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こういうこともある。
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初投稿です。頭空っぽにして読んでいただければと書いた作品です。
お見苦しい点、わかりづらい点などあると思いますが、笑って流していただけると助かります。
途中、よろしくない言葉遣いや暴力的な表現があるので、念のためR15にしてあります。
*~*~*~*~*
私はこの国の王子として生を受けた。第四王子というなんとも微妙な生まれではあるが。
そんな私にも婚約者がいる。明るい栗色の髪に同じ色の瞳を持つ、リュシフェイル伯爵の娘だ。王子の婚約者としては少々家格が低いと感じるかもしれないが、この伯爵家に関しては決して爵位で判断してはいけない。そういう家だ。
婚約者の名はアマリリス。特筆すべき容姿でも頭脳の持ち主でもない。しかし性格が変わっている。はっきり言って怖い。まったく掴み所がないのだ。
そんな彼女に、ひとつ確信を持って言えることは、彼女は私を好きではないということ。
王家がリュシフェイル伯爵家との繋がりを望んだ政略的なもの。それは理解している。それでも将来を共にするのだから、少しは興味を持ってくれてもいいのではないかと思ってしまう。そう、彼女は私に、好意どころか興味すらない。
まったく掴み所がないというのに、なぜそれは確信を持って言えるのか。
例えばお茶に誘ったとしよう。一週間後の約束だ。にこにこと、かしこまりました、と言う。ところが前日になって外せない予定が入ってしまい、お茶会がキャンセルになる。彼女はにこにこと、かしこまりました、と言う。
予定が空いたので、急だが観劇に誘う。にこにこと、かしこまりました、と言う。ランチも外でどうか、と言うと、やはりにこにこかしこまりました。
約束をしても急に誘っても、ドタキャンしても変更しても、いつでもにこにこかしこまりました。笑顔のポーカーフェイスだ。嬉しいです、楽しみにしています、残念です、そんな言葉を聞いたことがない。
彼女を知らない学友たちは、嫌われたくないからでは、と口をそろえる。口の悪い者など、死ねと言ったら死にそうだな、なんて眉を顰めることを言うのだが、実際に彼女とのやり取りを見てみるといいと思う。口には出来ないその場の雰囲気というか、空気というか、そういうものが、私に対して何の感情もないことを突きつけてくるのだ。
一方私はというと、彼女に興味がある。恋愛感情かと訊かれると正直わからないが、確かに気になっている。第四とはいえ王子だ。王族と縁を結ぶというのに、何の感情も向けてこないことが返って興味をそそるのだ。もちろんすべての国民が王族をありがたがるなんて、夢にも思わない。だが、何の感情も持たない、なんて、あるのだろうか。王族どうこうを抜きにしても、僅かなりとも感情は動くものではないだろうか。それが一切ない。だから、彼女は私に感情を動かすほどのものを、何も感じていないということなのだろう。
そんなに私には何もないのだろうか。
地味に、いや、かなり落ち込む。
だが、ひとつ下の彼女は明日から学園に通う。彼女が心やすく過ごせるよう、取り計らいたいと思っている。
婚約者のアマリリスを馬車で迎えに行く。いつもの笑顔のポーカーフェイスで謝意を述べる彼女に、緊張は見られない。少しくらい揺れる感情を見てみたいものだと思う。
「マリー、入学おめでとう」
馬車に乗り込んでから、祝いの言葉を述べる。やはりにこにこと、ありがとうございますと返す。
マリーと愛称で呼べるのは、婚約初期時、まだ彼女を知らなかった頃に、婚約者なのだから互いに愛称で呼ぼうと提案したからだ。それがなかったら、今でもリュシフェイル伯爵嬢と呼んでいたと確信できる。ちなみに彼女が私を呼んだことはない。殿下、とすら呼ばれたことがない。なんか悲しくなってきた。思えば話もいつも私からだ。それに彼女は相槌を打つだけ。話が広がった例しがない。うん、ますます悲しくなってきた。今も私が隣にいるのに本を読んでいる。寂しくも思うが、酔わないか心配もある。
「マリー、学園でやってみたいことはあるのかい?たくさんのクラブがあるよ」
「いいえ」
「そうか。では生徒会はどうだ?」
「いいえ」
「そ、そうか。だが私が生徒会だから、その、補佐をしてくれたら、嬉しいんだが」
にこにこにこにこ。
笑うだけで返事をくれない。嫌なのかな。嫌だと思ってくれたのかな。感情、動いたのかな。でも、嫌、なの?一度断ったのにしつこく訊いたことが?それとも私と生徒会をすることが?もう泣いてもいいかな。
「ええと、うん、何かやりたいことが見つかるといいね」
「はい」
なんだか目が熱い。視界が歪んでるよ。
*~*~*~*~*
リュシフェイル伯爵家は、伯爵、伯爵夫人、長男、次男、長女、そして次女のアマリリスの六人だ。家族構成的に見て、の話だが。
どういうことか。
この六人、血はまったく繋がっていない。正しい関係性は、上司と部下。長男役のファルが、魔族の筆頭、魔王ルシファー。伯爵役のフィスタが、ルシファーの側近メフィストフェレス。伯爵夫人役のケームが、四天王の一人カイム。次男役のシュラトが、四天王の一人アスタロト。長女役のアルテが、四天王の一人アスタロテ。そして次女役のアマリリスが、四天王の一人リリス。ちなみにアスタロトとアスタロテは双子だ。
リュシフェイル家が魔族であると知るものは、王と王妃、王太子、宰相、外相のみ。外交のためだけに存在する伯爵家。社交場にもあまり出ず、王家主催のものさえ断ることの出来る、貴族たちからしたら奇異でしかない存在。王家並びに政治のトップたちが何も言わないのだから、表立って悪し様に言う家はない。
「ねえリリス、第四王子、ロゼルだっけ?とはどう?婚約してまだ少ししか経ってないからそんなに進展ないか」
この魔族たち、伯爵家役をするときは外見こそ人間の成長に合わせるようにしているが、人間の一生など瞬きと思えるほどの永きを生きる。婚約をしたことなどつい昨日のように感じるが、実際は七年の歳月が経っている。
魔王ルシファーの言葉に、リリスはギンッと睨みつけた。
「うるっせぇんだよ!こちとらどんだけ我慢してっと思ってんだ!思い出させんじゃねぇよハゲが!!」
ルシファーは涙目になって、すみません!と謝った。
普段は何とも思わない年月だが、我慢をしている者の七年は果てしなく永い。
「ほらリリス、主にそんな口訊いちゃダメっていつも言っているでしょう?貴女の我慢も知らず安易に話題にする主の脳ミソが心配だけど、曲がりなりにも私たちの王。どんなに唾棄したくとも臣下は黙って耐えるのみ。主も悪気があったわけじゃないことはわかるでしょう?ただ頭が悪いだけ。赦してあげることも私たち臣下の役目。ね?」
これあげるから、溜飲を下げてね?と、カイムは水色のマカロンをひとつリリスの皿に移してあげる。
「そうですよ、リリス。ルシファー様はただ脳と口が直結しているだけなんですから、いちいち気にするものではありません。さあ、こちらも差し上げますから機嫌を直してくださいね」
メフィストフェレスが、粉砂糖がかかったトリュフをひとつ差し出した。
「ん。リリス、頑張ってる」
「いいこいいこ」
