16 / 16
最終話
しおりを挟む
またどこかへ行ってしまったと思っていたため、意外だった。瓦礫からフワリと降り立つと、二人に袋を差し出した。
「お腹空いたかなーって」
まさかそんな気遣いをされるとは思ってもいなかった。二人はお礼を言って受け取り、黙々とお弁当を食べる。それを襲は楽しそうに見ている。
「なんだよ、襲」
そんな空気に耐えかねたジョザイアが口を開く。
「ん?体力つけたらまたセックスしようと思って」
二人は思いきり噎せた。
「おまっ、あんだけヤッてまだ足りねぇのかよ!」
襲は笑った。
「まだまだ足りないよ。ほんの少しでしょ。魔力の器が大きくなったの」
その言葉に二人は大きく目を見開く。セックスだけが目的ではない言葉。あの違和感の正体、やはり気のせいなどではなかった。
人にはそれぞれ魔力を溜められる量が決まっており、その量で、貴族級、王城級、王族級と決まってくる。溜められるものを器と呼ぶなら、確かに大きくなった。今までの魔力最高値より、増えているのだ。こんなこと、普通はあり得ない。生まれ持って決まったものを変えるなんて。
「ボクの魔力を混ぜた体液を体に入れることで、器が大きくなるみたい」
圧倒的な魔力保持者の成せる業か。
「でもね、生きていられたのはおまえたちだけ」
何人も試してみたが、耐えきれずに死んだ。中には王族級の者もいたので、元々の魔力量が関係しているわけではなさそうだ。王城級のジョザイアとベロニカは、こうして生きているのだから。
「さすがボクが気に入っているだけある。がんばってボクに追いついてね」
何となく食べるペースが落ちる二人だった。
荒い息づかいが聞こえる。淫靡な水音が辺りを染めていた。
ジョザイアは俯せの状態で、膝を立てる形で襲を受け入れていた。後ろ手に襲の片手で両手首を拘束され、まったく解くことが出来ず、犯され続けている。襲の激しい律動で地面に擦られ続け、シャツの肩と胸は擦り切れ、膝と頬は血が滲んでいる。
ベロニカは、ずっと口内を蹂躙されている。後頭部に襲の手が回り、僅かにも離れない。歯列をなぞられ、舌を絡ませ舐られる。魔力の籠もった唾液を零すことは許されず、懸命に喉を動かし嚥下する。ようやく襲が離れると、膝立ちだったベロニカは、倒れるように体を傾がせた。
「まだ寝るには早いよ、ベロニカ」
傾ぐベロニカのその細い首を掴む。
「かはっ」
喉を絞められ苦しそうに喘ぐベロニカを楽しそうに見つめ、襲は自分の舌を噛んだ。そしてベロニカの開いた口に再び舌を差し入れ絡ませる。ベロニカは血の味を感じた途端、暴れ出す。襲はベロニカを解放した。そのままベロニカは倒れ込み、叫びながらのたうち回る。
「ボクの血は魔力が濃いよ。がんばってね、ベロニカ」
そう言って楽しそうにジョザイアにのしかかると、同じようにその口に舌を絡ませた。
「んんんんん!!」
ジョザイアの手を解放し、己を引き抜いて、二人の藻掻く様を恍惚と見つめ、思い出したようにベロニカに近付く。
「ああ、ベロニカ、セックスは痛い方が好きだったね」
転がり回るベロニカを押さえつけ、凶悪なモノを中に突き立てる。ベロニカは逃れようと暴れるが、襲はビクともしない。
「すごく締まってる。感じてるの?ベロニカ」
楽しそうな襲の声を聞きながら、ベロニカは揺さぶられ続けた。
「血でもいいなら、なにもセックスしなくていいんじゃねぇの」
体に力が入らず、瓦礫に背を預けて座るジョザイアが、不満そうに口を尖らせた。側の瓦礫には、ベロニカが横たわっている。座る体力もないようだ。
「つれないね。ボクとセックスするのイヤなの?」
ジョザイアはグッと押し黙ってそっぽを向く。襲は笑った。
「精液とか唾液の弱い魔力のもので慣らしてからじゃないと、おまえたちが壊れちゃうんだよ。ボクの血は魔力が強いからね」
込める魔力が同じでも、魔力の吸収率が違う。精液などが込めた魔力の十%程度しか吸収できないとしたら、血液は三十%近く吸収できる。それだけ器が大きくなればいいが、取り込んだ魔力の千分の一程度しか器に影響を及ぼさない。
「もっともっとボクの魔力量に近付けば、血だけでもいいんだろうけど」
襲はジョザイアの頬をするりと撫でた。
「ボクはおまえたちとセックスしたいなあ」
ジョザイアが拳を振り上げたが、空振り。
「ふふ、怖い怖い」
フワリと空中に浮かぶ。
「またごはん調達してくるね」
楽しそうに襲は笑う。
「もっと体力つけてよ。もっともっと楽しもう」
少しでも早く追いついてもらうために。
「愛してるよ、ジョザイア、ベロニカ」
早くボクと本気で殺し合おう。
*おわり*
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
短編集「これはひとつの愛の形 ケーニス王国編」で、もう少し書きたかった部分を付け足してみました。
クーデターを起こされかけた国の王様は、さぞかしヘタレだろうと思っていましたが、なかなかカッコイイおじさまを書けたのではないかと自画自賛です。歴代の国王たちがダメダメだったのでしょう。先代の国王がまともで、その子どもも頑張っている。まだまだ改革に時間がかかるお国なのです。闇賭博に出入りする王族もいるようですが、王族とは直系のみならず、傍系もいるわけです。そういう感じです。
わかりづらい部分も多々あったかと思いますが、どうかご容赦くださいませ。
なかなか受け入れづらい内容かとは思いましたが、お付き合いくださりありがとうございました。
