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17 貴族の跡継ぎ候補
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森の奥に入って、ゴクツ盗賊団のお宝剥ぎ取りをした。
「沼」の本性を見せたから、生かして衛兵に渡す選択肢はない。
総勢64人。装備、財布、3個の収納指輪を剥ぎ取り、大きな袋に入れた。
遺体は遺体だけの収納指輪を用意した。
◆◆
ハルピィンの街に入った。
「さて、ギルドに行くのはいいけど、盗賊の討伐報告ってどうやんのかな?」
「おいサーシャ」
「あれペルタ様。ギルマスがこんなとこでなにしてんの?」
「おめえを待ってた。問題発生だ。路地裏の喫茶店まで付き合え」
「デートのお誘い?」
「問題発生っていってんだろが」
◆
「単刀直入に聞くがゴクツ盗賊団を壊滅させて、領主の娘を助けたのはお前だな」
「うっ、まずかった?」
「それは構わねえ。顔もフルプレートアーマーで、領主の娘も見てねえって言ってる」
「問題とは?」
「領主が探してる」
「私、名乗り出る気はないよ」
「だが、恩人を探すのは当たり前だ。それに、ここの領主は頭が回る。手の者をギルドに来させて、見張らせているぜ」
「何のためにだよ」
「盗賊の討伐をしたものが、娘を救った者と思ってるからだ」
「あ、ペルタ様ありがとう。領主の娘を助けたときに顔隠したから、問題ないと思ってた。ギルドにノコノコと顔を出すとこだった」
「ギルドには秘密厳守の義務がある。おめえの討伐履歴、盗賊団の討伐者は洩らさねえ。だがよ、討伐者が受付嬢に申請すっとこを見るのは自由だ」
「あいた~」
「だから、今後は盗賊団絡みとかは、俺に直接言え。ここの領主ハルルキ伯爵はいい人間だが、跡目争いで次男坊が変な動きしてっからな」
「あら、心配してくれるんだ」
「ああハルルキ伯爵家の全員惨殺の方をな」
「あっはっは。やらないよ」
「メロンとカリナにちょっかい出されてもか?」
「連帯責任でハルルキ家は全員死刑」
「やっぱ、会わせなくて正解だな。盗賊団はどうした」
「はい時間停止の収納指輪。こん中に盗賊団64人が入ってる」
「お、おお貴重なもんを。責任を持って預かるぜ」
「よろしくね」
◆
ペルタ様と一緒にギルドに向かうと、ギルドの前に若くてきれいな服を着た男と、兵士10人くらいの集団がいた。
「こんにちわ。ギルマスのペルタ殿。そちらの娘さんはサーシャさんでしょうか」
「例の次男坊だね」
「お、分かるんか」
ぴちょん。ぴちょん。
私だけに聞こえる、沼様が催促する音。沼様が大好きな悪意が溢れてるもん。
「何か用なの」
「こちらが挨拶してるのに、いきなりそれですか」
「ふざけてますね、こいつ」
「用がないなら通して、往来の邪魔よ」
「だな。サーシャを雇いにでもきたか。おめえらごときが、どうこうできる相手じゃねえぞ」
貴族家次男坊の手下が散開し始めた。
「これは侮辱ですね」
「なに貴族を気取ってんだ。貴族なのは、親父さんだけだ。魔王様と魔国の介入で、この国の貴族法も変わったんだよ。特権階級の時代は終わってんぞ」
「まだ何もしてませんよ」
「もう遅えよ。おめえの手下が動き出した瞬間から、サーシャがヤバい空気を醸し出してるぜ」
「ザハル様、次期当主候補として、平民になめられてはなりません」
「う、うむ・・・」
「おい、そこの雑兵A」
「なっ。ペルタ、侮辱するのか」
「てめえ、都合がいいように考えるなよ。サーシャも俺も、おめえらが駆け引きしていい相手じゃねえぞ」
