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アリスデビュタント編
番外編 ~アイリッシュの悪戯~
ちょっと大変なことになったエル様のお話。
本編がアレだったので、可愛いお話しを不自然な感じに持ってきました。
本編との不協和音をお楽しみください。
*∽*∽*∽*∽*
「そこはねぇ、とおっても珍しい花が一面に咲くのよ」
「珍しい花、ですか?」
アリスのデビュタント前に訪れる予定の、避暑地の話を義母アイリッシュから聞いているアリス。
「そう。そこの気候と土壌があって、初めて咲けるらしいの」
「では、そこでしか見られないのですね。とても楽しみです」
「うふふ。ねえ。ずっとアリスちゃんに見せたかったのよ。きっと喜んでくれるわ」
「ありがとうございます、お義母様」
お互い微笑み合う。
そんな話をしばらくして一段落つくと、アイリッシュが話題を変えた。
「それはそうと、見て見て、アリスちゃん」
ローテーブルの側に置かれた大きな箱。何だろうと思っていたら、アイリッシュはそこから思わぬ物を取り出した。
「じゃーん。ティティさんと考案したの。どう?可愛いでしょう」
ネフェル商会会頭ティティ。アイリッシュが見つけた、新進気鋭の若き商人だ。
「はい、かわいい、です」
アイリッシュの手にあったのは、それはそれは可愛らしいうさぎの耳。可愛らしいのは確かだが、用途がわからずアリスは不思議そうにしながら頷く。
「そうでしょう?他にも色々あるのよ、これ」
これ、と言ってアイリッシュが指した先にあるのは、うさ耳を取り出した大きな箱だ。この大きさいっぱいに、何かが入っているらしい。不思議そうにしているアリスに、アイリッシュはいそいそとその耳をアリスの頭にそっとつけた。
「まああああっ。何て可愛らしいのっ、アリスちゃんっ」
キラッキラのおめめで大喜びのアイリッシュは、さらに箱から取り出した物をアリスにつける。
うさぎの手を模したもこもこ手袋と、うさぎしっぽ。
共に部屋にいた侍女やメイドも大興奮だ。
「エルシィを困らせないでください、母上」
盛り上がりを見せていた室内に、突如ひんやり漂う空気。振り返るとそこには、冷ややかな眼差しのエリアスト。
「何よぅ、エリアスト。仲間に入れてもらえなかったからって邪魔をするのはやめてちょうだい」
「私のエルシィです。勝手をされたら困」
そこまで言って、愛しのアリスがいつもと違うことに気付く。アイリッシュはニヤリと笑う。
「うさぎアリスちゃん、かあわいいでしょう」
アイリッシュは次に、くまさんセットを装着させる。
「くまさんよ、エリアスト」
うふふ、と笑うアイリッシュ。エリアストは何も言わない。心なし、震えているように見える。
「今度はこれ。きつねさんね」
やはりエリアストは無言だ。間違いなく震えている。
「でもイチオシはこれ、かな」
禁断のねこ耳。しっぽはノルウェージャン風のもっふもふ。ねこ手はにくきゅうもばっちり再現しております。
「ごふっ」
「ひええええっ?!エル様あっ?!」
エリアストは血を吐いた。
「エル様エル様っ」
ガクリと膝をつくエリアストに、慌てて駆け寄るアリス。
「どうした、エルシィ」
「こちらの台詞ですっ。すぐお医者様お呼びしますからっ」
涙目でおろおろとエリアストの背中をにくきゅうで摩り、扉へ向かおうと視線をやると、エリアストがアリスの手を掴む。
「私から離れることは許さん、エルシィ」
動転して医者を自身で呼びに行こうとするねこアリスを、その姿に動揺しすぎたエリアストが少々強めの口調で止める。が、鼻からも血が流れてきた。ねこアリスのお耳としっぽが、ぶわあっ、となったような幻覚が見える。
「エル様エル様あっ、死んではダメですっ、わたくしを、わたくしを置いていかないでくださいぃっ」
ぎゅうぅっ、とエリアストの頭を抱き締めるアリスに、エリアストの理性は崩壊した。
「絨毯、変えておいてちょうだいねぇ」
一瞬で部屋からいなくなった二人を気にすることなく、アイリッシュは血塗れの絨毯を見ながら、ニマニマと次のイタズラを考えていた。
*おしまい*
日常に時々挟まる、アイリッシュのイタズラに振り回される二人のお話しでした。
