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アリスデビュタント編
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残酷な表現が強いです。
苦手な方はご注意ください。
*∽*∽*∽*∽*
間もなく報せが届く。
タリ家の訃報と王女サーフィアの乱心。
「あは。折角三年生き延びたのにねぇ」
見守ってくれていた伯爵からの報告で、タリ家はただ生きているだけ、と言うことだった。完全に精神は崩壊し、自分が人であることすら認識していないようだ、と。ならば、最期に一仕事してもらおうと、エリアストは動いた。
「まとめて管理出来ていいと思ったんだがな」
「折角落ち着いてきていたって言うのに。酷いコトするなあ」
クスクスと笑うライリアスト。
「サーフィアには王の真似事をさせてやった。だからルシアは平民だというのに我らの庇護下ゆえ、デビュタントをさせてもらえた。ありがたいと思われているだろう」
エリアストは喉の奥で嗤った。
エリアストの非情に、一度は心が壊れた王女サーフィア。サーフィアを制御出来なかったとして、自らサーフィアについて行くことを望んだ、サーフィアの女官マージ。そのマージの献身的な世話により、だいぶ回復をしていたサーフィアだったのだが。
………
……
…
「王女殿下、ディレイガルド家からの贈り物にございます」
サーフィアの幽閉先を監視している護衛の一人が、そう言った。ディレイガルドの名を直接言われたわけではないが、サーフィアの顔色は酷く悪い。けれど、マージに背中を支えられる手に勇気づけられ、何とか頷く。
「別室にてご用意しております。そちらへ」
護衛は恭しく頭を下げながら、案内すべく扉の前で進行方向を手で示す。
「主からの伝言です。“王族としての務めを果たすように”とのことでございます」
サーフィアは首を傾げた。
「こちらの部屋に、今年デビュタントを迎える者がおります。その家族と共に待っておりますので、その者の額に手を翳してください」
サーフィアは声帯を切られているため、話をすることが出来ない。デビュタントを迎える者に声をかけるのだが、出来ない代わりに祝福の意味を込めて、手を翳すようにと言う。
「ああ、その者は、殿下と同じく口が利けませんので、口上が出来ませんがご容赦を」
サーフィアは頷いた。だが、マージは嫌な予感がした。殿下と同じくとは、どういうことか、と。それは、口が利けない、というそのままの意味を指しているのか。それとも、口が利けなくなった理由を指しているのか。
「殿下、部屋に」
戻りましょう。そう言おうとしたが、遅かった。
扉が、開かれる。
玉座に見立てた椅子に向かって、四人が床に座っている。
「いろいろと難儀な体でして。立っていられないのですがお許しを」
背後からの護衛の言葉に、マージは冷や汗が止まらない。
サーフィアは恐る恐る、仮の玉座に向かう。床に座る者たちの横を通り過ぎたとき。一人が突然奇声をあげた。サーフィアとマージが驚き振り向くと、奇声に触発されたように他の者も奇声をあげ、手足をバタつかせ始めた。
「おや。薬が切れてしまったようですね。もう少し大人しくしていないと、折角主が用意してくださったデビュタントが終わりませんよ」
護衛は、薬を取ってきます、とサーフィアたちを残して出て行ってしまった。恐ろしくて身動きがとれないでいると、四人の内、一人だけ、ジッとしている者に気付いた。白いドレスを纏う者。彼女がデビュタントを迎える者だろう。
「あ、あなた、危ないから、こちらへ」
暴れる者たちから離そうとして、気付いてしまった。
ドン、と誰かの手足が彼女にぶつかった。彼女は抵抗なく前に倒れる。顔面から。
「ヒッ」
マージは青ざめ、両手で口を押さえた。
転んでも、庇う手がないのだと、いや、足も、ない。
異常な光景に、サーフィアは笑う。声は出ないが、肩がひくひくと動き、口の端からは唾液が流れている。目は、虚ろ。虚ろな目が、仮の玉座の横になぜか立てかけられている剣を見つけた。女性の細腕、片手で扱える細剣。
「で、でんか?」
*~*~*~*~*
「生活は、保障してやった。サーフィアが蛮行に及ぶことは与り知らぬことだ」