「なっ、なにをする気だ」
「う~ん。聞いてるだろうけど、私がブライト王国を逃げるとき、人をたくさん殺したのよね。その中に一応の規則性はあったのよ」
「何が言いたい!」
「あんたらみたいに、訳の分かんない権力にすがる貴族と関係者ばかり選んで、100人くらい殺したわ」
「こ、ここでやったら、この国では殺人罪になるぞ」
「なら決闘しましょ。ルールも参ったもないデスマッチ。11人一緒でいいよ。ペルタ様にも知ってほしいし、先にサービスにスキルを見せてあげるわ」
ぽちょん。公開用の60センチ小沼を出した。
レベルアップで私自身の反応が上がって「沼」の移動スピードも速くなった。
しゆるる。ぺたっ。
次男坊の両足の下にセットしてあげた。
「ザハル様!」
「なんだこれは、黒い足ふきマットか?」
「ペルタ様見てて」
「うん、ザハルの動きが止まるのか・・」
「う、動けん、それに上半身までほとんど動かん・・」
「どういうことだ、サーシャ」
「あの「沼」はくっつくというより、乗ったものを固めるの。それも中途半端に。あいつは股関節の下部くらいまで微動だにしないでしょ」
「お、おめえ、ありゃ影縫いなんて代物じゃねえ。人がしゃがんだり後ろ振り向いたりすっとき、ほぼ全身の関節使うんだぜ」
「でしょ。だからザハル君が動くと、固定部分とそうでないとこの境界線に負担が全部かかるの」
「あっ、あで、下腹と腰が、いだだ、何とかしろ」
「はっ、外します」
しゃがんで小沼からザハル君を離そうとしたやつの右膝が、小沼に触ってしまった。
「うわ。立ち上がることができん。誰かザハル様を支えろ」
ザハル君を左右から支えようとした2人も沼の端を踏んで、足が動かなくなった。
「便利なのは、小沼の円の中に空きスペースがあれば、何人でも捕まえられるの」
「怖いスキルだな。で、あいつらどうする。殺すか?」
「メロンとカリナに野蛮人と思われたくないし、今回は逃がす。けど、その前に、ほれっ」
収納指輪から4メートル鉄棒を出して、小沼に捕まってる4人の腹をつついた。
ベキ!バキ!ゴキ!ベキ!
うぎゃあああああ!
「うわあ、体は転んだのに、足だけ立ったまんまで途中から折れてるよ。地獄だせ」
「スキル解除。何かあったの?私が棒でつついただけなのに、4人も足が変な方向を向いてる」
「こういうときのおめえ、相変わらず棒読みだな」
「お、お前らなにをした」
「雑兵B、おめえらが散開した瞬間にハルルキ家はこの俺、ハルピィンギルドのギルドマスターであるペルタと冒険者サーシャに敵対行為をしたと見なした」
「剣なんぞ抜いておらんぞ」
「あのなあ、森の中で盗賊10人に囲まれて、あなたは盗賊ですかって聞くか?」
「ここは街中で・・」
「馬鹿者が!」
またなんか来たよ。
「やめよゴンバ。あのような動き方、盗賊そのものではないか! ペルタ様、申し訳ございません。怒りをお納め下さい」
「誰かな?」
「ああ、まともな方の貴族家長男のシェークだよ」
「で、お兄さん、あんたも私と決闘に来たの?」
「いいえ、妹を助けてくれた恩人を探しに来ました」
ぽちょん。心の中でも臨戦態勢。
「で、その恩人とやらは見つかったの?」
「・・いいえお礼を言いたかったのですが、見つかりませんでした。恐らく今後も見つからないでしょう」
「うん、あきらめが肝心よね」
「はい、それに弟達も転んだだけですから、ここでは何も起きておりません」
「そだね。これ以上ブライト王国の「白銀騎士」を探す人がいたら、ゴグツ盗賊団と同じ末路を辿るのは間違いなさそうだしね」
