ポンコツ悪魔の召喚

らがまふぃん

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ポンコツ悪魔の召喚

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 こちらの話は、終わり方が中途半端な感じが否めません。
 「この後の物語はあなた自身で」というような終わり方を好まれない場合は、このまま閉じてください。
 

*~*~*~*~*


 「は?」
 「え?」
 「ウソ、だろ?」
 「あ、あれ?」
 「ぅおおおおおおおいいいぃぃぃ!!」
 「あれえぇぇぇ?!」



 悪魔対祓魔師はらいまし、なんてよくある構図。この世界では、悪魔は人に取り憑くものではなく、人型をとって人に紛れて生活し、悪の道へと唆す、実態を持った存在だ。祓魔師以外がその姿を見分けることは困難。時々、なんか人と違う?という、気のせいかも程度の違和感を持つ、勘のいい人もいる。
 この悪魔、自然に発生するわけではない。悪魔には悪魔の棲む世界があり、誰かが何らかの理由で召喚をする。召喚された悪魔は、召喚主の願いをひとつだけ叶える。その願いを叶えると、そのまま帰ると言われている。しかし、実際帰る悪魔は殆どいない。人間の世界で人間を堕落させ、破滅させ、時には権力を握らせ。混乱や混沌を楽しむのだ。そんな悪魔を帰す、もしくは消滅させるのが、祓魔師の仕事だ。
 祓魔師にも階級が存在する。見習いから始まり、初級、中級、上級と上がる。階級が上であればあるほど、祓える悪魔のレベルが変わる。ざっくりと言えば、名の知れた悪魔を倒せるのが上級。人型をうまくとれないレベルの悪魔は見習いが。名の知れた悪魔ほど、消滅は難しい。上級でも帰すのがせいぜいだ。帰しても帰しても、誰かに呼び戻される。イタチごっこだ。考えたくはないが、どうせすぐ戻れるのだから、と面倒ごとを避けて一時的に帰還しているだけだとしたら、名の知れた悪魔に対抗できるとは言い難くなってしまう。それでもやらなければ、被害は広がる一方なのだ。
 だが、希望はある。世界にたった三人ではあるが、上級の上の階級を持つ者がいる。
 階級ゼロ。
 すべての悪魔を消滅させることが出来る、とてつもない力の持ち主。尋常ではないその力故、ゼロの半径五km圏内に、名もなき悪魔は立ち入れない。名の知れた悪魔さえ、警戒を隠さないという。
 「ひえええええ」
  何と言う情けない声だろう。人型をとれているのでそれなりの悪魔ではあるが、自分の相手ではないレベルだ。本来なら。
 「おまえ、そこまでの脆弱さで何故俺の前にいる?」
 祓魔師階級ゼロ、ヴァル。闇色の髪に赤い瞳、祓いの魔具は、光を一切通さない漆黒の長剣。悪魔界でも脅威の対象、階級ゼロ。名もなき悪魔はボタボタと涙を落としていた。
 ヴァルは不思議で仕方がなかった。この悪魔の存在が。
 悪魔には、核というモノが存在する。この核によって、悪魔のレベルが決まる。魔力量も。悪魔と祓魔師の戦いは、互いの魔力のぶつかり合いみたいなものだ。悪魔より魔力量の劣る人間は、魔具によって魔力使用の効率化を図る。無駄を省いてその差を補っているに過ぎない。
 さて、くだんの悪魔だが。何が不思議かというと、核が弱い。祓魔師の中級、もしかすると初級でも消滅させられるかもしれない、という程度に。それなのに、魔力量が異常なのだ。名の知れた悪魔以上かも知れない。
 見た限り、こんなポンコツ悪魔の召喚なんて、何の願いがあったんだ。
 「おい、名もなき悪魔。おまえ、名前は?」
 便宜上名もなき悪魔と言っているが、どんなに弱い悪魔でも、人型を取れている以上、名はある。知られていないだけで。
 「ふえ?あ、あ、えと、ゼヴィ、です」
 「随分アンバランスなものだな、おまえ」
 「え?え?」
 「まあ、出会でくわしたからには放置は出来ない。潔く死ね」
 漆黒の長剣が逆袈裟に振られた。
 「たすけてぇぇぇ」
 刹那、ゼヴィを守るように魔方陣が展開された。それと同時にヴァルの足下にも同じ魔方陣が展開される。
 「何っ?!」
 ヴァルは飛び退こうとしたが叶わない。悪魔の魔方陣など、何が起こるかわからない。
 「おまえっ!!」
 ヴァルの睨みにゼヴィはますます怯えて、ブシャッと涙をほとばしらせる。ヴァルの姿が消えた。そして。
 「は?」
 「え?」
 「ウソ、だろ?」
 「あ、あれ?」
 「ぅおおおおおおおいいいぃぃぃ!!」
 「あれえぇぇぇ?!」
 消えたはずのヴァルは、ゼヴィの側の魔方陣から姿を現した。
 召喚魔法。
 なんとゼヴィは、ヴァルを召喚してしまったのだ。



