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71 ~サリュアside~
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半年の謹慎ですって。本当に腹立たしいっ。
数日して体の痛みもだいぶ引いたから、廊下を歩いていると慌てた神官がやって来た。
「サリュア様っ、王太子殿下より謹慎を命じられておりますでしょう。部屋から出てはなりません」
「うるさいわね。この私に盾突こうって言うの?覚悟は出来ている訳ね?」
そう言ってやると、神官はたじろいだ。
「し、しかし、王太子殿下の、ご下命です。お願いです、サリュア様、どうか」
「ウェンリアイン様はどこよ」
「え?あ、城に戻られましたが」
「あのガキは。シラユキはどこ行ったの」
「シラユキ様も、謹慎を言い渡されております」
神官を押しのけて、シラユキの部屋を目指す。
「お待ちください、どちらへ」
無視して進んでいると、神官が前に立ち塞がる。
「サリュア様、お戻りを。シラユキ様でしたら、こちらにはいらっしゃいません」
はあ?謹慎しているって言ったじゃない。
「ここではない、別の場所で、監視付きの謹慎をされております」
「どこよ」
「どうか、ご容赦を」
何もかもが腹立たしい。右手を神官の前に翳す。
「サリュア様っ、何をっ」
神官の目が虚ろになる。ガクリと首が力なく項垂れる。少しして、再び神官が顔を上げた。
「ああ、サリュア様。私の女神。あなたの望みは何でも叶えて差し上げたい」
サリュアは嗤った。
「そう。シラユキはどこへ行ったの」
本当に腹の立つクソガキだわ。ウェンリアイン様のお世話だなんて。それもふた月も。まあいいわ。その間に仕込みを済ませなくちゃ。今だけよ。あんたがいい気でいられるのも、ウェンリアイン様のお側にいられるのも。
「サリュア様、何か必要なものはございませんか。何なりとお申し付けください」
本当に便利だわ、魅了魔法。これさえあれば、何でも手に入る。
「必要があれば呼ぶわ。今は仕事でもしていなさい」
「畏まりました。必ず呼んでくださいね。サリュア様、私の女神」
神官は、私の手を取り額を付けて去って行った。何度も私を振り返りながら。離れ難い、恋人を想う様子で。笑いが止まらないわ。最高の魔法を手に入れたんだもの。これさえあれば、世界が私に平伏すのよ。ウェンリアイン様を手に入れることだって容易い。私を蔑ろにした分、冷たく、酷く扱ってあげる。靴にくちづけたって、足を舐めたって赦さない。大丈夫。最後には必ず赦してあげるから。
ねえ、ウェンリアイン様。酷い方。でも、私は心が広いから、そんなあなたでも愛しているわ。私があなたに飽きるまで、一番大事にしてあげる。
バカなシラユキ。精々今を楽しむといいわ。あんたの大事なものは、私が貰ってあげる。全部、ぜぇんぶ、貰ってあげる。神獣だって、また抗うようならそのまま抗ってもいいわ。私のものにならないなら、そのまま力尽きて死になさい。勿体ないけど、シラユキを選ぶとはそういうこと。どちらにせよ、もうシラユキの側にはいられないわね。
可哀相なシラユキ。私を怒らせるからこうなるのよ。でも、私だって鬼じゃないわ。いつか、あんたから奪ったものは返してあげる。私を想って想って、ボロボロになって、尚私を想い続けたままの者たちを。決してあんたを見ることなく、私を想い続ける者を側に置くといいわ。
前回はあんたがまさか魔法を使えると思わなくて油断したけど、今回はどうかしら。
あんたが戻って来たとき、笑うのはどちらかしらね、シラユキ。
*つづく*
数日して体の痛みもだいぶ引いたから、廊下を歩いていると慌てた神官がやって来た。
「サリュア様っ、王太子殿下より謹慎を命じられておりますでしょう。部屋から出てはなりません」
「うるさいわね。この私に盾突こうって言うの?覚悟は出来ている訳ね?」
そう言ってやると、神官はたじろいだ。
「し、しかし、王太子殿下の、ご下命です。お願いです、サリュア様、どうか」
「ウェンリアイン様はどこよ」
「え?あ、城に戻られましたが」
「あのガキは。シラユキはどこ行ったの」
「シラユキ様も、謹慎を言い渡されております」
神官を押しのけて、シラユキの部屋を目指す。
「お待ちください、どちらへ」
無視して進んでいると、神官が前に立ち塞がる。
「サリュア様、お戻りを。シラユキ様でしたら、こちらにはいらっしゃいません」
はあ?謹慎しているって言ったじゃない。
「ここではない、別の場所で、監視付きの謹慎をされております」
「どこよ」
「どうか、ご容赦を」
何もかもが腹立たしい。右手を神官の前に翳す。
「サリュア様っ、何をっ」
神官の目が虚ろになる。ガクリと首が力なく項垂れる。少しして、再び神官が顔を上げた。
「ああ、サリュア様。私の女神。あなたの望みは何でも叶えて差し上げたい」
サリュアは嗤った。
「そう。シラユキはどこへ行ったの」
本当に腹の立つクソガキだわ。ウェンリアイン様のお世話だなんて。それもふた月も。まあいいわ。その間に仕込みを済ませなくちゃ。今だけよ。あんたがいい気でいられるのも、ウェンリアイン様のお側にいられるのも。
「サリュア様、何か必要なものはございませんか。何なりとお申し付けください」
本当に便利だわ、魅了魔法。これさえあれば、何でも手に入る。
「必要があれば呼ぶわ。今は仕事でもしていなさい」
「畏まりました。必ず呼んでくださいね。サリュア様、私の女神」
神官は、私の手を取り額を付けて去って行った。何度も私を振り返りながら。離れ難い、恋人を想う様子で。笑いが止まらないわ。最高の魔法を手に入れたんだもの。これさえあれば、世界が私に平伏すのよ。ウェンリアイン様を手に入れることだって容易い。私を蔑ろにした分、冷たく、酷く扱ってあげる。靴にくちづけたって、足を舐めたって赦さない。大丈夫。最後には必ず赦してあげるから。
ねえ、ウェンリアイン様。酷い方。でも、私は心が広いから、そんなあなたでも愛しているわ。私があなたに飽きるまで、一番大事にしてあげる。
バカなシラユキ。精々今を楽しむといいわ。あんたの大事なものは、私が貰ってあげる。全部、ぜぇんぶ、貰ってあげる。神獣だって、また抗うようならそのまま抗ってもいいわ。私のものにならないなら、そのまま力尽きて死になさい。勿体ないけど、シラユキを選ぶとはそういうこと。どちらにせよ、もうシラユキの側にはいられないわね。
可哀相なシラユキ。私を怒らせるからこうなるのよ。でも、私だって鬼じゃないわ。いつか、あんたから奪ったものは返してあげる。私を想って想って、ボロボロになって、尚私を想い続けたままの者たちを。決してあんたを見ることなく、私を想い続ける者を側に置くといいわ。
前回はあんたがまさか魔法を使えると思わなくて油断したけど、今回はどうかしら。
あんたが戻って来たとき、笑うのはどちらかしらね、シラユキ。
*つづく*
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