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ⅩⅤ
しおりを挟むそれにしても、いつまで道の真ん中でチュッチュッとバカップルしてなきゃいけないのかな? と目だけで騎士様に訴えれば、まだ駄目だというように大きな手で頭をおさえつけられた。
まって、ほんとうに酸欠なんですけれども、酸素が足りなくてくらくらし始めているんですけど。
酸素不足でくらくらしているのであって、口づけが気持ちよくてくらくらしているわけでは無いのよ、いや気持ちは、いいけど!!
「……ルーチェ、」
ほら! 私達のメロドラマを見せられた国王陛下の悲痛な呟きが聞こえましたよ!
そろそろいいのではないですか!? 目的達成ですよね!!
ギブアップというように騎士様の肩を叩きまくれば、名残惜しそうな顔でやっと解放してくれる。
色気満載の顔をしている騎士様に対し、酸欠だった私は色気もへったくれもなく「ぷはっ」と水から上がった時のように息を吸った。無理だよ、初心者になにを求めてるの。
「兄上、こんなにも愛し合っている私たちの仲を裂こうというのなら、私はルーチェと共に、死にます」
「……ぶっ飛びすぎだろ、落ち着けよ」
「兄上こそ落ち着いてください。ルーチェは私の妻です。諦めてください」
「俺はルーチェをガキの頃から知ってるぞ」
「私はルーチェの黒いワンピースの下がどうなっているか知っています」
「おいこら」
真面目な顔で何言ってんだ。と私を抱き上げたままの騎士様を睨みつければ「あとで子ども時代のことを教えてくれ」という。
「面白い事ひとつもないので嫌です」
「陛下は知っているのにか?」
「あー、もう、わかりましたよ。あとで教えます。面白味はないので期待はしないでくださいよ」
「ルーチェのことならなんでも知りたい」
「……俺の前でいちゃつくな」
「わかった、わかったから、傷に塩を塗るな」としゃがみ込む国王陛下。
勝った、長かったぞこの戦いは……色んなものを犠牲にしてきた、主に私の精神がゴリゴリ削られたよ。あと貞操。
「ルーチェ」
しゃがみ込み、地面を見つめながら国王陛下が私を呼んだ。
「はい」
と返事を返すと、「ロートでいいのか」とこの後におよんで聞いて来るので
「ロート様は私の前から絶対いなくならないと約束してくれたので、ロート様がいいです」
さらりと言い返した私。
「……わかった」という兄に対し、「名前を、名をよんで……!」と喜んでいる弟という反対な状況ができあがった。
「陛下、さっさと嫁探ししてくださいね。いい歳なんですし」
「だから傷に塩はやめろって……国王を敬えよ……」
「なら国王らしくさっさと城に戻ってください」
「そうです国王陛下。私たちは今から二人で愛を深めるのですから。さっさとお帰りを」
「似てきたなお前ら」
ブツブツ文句を言いながらも「結婚式には呼べよ」と言い残し、魔法陣転送で帰って行った。
あれ、アンナはどうするの? 連れて来たのは国王だろ? 私にやれってのか。やれなくもないが面倒なんですけど、ねぇ。仕事を増やさないでくれます?
「チヴェッタ殿、帰ろうか」
「いやその前にアンナを王都に転送しないと」
「あぁ、アンナは兄上と一緒に来たのか」と納得し、私を抱っこしたままカルブの家の方へ歩き出す。
騎士様は私を地面へ降ろす気はないんだな。と諦めて、騎士様の首に腕を回すと「はぁ、帰って押し倒したい可愛い」と小さい声で呟く声が。ヤル事しか頭にないのか。私としては騎士様ともう少し話をしてから、こう、うん、恥ずかしいなもう!! 今までこういうのなかったからどうしたらいいのか分からない!!
恥ずかしいと騎士様の服に顔を埋めれば、自身が呟いた言葉を私が聞いてしまったことに気づいたのだろう。顔を赤く染めながら「……ドゥトール殿の家に行き、アンナを王都へ帰還させれば、用事は終わりなんだな?」と問われ
「はい。あとは休暇にするので、まぁ、あーえっと、まだ明るいのでちゃんと話をしましょうね」
「……うん」
「うん」ってなんだ「うん」って!! と熊のような騎士が顔を赤く染めて頷く姿に、こんな心臓が鷲掴みされるとは思わなかった……。
*
顔を真っ赤にさせた魔法使いと騎士が医者の家につくと、ソファの上で医者が魔法使いの卵である女の子に押し倒されていた。
その光景をみた魔法使いと騎士は「お邪魔しました」と扉を締めたが、扉の向こうから「たすけてぇええええっ!!」という野太い悲鳴と、騎士が思い出したように「そうか、この場合未成年への淫行になるためドゥトール殿を捕まえねばならないのか」と言う。
「嫌だっ処女捨ててから帰る!!」という女の子に「いつの間にそんな言葉を覚えたんだ」と大人三人は頭痛を覚えた。
泣きわめく女の子に騎士は「もっと自分を大切にしなさい」と諭す。その言葉を横で聞いていた魔法使いは「それをお前がいうか」と思ったが口には出さなかった。
押し倒されていた医者が女の子に「急いでもいい事はねぇぞ。ほら、そこに最近まで処女だったやつもいるし」と言った瞬間に一陣の風が吹き、医者の前髪が切り刻まれた。
「ぎゃああああ二日酔い気味のやつに何回も悲鳴あげさすんじゃねぇ!!」
