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倒錯
性的倒錯表現、残酷表現あります。ご注意ください。
*∽*∽*∽*∽*
「兄さん、それ以上やったら死んでしまうよ。お気に入りなんでしょ?」
ベッドの上で、裸の女に馬乗りになり首を絞めているアスマに、ラズノは呆れたように言った。
「ラズノ。部屋に入るときはノックをしないとダメだと言っているだろう」
アスマは振り返り、ラズノの姿を見て女から手を離した。慌てる様子は欠片もない。アスマの注意にも笑うだけで悪びれた様子もないラズノに呆れるだけだ。
口から泡を吹いて動かない女に、ラズノは視線を向ける。
「死んだ?」
「さあ」
何の興味もなさそうに、アスマはベッドから下りた。
「そんなことよりおまえはどうしてここに?」
ズボンの前をくつろげたまま、アスマは椅子に腰を下ろした。
「兄さんの怒鳴り声が聞こえたから。何があったの」
アスマの側へと歩きながらラズノがそう言うと、アスマは不快そうに眉を寄せた。
「コレが何を勘違いしたのか、“テレーゼ様の身代わりはもうイヤです。私を見てください”なんて言うから」
軽く視線を投げた先には、裸で泡を吹いている使用人の女だ。
向かいの椅子に腰を下ろそうとしたラズノは、動きを止めた。
「はあ?身代わり?」
心底嫌そうにラズノは言った。
「だから、あの穢れない天使は唯一無二だと教え込んでいた」
ラズノは体の向きを変えて女へ向かう。
「それって、リーゼを欲望の対象に出来ると思っているから出てくる言葉だよね」
「天使をそんな穢れた目で見るはずもないというのに」
情事の時にそんな言葉を吐くということは、そういうことも有り得ると思っているからだ。身代わりで抱いている、と。そういう想像をするということは、テレーゼをそういう目で見ていたということ。
「あの天使を、そんな欲望の目で見ているのかと思うと我慢ならないだろう」
アスマの言葉に同意するように、ラズノはベッドに上がると、意識のない女を容赦なく殴った。アスマから受けた暴行で、既に腫れている顔に構うことなく、何度も拳を振り下ろす。微かに聞こえていた呻き声も聞こえなくなった頃。息も髪も乱れたラズノが、側のベルを鳴らす。
少ししてアスマの従者が姿を見せる。
「ゴミと一緒に燃やしておいて」
貴族は平民を人として見ない傾向にある。爵位が上がるほど、それが顕著に表れる。それが筆頭公爵家ともなれば、爵位の継げない貴族が使用人として働くその使用人さえ、人として扱わない。
ラズノの言葉に従者が頭を下げると、血塗れのシーツに女を包んで肩に担ぎ、一礼して部屋を出た。
「耳の形がリーゼに似ていたから大事にしていたのに」
「耳だけ取っておく?」
「そんな汚らわしいモノのなんていらない」
テレーゼを神聖視している二人は、俗に塗れた目をテレーゼに向ける者を、決して赦さない。けれど、テレーゼの一部を持つ者にしか欲情しない二人は、その矛盾に気付かない。
*つづく*
*∽*∽*∽*∽*
「兄さん、それ以上やったら死んでしまうよ。お気に入りなんでしょ?」
ベッドの上で、裸の女に馬乗りになり首を絞めているアスマに、ラズノは呆れたように言った。
「ラズノ。部屋に入るときはノックをしないとダメだと言っているだろう」
アスマは振り返り、ラズノの姿を見て女から手を離した。慌てる様子は欠片もない。アスマの注意にも笑うだけで悪びれた様子もないラズノに呆れるだけだ。
口から泡を吹いて動かない女に、ラズノは視線を向ける。
「死んだ?」
「さあ」
何の興味もなさそうに、アスマはベッドから下りた。
「そんなことよりおまえはどうしてここに?」
ズボンの前をくつろげたまま、アスマは椅子に腰を下ろした。
「兄さんの怒鳴り声が聞こえたから。何があったの」
アスマの側へと歩きながらラズノがそう言うと、アスマは不快そうに眉を寄せた。
「コレが何を勘違いしたのか、“テレーゼ様の身代わりはもうイヤです。私を見てください”なんて言うから」
軽く視線を投げた先には、裸で泡を吹いている使用人の女だ。
向かいの椅子に腰を下ろそうとしたラズノは、動きを止めた。
「はあ?身代わり?」
心底嫌そうにラズノは言った。
「だから、あの穢れない天使は唯一無二だと教え込んでいた」
ラズノは体の向きを変えて女へ向かう。
「それって、リーゼを欲望の対象に出来ると思っているから出てくる言葉だよね」
「天使をそんな穢れた目で見るはずもないというのに」
情事の時にそんな言葉を吐くということは、そういうことも有り得ると思っているからだ。身代わりで抱いている、と。そういう想像をするということは、テレーゼをそういう目で見ていたということ。
「あの天使を、そんな欲望の目で見ているのかと思うと我慢ならないだろう」
アスマの言葉に同意するように、ラズノはベッドに上がると、意識のない女を容赦なく殴った。アスマから受けた暴行で、既に腫れている顔に構うことなく、何度も拳を振り下ろす。微かに聞こえていた呻き声も聞こえなくなった頃。息も髪も乱れたラズノが、側のベルを鳴らす。
少ししてアスマの従者が姿を見せる。
「ゴミと一緒に燃やしておいて」
貴族は平民を人として見ない傾向にある。爵位が上がるほど、それが顕著に表れる。それが筆頭公爵家ともなれば、爵位の継げない貴族が使用人として働くその使用人さえ、人として扱わない。
ラズノの言葉に従者が頭を下げると、血塗れのシーツに女を包んで肩に担ぎ、一礼して部屋を出た。
「耳の形がリーゼに似ていたから大事にしていたのに」
「耳だけ取っておく?」
「そんな汚らわしいモノのなんていらない」
テレーゼを神聖視している二人は、俗に塗れた目をテレーゼに向ける者を、決して赦さない。けれど、テレーゼの一部を持つ者にしか欲情しない二人は、その矛盾に気付かない。
*つづく*
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