 召喚魔法。契約を結んだ時点でその魔方陣は消え、召喚されたものは召喚者に従う。契約の完了を持って、召喚されたものは自由となる。
 さて今回。召喚者=悪魔、被召喚者=人間(祓魔師)。
 「納得できるかああああああ!!」
 怒気を孕みまくったヴァルの声に、ゼヴィはブシャッと涙を溢れさせる。契約を結んでいないため、魔方陣から出られないヴァルは、見えない壁を殴り続ける。
 「すみませんすみませんすみませんんんんん!!」
 しばらくして、埒があかないと何とか自分を宥め、ヴァルは胡座をかいて座った。左肘を左膝に乗せ、その手に顎を乗せている。下から睨みつけられる視線に、ゼヴィはガタガタと震えている。
 「で?おまえ、召喚魔法でホントは何を呼び出したかったんだ」
 不機嫌マックスの低音ボイスに、ゼヴィはほとほとと涙を落としながら目の前で正座をした。
 「じ、自分を守ってくれるもの、強いものを、と、願いました」
 そしたら祓魔師がつれました、と言うワケか。ヴァルは思い切り顔をしかめた。ゼヴィは規格外だ。もちろん桁外れに強いなどという意味ではない。そのまんま、型から外れた悪魔。何が起こるかわからない。何を起こすかわからない。名の知れた悪魔の方が余程対処しやすい。
 「早く望みを言え。もちろん人間に叶えられるものなど、たかが知れているがな」


 
 召喚をするにはいくつか条件がある。
 一、正確な魔方陣の形成。呼び出すものによって、その陣は異なる。
 二、生け贄。呼び出すものによって、その贄は異なる。
 三、正確な呪文。発動させる呪文はやはり呼び出すものによって異なる。
 これらをクリアして、初めて召喚することが出来る。正しく行うことが絶対条件だ。正確な陣を描き、正しい贄を用意しても、発動の呪文を間違えると、陣を描くところからやり直し。結構手間がかかるのだ。それでも召喚は後を絶たない。実のところ、魔力のあるものにはこの召喚が比較的簡単なのだ。正確な陣の型紙があれば、それに魔力を流すだけで陣は完成する。この陣を正確に完成させることが一番厄介なのだ。魔力持ちは、それがお手軽だから、質が悪い。贄も金があれば手に入るものが殆どだ。呪文は録音されたものを流せばいい。魔力と金があれば、成功は約束されているのだ。
 「だからコイツはデタラメなんだ」
 ヴァルは不機嫌なまま、祓魔師をまとめる組織の上層部たちを呼びつけた。帝都の市民街にある喫茶店の一角。ヴァル、ゼヴィ、上層部三人の五人の間には、奇妙な空気が流れている。
 「監視の意味で野放しには出来ないとは言え、ううむ」
 白髪に、目元に皺を刻んだ初老の男、ダーデが腕を組んで悩んでいる。
 「前代未聞、ですからね」
 四十半ばくらいの銀縁眼鏡の男、セルガも苦く笑っている。
 「イレギュラー過ぎてワケわからん。だから組織全体に通達だけはしておいてくれ。オレと悪魔が一緒にいるのは極秘任務のためだと。それで納得させろ。モネ、やめてやれ」
 年齢不詳の少女のような白髪の女性モネは、ゼヴィをずっとつついたり引っ張ったり伸ばしたりしていた。ゼヴィはあうあうと情けない声をずっと出し続けており、何だか憐れだ。
 「ヴァル、これ、なんか変」
 モネの言葉にヴァルも頷く。魔力量と核のアンバランスさを言っているのだ。
 「ああ。どうしてそうなっているのか、見極める意味も含めて契約を結んだ」
 たぶん、これはゼロにしか対処できない。言うなれば召喚の魔方陣は、固有だ。願いを叶えるための魔方陣を描くと思われがちだが、少し違う。願いを叶えることが出来る悪魔を呼び出す魔方陣を描く、が正しい。
 例えば金持ちになりたいと願ったとしよう。一般よりも少し裕福くらいの金持ちを望む場合と、この世の誰よりも金持ちにと望んだ場合。前者と後者では叶えることが出来る悪魔のレベルが違う。欲が強ければ強いほど、それを叶えられる悪魔のレベルが上がる。つまり、どの悪魔を呼び出すかで、叶えられる願いが変わるのだ。だから、悪魔ごとの固有の魔方陣となる。レベルが上がれば上がるほど、陣は複雑に、贄は揃えづらく呪文は難解だ。
 ちなみに嫌がらせ程度の復讐で使用する魔方陣は個人ではなく種族固有の陣で、人型を保てない小鬼が出てくるという感じだ。
 いずれにせよ、悪魔ありきの陣なのだ。
 願いありきの陣ではない。
 ゼヴィの召喚は、根底を覆す。それなのに。
 「友だちになってくれなんて、随分甘い悪魔がいたもんだ」


