら何を言い出すかわからないからね。警戒するくらいなら出席させなきゃいいのに。意味わからんが、まあ本当にただいればいいならいいか。
「責任は負いかねますよ」
「シラユキに責任を負わせることはないよ。絶対に」
他の人にはあるんか。まあいいや。黙って座っているだけなら、今、兄にやっていることと変わらんしな。
兄の登場に、会場が静まり返った。そうだな。兄は見てくれは最高級品だからな。そこに正装姿って、神スチルでも見たことなかったよ。兄が迎えに来たとき、驚いてガン見した。写真撮りたい。飾って拝みたい。凝視する私に、カッコイイかと兄が聞くので、素直にハイと言ったら、兄が顔を押さえて蹲った。私を見たときも同じ反応だったが、どういう反応だそれは。
「みんなシラユキに見とれている。どこの馬の骨が話しかけてくるかわからないから、絶対に口を開いてはいけないよ。いいね?」
馬の骨って。貴族だよね、一応。私が口を開くことが不敬になりそうって話ではないのか?まあいいか。とりあえず頷いておく。そして見とれているのは私にではない。おまえだ、兄よ。確かに私の容姿も綺麗なんだろうけど、滲み出る品のなさが私の容姿を台無しにしているんだよ?わかる?
「これはこれは王太子殿下。随分とお美しい女性をお連れだ。ついにお決めになられたのですかな。どこかでお会いしたような」
恰幅のいいヒゲのおっさんが話しかけてきた。決めたって何だ。あ、婚約者?そう言えば兄、女の影がないな。千年聖女がいるからか?それと、おっさんが会ったことある気がするなら、あの裁判にいたのかもね。
「彼女は王妃陛下のご友人です。今回、エスコートをする栄誉を賜ったのですよ、デイアムリタ公爵」
「おお、王妃陛下のご友人ですか。そうでしたか、いや、ではまだ私の娘にもチャンスはあるわけですな」
兄が微笑んでいる。ねぇよ、って顔してる。公爵?の隣にいる人が、娘さんでしょ?綺麗じゃないか。お父さんに似なくて良かったね。何が嫌なの?公爵って一番上の爵位でしょ?身分だって申し分ないのに。兄の性格が歪んでいるから、その歪みにフィットする人じゃないと嫌なのかな。そんなこと言ってたら、一生結婚出来ないぞ。王太子がそれじゃあマズイのでは?
そんなこと考えてジッと兄を見ていると。
「どうしたの?疲れた?気付かなくてごめんね。王妃陛下のところへ行こうか」
立ち去る口実に使われた。会場入りしたばかりでお疲れって、私は一体どこの姫君だ。姫君たちだってもっと体力あるわい。まあ、マジでドレス重くて座りたいからいいけど。
「では王妃陛下、お願いしますね。くれぐれも、名を呼んではダメですよ」
あの裁判の侯爵家の娘だってバレるからかな。変わった名前だから、身元バレするよね。裁判で兄が白雪って呼ばなければ良かったのにね。あの侯爵家、別に出禁ってわけじゃないんだから、バレてもいいのではと思わなくもないが、何か面倒事があるかも知れないしね。
「任せて。ね、シラユキちゃん。一緒にいましょうね」
呼ぶなって言ってんだろ。
*つづく*
「まあ、シラユキは私と一緒に会場に入って、母上の隣に座っていてくれればいいだけなんだけどね」
たくさんの人物が一堂に会するあれですか。
「聞いていませんが」
「今言ったよ」
「明日の話を今ですか」
「そう。明日のことだよ」
ハゲろハゲろハゲろハゲろハゲろハゲろハゲろハゲろハゲろハゲろ。
「ん?何かな?謹慎延ばす?」
何で心の声がわかるんだよ。やっと一ヶ月が終わって折り返し地点なのに、これ以上延びたら発狂する。
「何もしなくていいんですね」
「そう。シラユキは私の隣にいるだけ。誰かに話しかけられても何も答えなくていい。寧ろ答えてはダメだよ」
口を開いたら何を言い出すかわからないからね。警戒するくらいなら出席させなきゃいいのに。意味わからんが、まあ本当にただいればいいならいいか。
「責任は負いかねますよ」
「シラユキに責任を負わせることはないよ。絶対に」
他の人にはあるんか。まあいいや。黙って座っているだけなら、今、兄にやっていることと変わらんしな。
兄の登場に、会場が静まり返った。そうだな。兄は見てくれは最高級品だからな。そこに正装姿って、神スチルでも見たことなかったよ。兄が迎えに来たとき、驚いてガン見した。写真撮りたい。飾って拝みたい。凝視する私に、カッコイイかと兄が聞くので、素直にハイと言ったら、兄が顔を押さえて蹲った。私を見たときも同じ反応だったが、どういう反応だそれは。
「みんなシラユキに見とれている。どこの馬の骨が話しかけてくるかわからないから、絶対に口を開いてはいけないよ。いいね?」
馬の骨って。貴族だよね、一応。私が口を開くことが不敬になりそうって話ではないのか?まあいいか。とりあえず頷いておく。そして見とれているのは私にではない。おまえだ、兄よ。確かに私の容姿も綺麗なんだろうけど、滲み出る品のなさが私の容姿を台無しにしているんだよ?わかる?
「これはこれは王太子殿下。随分とお美しい女性をお連れだ。ついにお決めになられたのですかな。どこかでお会いしたような」
恰幅のいいヒゲのおっさんが話しかけてきた。決めたって何だ。あ、婚約者?そう言えば兄、女の影がないな。千年聖女がいるからか?それと、おっさんが会ったことある気がするなら、あの裁判にいたのかもね。
「彼女は王妃陛下のご友人です。今回、エスコートをする栄誉を賜ったのですよ、デイアムリタ公爵」
「おお、王妃陛下のご友人ですか。そうでしたか、いや、ではまだ私の娘にもチャンスはあるわけですな」
兄が微笑んでいる。ねぇよ、って顔してる。公爵?の隣にいる人が、娘さんでしょ?綺麗じゃないか。お父さんに似なくて良かったね。何が嫌なの?公爵って一番上の爵位でしょ?身分だって申し分ないのに。兄の性格が歪んでいるから、その歪みにフィットする人じゃないと嫌なのかな。そんなこと言ってたら、一生結婚出来ないぞ。王太子がそれじゃあマズイのでは?
そんなこと考えてジッと兄を見ていると。
「どうしたの?疲れた?気付かなくてごめんね。王妃陛下のところへ行こうか」
立ち去る口実に使われた。会場入りしたばかりでお疲れって、私は一体どこの姫君だ。姫君たちだってもっと体力あるわい。まあ、マジでドレス重くて座りたいからいいけど。
「では王妃陛下、お願いしますね。くれぐれも、名を呼んではダメですよ」
あの裁判の侯爵家の娘だってバレるからかな。変わった名前だから、身元バレするよね。裁判で兄が白雪って呼ばなければ良かったのにね。あの侯爵家、別に出禁ってわけじゃないんだから、バレてもいいのではと思わなくもないが、何か面倒事があるかも知れないしね。
「任せて。ね、シラユキちゃん。一緒にいましょうね」
呼ぶなって言ってんだろ。
*つづく*
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