アスタロトとアスタロテが両脇からリリスの頭をなでなでしてくれる。ルシファーは顔をテーブルにくっつけている。クロスがジワジワと濡れていっているのは気にしない。
「あああああ!早く!早くロズをあたしのものにしたいいいいいいぃぃ!!」
リリスはロゼルを絶賛気に入っていた。気に入りすぎて、暴走しないよう常に無でいた。永い時を生きる魔族にとって、人間の寿命はネックだった。ただ、人間が十八歳になれば、魔族として生きられるよう体を創り替えることが出来る。それ以前だと、体を創り替えることに耐えられない者もいる。絶対の安全を確保出来るのが、十八歳というライン。
「まあ、あの王子は健康優良児ですから、大丈夫だとは思うんですけどねぇ」
「でも万が一を考えると、あと少しでしょう?待った方がいいんじゃないかしら」
メフィストフェレスの言葉にカイムが続く。今までの我慢をすべて無にするくらいなら、あと少しくらい待った方がいい。リリスもわかっている。
「ロズが可愛すぎてツライ。いっそ引きこもって会わないようにしよっかなぁ」
「まあ、それだと学園でいらぬ輩にツバを付けられてしまうかもしれないわよ」
「そうですね。リリスに会えなくなって寂しくてつい、なんてことに」
「ふざけんなああああああ!」
想像に腹を立て、手近にあったグラスを投げつける。テーブルに伏せるルシファーの頭に直撃した。
「すみません!」
ぶつけられたルシファーが伏せたまま謝った。
こんなアマリリスことリリスの想いを知ったら、ロゼルは間違いなく驚き、喜びに震えることだろう。
*~*~*~*~*
「何だって?」
マリーから笑みが消えた。
え、超怖い。
私の二年間の学園生活も明日で終わり、というこの日。学園生活でマリーとの距離が縮むことを期待していたが、まったく変化はなかった。
それなのに。
「だって、そうでしょ?ロゼル様がかわいそすぎます!」
金の髪に空のように青い瞳の少女が、胸の前で手を組み、大きな目にいっぱいの涙を溜めて一生懸命訴えている。彼女は今年入学してきたアーネデス伯爵家のエメル嬢だ。私を可哀相だと憐れむのはやめて欲しい。マリーに相手にされていないと実感させられて惨めになるじゃないか。何かと私に絡みついてきていたが(比喩ではない)、こんな風に土足で踏み込まれるような隙をつくった記憶もない。
「アーネデス嬢」
「だから今すぐにでも婚約を破棄してください!」
私の呼びかけに気付かず、またしてもマリーから笑みを消した暴言を吐く。そもそもなぜキミが私たちの関係に口を出すのか。この暴言にまで、かしこまりました、なんてにこにこ言われたら、さすがに立ち直れなかった。けれど、笑みのないマリーが怖い。婚約破棄発言に反応しているのか、アーネデス嬢のお節介に反応しているのか判断しかねるが。
「ね、ロゼル様もホントはそう思ってますよね!ホントに今までよく我慢しましたね!でももう大丈夫です!あたし、ロゼル様を支える覚悟、出来てます!」
何からツッコむべきだろう。
そう思った瞬間。
「殿下」
笑顔はない。凍てつく空気を纏ったマリーが、初めて私を呼んだ。
驚いてマリー見ると、真っ暗な闇を抱えたような目で私を見ていた。
「ま、マリー?」
「殿下は、婚約を解消したい、と、思っているのでしょうか」
マリーが喋っている。私を呼んだ。認識した。嬉しいやらその空気が怖いやらで、変な顔になってしまう。
「思って、いる、と?」
私は全力で首を横に振る。
確かにずっと寂しい思いをしてきた。もっと寄り添い、触れ合い、笑い合いたかった。だからと言って、マリーと離れたいなんて思ったことなどない。いつか、いつかそういう関係を築ければいいと、死ぬ前にはそうなれるといいと、超長期的に考えていた。
「私の側に、私が側にいたいのは、いて欲しいのは、マリーだけだ!他の令嬢をなどと考えたこともない!」
「ロゼル様?!」
「アーネデス嬢、私は何度も言っている。名を呼ぶことを許していないと。軽々しく体に触れてはいけないと。なぜ私たちの関係にまで口を挟む?私が頼んだか?誰かに頼まれた?なぜマリーと婚約解消しないとならない?そしてそうなった場合の後釜がなぜキミなんだ?」
焦ってまとまらない言葉を紡ぎ、捲し立てるようにアーネデス嬢を注意する私に、マリーは初めて本当の笑みを私に向けた。私の顔が真っ赤に染まる。
か、かわ、いい!
成り行きを見守っていた生徒たちも、一層ざわめいた。平々凡々な容姿の、笑顔のポーカーフェイス令嬢アマリリス・リュシフェイル。こんなにも屈託なく笑うなんて。
「ひどい!アマリリス様!どうしてあたしからロゼル様を奪うの?!」
「酷いのはテメェの思考回路だお花畑の雌ブタがあぁぁ!!」
えー、と。幻聴、かな。マリーから放送禁止用語っぽい言葉が出たような。
「今まで散々我慢してきたけどもう赦さねぇ!この世の地獄見せてやんよ?!覚悟しとけやクソビッチ花畑メルヘン女あああぁぁ!!」
向こうに飛んで行っているのは、アーネデス嬢、かな。マリーが後ろ回し蹴りしたように見えたけど、うん、幻覚だよね。彼女はきっと私に叱責されて居たたまれなくなって走り去ったんだよね。
「殿下!」
「はい!」
ものっそいキラッキラした目でマリーが私を呼ぶ。
「殿下の、ううん、ロズの卒業まで待つつもりだったけど!ホントはロズが十八になった時点で解禁するつもりだったけど!みんなが、切りよく卒業まで我慢って言うからすっっっっっっっごく!すっっっっっっっっっっっっっっごく我慢したけど!明日だからいいよね?!一日くらい、誤差だよね?!」
喋っている。マリーが。私に。貼り付けた偽物ではなく、本当に嬉しそうに笑っている。周囲の生徒たちも驚きを隠せないでいる。
「ま、マリー?」
「あああああああかわいいかわいいかわいい!!もうツラかった!八年も我慢させられてホンッッットツラかったあぁ!」
頭を胸に抱き締められ、髪に思い切り頬擦りされている。誰だ、これは。
「ロズ、ロズ、もう我慢しなくていいんだあ!あああああああかわいいかわいいかわいい!!ロズかわいい、かわいいロズ!あたしのロズ、あたしだけのロズ!」
ふむ。意外と胸がある。着痩せするタイプか。
「かわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいい!」
マリーの声可愛い。そして成人した男に可愛いを連呼しないで欲しい。
「ローズ、ローズ、かっわいっいローズッ、あったしっのローズッ」
そろそろ現実を見よう。
これは本当にマリーなのだろうか。なんか今までの婚約期間が夢だったのかな。
マリー、平均より大きめの成人男性をお姫様抱っこしてはいけないよ。驚くほど力持ちだったんだね。ははははは。高い高いしながらくるくる回ったら危ないじゃないか。
「ねぇマリー」
「なあに、ロズ」
「やっていること、全部反対じゃないかなあ」
男が女の人にすることだよね。
「ふふ、そんなこと気にするなんて、ホーントかぁわいー」
別人じゃないよね。みんなも目が泳いでいたけど、微笑ましいモノを見るような目になって去って行ったよ。
「ねぇマリー」
「なあに、ロズ」
「どうして今のマリーを隠していたの?」
再び私をお姫様抱っこしているマリーは、そっと私の頬に唇を落とした。嬉しさと気恥ずかしさで、私の顔はまた真っ赤だろう。これほどまでの情熱を、よく抑えていたものだ。賞賛に値する。私は寂しかったけれど。
「襲いかかる自信があったから。素でいたら」
心からの笑顔だ。
そうか。襲われていたのか、私は。
