転生したら王族だった

第三章 ‐ 戦争の影

１７８話 レイニーの周りとの関係

　フィオナは、夜中にレイニーの部屋に遊びに行ったり、逆に自分の部屋に来てもらったりする楽しい時間を想像してご機嫌だった。さらに、将来レイニーが自分の旦那様になると決まったことで、堂々とスキンシップを取れるという夢が広がっていた矢先の出来事だった。

「ちょっと、なんで客室なの？」フィオナは不満げな声でメイドに問いかけた。「レイニーくんはお客様だけれど、わたしの旦那様なのよ？ 将来は……その、あの……この国の国王なのよ。わたしの旦那様ってことは、そうでしょ！」彼女の声には怒りと戸惑いが混じりつつも、どこか可愛らしい必死さが感じられた。

　騒ぎを聞きつけた国王様が、機嫌が良さそうな笑みを浮かべながら客室へと歩いてきた。その堂々とした姿に、周囲の空気が一瞬で変わる。「どうしたのだ？ フィオナが感情を出して怒っているなど珍しいな。申してみよ。」と、豪快な声で問いかける。

　あぁ……これ、国王様は事情を察しているだろうな。楽しんでいる雰囲気が伝わってくる。きっと、今までのフィオナは何でも言うことを聞く「いい娘」だったのだろう。だが、俺と出会ってから徐々に子供らしい行動や表情が増え、今日は久しぶりに会えた喜びに加えて、お泊りと許嫁だと分かった嬉しさが爆発している。そんな彼女の感情の変化や仕草を、国王様は微笑ましく見守っているように感じる。

　フィオナは国王の言葉に一瞬戸惑いながらも、すぐに気を取り直して口を開いた。「お父さま！ なんでレイニーくんが客室なの？ レイニーくんはお客様だけど、わたしの旦那様なのよ！ 将来は……その、あの……この国の国王になるのよ！」と、少し頬を赤らめながらも必死に訴える。

　その様子に国王はさらに笑みを深め、腕を組みながら「ほう、フィオナがここまで感情を露わにするとはな。確かに珍しい。」と感心したように言った。そして、ちらりとレイニーに視線を向けると、「レイニー王子よ、どうやらお前は我が娘にとって特別な存在のようだな。」と、どこか楽しげな口調で続けた。

　俺はその言葉に少し困惑しながらも、フィオナの手を握り返し、彼女の気持ちを受け止める覚悟を決めた。国王の視線の奥には、娘の幸せを願う父親としての温かさが感じられた。

　国王は悠然と笑みを浮かべながら話を続けた。「客室でも、この部屋でも構わん。二人の好きなようにするが良い。フィオナの言う通り、この王国の跡継ぎになるのだからな。そう怒るでない。」その穏やかな口調と柔らかい表情に、場の緊張感は少しずつ和らいでいった。

　フィオナは父の言葉を聞き、少し目を丸くしながらも、すぐに頬を赤らめて満足げな表情を浮かべた。「じゃあ……レイニーくん、この部屋にしてもいいよね？」と、自信を持ちながら彼の方を向いて尋ねる。その瞳には期待と嬉しさが溢れていて、彼女の内心の喜びが伝わってくる。

　レイニーは、そんなフィオナを見つめながら少し困惑しつつも微笑みを浮かべた。「ああ、フィーがそうしたいなら俺は構わないよ。」と答えると、フィオナは満足げにうなずきながら再び国王の方を見た。「お父さま、ありがとうございます！」

　国王はその反応に満足そうな笑みを浮かべつつ、「ふむ。フィオナがそこまで喜んでいるなら、それで良いだろう。それにしても、お前たちの幸せそうな姿を見れて、父親としては嬉しい限りだ。」と語り、再び豪快に笑った。

　ようやく部屋に戻り、広々としたベッドに横になりながら、ひとり静かに考え事ができる時間が訪れた。しんと静まり返った空間の中で、レイニーは天井を見つめながら、ため息をついて心の中を整理していた。

「俺、どうなっちゃうんだ？」と思いながら、次々と浮かんでくる不安と疑問をひとつずつ思い返していた。無秩序の森の村での領地経営――確かにやりがいはあるが、王国の跡継ぎという立場が加わることでどう影響するのか不安だった。

　さらに、グリムファング王国のセリーナ王女の存在を思い出した。以前に彼女が「ついてくる」と言っていたことを思い返しながら、「まあ、あれはさすがに無理だろうけど……」と苦笑を浮かべた。

「でも……フィオナが許嫁だって言われた今、いろんなことが変わるのは間違いないよな。」と心の中で呟きつつ——

　……ちょっと待て、待て、待ってよ……おい、これ、どうなっちゃうんだ？ とんでもないコネクションが次々とできちゃってる気がするんだけど！？ 広大な無秩序の森の領地――凶暴な魔物が大量に潜むあの場所を手に入れて、強大な力を誇る龍王国を属国化
している。

　それだけじゃない。グリムファング王国のセリーナ王女も「ついてくる」とか言ってたし……まぁ、あれはさすがに無理だろうけど。でも、ダミエンやアリシアが仲間として一緒にいてくれてる。しかも、この世界とは別次元の話かもしれないけど、どうやら闇の世界の王だって？ え、何それ……。

　はぁ……もぉ、俺、ただ仲間たちと静かに暮らす『場所』がほしかっただけなんだよなぁ……。それだけで良かったはずなんだけど……。どこでこうなった？ 流れが大きすぎて、もうついていけないってば！

　もー俺、知らないよっ！？ 全部、流れに任せてしまうしかないか……でも、なんか、いろいろ責任と期待が大きすぎる気がするんですけど！