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53 嘘だよね、目を開けてゲルダ
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子爵邸に乗り込んで、爬虫類軍団を出した。
最初に餌食になったのは意外な人物だった。
「メイスの餌食にしてやる!」
がっ。バクッ。
なんと武闘派の子爵自身が壇上から飛び降りて、15メートル鰐に一直線。そして武器を振り下ろした。
けど鰐は特級ダンジョン中層の化け物。メイスの一撃を気にせず、子爵にかみついた。
「ゲル、いやサーシャ殿、子爵が食われる前に恨み晴らそっか・・」
「濃縮ウオーターランス!」
どりゅりゅりゅりゅるるるるるるる!
「うごおおおごごおおお!」
高威力の水のドリルは、子爵を助けに行った勇敢な兵士6人を巻き込んで肉を千切った。子爵はあっさり死んだ。
鰐は軽傷で怒りを兵士にぶつけ始めた。
「自爆したね」
「トップが出オチするとは・・」
三男、槍の神器持ちを倒せば、あとは状況次第でいい。とんとん拍子で進んでいる。
三男と神器持ちと、私達の距離は約50メートル。神器持ちの片方、楓夏は最初から戦える状態ではないだろう。
「あ、あ、人が簡単に死んでる・・」
「うるさい楓夏! 戦場では人が死ぬんだ。僕が子供を殺したのも盗賊予備軍だったからだ。僕は悪くない。正義の行為だったんだ。あいつらもブライト王国の秩序を乱す盗賊だ。お前も戦え。ほらっ!」
奨太は楓夏を押し飛ばしたあと、紫色の液体を飲んだ。
壇上から降りた奨太と三男に前に押し出され、戸惑う楓夏。言葉の暴力を後ろから食らい、庭の真ん中まで歩いて、ひとり目に涙をためている。奨太から30メートルほど離れてしまい、完全に孤立している。
ぼそっ。
「サーシャ、私は楓夏を確保してくるわ。それで・・」
「援護ね。大丈夫。槍使いの動きはモーションが大きい。技を発動しても、今の私なら十分によけられる」
「ふふっ。ありがとう。白銀騎士様。あとでチューしたげる」
「もう、こんなときに・・」
「何か楽勝ムード。楓夏を捕まえていれば攻撃もされないしね。いくわよ」
「オッケー行くよ」
兵士と召喚獣の戦いは、門の近くにいる私達から距離を置いて左側で起こっている。三男、奨太は右側の台座がある近くで武器を構えている。
奨太達の左側にぽつんと立った楓夏が戸惑っている。
楓夏も私達の攻撃が届く位置に押し出され、彼氏の奨太をにらんでいる。今ならゲルダの話を聞きそうだ。
私は三男に向かって鉄球を投げ、右方向に走った。そうすれば庭の中央、私から見て左に走ったゲルダから気をそらせる。
キイイン。三男は長剣の根本で鉄球を打ち落とした。
「うおっと、手がしびれるぜ。こりゃ何発も防げねえ。奨太、援護頼む」
「任せてアニキ、火突槍!」
ごおおおおおおおおお!
槍を構えてから技を練り出すし、範囲も狭い。貫通力はありそうだけどよけやすい。
ごおおお! ごおおお!
三発目まで見てタイミングをつかんだ。奨太は練度が低いから技を出すのにタイムラグがある。
四発目を打ったら一気に10メートル圏内まで近づいて沼を出し、奨太と三男を確保する。奨太は沼様に貢いで、三男はあとでゲルダの前に出そう。その後は私の死を偽装してダンガーラに一直線だ。
ゲルダも楓夏の肩を抱き、楓夏を待避させる準備をしている。
能力が上がり、余計なことを考えている。今まで、ここまで油断したことはなかった。
やっぱり私は愚か者だ。余裕ではない、考えが緩くなっているだけだ。
奨太がお決まりの構えを取り炎を放つ準備を整えた。右に飛びながら走ろうと思い体重を移動させた。
「奨太、おめえ戦い方が分かってねえなあ」
三男が火の槍を発動させる寸前だった奨太の右手首をつかんで右側に向けた。
「あ、アニキ何を」
ぶおうおおおぼぼぼぼ!