寂しい婚約期間とどちらが良かったのだろう。よし。考えるのは止めよう。
「あのね、ロズ」
はにかんだ笑顔が胸に刺さる。なにこの可愛い生き物。
「さっきはああ言ったけど、明日までやっぱり我慢するよ」
何の話だっただろうか。小一時間で色々ありすぎた。
首を傾げた私に、再び頬に唇が落ちてきた。柔らかい。嬉死ぬかもしれない。
「卒業まで待つつもりで我慢してたから。一日くらい誤差って言ったけど、明日はロズの学園での集大成だもんね。うん。明日、卒業したら話すよ。全部、話すよ」
薄ら頬を染めて、愛おしそうに私を見るマリー。キミはこんなにも美しかっただろうか。
「ホントのあたしを見ても引かないでくれて良かった。へへ」
また、はにかんだ笑顔を見せてくれた。
本当のマリーの方が、何百倍も魅力的だよ。
お姫様抱っこされたままで格好はつかないけれど、マリーの髪を一房手にとって口づけた。マリーは本当に幸せそうに笑ってくれた。キミのここまでの激情に気付かなかった間抜けな私を赦して欲しい。これからは、キミを、キミと、幸せになりたい。
マリー、一緒に愛を育んでいこう。
*~*~*~*~*
卒業式は無事に終わり、午後のパーティーで、私はマリーをしっかり婚約者としてエスコートが出来た。今まではどこかよそよそしく壁があったのだが、昨日の一件から、マリーは自分を隠さなくなった。今日もお姫様抱っこしようとしてくれたが、きちんとマリーをエスコートしたいと言ったら、花が綻ぶような笑顔を見せてくれた。
ちなみにアーネデス嬢もきちんと卒業式もパーティーも参加している。だが、なんだか動きがおかしい。カクカクしている。知人が話しかけても、定型文のようなものを返していた。
「クソビッチ嬢が気になりますか、殿下」
公の場では言葉遣いが今まで通りだ。でも名前が違うよ、マリー。
「うーん、気になる、というか、なんか変ではないかな」
「そうですか?メルヘン嬢はあんなものでしょう」
ニヤリと若干黒い笑みが零れたよ、マリー。そんなマリーにも胸を刺される。
「それよりも殿下。パーティーが終わりましたら、よろしくお願いいたしますね」
「そうだね。なんだか緊張するよ」
困ったように笑うと、マリーが、ふぐぅ、と胸を押さえながら、がまんがまんがまんがまん、と呪文のように己に言い聞かせていた。
パーティーが終わって、私は約束通りリュシフェイル邸に来ている。何度も訪れてはいるが、今日は重大な話があるとのこと。自然、顔が強ばる。そんな私の隣で、ソファの上で膝立ちをしたマリーが、ずっと私の頭を抱き締めながら、かわいいを連呼しながら髪を撫でている。かわいいの合間に尊いも入り始めた。マリー、私の緊張を解そうとしてくれているのかな。キミの家族の前でそれをされると、私は返って緊張してしまうよ。
「リリス、そろそろ話し始めたいんだが」
そう口を開いたのは、リュシフェイル伯爵ではなく、嫡男のファル殿。
この応接間に入ったときからおかしいとは思っていたのだ。
通常、その館の序列で席は決まる。そうなると当然この館の主は伯爵だ。それなのに、上座に座っているのは嫡男のファル殿。更に、他の家族は席につかず、臣下の位置に立っている。これはどういうことか。
「さて、改めて紹介しよう」
ファル殿がそう言うと、なんと全員の姿が変化した。
「あ、なた、は」
声が、唇が、体が戦慄く。
漆黒の髪は紫の艶を纏い、切れ長の双眸は極上の絳。白磁の肌はどこまでもなめらかで、弧を描く唇は深い紫色をしている。至高のその姿は、間違いなく魔族の王だった。
「るし、ふぁ、王」
「おや、知っていてくれたとは、嬉しいね」
魔族の王は、満足そうに目を細めた。その後ろに控えていた者たちも、なるほど、その立ち位置は間違っていなかった。側近に四天王たちだ。褐色の肌、金の髪をオールバックにし、眼鏡の奥の細い目を光らせた側近メフィストフェレス。同じく褐色の肌に膝まで届く銀の髪、翠の双眸が映すは未来と言われるほどに、その頭脳はこの世の叡智と言わしめる四天王が一人、参謀カイム。白磁の肌、漆黒の髪、その金色の瞳は狙った獲物を確実に仕留める双子の四天王、生ける兵器アスタロトとアスタロテ。
と、言うことは。
私を抱き締める存在にゆっくりと首を動かす。
「まり、ぃ」
夜空のように輝く黒髪は、毛先が緩くウエーブして深い紫へとグラデーションしている。抱き締める腕はしっとりと吸い付くような、透き通るような白い肌。頬は淡く色づき、アメジストのような瞳が情熱的に私を見つめている。どこか幼さを残す顔立ちに、どこまでも扇情的な赤い唇が、ひどく危うい。
どこまでも官能的な肉体とは裏腹に、拷問にかけて敵を落とす最後の四天王。
暴虐のリリス。
「マリ、も、魔族」
信じられない。魔族は傲慢だ。人間よりも圧倒的な力を持ち、遙かに永い時を生きる。それ故か、人間を底辺の生き物だと思っている。実際遭遇してきた魔族たちは、みんなそうだった。完全に人間を見下している。暇つぶしの玩具だと思っている者もいた。
決して相容れない存在だと感じた。
「ロズは」
マリーが口を開いた。そして何か迷ったように口を閉じ、視線を俯かせると、
「ロズは、魔族、キライ?」
そう、言った。
涙の膜が張っている。淡く色づいた頬が、ますます染まる。
こんな顔をさせてしまっているのは、間違いなく自分だ。それがなんだか嬉しくもあり、焦燥にも駆られる。そっと手を伸ばし、柔らかな頬に指先で触れると、マリーの肩がピクリと小さく揺れた。
「泣かないで、マリー」
手のひらで包むように頬に添える。
「確かに魔族にいい印象はなかった」
マリーは悲しそうに眉を寄せた。
「ああ、違う。誤解しないで欲しい」
私はマリーを抱き上げると、私の膝の上に向かい合わせるように座らせた。マリーの両頬を両手でそっと包み込むと、至近距離で視線を合わせた。
「聞いて、マリー。私が今まで接した魔族たちは、お世辞にも仲良くなりたいと思えなかったんだ。でもね、マリー。キミは私を怖がらせないよう、ずっと、八年以上も自分を抑え続けてきてくれた」
片方の手を頬から離し、美しい髪をゆっくり撫でる。
「自分の欲に駆られず、ずっと、ずうっと。そうして私の側に居続けてくれた」
マリーの頬に、一粒涙がこぼれた。私はその涙をいただくように口づける。マリーの顔が真っ赤になった。うん、可愛い。私はにっこり微笑むと、
「魔族は傲慢だと思っていた。そんな種族のキミが、己を押し殺してまで私を欲してくれたのだと思ったら」
ギュッと抱き締めた。
「たまらなく愛おしい」
「ロ、ズ」
「ふふ、すまない。これではマリーが傲慢だと言っているようだね」
「ううん、ううん、違わない。魔族はみんな傲慢で高慢だよ」
「そう。なら、ますますマリーに惚れてしまうね。傲慢なキミが、私のために我慢してくれたなんて」
マリーは子どものように泣いた。たくさん泣いて、今は鼻をぐずぐずさせながら、私の胸にしがみついている。ホント可愛い。
少し落ちついて、疑問が湧く。というより由々しき問題。
「マリー、ひとつ懸念があるんだが」
「懸念?!やだ!そんなのでロズと離れたくない!」
まだ何も言っていないが、あながち的外れでもない。
「うん、あのね、マリーと私の、その、寿命の問題、なんだが」
マリーはハッとした。
「忘れてた!」
そうか。忘れてたか。
「主!」
「んあ?おお、出番か」
突然話を振られた王が変な声を出した。寝てた?
