転生したら王族だった

第三章 ‐ 戦争の影

１４９話 アリシアの理解

　ミアが作っていた花冠に目を輝かせたリーナは、「ねぇ、それすっごくきれいだなぁ！ おれ……ううん、わたしもやってみたいっ！」と声を弾ませた。ミアが「もちろん、一緒に作ろうよ！」と快く誘うと、リーナは満面の笑みを浮かべ、すぐに手を動かし始めた。

　その間、サクラがふわりと立ち上がり、「リーナちゃん、リーナちゃん、これ！ この花も使ってみて～！ たぶん、もっと可愛くなると思うよ～♪」と両手いっぱいに花を抱えてリーナに差し出した。「ありがとう、サクラちゃん！ この花、かわいいね！ わぁ……これも、かわいいね！」リーナはサクラの提案を受け入れながら、手際よく花を選び取っていく。

　ルフィアとミーニャもリーナを手助けするように横からアドバイスを加え、「そこの花も良いよ。リーナちゃんのイメージに合いそうー！」と言いながら和やかな空気を作り出していた。

　リーナもその優しいサポートに感謝しながら、「みんな、ありがとなぁー！ こんなに楽しいのって久しぶりだよ！ ううん。こんな楽しいの初めてだぁ！」と心からの笑顔を見せた。

　やがて、リーナは完成した自分の花冠を頭に載せ、「どうかな？ わたしにも似合うかな～？」と少し恥ずかしそうに尋ねた。サクラやルフィアたちは満面の笑顔で「すごく似合ってるよ！」「可愛い！」と声を揃え、輪の中はさらに和やかな雰囲気に包まれていった。

　俺は少し離れた場所からその様子を見守りながら、リーナが新しい仲間たちと心を通わせ始めていることに安堵し、「やっぱりここは彼女にとってもいい場所になりそうだな」と心の中で静かに思った。

「はぁ……また、女の子を拾ってきたのですか！？」アリシアが少しむくれた顔をして、俺が座っているソファーの隣にどかっと腰を下ろした。その表情には明らかな不満が漂っている。

「拾ってないしっ！ 事情があるのっ」と俺は慌てて言い返したが、アリシアの疑い深そうな目は変わらない。

「ふーん……そうなんですかぁ？」アリシアは頬杖をつきながら、興味はあるけど納得しきれないような声を出した。

　俺は、ため息をつきつつ「獣人って、思ったより迫害されてるんだなーって思ってさぁ……。ちょうど仲良くなったんだけど……」と、リーナとの出会いと彼女が置かれた境遇について詳しく事情を説明した。

　アリシアは最初こそむくれたままだったが、俺の話が進むにつれて次第に真剣な表情になっていった。「……そんなことがあったんですね。それは……ひどいです。許せませんね……」彼女は呟くように言いながら、目線を少し伏せた。

「でしょー？ だから、うちで暮らせるようにしてあげたんだぁ。偏見もなく、安心して生活できる場所が必要でしょ。」俺は言葉に力を込めた。

　アリシアはしばらく何かを考えるように沈黙していたが、やがてふっと小さく笑った。「まぁ、あなたがそういう人だって分かってますけどね。それでリーナさんも安心できるなら、別にいいですけど……。」言葉にはまだ少しツンとした感じが残っているが、どこか認めている雰囲気を確かに感じられた。

「よかったぁ！ アリシアが反対してたらどうしようかと思ったよー。」俺は安心して笑いながら肩をすくめた。

「ふん、私が反対したところで、どうせあなたは変わらないですからね。」アリシアはふっと小さく息を吐き、再びむくれた顔を見せたが、その表情には少しだけ優しさが滲んでいた。

「そうそう……リーナにも出来そうな仕事というか手伝いってないかな？ ただで家や食事をもらうことに抵抗があるみたいでさ。」俺はアリシアに相談を持ちかけた。

　アリシアは眉をひそめながら少し考え込むように視線を落としつつ、「……真面目な子なんですね。そうですね……面倒見も良さそうですし、サクラちゃんのお手伝いでルフィアちゃんとミーニャちゃんと一緒に畑の収穫のお手伝いとかですかね。」と提案してきた。

　アリシアは、村長代理のように村全体の問題や外交の調整まで積極的にサポートしてくれる存在だ。彼女は村の運営に深く関わり、現状を的確に把握しているため、リーナに合った仕事をすぐに見つけることができた。まさに、村の縁の下の力持ちといえる存在だ。いや、表向き……村の村長だ。うん。

　俺はその提案に頷きながら、「確かに、それならリーナにもできそうだなぁ。サクラの手伝いなら、きっと楽しくやれるねっ。」と返した。

「そうですね。サクラちゃんは明るく無邪気な子なので、すぐに仲良くなれるでしょうし。ルフィアちゃんとミーニャちゃんも優しいから、リーナさんも安心して馴染めると思いますよ。」アリシアは少し微笑みながら続けた。

　俺は安堵しながら感謝の言葉を伝えた。「よし、それならリーナに話してみるよ。ありがとう、アリシア。やっぱり頼りになるねっ。」

「ふふ、当然です。村の状況を把握するのは私の仕事みたいなものですから。」アリシアは少し得意げに言いながらも、その表情には優しさが滲んでいた。