*~*~*~*~*


 この身がどうなろうとキミだけは守るよ。
 なんて、とても、とても激しい恋のようだね。
 この想いがなんなのかなんてどうでもいい。
 ただキミを守りたい。
 それだけだったんだ。
 少し、一人にしてしまうことを赦してほしい。
 必ず会えるから。
 待っていて、ゼヴィ。



 悪魔同士で殺すことは出来ない。その肉体は滅ぼせても、存在を滅するわけではない。時が経てば復活する。ただし、肉体を滅ぼされると、力が初期化される。今まで使えていた魔法が使えなくなり、膂力も赤子同然。故に、長く生きれば生きるほど、悪魔の能力は高くなる。ただ、滅んだ時点の能力が高いと、その能力に追いつくまでの速度は通常より遙かに早い。知っているか知らないかで、圧倒的に効率が異なるからだ。
 どういう形で復活するかは、その悪魔の能力次第でどうとでもなる。

 「ボクの魔方陣は、イレギュラーじゃない。最初から、あなたを召喚するための陣だったんだよ」
 あなたがボクのために創ってくれた。
 人間に興味のないあなたは、陣を人間界にも誰にも流さなかった。
 誰もあなたを召喚できない。ボクだけが、あなたを召喚できよべる。
 贄という名の代償は、あなたに会えない時間。
 陣を発動させる呪文は「たすけて」たった一言。
 揃えづらい贄や唱えにくい呪文は、上位の悪魔たちのただの見栄だ。
 「ずっと。ずっとずっと、会いたかった」
 待っていたよ。気が遠くなるほどの時間。
 ボクを悪魔界においておけないと、最後の力で人間界に送り出してくれたあなた。
 「やっと、会えたね。バール」
 あなたが祓魔師に生まれ変わったの、ボクのためでしょ。
 の座を奪われるとボクを恐れたサタンが、ボクの核が成長しない呪いをかけた。王の座そんなものなんて、露ほども興味ないのに。そしてサタンに言われるままにボクを迫害し続けた悪魔たち。
 復讐のために滅ぼせる力を、あなたはそう望み。祓魔師として生まれ変わった、元悪魔最強の一角、地獄の大公爵バール。
 「早く、思い出して。ボクを見て」


*おわり*


*~*~*~*~*


*おまけの小話~特級ではなくゼロになったワケ~*

 かつて、上級を凌ぐ力を持った祓魔師が現れ、上級の上の階級を作ろうとなった時。
 その力を持つ者で会議が行われた。
 上級の上の階級の命名会議。
 「にくきゅうがいいよ!かわいいよ!」
 「バカなの?ねえ、バカなの?」
 「階級じゃないなあ。普通に特級でいいと思うよ」
 「やだ!つまんない!にくきゅうがいい!」
 「いらない特別感しかないよ。羞恥で殺す気なの?バカなの?」
 「バカバカ言わないでよ!コウのバカ!」
 「みゃーこの方がバカだよ」
 「うわあああああん!セトォォォォォ!コウがいじめるよおおおお」
 「はいはい、みやこは一生懸命考えたんだよね。じゃ、特級で決まりでいいかな」
 「セトのおたんこなすぅぅぅぅぅ!」
 「ゼロ」
 「え?」
 「なんか特別な感じがいいんでしょ。すべてを無に。だから、ゼロ」
 ナントカ級にしなくてもいいでしょ、とコウはそっぽを向いた。
 「カッ、カッコイイ!カッコイイ!ゼロ!それにしよう!すごい!すごいよコウ!」
 「はいはい」
 「セトもカッコイイと思うよね!」
 「気に入った名前が付いて良かったね」
 「うん!じゃあ次は登場ポーズを決めよう!」
 「おつかれ~」
 「それじゃあ、また明日ね」
 「なんでよおおおおおぉ?!」


*おしまい*


*~*~*~*~*

 最後までお読みいただきありがとうございました。
 これで終わり?もっと話を広げられそう。と感じる方もいらっしゃると思うのですが、申し訳ありません。自分の中で、これが完成形となっております。
 ちなみにゼヴィは愛称です。正式な名前はベルゼブブです。


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