「アンナ、カルブの言った通り焦るのは駄目だよ。折角勉強してるのに学校を辞めなきゃいけなくなる可能性もある。それにまだ未成年でしょう。アンナからだとしても捕まるのはカルブだよ」
「だって、だってっ王様が『もっと早く手ぇ出しておけば、弟に取られなかったのだろうか』って言ってたもんっ!! 私は後悔するなら王様みたいな後悔したくない!!」
女の子の泣きながらの訴えを聞いた魔法使いの米神に青い筋が寄ったのを騎士と医者は見逃さなかった。 そして国王にむかって思いつく限りの悪口と、後に下るであろう魔法使いからの攻撃が死なない程度であるよう祈りを捧げた……。ちなみにその国王は城に帰った途端、元国王の雷を数時間喰らったという。
ぐすぐすと泣き続ける女の子に、覚悟を決めた医者は「二人とも帰っていぞ。アンナとちゃんと話をしたい。あぁ、手は出さねぇから。ただ保険として言っておく、ルーチェ、俺がアンナを未成年のうちに抱いたら俺のことを殺してくれ」と魔法使いに言う。
その言葉に驚いた女の子が悲鳴を上げたが、魔法使いは「わかった」といい黄色い光で魔法陣を描く。
「あ、やだ、それ、やめて、ルー姉ちゃんやめてっ」
「言葉に強制力を付与する魔法だよ。学校で習うときこんな使い方では教えないだろうけどさ」
「あとは二人で話してね。カルブこれ転送用の魔法陣。一応二回分渡しとく」と言って魔法使いと騎士は医者の家から出て行った。
医者は魔法陣を受け取りながら「王都に送り届けて来て、帰ってこいってことか」とひとりごちる。
二人を見送り、扉がしまる。医者は頭を掻きながら女の子の方へ身体をむけ、「アンナ」と名前を呼んだ。
*
「いいのか。二人っきりにして」
「大丈夫ですよ。あれだけ脅せばアンナも無理矢理にはしないでしょうし」
「うん? 魔法は発動しないのか? 魔法陣も本物だったぞ、少し癖はあったが」
「発動はします。癖があるのはすみません、先生にも注意は受けていたんですけどエルフ文字の新旧が混ざっちゃったりするの直らなくて」
「どうしても描きやすい方で描いちゃうんだよなぁ、かといって発動したときの威力変わる可能性もあるからやっぱり直さないとなぁ」とブツブツ呟く。
カルブが生き死にをかけてまで言ったのだから、アンナが成人した瞬間に結婚するくらいの覚悟はついたのだろう。
昔からこれと決めると努力を続ける男だから、その辺は信じている。アンナもカルブが死ぬと脅されたら自ら行動はしないはずだ。いい子だもの。都会にちょっと揉まれたみたいだけど。
……とりあえず国王陛下には、問題を発生させたそれ相応の対価を支払ってもらいましょうか。
「ふっふっふ、国王陛下には何をプレゼントしてやりましょうかね……」
「……死なない程度にしてやってくれ」
「一応国王だからな」と苦笑する騎士様に「考えときます」と笑いながら、二人並びながら家へと向かう。
途中、昼ごはんを食べ損ねた自分に気づき、お腹が悲鳴を上げた。
ひえっ、忘れてた! と元凶である国王に呪いという念を送っていれば「中途半端な時間だからな、軽いものでも食べようか」と近くの食堂へ入ろうとする騎士様の服を掴み、首を横に振った。
「あの、えっとですね」
「あぁ、甘いものの方がいいか? 確かパン屋でパウンドケーキを売っていたが……まだ残っているだろうか」
パン屋へ行くか。という騎士様に、違うと再び首を振り、何を恥ずかしがっている! と自分を奮い立たせ、ぼそっと小さい声で言った。
「……ロート様のつくったごはんが食べたいです」
今まで平然と「きた! 騎士様のご飯おいしー!」と言っていた癖に、この体たらくである。
よくよく考えれば「騎士様のご飯が食べたい」とちゃんと言ったことが無かったような気もするし、それに外で食べるより騎士様のご飯の方が美味しい。胃袋はもうとっくに落ちていたしな。
しかし騎士様からの反応がない。と下に向けていた顔を上げれば、本日二度目の赤面した顔が。といってもすぐに手のひらで覆ってしまったのであまり表情はみえなかったが、耳が真っ赤なので顔も真っ赤なんだろうな。
「ゆ、夕食まで、待てるか……?」
「むりです。あ、お菓子ないんでしたっけ? あと夕飯は一緒に作るか、邪魔なら作っているところみたいです」
「クッキーならたしか作り置きがある、夕食は一緒に作ろう」
「ちなみに夕飯のメニューは?」
「東の大陸の料理だという、かぼちゃと鶏の煮物と、にんじんのサラダとスープをどうしようか考えていたところだ」
「お、それじゃ私が東の大陸のスープを作ります」
「茶色いので見た目こわいんですけどね、おいしいんですよ。パンも私に任せてもらっていいですか?」と聞けば「いいぞ」と返事を貰えたので貯蔵庫の奥に隠してある米をだそうとニヤリ笑うと、また腹の虫が鳴ったので「いや、その前にクッキー……」と腹を右手で擦った。すると騎士様が「早く帰ろう」と私のあいていた左手を握って、私の歩幅に合わせて歩き出す。
「クッキーは確か保存用の少し固いものしかないと思うぞ」
「そうなんですか?」
「だから一緒にホットミルクも準備しよう。それまで待てるか?」
「がんばりましょう」
「あぁ、がんばってくれ」
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