次章夢幻の住人編を、引き続きお楽しみください。
本編がアレだったので、可愛いお話しを不自然な感じに持ってきました。
本編との不協和音をお楽しみください。
*∽*∽*∽*∽*
「そこはねぇ、とおっても珍しい花が一面に咲くのよ」
「珍しい花、ですか?」
アリスのデビュタント前に訪れる予定の、避暑地の話を義母アイリッシュから聞いているアリス。
「そう。そこの気候と土壌があって、初めて咲けるらしいの」
「では、そこでしか見られないのですね。とても楽しみです」
「うふふ。ねえ。ずっとアリスちゃんに見せたかったのよ。きっと喜んでくれるわ」
「ありがとうございます、お義母様」
お互い微笑み合う。
そんな話をしばらくして一段落つくと、アイリッシュが話題を変えた。
「それはそうと、見て見て、アリスちゃん」
ローテーブルの側に置かれた大きな箱。何だろうと思っていたら、アイリッシュはそこから思わぬ物を取り出した。
「じゃーん。ティティさんと考案したの。どう?可愛いでしょう」
ネフェル商会会頭ティティ。アイリッシュが見つけた、新進気鋭の若き商人だ。
「はい、かわいい、です」
アイリッシュの手にあったのは、それはそれは可愛らしいうさぎの耳。可愛らしいのは確かだが、用途がわからずアリスは不思議そうにしながら頷く。
「そうでしょう?他にも色々あるのよ、これ」
これ、と言ってアイリッシュが指した先にあるのは、うさ耳を取り出した大きな箱だ。この大きさいっぱいに、何かが入っているらしい。不思議そうにしているアリスに、アイリッシュはいそいそとその耳をアリスの頭にそっとつけた。
「まああああっ。何て可愛らしいのっ、アリスちゃんっ」
キラッキラのおめめで大喜びのアイリッシュは、さらに箱から取り出した物をアリスにつける。
うさぎの手を模したもこもこ手袋と、うさぎしっぽ。
共に部屋にいた侍女やメイドも大興奮だ。
「エルシィを困らせないでください、母上」
盛り上がりを見せていた室内に、突如ひんやり漂う空気。振り返るとそこには、冷ややかな眼差しのエリアスト。
「何よぅ、エリアスト。仲間に入れてもらえなかったからって邪魔をするのはやめてちょうだい」
「私のエルシィです。勝手をされたら困」
そこまで言って、愛しのアリスがいつもと違うことに気付く。アイリッシュはニヤリと笑う。
「うさぎアリスちゃん、かあわいいでしょう」
アイリッシュは次に、くまさんセットを装着させる。
「くまさんよ、エリアスト」
うふふ、と笑うアイリッシュ。エリアストは何も言わない。心なし、震えているように見える。
「今度はこれ。きつねさんね」
やはりエリアストは無言だ。間違いなく震えている。
「でもイチオシはこれ、かな」
禁断のねこ耳。しっぽはノルウェージャン風のもっふもふ。ねこ手はにくきゅうもばっちり再現しております。
「ごふっ」
「ひええええっ?!エル様あっ?!」
エリアストは血を吐いた。
「エル様エル様っ」
ガクリと膝をつくエリアストに、慌てて駆け寄るアリス。
「どうした、エルシィ」
「こちらの台詞ですっ。すぐお医者様お呼びしますからっ」
涙目でおろおろとエリアストの背中をにくきゅうで摩り、扉へ向かおうと視線をやると、エリアストがアリスの手を掴む。
「私から離れることは許さん、エルシィ」
動転して医者を自身で呼びに行こうとするねこアリスを、その姿に動揺しすぎたエリアストが少々強めの口調で止める。が、鼻からも血が流れてきた。ねこアリスのお耳としっぽが、ぶわあっ、となったような幻覚が見える。
「エル様エル様あっ、死んではダメですっ、わたくしを、わたくしを置いていかないでくださいぃっ」
ぎゅうぅっ、とエリアストの頭を抱き締めるアリスに、エリアストの理性は崩壊した。
「絨毯、変えておいてちょうだいねぇ」
一瞬で部屋からいなくなった二人を気にすることなく、アイリッシュは血塗れの絨毯を見ながら、ニマニマと次のイタズラを考えていた。
*おしまい*
日常に時々挟まる、アイリッシュのイタズラに振り回される二人のお話しでした。
次章夢幻の住人編を、引き続きお楽しみください。
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