【旧作改訂】イレギュラー召喚で神器をもらえませんでした。だけど、勝手に付いてきたスキルがまずまず強力です

とみっしぇる

文字の大きさ
68 / 83

68 sideマリア『勇者達』③

しおりを挟む
レッドドラゴンが放った直径30メートルの火球が迫ってきました。

だけどなぜか、ハルピインでサーシャに殺気を向けられたときより楽です。

「ドラゴンより怖いサーシャって何者なのよ」

お陰で腹は決まりました。

カインの抱擁は名残惜しいですが、手をほどいて城壁の上に立ちました。

「女は度胸です。六角氷姫、能力開放、魔力全開!」

あらゆるものの力を借りて、今の素の私では放てない魔法を構築します。

熟練度が低い氷の障壁を張っても、またたく間にドラゴンの火球に溶かされるでしょう。

それよりも、平面型の攻撃魔法をぶつけます。

火球が迫るなかでも体の中から冷気を感じます。

ゴゴゴゴゴ!街の中からたくさんの悲鳴が上がる。

火球を相殺したい。ダメなら反らす。それでもダメなら・・


「私にみんなを守る力を下さい!」

『アブソリュートゼロ』

ギイィィィン!

超低温の直径20メートルもある六角形の氷の壁。本来なら地面に設置する技だけど、空中に展開させて面で炎を受けます。

火球とぶつかった瞬間に、巨大な氷の結晶を回転させます。

一瞬は押しました。けれど、炎に押され始めました。

「だけど、私がくじけるわけにはいかない。そうだよね」

彼の視線を感じる。力をちょうだい。

ねえ、カイン・・


六角氷姫に魔力を込めます。炎が止まりません。けれど、魔力を込めます。そして頭痛がしても魔力を込めます。

鼻の奥がつんとして、なにやら液体がドロリと出てきます。

「ぐ、ぐ、ぐうう」

私の真上で火と氷の攻防が続いています。

「や、か、せない。まもる、んだ」

目にも激痛が走って、視界も真っ赤です。

「もう、少し・・ごぷっ」
「マリア!」

火球はまだ消えていないのに、私の魔法が消えました。

火球はまだ3メートルあります。



「黒風」
その時です。声とともに何かの魔力が飛んできて、火球に直撃しました。風の魔力です。火球を切り裂き、霧散させました。

間一髪でメロンが来てくれたのです。

メロンはそのまま私のところに来て、2本のポーションを飲ませてくれました。

立てませんが、幾分か意識がはっきりします。

「・・助かった、メロン」
「ありがとう、マリアさん。私達は判断ミスをしたわ。マリアさんの判断がなければ、多くの人が死んでいた。ありがとう、マリアさん」

「いえ、力及ばすでした・・」
「あとは任せて」

「・・えっ、あっ、カリナは、ドラゴンは?」

メロンはのんびりしていていいのでしょうか。

カインに抱えてもらい、城壁の端に連れていってもらいました。すると、そこには驚きの光景が広がっていました。

城壁から300メートル先。

カリナがレッドドラゴンと1対1で戦っているのです。

騎士団、冒険者、ドラゴンを使役するネパルントの愚王さえも、戦いを見ています。

ドラゴンの噛みつき、爪攻撃、全て「黒獅子」から伸びた金と黒のオーラで弾いています。

頭を縦に振って噛みつきにきたドラゴンに合わせ、下から武器を持っていない右パンチを合わせました。

20メートル、数トンのドラゴンと、160センチ美女の真っ向勝負。

ゴイイン!

なんと、カリナのアッパーカットが決まり、ドラゴンがのけ反りました。

「黒獅子変化!」
カリナが叫ぶと、剣が刃が黒と金の糸になり、カリナの左腕に巻き付きました。

「メロン、合わせて」
「オッケー、上から行くわ!」

私の横に立っていたメロンが跳ぶと、あっという間にドラゴンの真上に到着しました。あとは自由落下です。

そして、左腕を伸ばして落下。

その腕にカリナと同じように黒と金のオーラが巻き付き、黒の間から黄金の光が漏れだしました。

メロンは上から落下しながら、カリナは下から跳びながら、ドラゴンの脳天と顎下から攻撃します。

ばち、ばちっ、ばちばちばち。ぱーーーーーん。

ドラゴンの頭に幾筋もの割れ目ができて、ものすごい衝撃波が周囲に翔んできました。

そして・・

ドラゴンの首はなくなり、あっけなく巨体が倒れました。

ネパルントの馬鹿どもは、衝撃波を至近距離で食らい、ぼろクズのようになりながら宙を舞っています。



街の門が開き、中も外も大騒ぎになっています。

その中心にはメロンとカリナがいます。
「サーシャ、2人は本物の勇者になりました」

私は歩けないままなので、カインがお姫様抱っこしたまま、城壁から地上に降ろしてくれました。鼻と口から出た血も拭いてなくて、恥ずかしいのです。


「マリアさん」
2人が駆け寄ってきます。

「さすがです。お二人とも。私が生まれた街を救ってくれた勇者に感謝します」

臨時メンバーとして、とても誇らしい気分です。

「なに言ってるんですか、ひとごとみたいに」
「街の人達が「マリアさん」を待ってるよ」

何を言っているのでしょうか、この2人は。

「私は炎も止められなかったし、魔力が尽きて倒たから・・」

戸惑っていると、街の人達が集まってきます。

感謝や称賛の言葉をもらい、カインに抱かれていることもあって照れ臭くなってきました。カインが離してくれません。

一緒に城壁の上にいた人達は、街の人に何と伝えたのでしょうか。

メロンとカリナは当たり前として、力が劣る私まで勇者の如く称えられています。

カインにお姫様抱っこされたままです。カインも私も、私の血がべっとりついているのです。

目立ちすぎです。

◆◆
あれから1ヶ月。

周囲が大変なことになっています。

ネパルントの残党を追ってきていたニュデリィ王国の人にも、メロンとカリナの活躍、そしておまけの私の微力な手助けが見られていました。

西にあるニュデリィの国から私まで「勇者認定」を受けてしまいました。

「殺戮天使」の美女2人には求婚、士官、他国招待の話がひっきりなしです。

私でしょうか?

私にも、さばききれないほどのオファーがありました。
ですが、カインと一緒にいます。

いえいえ違います。他国に嫁いだりする気がないから、カインに彼氏代わりになってもらっているだけです。

今日は、ダンジョンでもなく普通の海岸にいます。カインと2人です。

いえ、いえいえいえ。約束を果たしたまでです。ドラゴンの炎を止めに行く前、デートの約束をしたからです。

もう1度言いますが・・


いえ・・違いますね。認めます。本気のデードです。

だよね。ねえ、カイン。


しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです

桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...