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63 ちゃんとした魔法と、してない魔法

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カフドルス侯爵様はなんと、ローズちゃんの父親だった。興味が沸いた私は、模擬戦をお願いした。

「よし、私も噂のアヤメ殿と手合わせをしたくて、うずうずしていたのだ」

侯爵様、オスカー様、ハドソンさんと訓練場に行くと、広さに驚いた。

一辺100メートルの四角。武闘会などのイベントもここで行われるそうで、階段状スタンド席もある。魔法訓練用の的もある。

そこはいい。

なぜ、客席が満員で騎士9人がスタンバっているのか。
魔法使い部隊も、総数の20人が的の前で待っている。

「今日は、何かやる日だったんですか?オスカー様」
「いや、君に助けられた騎士達の話を聞いて、「クロビカリ聖女」を見にきたんだよ」

「・・はあ」

まずは魔法披露会になった。これは私も興味があった。他の人の魔法をほとんど見たことがなかったのだ。

侯爵家魔法部隊の火、水、風、土の適正者が30メートルの距離から魔法を披露。
直径50センチの鉄の的に「ファイアランス」「ウオーターランス」「ウインドカッター」「ストーンショット」を次々と当て、破壊していった。

「すごい。百発百中だし巧の業だ」

「お褒めいただき光栄です。次はアヤメ殿がどうぞ。的は「頑丈」ですので、簡単には壊れませんのでご心配なく。命中するかご心配でしたら、前の方から撃っていただいて結構です」

魔法部隊長のロジクさんの、ちょっと含みがある言い方。
侯爵様が私を褒めるから、魔法使いのプライドが傷ついたのだろう。実際に年季が違う。私の魔力操作が甘いのが分かるのだろう。

的は20個。

「じゃあ遠慮なく20メートルから。まずは水魔法からいかせてもらいます。水鉄砲じゃなく「ウオーターガン」」

ドン、ばしゃっ。的が揺らいだだけだ。

「うむ、中々の発動速度ですが、威力は足りませんな」

苦笑いされた。

「はい、では次です。スライム酸、じゃなかった「アシッドウオーター」」

的が溶けた。

「ほう・・これはかなりの」

「じゃあ次は別属性を」
「お、多属性持ちでしたな」

的まで15メートルまで近付いて手を伸ばしナマズの触手を2本だけ出した。
ひげと額のやつはギャラリーの前で出しにくい。

「電気は・・代用魔法がないや。まあいいや、エレキガン!」

バチバチバチッ。パーーーン。

おおおおおお!

的が弾け、観客席がどよめいた。

「次は混合魔法です」

アマゾネスのお姉さんのアドバイスで作った新作。左手に水鉄砲発動、右手にそのまんまエレキガン維持。そして同時発射。

水に電気を乗せることで、空中で放電すると、どこに向かうか分からない電気エネルギーを制御する。

バチバチバチ。

的は壊れないが、殺傷能力を下げた「スタン」の使い方ができる。触手増と「背中電池」の追加で威力も6段階で調整できる。


「い、今のは?」
「雷魔法? と水魔法の応用」

「か、雷魔法を本当に使える人間がいるとは・・」

「土魔法を出しますね」
「まだあんの?」

「ポイズンニードルじゃなかった。「ストーンショット」」

ドンッ。新しいポイズンニードルは、的にかすっただけ。手からだと命中精度が低いが、的は半分くらい切り裂いた。

えええええ!
おおおおお!

的はまだ17個も残っている。

「じゃあ、ラストは魔法の乱射で」

当たらなかった恥ずかしいから、両手を突き出して右手ポイズンニードル、左手スライム酸、各100発の物量作戦に出た。

ドッドッ、ドッドッドッ、ドドドド!
じゅばっ、ばばば、じゅばっ。

命中率が低い。
ニードルを追加して、的が粉々になるまで撃ち続けた。

的を全滅させるのに時間がかかったから、拍手はなく観客席は静まり返っていた。

魔法師団の人もあきれたのか、口をあんぐりと開けていた。

最近、アマゾネスのお姉さん方が基準になってたから、無茶苦茶にやりすぎたかも。




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