「えっ、あああ!」
三男からすれば、白銀騎士の私はオマケ。「赤いサーシャ」を仕留めるのが本題なのだ。
奨太の意思と関係なく波打つ爆炎が向かった先には楓夏、そして「赤いサーシャ」に扮したゲルダがいた。
楓夏といればゲルダが狙われないなんて誰が決めた。三男は楓夏なんてどうでもいいのだ。
けど、ゲルダは探知力が並ではない。私より早く気づいていた。避けてくれると思った。
なのに・・
ゲルダは予想外の行動に出た。
「楓夏、どいて!」
ごおおおおおおおおおおおおおおお!
ゲルダは左に飛んだが、楓夏に抱きつきながらだった。跳躍に勢いはなく、2人は火を浴びた。
「きゃああああああああ」
「ぐうっ、あがががっ」
「ゲルダ!」
私は全力で走った。
そして下半身に豪炎を浴びて地面に墜落しそうなゲルダを空中でつかまえ、そのまま子爵邸の玄関の方に退避した。
だけどゲルダは・・。
ぷすっ、ぷす、ぶすぶす・・。
豪炎はミスリル装備を貫通し、右足の太ももから下はなくなっていた。おなかから下と左足も黒く変色し、煙を上げていた。
レベルが上がってるのに・・。
「サーシャ、しくじった」
「ゲルダ・・。やだよ」
私が持つ中で最高級の特級ポーションを出して飲ませ、体にもふりかけた。
でも特級ポーションでも焼けた内蔵の損傷や脚の欠損は治せない。
「トム、みんなごめん・・。私だけ幸せになろうと・・したから、バチがあたったのかな。サーシャ、ねえサーシャ・・・・・・」
「ゲルダ、いやだ、目を閉じないで」
「・・」
ゲルダが死ぬ。私の・・
ぴちょん、ぴちょん、ぴちょっ。
『おい、サーシャ』
「沼様、ゲルダが、ゲルダが!」
『ゲルダを沼に沈めろ』
え、沼様? 何言ってんの?
最初に餌食になったのは意外な人物だった。
「メイスの餌食にしてやる!」
がっ。バクッ。
なんと武闘派の子爵自身が壇上から飛び降りて、15メートル鰐に一直線。そして武器を振り下ろした。
けど鰐は特級ダンジョン中層の化け物。メイスの一撃を気にせず、子爵にかみついた。
「ゲル、いやサーシャ殿、子爵が食われる前に恨み晴らそっか・・」
「濃縮ウオーターランス!」
どりゅりゅりゅりゅるるるるるるる!
「うごおおおごごおおお!」
高威力の水のドリルは、子爵を助けに行った勇敢な兵士6人を巻き込んで肉を千切った。子爵はあっさり死んだ。
鰐は軽傷で怒りを兵士にぶつけ始めた。
「自爆したね」
「トップが出オチするとは・・」
三男、槍の神器持ちを倒せば、あとは状況次第でいい。とんとん拍子で進んでいる。
三男と神器持ちと、私達の距離は約50メートル。神器持ちの片方、楓夏は最初から戦える状態ではないだろう。
「あ、あ、人が簡単に死んでる・・」
「うるさい楓夏! 戦場では人が死ぬんだ。僕が子供を殺したのも盗賊予備軍だったからだ。僕は悪くない。正義の行為だったんだ。あいつらもブライト王国の秩序を乱す盗賊だ。お前も戦え。ほらっ!」
奨太は楓夏を押し飛ばしたあと、紫色の液体を飲んだ。
壇上から降りた奨太と三男に前に押し出され、戸惑う楓夏。言葉の暴力を後ろから食らい、庭の真ん中まで歩いて、ひとり目に涙をためている。奨太から30メートルほど離れてしまい、完全に孤立している。
ぼそっ。
「サーシャ、私は楓夏を確保してくるわ。それで・・」
「援護ね。大丈夫。槍使いの動きはモーションが大きい。技を発動しても、今の私なら十分によけられる」
「ふふっ。ありがとう。白銀騎士様。あとでチューしたげる」
「もう、こんなときに・・」
「何か楽勝ムード。楓夏を捕まえていれば攻撃もされないしね。いくわよ」
「オッケー行くよ」
兵士と召喚獣の戦いは、門の近くにいる私達から距離を置いて左側で起こっている。三男、奨太は右側の台座がある近くで武器を構えている。
奨太達の左側にぽつんと立った楓夏が戸惑っている。
楓夏も私達の攻撃が届く位置に押し出され、彼氏の奨太をにらんでいる。今ならゲルダの話を聞きそうだ。
私は三男に向かって鉄球を投げ、右方向に走った。そうすれば庭の中央、私から見て左に走ったゲルダから気をそらせる。
キイイン。三男は長剣の根本で鉄球を打ち落とした。
「うおっと、手がしびれるぜ。こりゃ何発も防げねえ。奨太、援護頼む」
「任せてアニキ、火突槍!」
ごおおおおおおおおお!
