転生したら王族だった

第三章 ‐ 戦争の影

１３５話 きっかけ＿３

『もしかすると、リオンが新たな仲間を勧誘したんだと思われて威嚇されているのかもなぁ。』と考えつつ、ちらっとリオンを見ると彼は小さく溜息をつきながら呟いた。

「うわ。嫌な奴らに会っちゃったなぁ……。」その言葉に若干の疲れが滲んでいる。

　俺はリオンに軽く声をかけた。「どうする？　俺たちを置いて逃げても良いよ？　どうせ俺たちは無関係だしさ。多分、仲間の勧誘をしたとでも思われてるんじゃない？」少し冗談交じりに言ったが、その提案は実際に有効な選択肢でもあった。

　リオンはしばらく沈黙しながら考えるような顔をしている。目の前の状況がどう展開するか次第だが、俺たちには特に緊迫感がない。むしろ、この町の子供たちの力関係や交流を垣間見れるこの状況を、少し面白く感じ始めていた。

「あぁ、そうかも……人数が多い方がもうかるしな。」リオンが少し悩んだような表情を浮かべながら呟いた。その言葉には躊躇いが滲んでいて、彼が状況を真剣に考えている様子が伝わってきた。

　しかし、次の瞬間、悩みを振り切るようにリオンが俺の手を引き、一気に走り出した。その勢いに驚きつつも、後ろからリリスとロディーが慌ててついてくる。

「ちょ、あんたね！　レイニー様を、どこに連れて行く気！？　手を握っちゃって……もお！」とリリスが不満そうに文句を言いながら追いかけてきたが、リオンは止まる気配もなく、俺たちはやがて人気のない森の入口のような場所に辿り着いた。

「はぁ……はぁ……ごめんな。一人で逃げるのも、君たちを置いて逃げるみたいでさ……悪いと思って。それに……置いて逃げたら、アイツらなら言いがかりをつけてくると思って。」息を切らせながら、リオンが申し訳なさそうに理由を話してくれた。

　その言葉に納得しつつも、リリスは不満を隠せない様子で腕を組み、「それにしても……こんなところに連れてこなくたって……なんなんだよ、お前はぁ。まったくぅ……。」と鋭い視線をリオンに向けた。彼女の怒りに気づいていないのか、リオンはグイグイと俺に近づいてくる。その態度にリリスの表情はさらに険しいものに。

「置いていってくれて良かったのに。俺たちなら大丈夫だったのに～」俺が軽くそう言うと、リオンは心配そうな表情で俺たちを見つめていた。その目には、まだどこか不安と疑念が残っているように見える。

「……いや。たぶん、アイツらには勝てないと思うぞ。相手は歳上で、全員男だし……。キミは、女の子だろ？　俺とか言ってるけどさ？」リオンは俺をじっくりと上下に見ながら、失礼な言葉を放ってきた。

　その言葉にリリスがムッとしたようで、即座に反論した。「失礼だな……お前はぁ。レイニー様は……男の子だぞ！　それに人間……男の子が5人くらい楽勝だって！　なぁ～ロディー！」と、やけに力強い口調でロディーに話を振った。

　その瞬間、俺は心の中でツッコミを入れずにはいられなかった。『リリス……いま、確実に「人間なんて」って言おうとしたでしょ……？俺も、リリスもロディーも人間なんだけどなぁ……。』

　ロディーは話を振られたものの、特に何も答えず、少し困ったような表情を浮かべながらリオンをじっと見ていた。リオンもまた、返す言葉を失っているように見える。

「……え？　ボクが倒すの？　え、やだよぅ……はぁ……」人間の男の子なんて、ロディーは楽勝に倒せる力は持っている。

「えぇ……。その男の子じゃムリだろ。さらに歳下の男の子だろ？　それにキミも女の子だし……置いていっちゃ不味いだろ」リオンが、呆れた顔でリリスを見つめた。

「そもそも、あんたが声を掛けてきて、わたし達を巻き込んできたんでしょ！　ふんっ」リリスが文句を言いつつ、がら空きとなった俺の腕を組んできた。

　あぁ……後を付けられてますよ～。そろそろ追いつかれるけど、森の中に入る気なのかな？ 低位の魔物でも、強そうなのが数体うろついてるけど……大丈夫なのかぁ？

　握手をしたときに感じたんだよなぁ……あの手の感触。武器を扱っている手の硬さで、ロディーの手と同じ感じだったよな。多少、剣術の腕はあるっぽい……けど、孤児だし自己流だろうなぁ。

「なぁ～、追いかけてきてるけど？ そろそろ追いつかれるよ？」俺的には森に逃げるよりも、人間の男の子を相手にした方が楽だと思うけど。この町で暮らしてるリオンが決めた方が良いよな。

「え？ そう……なの？ 森は危険だしな……。勝てる自信は無いけど、迎え討つか……。」リオンが俺たちを見ながら、ため息をついて決断した。

「何なんだよ、お前はぁ。失礼なやつぅ……。この、わたしが……蹴散らしてくれるぅっ！」って、リリス！？ 思わず焦ったけど、リリスの魔力は抑えたままだったのでひとまず安心した。いや、抑えた魔力でも十分に危険なんだけど……リリスだしっ。

「リリス、やり過ぎたらダメだよ？」とりあえず注意はしておかないと……大惨事になりそうで怖いし。