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ラフランス国 前編
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芸術に富んだラフランス国。あらゆる分野の芸術が、このラフランス国では見られる。美術館が点在し、誰もの目を楽しませ、感動を呼び、時には恐れ、涙を誘う。
「本当にままならないですね」
船上のカフェテラスで、ノーマは溜め息を吐いた。
「毎度の事ながら、肝心のトーコがいないのに、なんでこの面子でテーブル囲うんだろうね」
マリノも溜め息を吐く。
穏やかな海の上。天気もいいし、獰猛な海洋生物、キメラも今はいない。そんなわけで、お馴染み四人はデッキに用意されたカフェテラスで、お茶を楽しんでいた。
島が点在するラフランス国でも、五指に入る美しい島を目指している。
「今の任務が終わったら、こっちに向かってくれるとは言っていたけれど」
エドガーが紅茶に口をつける。
「時間が合わないにもほどがあるな。これではアプローチのしようがない」
ジーンも難しそうに眉を寄せた。
「火の本国は、どうしてトーコを一年も拘束出来たのかな」
「ああ、マリノは知らないんだね。S級以上の出身国は、自国優先の特権が与えられるんだ」
マリノの疑問に、エドガーが答えてくれる。
「えっ、そうなの?それなら、ずっと国を守れって言われたらどうするの?」
「S級以上は世界の宝ですからね。特権自体に制約は存在しますよ」
「そう。細かいことは置いておいて、最大で連続一年、拘束可能だ」
補足するノーマとジーンに、マリノはなるほど、と頷く。
「だからヴァンタインでさえ大人しくトーコを行かせたんだね」
「おい。おまえは私を何だと思っているんだ」
そんな他愛のない会話をしながら、暫くしてそれは起こった。
護衛たちの動きが慌ただしくなり、外にいる人々に中に入るよう促している。それからすぐに、緊急の警報が鳴り響く。海洋生物やキメラが現れる合図だ。みんなが緊張しつつも、護衛たちの指示に従い、落ち着いて行動を取る。
しかし。
「ダメだ!速い!みんな伏せろぉ!!」
護衛の叫び声に、みんなが一斉に床に伏せた瞬間、下から突き上げるような衝撃が襲った。あちこちから上がる悲鳴の中、目と鼻の先に、巨大な海洋生物がいた。深海の生物は、滅多に水面に揚がってこない。しかも、凄まじい水圧により、その体は小さい。ある程度の大きさでないと、船のソナーが探知出来ない。深海の生物は、浮上してくると水圧が緩み、体が大きくなる。そのため、探知出来る頃には、かなり近くに迫っていることになる。それでも、これ程までに速いとは。
「みなさん、急いで中へ!」
護衛がそう叫んだ時だ。
深海生物から触手のようなものが伸び、何人かの護衛を纏めて捕らえた。そしてそのまま海に引きずり込む。さらに反対側からも別の触手が迫り、応戦するも押し切られ、何人かがまた捕らえられる。
「ミュゲル!!」
最初の衝撃で、護衛の薄いところに弾かれてしまっていたノーマが、その中にいた。気付いたエドガーが叫ぶも、どうすることも出来ない。護衛は直ぐさま救助に向かうが、何本もある触手が邪魔で、思うようにいかない。
「お願いします!部屋に戻ってください!」
まだ外に残っている人たちを庇いながらの戦闘は厳しい。護衛たちは、とにかく避難を急かす。
その時だ。
深海生物の右側頭部から煙が上がった。そして、ゆっくりと傾く。一本だった煙が、二本三本と増えていく。
何が起きているのだろう、と、全員の動きが止まっている。
「救助は私に任せろ。みんなの安全確保を」
*つづく*
「本当にままならないですね」
船上のカフェテラスで、ノーマは溜め息を吐いた。
「毎度の事ながら、肝心のトーコがいないのに、なんでこの面子でテーブル囲うんだろうね」
マリノも溜め息を吐く。
穏やかな海の上。天気もいいし、獰猛な海洋生物、キメラも今はいない。そんなわけで、お馴染み四人はデッキに用意されたカフェテラスで、お茶を楽しんでいた。
島が点在するラフランス国でも、五指に入る美しい島を目指している。
「今の任務が終わったら、こっちに向かってくれるとは言っていたけれど」
エドガーが紅茶に口をつける。
「時間が合わないにもほどがあるな。これではアプローチのしようがない」
ジーンも難しそうに眉を寄せた。
「火の本国は、どうしてトーコを一年も拘束出来たのかな」
「ああ、マリノは知らないんだね。S級以上の出身国は、自国優先の特権が与えられるんだ」
マリノの疑問に、エドガーが答えてくれる。
「えっ、そうなの?それなら、ずっと国を守れって言われたらどうするの?」
「S級以上は世界の宝ですからね。特権自体に制約は存在しますよ」
「そう。細かいことは置いておいて、最大で連続一年、拘束可能だ」
補足するノーマとジーンに、マリノはなるほど、と頷く。
「だからヴァンタインでさえ大人しくトーコを行かせたんだね」
「おい。おまえは私を何だと思っているんだ」
そんな他愛のない会話をしながら、暫くしてそれは起こった。
護衛たちの動きが慌ただしくなり、外にいる人々に中に入るよう促している。それからすぐに、緊急の警報が鳴り響く。海洋生物やキメラが現れる合図だ。みんなが緊張しつつも、護衛たちの指示に従い、落ち着いて行動を取る。
しかし。
「ダメだ!速い!みんな伏せろぉ!!」
護衛の叫び声に、みんなが一斉に床に伏せた瞬間、下から突き上げるような衝撃が襲った。あちこちから上がる悲鳴の中、目と鼻の先に、巨大な海洋生物がいた。深海の生物は、滅多に水面に揚がってこない。しかも、凄まじい水圧により、その体は小さい。ある程度の大きさでないと、船のソナーが探知出来ない。深海の生物は、浮上してくると水圧が緩み、体が大きくなる。そのため、探知出来る頃には、かなり近くに迫っていることになる。それでも、これ程までに速いとは。
「みなさん、急いで中へ!」
護衛がそう叫んだ時だ。
深海生物から触手のようなものが伸び、何人かの護衛を纏めて捕らえた。そしてそのまま海に引きずり込む。さらに反対側からも別の触手が迫り、応戦するも押し切られ、何人かがまた捕らえられる。
「ミュゲル!!」
最初の衝撃で、護衛の薄いところに弾かれてしまっていたノーマが、その中にいた。気付いたエドガーが叫ぶも、どうすることも出来ない。護衛は直ぐさま救助に向かうが、何本もある触手が邪魔で、思うようにいかない。
「お願いします!部屋に戻ってください!」
まだ外に残っている人たちを庇いながらの戦闘は厳しい。護衛たちは、とにかく避難を急かす。
その時だ。
深海生物の右側頭部から煙が上がった。そして、ゆっくりと傾く。一本だった煙が、二本三本と増えていく。
何が起きているのだろう、と、全員の動きが止まっている。
「救助は私に任せろ。みんなの安全確保を」
*つづく*
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