「ロゼル殿、貴殿を今日ここに呼んだのは、それがメインだ」
どういうことだろう。
「この国の王家が我々リュシフェイル家と縁を持ちたいと常々思ってきたのは知っている。それを悉く断ってきていた。ああ、王や王妃はリュシフェイル家が魔族だと知っている。他にも何人か知っているな。故に、我らと縁続きになりたがる」
ここまではいいか?と確認するので、私は頷く。それを見て王は続けた。
「魔族の技術や能力を、奴らは喉から手が出るほど欲しい。歴代の王家の悲願だ。撥ね除け続けたのは、特に我々にメリットが存在しないからだ。だが今回は違う」
王がマリーを見た。
「リリスが貴殿を欲した」
驚きに目を見開く。そのままマリーを見ると、照れたようにはにかんだ。
まずい。
可愛すぎる。
人間の時の姿と違うのに笑顔が一緒とか、なにそれ。反則でしょ。
「貴殿をリリスにくれるなら、僅かばかりの恩恵をもたらすと約束してやった」
王はニヤリと笑った。
「くれるなら。この意味、わかるか」
私の懸念からのこの話。ならば。
「それが、可能なのですね」
「その通り」
寿命があわないなら、あわせればいい。
私を魔族に創り替えて。
「ロズ」
マリーが私の胸元のシャツをキュッと掴んだ。
「勝手にロズの人生決めてごめんなさい」
泣きそうに歪んだ顔で、言葉を続ける。
「でもあたし、どうしても」
「傲慢、だからね」
言葉の割に柔らかな声に、驚いたようにマリーが私を見た。
「マリーは傲慢なんでしょう?ふふ、マリー」
ふよふよと頬を撫でる。
「傲慢でいてくれて、ありがとう」
「っ!ロズッ!」
「ずっと一緒にいよう、マリー」
*~*~*~*~*
「ロズッ!海に行こう!」
「ロズッ!竜族の花畑に行こう!」
「ロズッ!地下庭園に行こう!」
「ロズ!ロズ!」
体を創り替えるのに一週間。痛みはなく、ただひたすらに体がだるく、重かった。それ故、私は昏々と眠り続けた。そうしてようやく終わったようで、あの倦怠感が嘘のようになくなり、むしろ羽のように体が軽かった。薄く目を開くと、美しい紫玉の双眸が飛び込んできた。
「ロズ!」
「ま、り」
「ロズ!!」
ぎゅうぎゅうと抱き締められる。相変わらず愛情表現豊かな婚約者だ。嬉しくてゆるりと笑うと、マリーも満面の笑顔を向けてくれた。痛くないか、おかしな所はないか、具合は悪くないか、そう心配して体中をぺたぺた触る。うん、可愛い。何ともないとわかると、心からの安堵の息を漏らしてくれた。
「心配、かけたね」
ゆるゆるとマリーの髪を撫でると、ポロポロと涙をこぼした。安全とわかっていても、どうしても不安だったのだと、怖かったのだと、涙ながらに呟いた。無事に目を覚ましてくれて良かったと、吐息と共に何度もそう口にした。
愛しくてたまらなくなった。
元気なマリーが、声を詰まらせながら涙と共に囁くように、体を震わせて良かった良かったと繰り返すのだ。
「マリー」
ゆっくり上体を起き上がらせ、愛らしい頬に手を添える。
「もう、離さない」
官能的なその赤い唇に、そっと、触れるだけのくちづけをした。
真っ赤になったマリーは、恥ずかしさを隠すように私の胸に抱きついてくれた。
そうして私が魔族の一員となると、マリーはあちこちに私を誘った。婚約期間に出来なかったことを、思う存分したいのだと。
この国は海に面していないので、初めて海を見たときは、あまりの偉大さに言葉が出なかった。
竜族の花畑は、竜族自体目にしたことがなかったのだが、一体で圧倒的な存在感だったというのに、群れを成していることにひたすらに圧倒された。そしてその竜の生息地には見たこともない花々が咲き乱れ、桃源郷のようだった。
地下庭園は、人間の間では神の雷と呼ばれている谷底にあった。底の見えない谷は、光の届かない場所。それなのに、その庭園は淡く輝いていた。一面に咲く小さな白い花が、微かな光を発している。側にガゼボがあり、定期的に誰かが訪れているようで、美しく整えられていた。夢のような、幻想的な風景に、言葉を忘れた。
他にもたくさんの場所に連れて行ってくれた。たくさんのことを教えてくれた。自分の世界の狭さに驚いた。世界の広さに喜んだ。この世界を、これから悠久ともいえる時間、愛しい人と堪能できるのだ。
マリー。こんなにも素晴らしい世界を教えてくれてありがとう。
マリー。いつも楽しい時間をくれてありがとう。
マリー。ずっと一緒にいさせてくれて、ありがとう。
マリー。マリー。
私を見つけてくれて、ありがとう。
*おしまい*
*~*~*~*~*
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
勢いで読める作品にしたかったのですが、いかがでしたでしょうか。
細かいところは気にせず、クスリと笑っていただけたら幸いです。
お見苦しい点、わかりづらい点などあると思いますが、笑って流していただけると助かります。
途中、よろしくない言葉遣いや暴力的な表現があるので、念のためR15にしてあります。
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私はこの国の王子として生を受けた。第四王子というなんとも微妙な生まれではあるが。
そんな私にも婚約者がいる。明るい栗色の髪に同じ色の瞳を持つ、リュシフェイル伯爵の娘だ。王子の婚約者としては少々家格が低いと感じるかもしれないが、この伯爵家に関しては決して爵位で判断してはいけない。そういう家だ。
婚約者の名はアマリリス。特筆すべき容姿でも頭脳の持ち主でもない。しかし性格が変わっている。はっきり言って怖い。まったく掴み所がないのだ。
そんな彼女に、ひとつ確信を持って言えることは、彼女は私を好きではないということ。
王家がリュシフェイル伯爵家との繋がりを望んだ政略的なもの。それは理解している。それでも将来を共にするのだから、少しは興味を持ってくれてもいいのではないかと思ってしまう。そう、彼女は私に、好意どころか興味すらない。
まったく掴み所がないというのに、なぜそれは確信を持って言えるのか。
例えばお茶に誘ったとしよう。一週間後の約束だ。にこにこと、かしこまりました、と言う。ところが前日になって外せない予定が入ってしまい、お茶会がキャンセルになる。彼女はにこにこと、かしこまりました、と言う。
予定が空いたので、急だが観劇に誘う。にこにこと、かしこまりました、と言う。ランチも外でどうか、と言うと、やはりにこにこかしこまりました。
約束をしても急に誘っても、ドタキャンしても変更しても、いつでもにこにこかしこまりました。笑顔のポーカーフェイスだ。嬉しいです、楽しみにしています、残念です、そんな言葉を聞いたことがない。
