美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛

らがまふぃん

文字の大きさ
11 / 73
アリスデビュタント編

しおりを挟む
残酷な表現が強いです。
苦手な方はご注意ください。


*∽*∽*∽*∽*


 間もなく報せが届く。
 タリ家の訃報と王女サーフィアの乱心。
 「あは。折角三年生き延びたのにねぇ」
 見守ってくれていた伯爵からの報告で、タリ家はただ生きているだけ、と言うことだった。完全に精神は崩壊し、自分が人であることすら認識していないようだ、と。ならば、最期に一仕事してもらおうと、エリアストは動いた。
 「まとめて管理出来ていいと思ったんだがな」
 「折角落ち着いてきていたって言うのに。酷いコトするなあ」
 クスクスと笑うライリアスト。
 「サーフィアあの女には王の真似事をさせてやった。だからルシアあの女は平民だというのに我らの庇護下ゆえ、デビュタントをさせてもらえた。ありがたいと思われているだろう」
 エリアストは喉の奥で嗤った。
 エリアストの非情に、一度は心が壊れた王女サーフィア。サーフィアを制御出来なかったとして、自らサーフィアについて行くことを望んだ、サーフィアの女官マージ。そのマージの献身的な世話により、だいぶ回復をしていたサーフィアだったのだが。

………
……


 「王女殿下、ディレイガルド家我が主からのにございます」
 サーフィアの幽閉先を監視している護衛の一人が、そう言った。ディレイガルドの名を直接言われたわけではないが、サーフィアの顔色は酷く悪い。けれど、マージに背中を支えられる手に勇気づけられ、何とか頷く。
 「別室にてご用意しております。そちらへ」
 護衛は恭しく頭を下げながら、案内すべく扉の前で進行方向を手で示す。
 「主からの伝言です。“王族としての務めを果たすように”とのことでございます」
 サーフィアは首を傾げた。
 「こちらの部屋に、今年デビュタントを迎える者がおります。その家族と共に待っておりますので、その者の額に手をかざしてください」
 サーフィアは声帯を切られているため、話をすることが出来ない。デビュタントを迎える者に声をかけるのだが、出来ない代わりに祝福の意味を込めて、手を翳すようにと言う。
 「ああ、その者は、殿口が利けませんので、口上が出来ませんがご容赦を」
 サーフィアは頷いた。だが、マージは嫌な予感がした。殿とは、どういうことか、と。それは、口が利けない、というそのままの意味を指しているのか。それとも、を指しているのか。
 「殿下、部屋に」
 戻りましょう。そう言おうとしたが、遅かった。
 扉が、開かれる。
 玉座に見立てた椅子に向かって、四人が床に座っている。
 「いろいろと難儀な体でして。立っていられないのですがお許しを」
 背後からの護衛の言葉に、マージは冷や汗が止まらない。
 サーフィアは恐る恐る、仮の玉座に向かう。床に座る者たちの横を通り過ぎたとき。一人が突然奇声をあげた。サーフィアとマージが驚き振り向くと、奇声に触発されたように他の者も奇声をあげ、手足をバタつかせ始めた。
 「おや。薬が切れてしまったようですね。もう少し大人しくしていないと、折角主が用意してくださったデビュタントが終わりませんよ」
 護衛は、薬を取ってきます、とサーフィアたちを残して出て行ってしまった。恐ろしくて身動きがとれないでいると、四人の内、一人だけ、ジッとしている者に気付いた。白いドレスを纏う者。彼女がデビュタントを迎える者だろう。
 「あ、あなた、危ないから、こちらへ」
 暴れる者たちから離そうとして、気付いてしまった。
 ドン、と誰かの手足が彼女にぶつかった。彼女は抵抗なく前に倒れる。顔面から。
 「ヒッ」
 マージは青ざめ、両手で口を押さえた。
 転んでも、庇う手がないのだと、いや、足も、ない。
 異常な光景に、サーフィアは笑う。声は出ないが、肩がひくひくと動き、口の端からは唾液が流れている。目は、虚ろ。虚ろな目が、仮の玉座の横になぜか立てかけられている剣を見つけた。女性の細腕、片手で扱える細剣レイピア
 「で、でんか?」


*~*~*~*~*


 「生活、保障してやった。サーフィア同居人が蛮行に及ぶことはあずかり知らぬことだ」
 衣食住すべて生活に必要なものは調えてやったというのに台無しにするとは、本当に不快な連中だ。



*つづく*
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

【完結】救ってくれたのはあなたでした

ベル
恋愛
伯爵令嬢であるアリアは、父に告げられて女癖が悪いことで有名な侯爵家へと嫁ぐことになった。いわゆる政略結婚だ。 アリアの両親は愛らしい妹ばかりを可愛がり、アリアは除け者のように扱われていた。 ようやくこの家から解放されるのね。 良い噂は聞かない方だけれど、ここから出られるだけ感謝しなければ。 そして結婚式当日、そこで待っていたのは予想もしないお方だった。

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。

大森 樹
恋愛
【短編】 公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。 「アメリア様、ご無事ですか!」 真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。 助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。 穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで…… あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。 ★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。

処理中です...