衣食住すべて生活に必要なものは調えてやったというのに台無しにするとは、本当に不快な連中だ。
*つづく*
苦手な方はご注意ください。
*∽*∽*∽*∽*
間もなく報せが届く。
タリ家の訃報と王女サーフィアの乱心。
「あは。折角三年生き延びたのにねぇ」
見守ってくれていた伯爵からの報告で、タリ家はただ生きているだけ、と言うことだった。完全に精神は崩壊し、自分が人であることすら認識していないようだ、と。ならば、最期に一仕事してもらおうと、エリアストは動いた。
「まとめて管理出来ていいと思ったんだがな」
「折角落ち着いてきていたって言うのに。酷いコトするなあ」
クスクスと笑うライリアスト。
「サーフィアには王の真似事をさせてやった。だからルシアは平民だというのに我らの庇護下ゆえ、デビュタントをさせてもらえた。ありがたいと思われているだろう」
エリアストは喉の奥で嗤った。
エリアストの非情に、一度は心が壊れた王女サーフィア。サーフィアを制御出来なかったとして、自らサーフィアについて行くことを望んだ、サーフィアの女官マージ。そのマージの献身的な世話により、だいぶ回復をしていたサーフィアだったのだが。
………
……
…
「王女殿下、ディレイガルド家からの贈り物にございます」
サーフィアの幽閉先を監視している護衛の一人が、そう言った。ディレイガルドの名を直接言われたわけではないが、サーフィアの顔色は酷く悪い。けれど、マージに背中を支えられる手に勇気づけられ、何とか頷く。
「別室にてご用意しております。そちらへ」
護衛は恭しく頭を下げながら、案内すべく扉の前で進行方向を手で示す。
「主からの伝言です。“王族としての務めを果たすように”とのことでございます」
サーフィアは首を傾げた。
「こちらの部屋に、今年デビュタントを迎える者がおります。その家族と共に待っておりますので、その者の額に手を翳してください」
サーフィアは声帯を切られているため、話をすることが出来ない。デビュタントを迎える者に声をかけるのだが、出来ない代わりに祝福の意味を込めて、手を翳すようにと言う。
「ああ、その者は、殿下と同じく口が利けませんので、口上が出来ませんがご容赦を」
サーフィアは頷いた。だが、マージは嫌な予感がした。殿下と同じくとは、どういうことか、と。それは、口が利けない、というそのままの意味を指しているのか。それとも、口が利けなくなった理由を指しているのか。
「殿下、部屋に」
戻りましょう。そう言おうとしたが、遅かった。
扉が、開かれる。
玉座に見立てた椅子に向かって、四人が床に座っている。
「いろいろと難儀な体でして。立っていられないのですがお許しを」
背後からの護衛の言葉に、マージは冷や汗が止まらない。
サーフィアは恐る恐る、仮の玉座に向かう。床に座る者たちの横を通り過ぎたとき。一人が突然奇声をあげた。サーフィアとマージが驚き振り向くと、奇声に触発されたように他の者も奇声をあげ、手足をバタつかせ始めた。
「おや。薬が切れてしまったようですね。もう少し大人しくしていないと、折角主が用意してくださったデビュタントが終わりませんよ」
護衛は、薬を取ってきます、とサーフィアたちを残して出て行ってしまった。恐ろしくて身動きがとれないでいると、四人の内、一人だけ、ジッとしている者に気付いた。白いドレスを纏う者。彼女がデビュタントを迎える者だろう。
「あ、あなた、危ないから、こちらへ」
暴れる者たちから離そうとして、気付いてしまった。
ドン、と誰かの手足が彼女にぶつかった。彼女は抵抗なく前に倒れる。顔面から。
「ヒッ」
マージは青ざめ、両手で口を押さえた。
転んでも、庇う手がないのだと、いや、足も、ない。
異常な光景に、サーフィアは笑う。声は出ないが、肩がひくひくと動き、口の端からは唾液が流れている。目は、虚ろ。虚ろな目が、仮の玉座の横になぜか立てかけられている剣を見つけた。女性の細腕、片手で扱える細剣。
「で、でんか?」
*~*~*~*~*
「生活は、保障してやった。サーフィアが蛮行に及ぶことは与り知らぬことだ」
衣食住すべて生活に必要なものは調えてやったというのに台無しにするとは、本当に不快な連中だ。
*つづく*
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