「肝に銘じておきます」
これで終わればいいなと思いながら別れた。
「沼」の本性を見せたから、生かして衛兵に渡す選択肢はない。
総勢64人。装備、財布、3個の収納指輪を剥ぎ取り、大きな袋に入れた。
遺体は遺体だけの収納指輪を用意した。
◆◆
ハルピィンの街に入った。
「さて、ギルドに行くのはいいけど、盗賊の討伐報告ってどうやんのかな?」
「おいサーシャ」
「あれペルタ様。ギルマスがこんなとこでなにしてんの?」
「おめえを待ってた。問題発生だ。路地裏の喫茶店まで付き合え」
「デートのお誘い?」
「問題発生っていってんだろが」
◆
「単刀直入に聞くがゴクツ盗賊団を壊滅させて、領主の娘を助けたのはお前だな」
「うっ、まずかった?」
「それは構わねえ。顔もフルプレートアーマーで、領主の娘も見てねえって言ってる」
「問題とは?」
「領主が探してる」
「私、名乗り出る気はないよ」
「だが、恩人を探すのは当たり前だ。それに、ここの領主は頭が回る。手の者をギルドに来させて、見張らせているぜ」
「何のためにだよ」
「盗賊の討伐をしたものが、娘を救った者と思ってるからだ」
「あ、ペルタ様ありがとう。領主の娘を助けたときに顔隠したから、問題ないと思ってた。ギルドにノコノコと顔を出すとこだった」
「ギルドには秘密厳守の義務がある。おめえの討伐履歴、盗賊団の討伐者は洩らさねえ。だがよ、討伐者が受付嬢に申請すっとこを見るのは自由だ」
「あいた~」
「だから、今後は盗賊団絡みとかは、俺に直接言え。ここの領主ハルルキ伯爵はいい人間だが、跡目争いで次男坊が変な動きしてっからな」
「あら、心配してくれるんだ」
「ああハルルキ伯爵家の全員惨殺の方をな」
「あっはっは。やらないよ」
「メロンとカリナにちょっかい出されてもか?」
「連帯責任でハルルキ家は全員死刑」
「やっぱ、会わせなくて正解だな。盗賊団はどうした」
「はい時間停止の収納指輪。こん中に盗賊団64人が入ってる」
「お、おお貴重なもんを。責任を持って預かるぜ」
「よろしくね」
◆
ペルタ様と一緒にギルドに向かうと、ギルドの前に若くてきれいな服を着た男と、兵士10人くらいの集団がいた。
「こんにちわ。ギルマスのペルタ殿。そちらの娘さんはサーシャさんでしょうか」
「例の次男坊だね」
「お、分かるんか」
ぴちょん。ぴちょん。
私だけに聞こえる、沼様が催促する音。沼様が大好きな悪意が溢れてるもん。
「何か用なの」
「こちらが挨拶してるのに、いきなりそれですか」
「ふざけてますね、こいつ」
「用がないなら通して、往来の邪魔よ」
「だな。サーシャを雇いにでもきたか。おめえらごときが、どうこうできる相手じゃねえぞ」
貴族家次男坊の手下が散開し始めた。
「これは侮辱ですね」
「なに貴族を気取ってんだ。貴族なのは、親父さんだけだ。魔王様と魔国の介入で、この国の貴族法も変わったんだよ。特権階級の時代は終わってんぞ」
「まだ何もしてませんよ」
「もう遅えよ。おめえの手下が動き出した瞬間から、サーシャがヤバい空気を醸し出してるぜ」
「ザハル様、次期当主候補として、平民になめられてはなりません」
「う、うむ・・・」
「おい、そこの雑兵A」
「なっ。ペルタ、侮辱するのか」
「てめえ、都合がいいように考えるなよ。サーシャも俺も、おめえらが駆け引きしていい相手じゃねえぞ」
「なっ、なにをする気だ」
「う~ん。聞いてるだろうけど、私がブライト王国を逃げるとき、人をたくさん殺したのよね。その中に一応の規則性はあったのよ」
