毒薔薇姫は運命を変える?!

刹那

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三章

~賭けを致しましょう~

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「カトレア様、お待ちしていましたよ。やっとクラウド様のお嫁さんになる決心がついたんですか?それとも俺のお嫁さんになりに?」

「……寝言は寝て言うのよ。ジェン。」

「この人に頼むのですか?」

ガイも嫌そうな顔をしている。
私だって出来れば頼みたくない。

「不本意だけど、家柄的にもこの人しかいないのよ。」

ほんと不本意だけどね!

「聞こえてますよー。まったく最近容赦ないですね。まぁ、そんなとこも好ましいですが。」

この減らず口だ。
いちいち猫をかぶっていたらこっちの身がもたない。

「…じゃ、本題に入りましょうか。」

急に何を考えているか分からない笑顔になる。

そして、カトレアが何より苦手な理由がこの何を考えているか分からない笑顔だ。
流石、公爵家の次期当主であり、近親者だ。

「えぇ、そうね。」

だからと言ってここで負けたらきっとあとがない。
頼れるのはこの人しかいないのだ。

カトレアは早速、施設に話をする。
そして、ジェンの反応は厳しいものだった。

「……現実的ではないですね。それは貴女のエゴに過ぎない。貴女らしくないね。」

「ジェン様!それはカトレア様に対する侮辱です」

珍しくガイが怒ったように反論する。

「君がそこまで怒るのは珍しいね。でも、侮辱でも何でも俺はこの話を飲めないよ。」

楽しそうに微笑む。

本当に性格悪いわね。
ガイの反応を楽しいんでる。

「ガイ。」

カトレアはガイを止める。
納得の行かない顔をされたが今は耐えて欲しい。
それに、ジェンが言っていることは正しい。

お父様に薬の権利は渡してしまった。
他にこの人をその気にさせる者は……。

「ジェン、貴方の言うことは最もよ。でも、絶対に後悔させない。」

この人は面白い事に目がないはずだ。

「ほー、後悔させない。貴女に言われるとドキドキしますね。」

これは契約してくれそうにないわね。
だったら、奥の手だ。
本当は使いたくなかった。

「賭けを致しましょう。」

ジェンの眉がピクリと動いた。
その変化をカトレアは見逃さなかった。

「一体どんな賭けですか?」

「私が6年後つまり、18歳の時にこの国の半分の孤児が施設に入れるようにしましょう。もしも、私が負ければ貴女の妻になります。後悔はさせませんよ。」

カトレアはできるだけ強気に笑って見せる。

「カトレア様!」

ガイが止めるがもう引けない。

「ジェン。貴方にも、いい話だと思います。私と結婚すればローズ公爵の名がついてくるのですから。勿論、婿ではなく私が嫁として行きます。」

「……あはははは!カトレア様は本当に面白い人ですね。いいですよ。その賭け受けて立ちましょう。」

ジェンは胸ポケットからペンを出し紙にサインをしていく。

「これで良いですね。出来れば王妃になっていただきたいのですが。俺もクラウドの運命の相手と引き裂くのは本意じゃないですからね。貴女が、奥さんになってくれたら毎日が楽しそうです。」

私はちっとも楽しくありません。

カトレアは立ち上がり帰る支度をする。

「もう帰られるのですか?未来の奥様ともっと話がしたいのですが。」

「旦那さんにするつもりはありませんので、それでは。」

何が面白いのかジェンは肩を震わせ笑いる。

「…困ったことがあったらいつでも来てください。」

その表情が、真剣でカトレアは少し動揺したがすぐにいつもに様子に戻る。

「では、カトレア様。」

今の言葉が本当なのかイマイチ分からない。

「……………。」
「……………。」
「……………。」

馬車の中に沈黙が続く。

明らかにガイは怒っている。

「サラ…。」

「今回ばかりは、お嬢様の味方はできません。自業自得です。」

そんなぁー。
私を見捨てるの?
サラーサラー。

視線を送ってみるがサラが助けてくれる気配は一切ない。
サラも大分怒っているようだ。

「ガイ…怒ってる?」

「はい。とっても怒っています。」

うっ、ですよね。

「ごめんなさい。」

「俺が何で怒っているか分かっていますか?」

「…ガイが止めたのに無茶、したから…です。」

「貴女の無茶には慣れていますが、今回ばかりは呆れを通り越して怒りしかありません。可愛がっていた猫が突然裏切って来た気分です。」

最後の方は全く意味がわからないが、すごく怒っていて多分これはなかなか許してもらえないのは分かった。

「…本当にジェン様の妻になられるにですか?本当は好きなのですか?」

ガイは怒りから今度は不安そうにこちらを見る。

「私はジェンのお嫁さんにならないわ。絶対に。」

「貴女の勝ちはとても低いです。分かっているのですか?」

分かってる。

「それでも、私が絶対に勝つわ。それに私はジェンよりもガイの方が断然好よ。」

急に下を向き、よく見れば耳が赤い。
もしかして、まだ許してもらえないんだろうか?

「ガイの事大好き!だから心配しないで!」

「…本当ですか?」

「えぇ、だって大切な家族じゃない!」

その瞬間、ガイから表情が消える。

その時サラが可哀想な目でガイを見ていた事はカトレアは知らない。

「貴女がそういう方だと知ってましたよ。全く期待なんてしていません。えぇ、していませんとも。」

「本当にデリカシーがありませんね。」

サラまで!
皆んななんか酷くないですか?
確かに、無茶した私も悪いけど。

何故か急に怒られてカトレアはパニックだ。

ブツブツ言っているカトレアを見ながらガイは言葉に出来ない思いがふと口から出る。

「こんな会話も、できなくなってしまうんですね。」

そんな、ガイの小さな声はすぐにかき消されてしまいカトレアに届くことはなかった。

はずなのに、カトレアはガイの頭を撫でる。
それに驚いたガイはカトレアを見つめる。

「……なんですか、この手は。」

「えっと…ガイ泣いてるようなきがしたから?」

「俺、泣いてませんが。」

そう言われてしまえばそうなんだけど…。

「うん。そうなんだけど…つまりですね。世界中がガイの敵でも最後まで私はあなたの味方だから。どんな所にいても絶対駆けつけるわ!」

ガイは驚いたように目を見開いたあと、愛おしそうに微笑む。

「…ガイ。むやみに女の子の前でそんな顔見せない方がいいわ。」

カトレアは自分の顔が赤くなるのがわかった。

これじゃぁ、いつかガイが女の子に刺されちゃう!
やっぱり私が守らないと。

「何言ってるんですか。まったく。」

ガイは呆れた様に笑ったあと、ニヤリとカトレアを見る。

なんか、嫌な予感が…

「お話はまだ終わってないですよ。」

馬車の中にカトレアの絶叫が響いた。
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