愛を知らない者たちの愛

らがまふぃん

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 「お待たせ、ジョザイア」
 血と愛液でドロドロになったベロニカを気絶したまま床に放置して、口元に妖艶な笑みを浮かべたかさねがゆっくりジョザイアに歩み寄る。
 脳振盪をおこして気絶していたジョザイアは目覚めるも、潰された目の痛みにうずくまりながら、悲鳴をかみ殺していた。何とか呼吸を整え、魔力を上手く循環させて、目の回復に努める。ようやく痛みが引き、視力が戻ってきた頃、襲がジョザイアの顔を覗き込んだ。
 「ああ、おまえもそんな顔するの?ホントにおまえたちはボクを悦ばせるのがうまい」
 苦悶に顔を歪め、それでも輝きを失わない目が堪らない。
 「そんな顔しなくても、ちゃんと愛してあげるから大丈夫だよ、ジョザイア」
 服を切り裂かれ、肢体が露わになる。脳のダメージの影響にまで治癒を施せなかったせいで、まだ体に力の入らないジョザイアに抵抗する術はない。軽々と持ち上げられ、背後から抱き締められると、その背中に噛みつかれた。
 「ぁぐあっ」
 ゴリ、と容赦ない音がする。そして流れる血と歯形をなぞるように、襲の舌が淫靡に纏わりつく。
 「キスはまだまだ下手だけど、いいよ。セックスしよう、ジョザイア」
 胡座をかく襲に背を向けて座るジョザイア。その体は、襲と繋がっている。ジョザイアの体がグラリと倒れる。
 「ほら、ジョザイア」
 俯せで倒れ込むジョザイアの後頭部の髪を掴んで、無理矢理起き上がらせる。
 「休んでる暇はないよ」
 髪を掴む手とは反対の手で顎を掴み、倒れた拍子に切れた額から流れる血を、背後から舐め取る。
 「ボクを満足させるんでしょ?足りないよ、ジョザイア。まだまだ足りない」
 楽しそうに襲は下から何度も突き上げる。ジョザイアは焦点の合わない目を彷徨わせる。もう意識を保っていられなかった。過ぎた快楽は拷問だ。
 「ぅあ、かさ、ね、もう」
 「もう少し激しくして欲しいの?それとも」
 悪魔が囁く。
 「もう少し酷くして欲しい?」



 目覚めると、星が瞬いていた。
 力の入らない体を鞭打って、何とか体を起こす。体からズルリと何かが落ちた。
 「襲様の」
 ベロニカに掛けられていたのは、襲が着ていた黒い薄手のコートだった。辺りを見回すと、離れたところにジョザイアを見つけた。ジョザイアには、襲の黒いシャツが掛けられていた。まだ目覚める様子のないジョザイアの側まで、情けなくも立ち上がれない体を這わせながら近づく。体力を回復するためだろう。深く眠るジョザイアの姿に、ベロニカは嫉妬を覚える。襲との痕跡が許し難い。
 「チッ。おい、ジョザイア。起きろ。おい」
 拳でボコボコと頬を殴る。ジョザイアからくぐもった声が漏れる。
 「い、てぇ。加減、しろ、バカ」
 ジョザイアが吐息だけで抗議の声を上げるが、体が動かない。瞼を上げることすら出来ないようだ。お互い思った以上のダメージが残っている。
 「貸しだ、いいな」
 ベロニカはなけなしの魔力で、自身の体を何とか動けるまでに回復させた。襲のコートを羽織ると、ロングワンピースのようになった。重い体を引きずって、一番近くの街まで歩く。勿論金など持っていない。容赦なく通りすがりから財布をる。その金で、回復薬と魔力回復薬を買う。魔力回復薬を口にしてベロニカは違和感を覚えるが、とりあえずジョザイアの元へ戻る。回復薬を口に突っ込むが、嚥下するのも難しいようで、だらだらと口から溢れた。
 「チッ」
 回復薬は皮膚からも吸収できる。投げつけるようにバシャッと顔にかけてしばし。
 「おまえ、もう少し優しく出来ねぇの」
 のろのろと話すジョザイアに、今度は魔力回復薬を口に突っ込んだ。突然流れ込んできた液体に、ジョザイアは思い切りせた。
 「ホント、容赦ねぇな、おまえ」
 回復した魔力で自身を癒すが、ジョザイアは首をかしげた。
 「なんか、あれ?」
 「おや、もう回復したの」
 楽しそうな声がした。
 「襲様!」
 「襲!」


 *最終話につづく*
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