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溺愛
貴族は学園に通う義務がある。十四から十五になる年の二年だ。
テレーゼ・レム。
筆頭公爵レム家の愛娘であり、禁忌の娘。
今年、そのテレーゼが入学した。
淡い金の髪に、ピンクダイヤモンドのような大きな瞳、桃のように色付く頬に、苺のように熟れた小さな唇。
誰もが声を失った。
しかし。
入学から一ヶ月もすると、テレーゼが悪女であることを身を以て知る。故に、テレーゼは、すぐに孤立する。
「ひっ!レム公爵令嬢様!ど、どうぞ、こちら、空いておりますので」
テラス席で食事をしようとしていた三人は、席を探すテレーゼに、そのテーブルを譲った。テレーゼは言葉を発しない。三人を見つめている。
「わ、わたくしたち、先生に呼ばれておりましたのっ」
「食事の前に来るよう言われていましたのをすっかり忘れておりましてっ」
「ですので、こちら、よろしかったらどうぞ、ご利用くださいませっ」
手つかずのトレーを持って、三人はそそくさと中へ入ってしまった。
テレーゼは空いた席にトレーを置き、ひとり、食事を始めた。
………
……
…
「ああ、私の天使、おかえり」
レム公爵嫡男アスマは、校舎から出て来たテレーゼに気付くと、すぐに馬車を降りてテレーゼに駆け寄り、抱き締める。
「アスお兄様、お迎えに来てくださり、ありがとうございます」
テレーゼがお礼を言うと、アスマは鞄を受け取って顔中にキスの雨を降らせる。
「リーゼに少しでも早く会いたいからね。今日も変わりはなかったかい?」
「はい。何事もなく過ごせましたわ」
アスマが来るか、次男のラズノが来るかの違いで、毎日この光景は繰り広げられる。アスマもラズノも非常に麗しい容姿をしているため、二人を見る度女生徒たちからはいつも黄色い悲鳴が上がる。
アスマもラズノもテレーゼを溺愛するあまり、結婚はしているが、家族よりもテレーゼを優先させる。二人の妻も、それを承知で結婚をした。
「リーゼ、リーゼが以前気に入った隣国の茶葉が手に入ったんだよ。だから今日は、その茶葉でお茶を用意するからね」
馬車に乗り込むと、アスマはテレーゼを自分の膝に横抱きで座らせる。愛おしそうに顔や髪を撫でながら、いつも他愛のない話をする。
「いつもお気遣いありがとうございます。とても楽しみですわ」
「うんうん。私の天使のためなら何だってするよ。ふふ。楽しみだね、可愛いリーゼ」
うっとりとテレーゼを眺めながら、アスマは嬉しそうに笑うのだった。
「本当に凄い溺愛ぶりですわね」
「レム公爵令嬢様は、本当にお美しいですもの」
「けれど、その溺愛されていることを利用して、お兄様方やご両親にあることないこと吹き込んで、お気に召さない方々を貶めることは、ねぇ」
「公爵家の方々は、レム公爵令嬢様のお話しを無条件に信じてしまうとのことですもの」
「恐ろしいこと。近付かないに越したことはございませんわよね」
そんなテレーゼが、死んだ。
*つづく*
テレーゼ・レム。
筆頭公爵レム家の愛娘であり、禁忌の娘。
今年、そのテレーゼが入学した。
淡い金の髪に、ピンクダイヤモンドのような大きな瞳、桃のように色付く頬に、苺のように熟れた小さな唇。
誰もが声を失った。
しかし。
入学から一ヶ月もすると、テレーゼが悪女であることを身を以て知る。故に、テレーゼは、すぐに孤立する。
「ひっ!レム公爵令嬢様!ど、どうぞ、こちら、空いておりますので」
テラス席で食事をしようとしていた三人は、席を探すテレーゼに、そのテーブルを譲った。テレーゼは言葉を発しない。三人を見つめている。
「わ、わたくしたち、先生に呼ばれておりましたのっ」
「食事の前に来るよう言われていましたのをすっかり忘れておりましてっ」
「ですので、こちら、よろしかったらどうぞ、ご利用くださいませっ」
手つかずのトレーを持って、三人はそそくさと中へ入ってしまった。
テレーゼは空いた席にトレーを置き、ひとり、食事を始めた。
………
……
…
「ああ、私の天使、おかえり」
レム公爵嫡男アスマは、校舎から出て来たテレーゼに気付くと、すぐに馬車を降りてテレーゼに駆け寄り、抱き締める。
「アスお兄様、お迎えに来てくださり、ありがとうございます」
テレーゼがお礼を言うと、アスマは鞄を受け取って顔中にキスの雨を降らせる。
「リーゼに少しでも早く会いたいからね。今日も変わりはなかったかい?」
「はい。何事もなく過ごせましたわ」
アスマが来るか、次男のラズノが来るかの違いで、毎日この光景は繰り広げられる。アスマもラズノも非常に麗しい容姿をしているため、二人を見る度女生徒たちからはいつも黄色い悲鳴が上がる。
アスマもラズノもテレーゼを溺愛するあまり、結婚はしているが、家族よりもテレーゼを優先させる。二人の妻も、それを承知で結婚をした。
「リーゼ、リーゼが以前気に入った隣国の茶葉が手に入ったんだよ。だから今日は、その茶葉でお茶を用意するからね」
馬車に乗り込むと、アスマはテレーゼを自分の膝に横抱きで座らせる。愛おしそうに顔や髪を撫でながら、いつも他愛のない話をする。
「いつもお気遣いありがとうございます。とても楽しみですわ」
「うんうん。私の天使のためなら何だってするよ。ふふ。楽しみだね、可愛いリーゼ」
うっとりとテレーゼを眺めながら、アスマは嬉しそうに笑うのだった。
「本当に凄い溺愛ぶりですわね」
「レム公爵令嬢様は、本当にお美しいですもの」
「けれど、その溺愛されていることを利用して、お兄様方やご両親にあることないこと吹き込んで、お気に召さない方々を貶めることは、ねぇ」
「公爵家の方々は、レム公爵令嬢様のお話しを無条件に信じてしまうとのことですもの」
「恐ろしいこと。近付かないに越したことはございませんわよね」
そんなテレーゼが、死んだ。
*つづく*
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