彼女を知らない学友たちは、嫌われたくないからでは、と口をそろえる。口の悪い者など、死ねと言ったら死にそうだな、なんて眉を顰めることを言うのだが、実際に彼女とのやり取りを見てみるといいと思う。口には出来ないその場の雰囲気というか、空気というか、そういうものが、私に対して何の感情もないことを突きつけてくるのだ。
一方私はというと、彼女に興味がある。恋愛感情かと訊かれると正直わからないが、確かに気になっている。第四とはいえ王子だ。王族と縁を結ぶというのに、何の感情も向けてこないことが返って興味をそそるのだ。もちろんすべての国民が王族をありがたがるなんて、夢にも思わない。だが、何の感情も持たない、なんて、あるのだろうか。王族どうこうを抜きにしても、僅かなりとも感情は動くものではないだろうか。それが一切ない。だから、彼女は私に感情を動かすほどのものを、何も感じていないということなのだろう。
そんなに私には何もないのだろうか。
地味に、いや、かなり落ち込む。
だが、ひとつ下の彼女は明日から学園に通う。彼女が心やすく過ごせるよう、取り計らいたいと思っている。
婚約者のアマリリスを馬車で迎えに行く。いつもの笑顔のポーカーフェイスで謝意を述べる彼女に、緊張は見られない。少しくらい揺れる感情を見てみたいものだと思う。
「マリー、入学おめでとう」
馬車に乗り込んでから、祝いの言葉を述べる。やはりにこにこと、ありがとうございますと返す。
マリーと愛称で呼べるのは、婚約初期時、まだ彼女を知らなかった頃に、婚約者なのだから互いに愛称で呼ぼうと提案したからだ。それがなかったら、今でもリュシフェイル伯爵嬢と呼んでいたと確信できる。ちなみに彼女が私を呼んだことはない。殿下、とすら呼ばれたことがない。なんか悲しくなってきた。思えば話もいつも私からだ。それに彼女は相槌を打つだけ。話が広がった例しがない。うん、ますます悲しくなってきた。今も私が隣にいるのに本を読んでいる。寂しくも思うが、酔わないか心配もある。
「マリー、学園でやってみたいことはあるのかい?たくさんのクラブがあるよ」
「いいえ」
「そうか。では生徒会はどうだ?」
「いいえ」
「そ、そうか。だが私が生徒会だから、その、補佐をしてくれたら、嬉しいんだが」
にこにこにこにこ。
笑うだけで返事をくれない。嫌なのかな。嫌だと思ってくれたのかな。感情、動いたのかな。でも、嫌、なの?一度断ったのにしつこく訊いたことが?それとも私と生徒会をすることが?もう泣いてもいいかな。
「ええと、うん、何かやりたいことが見つかるといいね」
「はい」
なんだか目が熱い。視界が歪んでるよ。
*~*~*~*~*
リュシフェイル伯爵家は、伯爵、伯爵夫人、長男、次男、長女、そして次女のアマリリスの六人だ。家族構成的に見て、の話だが。
どういうことか。
この六人、血はまったく繋がっていない。正しい関係性は、上司と部下。長男役のファルが、魔族の筆頭、魔王ルシファー。伯爵役のフィスタが、ルシファーの側近メフィストフェレス。伯爵夫人役のケームが、四天王の一人カイム。次男役のシュラトが、四天王の一人アスタロト。長女役のアルテが、四天王の一人アスタロテ。そして次女役のアマリリスが、四天王の一人リリス。ちなみにアスタロトとアスタロテは双子だ。
リュシフェイル家が魔族であると知るものは、王と王妃、王太子、宰相、外相のみ。外交のためだけに存在する伯爵家。社交場にもあまり出ず、王家主催のものさえ断ることの出来る、貴族たちからしたら奇異でしかない存在。王家並びに政治のトップたちが何も言わないのだから、表立って悪し様に言う家はない。
「ねえリリス、第四王子、ロゼルだっけ?とはどう?婚約してまだ少ししか経ってないからそんなに進展ないか」
この魔族たち、伯爵家役をするときは外見こそ人間の成長に合わせるようにしているが、人間の一生など瞬きと思えるほどの永きを生きる。婚約をしたことなどつい昨日のように感じるが、実際は七年の歳月が経っている。
魔王ルシファーの言葉に、リリスはギンッと睨みつけた。
「うるっせぇんだよ!こちとらどんだけ我慢してっと思ってんだ!思い出させんじゃねぇよハゲが!!」
ルシファーは涙目になって、すみません!と謝った。
普段は何とも思わない年月だが、我慢をしている者の七年は果てしなく永い。
「ほらリリス、主にそんな口訊いちゃダメっていつも言っているでしょう?貴女の我慢も知らず安易に話題にする主の脳ミソが心配だけど、曲がりなりにも私たちの王。どんなに唾棄したくとも臣下は黙って耐えるのみ。主も悪気があったわけじゃないことはわかるでしょう?ただ頭が悪いだけ。赦してあげることも私たち臣下の役目。ね?」
これあげるから、溜飲を下げてね?と、カイムは水色のマカロンをひとつリリスの皿に移してあげる。
「そうですよ、リリス。ルシファー様はただ脳と口が直結しているだけなんですから、いちいち気にするものではありません。さあ、こちらも差し上げますから機嫌を直してくださいね」
メフィストフェレスが、粉砂糖がかかったトリュフをひとつ差し出した。
「ん。リリス、頑張ってる」
「いいこいいこ」
アスタロトとアスタロテが両脇からリリスの頭をなでなでしてくれる。ルシファーは顔をテーブルにくっつけている。クロスがジワジワと濡れていっているのは気にしない。
「あああああ!早く!早くロズをあたしのものにしたいいいいいいぃぃ!!」
リリスはロゼルを絶賛気に入っていた。気に入りすぎて、暴走しないよう常に無でいた。永い時を生きる魔族にとって、人間の寿命はネックだった。ただ、人間が十八歳になれば、魔族として生きられるよう体を創り替えることが出来る。それ以前だと、体を創り替えることに耐えられない者もいる。絶対の安全を確保出来るのが、十八歳というライン。
「まあ、あの王子は健康優良児ですから、大丈夫だとは思うんですけどねぇ」
「でも万が一を考えると、あと少しでしょう?待った方がいいんじゃないかしら」
メフィストフェレスの言葉にカイムが続く。今までの我慢をすべて無にするくらいなら、あと少しくらい待った方がいい。リリスもわかっている。
「ロズが可愛すぎてツライ。いっそ引きこもって会わないようにしよっかなぁ」
「まあ、それだと学園でいらぬ輩にツバを付けられてしまうかもしれないわよ」
「そうですね。リリスに会えなくなって寂しくてつい、なんてことに」
「ふざけんなああああああ!」
想像に腹を立て、手近にあったグラスを投げつける。テーブルに伏せるルシファーの頭に直撃した。
「すみません!」
ぶつけられたルシファーが伏せたまま謝った。