「何が言いたい!」
「あんたらみたいに、訳の分かんない権力にすがる貴族と関係者ばかり選んで、100人くらい殺したわ」
「こ、ここでやったら、この国では殺人罪になるぞ」
「なら決闘しましょ。ルールも参ったもないデスマッチ。11人一緒でいいよ。ペルタ様にも知ってほしいし、先にサービスにスキルを見せてあげるわ」
ぽちょん。公開用の60センチ小沼を出した。
レベルアップで私自身の反応が上がって「沼」の移動スピードも速くなった。
しゆるる。ぺたっ。
次男坊の両足の下にセットしてあげた。
「ザハル様!」
「なんだこれは、黒い足ふきマットか?」
「ペルタ様見てて」
「うん、ザハルの動きが止まるのか・・」
「う、動けん、それに上半身までほとんど動かん・・」
「どういうことだ、サーシャ」
「あの「沼」はくっつくというより、乗ったものを固めるの。それも中途半端に。あいつは股関節の下部くらいまで微動だにしないでしょ」
「お、おめえ、ありゃ影縫いなんて代物じゃねえ。人がしゃがんだり後ろ振り向いたりすっとき、ほぼ全身の関節使うんだぜ」
「でしょ。だからザハル君が動くと、固定部分とそうでないとこの境界線に負担が全部かかるの」
「あっ、あで、下腹と腰が、いだだ、何とかしろ」
「はっ、外します」
しゃがんで小沼からザハル君を離そうとしたやつの右膝が、小沼に触ってしまった。
「うわ。立ち上がることができん。誰かザハル様を支えろ」
ザハル君を左右から支えようとした2人も沼の端を踏んで、足が動かなくなった。
「便利なのは、小沼の円の中に空きスペースがあれば、何人でも捕まえられるの」
「怖いスキルだな。で、あいつらどうする。殺すか?」
「メロンとカリナに野蛮人と思われたくないし、今回は逃がす。けど、その前に、ほれっ」
収納指輪から4メートル鉄棒を出して、小沼に捕まってる4人の腹をつついた。
ベキ!バキ!ゴキ!ベキ!
うぎゃあああああ!
「うわあ、体は転んだのに、足だけ立ったまんまで途中から折れてるよ。地獄だせ」
「スキル解除。何かあったの?私が棒でつついただけなのに、4人も足が変な方向を向いてる」
「こういうときのおめえ、相変わらず棒読みだな」
「お、お前らなにをした」
「雑兵B、おめえらが散開した瞬間にハルルキ家はこの俺、ハルピィンギルドのギルドマスターであるペルタと冒険者サーシャに敵対行為をしたと見なした」
「剣なんぞ抜いておらんぞ」
「あのなあ、森の中で盗賊10人に囲まれて、あなたは盗賊ですかって聞くか?」
「ここは街中で・・」
「馬鹿者が!」
またなんか来たよ。
「やめよゴンバ。あのような動き方、盗賊そのものではないか! ペルタ様、申し訳ございません。怒りをお納め下さい」
「誰かな?」
「ああ、まともな方の貴族家長男のシェークだよ」
「で、お兄さん、あんたも私と決闘に来たの?」
「いいえ、妹を助けてくれた恩人を探しに来ました」
ぽちょん。心の中でも臨戦態勢。
「で、その恩人とやらは見つかったの?」
「・・いいえお礼を言いたかったのですが、見つかりませんでした。恐らく今後も見つからないでしょう」
「うん、あきらめが肝心よね」
「はい、それに弟達も転んだだけですから、ここでは何も起きておりません」
「そだね。これ以上ブライト王国の「白銀騎士」を探す人がいたら、ゴグツ盗賊団と同じ末路を辿るのは間違いなさそうだしね」
「肝に銘じておきます」
これで終わればいいなと思いながら別れた。
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