槍を構えてから技を練り出すし、範囲も狭い。貫通力はありそうだけどよけやすい。
ごおおお! ごおおお!
三発目まで見てタイミングをつかんだ。奨太は練度が低いから技を出すのにタイムラグがある。
四発目を打ったら一気に10メートル圏内まで近づいて沼を出し、奨太と三男を確保する。奨太は沼様に貢いで、三男はあとでゲルダの前に出そう。その後は私の死を偽装してダンガーラに一直線だ。
ゲルダも楓夏の肩を抱き、楓夏を待避させる準備をしている。
能力が上がり、余計なことを考えている。今まで、ここまで油断したことはなかった。
やっぱり私は愚か者だ。余裕ではない、考えが緩くなっているだけだ。
奨太がお決まりの構えを取り炎を放つ準備を整えた。右に飛びながら走ろうと思い体重を移動させた。
「奨太、おめえ戦い方が分かってねえなあ」
三男が火の槍を発動させる寸前だった奨太の右手首をつかんで右側に向けた。
「あ、アニキ何を」
ぶおうおおおぼぼぼぼ!
「えっ、あああ!」
三男からすれば、白銀騎士の私はオマケ。「赤いサーシャ」を仕留めるのが本題なのだ。
奨太の意思と関係なく波打つ爆炎が向かった先には楓夏、そして「赤いサーシャ」に扮したゲルダがいた。
楓夏といればゲルダが狙われないなんて誰が決めた。三男は楓夏なんてどうでもいいのだ。
けど、ゲルダは探知力が並ではない。私より早く気づいていた。避けてくれると思った。
なのに・・
ゲルダは予想外の行動に出た。
「楓夏、どいて!」
ごおおおおおおおおおおおおおおお!
ゲルダは左に飛んだが、楓夏に抱きつきながらだった。跳躍に勢いはなく、2人は火を浴びた。
「きゃああああああああ」
「ぐうっ、あがががっ」
「ゲルダ!」
私は全力で走った。
そして下半身に豪炎を浴びて地面に墜落しそうなゲルダを空中でつかまえ、そのまま子爵邸の玄関の方に退避した。
だけどゲルダは・・。
ぷすっ、ぷす、ぶすぶす・・。
豪炎はミスリル装備を貫通し、右足の太ももから下はなくなっていた。おなかから下と左足も黒く変色し、煙を上げていた。
レベルが上がってるのに・・。
「サーシャ、しくじった」
「ゲルダ・・。やだよ」
私が持つ中で最高級の特級ポーションを出して飲ませ、体にもふりかけた。
でも特級ポーションでも焼けた内蔵の損傷や脚の欠損は治せない。
「トム、みんなごめん・・。私だけ幸せになろうと・・したから、バチがあたったのかな。サーシャ、ねえサーシャ・・・・・・」
「ゲルダ、いやだ、目を閉じないで」
「・・」
ゲルダが死ぬ。私の・・
ぴちょん、ぴちょん、ぴちょっ。
『おい、サーシャ』
「沼様、ゲルダが、ゲルダが!」
『ゲルダを沼に沈めろ』
え、沼様? 何言ってんの?
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