こんなアマリリスことリリスの想いを知ったら、ロゼルは間違いなく驚き、喜びに震えることだろう。
*~*~*~*~*
「何だって?」
マリーから笑みが消えた。
え、超怖い。
私の二年間の学園生活も明日で終わり、というこの日。学園生活でマリーとの距離が縮むことを期待していたが、まったく変化はなかった。
それなのに。
「だって、そうでしょ?ロゼル様がかわいそすぎます!」
金の髪に空のように青い瞳の少女が、胸の前で手を組み、大きな目にいっぱいの涙を溜めて一生懸命訴えている。彼女は今年入学してきたアーネデス伯爵家のエメル嬢だ。私を可哀相だと憐れむのはやめて欲しい。マリーに相手にされていないと実感させられて惨めになるじゃないか。何かと私に絡みついてきていたが(比喩ではない)、こんな風に土足で踏み込まれるような隙をつくった記憶もない。
「アーネデス嬢」
「だから今すぐにでも婚約を破棄してください!」
私の呼びかけに気付かず、またしてもマリーから笑みを消した暴言を吐く。そもそもなぜキミが私たちの関係に口を出すのか。この暴言にまで、かしこまりました、なんてにこにこ言われたら、さすがに立ち直れなかった。けれど、笑みのないマリーが怖い。婚約破棄発言に反応しているのか、アーネデス嬢のお節介に反応しているのか判断しかねるが。
「ね、ロゼル様もホントはそう思ってますよね!ホントに今までよく我慢しましたね!でももう大丈夫です!あたし、ロゼル様を支える覚悟、出来てます!」
何からツッコむべきだろう。
そう思った瞬間。
「殿下」
笑顔はない。凍てつく空気を纏ったマリーが、初めて私を呼んだ。
驚いてマリー見ると、真っ暗な闇を抱えたような目で私を見ていた。
「ま、マリー?」
「殿下は、婚約を解消したい、と、思っているのでしょうか」
マリーが喋っている。私を呼んだ。認識した。嬉しいやらその空気が怖いやらで、変な顔になってしまう。
「思って、いる、と?」
私は全力で首を横に振る。
確かにずっと寂しい思いをしてきた。もっと寄り添い、触れ合い、笑い合いたかった。だからと言って、マリーと離れたいなんて思ったことなどない。いつか、いつかそういう関係を築ければいいと、死ぬ前にはそうなれるといいと、超長期的に考えていた。
「私の側に、私が側にいたいのは、いて欲しいのは、マリーだけだ!他の令嬢をなどと考えたこともない!」
「ロゼル様?!」
「アーネデス嬢、私は何度も言っている。名を呼ぶことを許していないと。軽々しく体に触れてはいけないと。なぜ私たちの関係にまで口を挟む?私が頼んだか?誰かに頼まれた?なぜマリーと婚約解消しないとならない?そしてそうなった場合の後釜がなぜキミなんだ?」
焦ってまとまらない言葉を紡ぎ、捲し立てるようにアーネデス嬢を注意する私に、マリーは初めて本当の笑みを私に向けた。私の顔が真っ赤に染まる。
か、かわ、いい!
成り行きを見守っていた生徒たちも、一層ざわめいた。平々凡々な容姿の、笑顔のポーカーフェイス令嬢アマリリス・リュシフェイル。こんなにも屈託なく笑うなんて。
「ひどい!アマリリス様!どうしてあたしからロゼル様を奪うの?!」
「酷いのはテメェの思考回路だお花畑の雌ブタがあぁぁ!!」
えー、と。幻聴、かな。マリーから放送禁止用語っぽい言葉が出たような。
「今まで散々我慢してきたけどもう赦さねぇ!この世の地獄見せてやんよ?!覚悟しとけやクソビッチ花畑メルヘン女あああぁぁ!!」
向こうに飛んで行っているのは、アーネデス嬢、かな。マリーが後ろ回し蹴りしたように見えたけど、うん、幻覚だよね。彼女はきっと私に叱責されて居たたまれなくなって走り去ったんだよね。
「殿下!」
「はい!」
ものっそいキラッキラした目でマリーが私を呼ぶ。
「殿下の、ううん、ロズの卒業まで待つつもりだったけど!ホントはロズが十八になった時点で解禁するつもりだったけど!みんなが、切りよく卒業まで我慢って言うからすっっっっっっっごく!すっっっっっっっっっっっっっっごく我慢したけど!明日だからいいよね?!一日くらい、誤差だよね?!」
喋っている。マリーが。私に。貼り付けた偽物ではなく、本当に嬉しそうに笑っている。周囲の生徒たちも驚きを隠せないでいる。
「ま、マリー?」
「あああああああかわいいかわいいかわいい!!もうツラかった!八年も我慢させられてホンッッットツラかったあぁ!」
頭を胸に抱き締められ、髪に思い切り頬擦りされている。誰だ、これは。
「ロズ、ロズ、もう我慢しなくていいんだあ!あああああああかわいいかわいいかわいい!!ロズかわいい、かわいいロズ!あたしのロズ、あたしだけのロズ!」
ふむ。意外と胸がある。着痩せするタイプか。
「かわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいい!」
マリーの声可愛い。そして成人した男に可愛いを連呼しないで欲しい。
「ローズ、ローズ、かっわいっいローズッ、あったしっのローズッ」
そろそろ現実を見よう。
これは本当にマリーなのだろうか。なんか今までの婚約期間が夢だったのかな。
マリー、平均より大きめの成人男性をお姫様抱っこしてはいけないよ。驚くほど力持ちだったんだね。ははははは。高い高いしながらくるくる回ったら危ないじゃないか。
「ねぇマリー」
「なあに、ロズ」
「やっていること、全部反対じゃないかなあ」
男が女の人にすることだよね。
「ふふ、そんなこと気にするなんて、ホーントかぁわいー」
別人じゃないよね。みんなも目が泳いでいたけど、微笑ましいモノを見るような目になって去って行ったよ。
「ねぇマリー」
「なあに、ロズ」
「どうして今のマリーを隠していたの?」
再び私をお姫様抱っこしているマリーは、そっと私の頬に唇を落とした。嬉しさと気恥ずかしさで、私の顔はまた真っ赤だろう。これほどまでの情熱を、よく抑えていたものだ。賞賛に値する。私は寂しかったけれど。
「襲いかかる自信があったから。素でいたら」
心からの笑顔だ。
そうか。襲われていたのか、私は。
寂しい婚約期間とどちらが良かったのだろう。よし。考えるのは止めよう。
「あのね、ロズ」
はにかんだ笑顔が胸に刺さる。なにこの可愛い生き物。
「さっきはああ言ったけど、明日までやっぱり我慢するよ」
何の話だっただろうか。小一時間で色々ありすぎた。
首を傾げた私に、再び頬に唇が落ちてきた。柔らかい。嬉死ぬかもしれない。
「卒業まで待つつもりで我慢してたから。一日くらい誤差って言ったけど、明日はロズの学園での集大成だもんね。うん。明日、卒業したら話すよ。全部、話すよ」
薄ら頬を染めて、愛おしそうに私を見るマリー。キミはこんなにも美しかっただろうか。
「ホントのあたしを見ても引かないでくれて良かった。へへ」
また、はにかんだ笑顔を見せてくれた。
本当のマリーの方が、何百倍も魅力的だよ。
お姫様抱っこされたままで格好はつかないけれど、マリーの髪を一房手にとって口づけた。マリーは本当に幸せそうに笑ってくれた。キミのここまでの激情に気付かなかった間抜けな私を赦して欲しい。これからは、キミを、キミと、幸せになりたい。
マリー、一緒に愛を育んでいこう。
*~*~*~*~*
卒業式は無事に終わり、午後のパーティーで、私はマリーをしっかり婚約者としてエスコートが出来た。今まではどこかよそよそしく壁があったのだが、昨日の一件から、マリーは自分を隠さなくなった。今日もお姫様抱っこしようとしてくれたが、きちんとマリーをエスコートしたいと言ったら、花が綻ぶような笑顔を見せてくれた。
ちなみにアーネデス嬢もきちんと卒業式もパーティーも参加している。だが、なんだか動きがおかしい。カクカクしている。知人が話しかけても、定型文のようなものを返していた。
「クソビッチ嬢が気になりますか、殿下」
公の場では言葉遣いが今まで通りだ。でも名前が違うよ、マリー。
「うーん、気になる、というか、なんか変ではないかな」
「そうですか?メルヘン嬢はあんなものでしょう」
ニヤリと若干黒い笑みが零れたよ、マリー。そんなマリーにも胸を刺される。
「それよりも殿下。パーティーが終わりましたら、よろしくお願いいたしますね」
「そうだね。なんだか緊張するよ」
困ったように笑うと、マリーが、ふぐぅ、と胸を押さえながら、がまんがまんがまんがまん、と呪文のように己に言い聞かせていた。
パーティーが終わって、私は約束通りリュシフェイル邸に来ている。何度も訪れてはいるが、今日は重大な話があるとのこと。自然、顔が強ばる。そんな私の隣で、ソファの上で膝立ちをしたマリーが、ずっと私の頭を抱き締めながら、かわいいを連呼しながら髪を撫でている。かわいいの合間に尊いも入り始めた。マリー、私の緊張を解そうとしてくれているのかな。キミの家族の前でそれをされると、私は返って緊張してしまうよ。
「リリス、そろそろ話し始めたいんだが」
そう口を開いたのは、リュシフェイル伯爵ではなく、嫡男のファル殿。
この応接間に入ったときからおかしいとは思っていたのだ。
通常、その館の序列で席は決まる。そうなると当然この館の主は伯爵だ。それなのに、上座に座っているのは嫡男のファル殿。更に、他の家族は席につかず、臣下の位置に立っている。これはどういうことか。
「さて、改めて紹介しよう」
ファル殿がそう言うと、なんと全員の姿が変化した。
「あ、なた、は」
声が、唇が、体が戦慄く。
漆黒の髪は紫の艶を纏い、切れ長の双眸は極上の絳。白磁の肌はどこまでもなめらかで、弧を描く唇は深い紫色をしている。至高のその姿は、間違いなく魔族の王だった。
「るし、ふぁ、王」
「おや、知っていてくれたとは、嬉しいね」
魔族の王は、満足そうに目を細めた。その後ろに控えていた者たちも、なるほど、その立ち位置は間違っていなかった。側近に四天王たちだ。褐色の肌、金の髪をオールバックにし、眼鏡の奥の細い目を光らせた側近メフィストフェレス。同じく褐色の肌に膝まで届く銀の髪、翠の双眸が映すは未来と言われるほどに、その頭脳はこの世の叡智と言わしめる四天王が一人、参謀カイム。白磁の肌、漆黒の髪、その金色の瞳は狙った獲物を確実に仕留める双子の四天王、生ける兵器アスタロトとアスタロテ。
と、言うことは。
私を抱き締める存在にゆっくりと首を動かす。
「まり、ぃ」
夜空のように輝く黒髪は、毛先が緩くウエーブして深い紫へとグラデーションしている。抱き締める腕はしっとりと吸い付くような、透き通るような白い肌。頬は淡く色づき、アメジストのような瞳が情熱的に私を見つめている。どこか幼さを残す顔立ちに、どこまでも扇情的な赤い唇が、ひどく危うい。
どこまでも官能的な肉体とは裏腹に、拷問にかけて敵を落とす最後の四天王。
暴虐のリリス。
「マリ、も、魔族」
信じられない。魔族は傲慢だ。人間よりも圧倒的な力を持ち、遙かに永い時を生きる。それ故か、人間を底辺の生き物だと思っている。実際遭遇してきた魔族たちは、みんなそうだった。完全に人間を見下している。暇つぶしの玩具だと思っている者もいた。
決して相容れない存在だと感じた。
「ロズは」
マリーが口を開いた。そして何か迷ったように口を閉じ、視線を俯かせると、
「ロズは、魔族、キライ?」
そう、言った。
涙の膜が張っている。淡く色づいた頬が、ますます染まる。
こんな顔をさせてしまっているのは、間違いなく自分だ。それがなんだか嬉しくもあり、焦燥にも駆られる。そっと手を伸ばし、柔らかな頬に指先で触れると、マリーの肩がピクリと小さく揺れた。
「泣かないで、マリー」
手のひらで包むように頬に添える。
「確かに魔族にいい印象はなかった」
マリーは悲しそうに眉を寄せた。
「ああ、違う。誤解しないで欲しい」
私はマリーを抱き上げると、私の膝の上に向かい合わせるように座らせた。マリーの両頬を両手でそっと包み込むと、至近距離で視線を合わせた。
「聞いて、マリー。私が今まで接した魔族たちは、お世辞にも仲良くなりたいと思えなかったんだ。でもね、マリー。キミは私を怖がらせないよう、ずっと、八年以上も自分を抑え続けてきてくれた」
片方の手を頬から離し、美しい髪をゆっくり撫でる。
「自分の欲に駆られず、ずっと、ずうっと。そうして私の側に居続けてくれた」
マリーの頬に、一粒涙がこぼれた。私はその涙をいただくように口づける。マリーの顔が真っ赤になった。うん、可愛い。私はにっこり微笑むと、
「魔族は傲慢だと思っていた。そんな種族のキミが、己を押し殺してまで私を欲してくれたのだと思ったら」
ギュッと抱き締めた。
「たまらなく愛おしい」
「ロ、ズ」
「ふふ、すまない。これではマリーが傲慢だと言っているようだね」
「ううん、ううん、違わない。魔族はみんな傲慢で高慢だよ」
「そう。なら、ますますマリーに惚れてしまうね。傲慢なキミが、私のために我慢してくれたなんて」
マリーは子どものように泣いた。たくさん泣いて、今は鼻をぐずぐずさせながら、私の胸にしがみついている。ホント可愛い。
少し落ちついて、疑問が湧く。というより由々しき問題。
「マリー、ひとつ懸念があるんだが」
「懸念?!やだ!そんなのでロズと離れたくない!」
まだ何も言っていないが、あながち的外れでもない。
「うん、あのね、マリーと私の、その、寿命の問題、なんだが」
マリーはハッとした。
「忘れてた!」
そうか。忘れてたか。
「主!」
「んあ?おお、出番か」
突然話を振られた王が変な声を出した。寝てた?
「ロゼル殿、貴殿を今日ここに呼んだのは、それがメインだ」
どういうことだろう。
「この国の王家が我々リュシフェイル家と縁を持ちたいと常々思ってきたのは知っている。それを悉く断ってきていた。ああ、王や王妃はリュシフェイル家が魔族だと知っている。他にも何人か知っているな。故に、我らと縁続きになりたがる」
ここまではいいか?と確認するので、私は頷く。それを見て王は続けた。
「魔族の技術や能力を、奴らは喉から手が出るほど欲しい。歴代の王家の悲願だ。撥ね除け続けたのは、特に我々にメリットが存在しないからだ。だが今回は違う」
王がマリーを見た。
「リリスが貴殿を欲した」
驚きに目を見開く。そのままマリーを見ると、照れたようにはにかんだ。
まずい。
可愛すぎる。
人間の時の姿と違うのに笑顔が一緒とか、なにそれ。反則でしょ。
「貴殿をリリスにくれるなら、僅かばかりの恩恵をもたらすと約束してやった」
王はニヤリと笑った。
「くれるなら。この意味、わかるか」
私の懸念からのこの話。ならば。
「それが、可能なのですね」
「その通り」
寿命があわないなら、あわせればいい。
私を魔族に創り替えて。
「ロズ」
マリーが私の胸元のシャツをキュッと掴んだ。
「勝手にロズの人生決めてごめんなさい」
泣きそうに歪んだ顔で、言葉を続ける。
「でもあたし、どうしても」
「傲慢、だからね」
言葉の割に柔らかな声に、驚いたようにマリーが私を見た。
「マリーは傲慢なんでしょう?ふふ、マリー」
ふよふよと頬を撫でる。
「傲慢でいてくれて、ありがとう」
「っ!ロズッ!」
「ずっと一緒にいよう、マリー」
*~*~*~*~*
「ロズッ!海に行こう!」
「ロズッ!竜族の花畑に行こう!」
「ロズッ!地下庭園に行こう!」
「ロズ!ロズ!」
体を創り替えるのに一週間。痛みはなく、ただひたすらに体がだるく、重かった。それ故、私は昏々と眠り続けた。そうしてようやく終わったようで、あの倦怠感が嘘のようになくなり、むしろ羽のように体が軽かった。薄く目を開くと、美しい紫玉の双眸が飛び込んできた。
「ロズ!」
「ま、り」
「ロズ!!」
ぎゅうぎゅうと抱き締められる。相変わらず愛情表現豊かな婚約者だ。嬉しくてゆるりと笑うと、マリーも満面の笑顔を向けてくれた。痛くないか、おかしな所はないか、具合は悪くないか、そう心配して体中をぺたぺた触る。うん、可愛い。何ともないとわかると、心からの安堵の息を漏らしてくれた。
「心配、かけたね」
ゆるゆるとマリーの髪を撫でると、ポロポロと涙をこぼした。安全とわかっていても、どうしても不安だったのだと、怖かったのだと、涙ながらに呟いた。無事に目を覚ましてくれて良かったと、吐息と共に何度もそう口にした。
愛しくてたまらなくなった。
元気なマリーが、声を詰まらせながら涙と共に囁くように、体を震わせて良かった良かったと繰り返すのだ。
「マリー」
ゆっくり上体を起き上がらせ、愛らしい頬に手を添える。
「もう、離さない」
官能的なその赤い唇に、そっと、触れるだけのくちづけをした。
真っ赤になったマリーは、恥ずかしさを隠すように私の胸に抱きついてくれた。
そうして私が魔族の一員となると、マリーはあちこちに私を誘った。婚約期間に出来なかったことを、思う存分したいのだと。
この国は海に面していないので、初めて海を見たときは、あまりの偉大さに言葉が出なかった。
竜族の花畑は、竜族自体目にしたことがなかったのだが、一体で圧倒的な存在感だったというのに、群れを成していることにひたすらに圧倒された。そしてその竜の生息地には見たこともない花々が咲き乱れ、桃源郷のようだった。
地下庭園は、人間の間では神の雷と呼ばれている谷底にあった。底の見えない谷は、光の届かない場所。それなのに、その庭園は淡く輝いていた。一面に咲く小さな白い花が、微かな光を発している。側にガゼボがあり、定期的に誰かが訪れているようで、美しく整えられていた。夢のような、幻想的な風景に、言葉を忘れた。
他にもたくさんの場所に連れて行ってくれた。たくさんのことを教えてくれた。自分の世界の狭さに驚いた。世界の広さに喜んだ。この世界を、これから悠久ともいえる時間、愛しい人と堪能できるのだ。
マリー。こんなにも素晴らしい世界を教えてくれてありがとう。
マリー。いつも楽しい時間をくれてありがとう。
マリー。ずっと一緒にいさせてくれて、ありがとう。
マリー。マリー。
私を見つけてくれて、ありがとう。
*おしまい*
*~*~*~*~*
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
勢いで読める作品にしたかったのですが、いかがでしたでしょうか。
細かいところは気にせず、クスリと笑っていただけたら幸いです。
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せち様、こちらにも来ていただけて嬉しい限りです(泣)
この作品は初めて作者の作品を世にお披露目した記念作品です。
いろいろとわからないながらも
思い切って投稿した思い出深いものに、
優しい感想をありがとうございます。
素敵だと言っていただける作品を生み出せるよう
精進してまいります。