「お腹空いたかなーって」
まさかそんな気遣いをされるとは思ってもいなかった。二人はお礼を言って受け取り、黙々とお弁当を食べる。それを襲は楽しそうに見ている。
「なんだよ、襲」
そんな空気に耐えかねたジョザイアが口を開く。
「ん?体力つけたらまたセックスしようと思って」
二人は思いきり噎せた。
「おまっ、あんだけヤッてまだ足りねぇのかよ!」
襲は笑った。
「まだまだ足りないよ。ほんの少しでしょ。魔力の器が大きくなったの」
その言葉に二人は大きく目を見開く。セックスだけが目的ではない言葉。あの違和感の正体、やはり気のせいなどではなかった。
人にはそれぞれ魔力を溜められる量が決まっており、その量で、貴族級、王城級、王族級と決まってくる。溜められるものを器と呼ぶなら、確かに大きくなった。今までの魔力最高値より、増えているのだ。こんなこと、普通はあり得ない。生まれ持って決まったものを変えるなんて。
「ボクの魔力を混ぜた体液を体に入れることで、器が大きくなるみたい」
圧倒的な魔力保持者の成せる業か。
「でもね、生きていられたのはおまえたちだけ」
何人も試してみたが、耐えきれずに死んだ。中には王族級の者もいたので、元々の魔力量が関係しているわけではなさそうだ。王城級のジョザイアとベロニカは、こうして生きているのだから。
「さすがボクが気に入っているだけある。がんばってボクに追いついてね」
何となく食べるペースが落ちる二人だった。
荒い息づかいが聞こえる。淫靡な水音が辺りを染めていた。
ジョザイアは俯せの状態で、膝を立てる形で襲を受け入れていた。後ろ手に襲の片手で両手首を拘束され、まったく解くことが出来ず、犯され続けている。襲の激しい律動で地面に擦られ続け、シャツの肩と胸は擦り切れ、膝と頬は血が滲んでいる。
ベロニカは、ずっと口内を蹂躙されている。後頭部に襲の手が回り、僅かにも離れない。歯列をなぞられ、舌を絡ませ舐られる。魔力の籠もった唾液を零すことは許されず、懸命に喉を動かし嚥下する。ようやく襲が離れると、膝立ちだったベロニカは、倒れるように体を傾がせた。
「まだ寝るには早いよ、ベロニカ」
傾ぐベロニカのその細い首を掴む。
「かはっ」
喉を絞められ苦しそうに喘ぐベロニカを楽しそうに見つめ、襲は自分の舌を噛んだ。そしてベロニカの開いた口に再び舌を差し入れ絡ませる。ベロニカは血の味を感じた途端、暴れ出す。襲はベロニカを解放した。そのままベロニカは倒れ込み、叫びながらのたうち回る。
「ボクの血は魔力が濃いよ。がんばってね、ベロニカ」
そう言って楽しそうにジョザイアにのしかかると、同じようにその口に舌を絡ませた。
「んんんんん!!」
ジョザイアの手を解放し、己を引き抜いて、二人の藻掻く様を恍惚と見つめ、思い出したようにベロニカに近付く。
「ああ、ベロニカ、セックスは痛い方が好きだったね」
転がり回るベロニカを押さえつけ、凶悪なモノを中に突き立てる。ベロニカは逃れようと暴れるが、襲はビクともしない。
「すごく締まってる。感じてるの?ベロニカ」
楽しそうな襲の声を聞きながら、ベロニカは揺さぶられ続けた。
「血でもいいなら、なにもセックスしなくていいんじゃねぇの」
体に力が入らず、瓦礫に背を預けて座るジョザイアが、不満そうに口を尖らせた。側の瓦礫には、ベロニカが横たわっている。座る体力もないようだ。
「つれないね。ボクとセックスするのイヤなの?」
ジョザイアはグッと押し黙ってそっぽを向く。襲は笑った。
「精液とか唾液の弱い魔力のもので慣らしてからじゃないと、おまえたちが壊れちゃうんだよ。ボクの血は魔力が強いからね」
込める魔力が同じでも、魔力の吸収率が違う。精液などが込めた魔力の十%程度しか吸収できないとしたら、血液は三十%近く吸収できる。それだけ器が大きくなればいいが、取り込んだ魔力の千分の一程度しか器に影響を及ぼさない。
「もっともっとボクの魔力量に近付けば、血だけでもいいんだろうけど」
襲はジョザイアの頬をするりと撫でた。
「ボクはおまえたちとセックスしたいなあ」
ジョザイアが拳を振り上げたが、空振り。
「ふふ、怖い怖い」
フワリと空中に浮かぶ。
「またごはん調達してくるね」
楽しそうに襲は笑う。
「もっと体力つけてよ。もっともっと楽しもう」
少しでも早く追いついてもらうために。
「愛してるよ、ジョザイア、ベロニカ」
早くボクと本気で殺し合おう。
*おわり*
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
短編集「これはひとつの愛の形 ケーニス王国編」で、もう少し書きたかった部分を付け足してみました。
クーデターを起こされかけた国の王様は、さぞかしヘタレだろうと思っていましたが、なかなかカッコイイおじさまを書けたのではないかと自画自賛です。歴代の国王たちがダメダメだったのでしょう。先代の国王がまともで、その子どもも頑張っている。まだまだ改革に時間がかかるお国なのです。闇賭博に出入りする王族もいるようですが、王族とは直系のみならず、傍系もいるわけです。そういう感じです。
わかりづらい部分も多々あったかと思いますが、どうかご容赦くださいませ。
なかなか受け入れづらい内容かとは思いましたが、お付き合いくださりありがとうございました。
7
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる