乙女の憧れ、つまっています ~平凡OLは非凡な日常~

らがまふぃん

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ーマリノ・アスカーノの場合ー

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 リタイア国アスカーノ財閥ざいばつのご令嬢れいじょう。薄茶色の髪はゆるく波打ち、腰まで伸びた髪を後ろでたばね、騎士を彷彿ほうふつとさせる服装が非常によく似合っている。新緑のように柔らかな緑の瞳は、エメラルドのように美しい。

 「キミたちはさあ、本当に乙女心をわかっていない」
 「最後に来て何を言っている」

 ジーンの言葉に、マリノは余裕の笑顔だ。

 「いつだってヒーローは最後に現れるものさ」

 笑みを浮かべながら、カツカツと透子とうこに近付くマリノ。

 男装の麗人れいじん!すごくサマになっている。三人目が現れた時点でおさっしですよね。四大財閥がそろうのなんて。お約束通り、やって参りました、アスカーノ財閥御曹司おんぞうし?女性の場合も御曹司でいいのか、まあいいか。御曹司マリノ・アスカーノ様。

 「トーコ」

 スマートに日向ひむかいさんを壁際に追いやるマリノ様。右手の腹から肘にかけて、トン、と壁につくと、空いた左手で日向さんの後ろに束ねられた髪を一房すくい、くちづける。

 「マリノ様、お久しぶりです」
 「うん、久しぶりだね。会いたかったよ」

 流れるように今度はそのアゴを捉えて上向かせると、すごく至近距離で見つめ合う。唇が触れ合うのではないかと言うほど近付き、甘く囁く。

 「しばらく見ない間に、ますます綺麗になった。これ以上綺麗にならないで。心配だから」

 言葉責め来たあああああっ!

 「ああ、ずっと立ちっぱなしで疲れたでしょう」

 スイ、と軽々お姫様抱っこで移動する。何故か知っている日向さんの席。そこに姫抱きのまま座ると、愛おしそうにギュッと抱き締めた。自然、拍手喝采はくしゅかっさいが巻き起こる。王子コールが鳴り止まない。マリノ様をします!すべてを正しく実行出来たのが一番ポイント高いよね!女性でもいい!一番日向さんを幸せに出来る気がする!

 「アスカーノ、トーコを離しなさい」
 「独り占めは容認出来ないね」
 「トーコ、ほら、私のところへ来い」

 ノーマ、エドガー、ジーンの声を無視して、マリノは本題に入る。

 「さて、トーコ。約束の一年が経ったよ」

 その言葉に、他の三人も先程までのちょっとアレな雰囲気が抜け、支配者たるに相応しい雰囲気をまとう。

 「トーコ。私たちの気持ちは変わらなかった。残念ながら、誰一人、ね」

 いらぬライバルの存在を、溜め息と共にエドガーは見る。

 「トーコが誰を選んでも、その決定に従います。誰も選ばなくても、私たちがそれまでであったというだけ」
 「トーコの気持ちが定まるまで、全力でいかせてもらう」

 ノーマとジーンが続く。

 「トーコ。約束通り、キミをさらわせてもらうから。覚悟してね」

 するりと恋人つなぎをした手に、マリノは優しくくちづけた。

 もうとっくに始業時間は過ぎている。けれど誰も口を挟めない。今日は仕事が出来ないかもしれない。たとえ彼らが去ったとしても、きっと仕事が手につかないだろう。
 まごう事なき世界の頂点がここに集結している。その頂点たちが欲しがっているのは、平々凡々な火の本国ひのもとこくの小柄な女性。

 そう思っていた時期もありました。



*つづく*

女性の場合も御曹司でいいのか、という部分ですが、冒頭にもある通り、ご令嬢でいいようです。
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