ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる

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83 男爵家に呼ばれたが

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冒険者ランク降格の危機だった。

「シャイニング」の5人は、依頼横取りを報告しないで許してくれた。

ダメだったらEランク降格で一年間昇格なしになるとこだった。

ゴブリンキングを中心とした獲物の素材、巣の討伐報酬、領主の褒賞金で3100万ゴールド。

迷惑料として、彼ら5人に振り込んでもらった。

彼らには、これで利益を出してもらえると思う。

キングを「等価交換」の材料に使ったところでゴブリン10匹分。若手の装備に変わるなら、有意義だ。

面倒ごともある。

キングの討伐者とバレて、領主のナントカ男爵と面談させられる。

正装、装備無しが基本。

だけど領主は、あの悪徳女アイリーンの父親。いい噂を聞くけど、娘絡みで変貌するかも。

もめて戦う可能性も考える。

しかし、380匹ほどのゴブリンは確保した。
コリーヌに使い途を聞かれ、思わず「食料?」と言ってしまった。

悪食だと思われてるね・・

「等価交換」で手から吸収する。真実を明かした方が、信じてもらえないだろう。


一旦オルシマの街に帰ってきたから、ミールの様子を見にきた。

事務処理に時間がかかり、もう夜だ。

会ってからの日数は少ないが、顔を見ると安心する。

ミールは明るくなっていた。

冒険者登録から数日、もうFからEにランクを上げている。

スマトラさんちの、アルバさん4兄弟と戦闘スタイルも似ている。

アドバイスもたくさんくれるという。


スマトラさんがミールに聞いた話。
闇属性のスキルを持つ彼女は、教会上層部から「異端児」認定。

親にも見放された。

8歳から、矯正施設という名の訓練所に閉じ込められ、12歳でツラカーナの教会に諜報員として送られた。

素行が悪い騎士達に目をつけられ、虐待されたそうだ。

誰かに訴えなかったのか聞くと、言ったそうだ。

「交代になっても、代わりの子が同じ目にあう」

聖騎士を見たら、皆殺ししよう。

これから教会上層勢力が何か仕掛けてくると思う。

用心しよう。

私は、ミールの意見だけを鵜呑みにする。

独断と偏見のみで戦おう。


◆◆
3日間、ミールと過ごして領主邸にきた。

ギルドに寄ったとき、ゴブリンキング討伐のことで領主のルシア男爵と会う話になった。

今日がその日だ。本当は行きたくない。

ばっくれたら「シャイニング」の5人が代わりに呼ばれる。逃げられない。

付き添いはギルマス。

迎えの豪華な馬車に乗せられ、大きな邸宅の正門から入った。

初めて貴族の家を門の内側から見た。

家はデカイ。

位として、男爵の上に子爵、伯爵、侯爵、公爵といるのが信じられないくらいデカイ。

「金って、あるとこには、あるんだね~」

一応、ゴブリンキング単独討伐者の私。豪華な応接室で面談した。

私は余計なことはしゃべらない。嫌、しゃべれるはずかない。

夢物語じゃないんだよ。

街の底辺が貴族家に招かれ、突然に対等に話せるなんて、ありえない。

ただ、緊張はしない。

スキルを得て半年でも、死線は越えてきた。

この屋敷にいる人間で倒せないと思ったのは、付き添いのギルマスのみ。

今日の格好は黒の女性用スーツ。革靴。

まさかの時のミスリルタンクトップを下に着込んでいる。

靴は・・しゃーない。

ギルマスに伴われ応接室に入った。

「よく来てくれた。私がルシア男爵家当主のルーカスだ」

当主ルーカス、息子らしき男子2人。家裁、護衛4人といったところか。

「ユリナです・・」

「ゴブリンキングの厄災を未然に防いでくれたことを感謝する」

「たまたま倒したゴブリンが、キングだったようです。・・おほほほほ」

回復スキルのことを何度も聞かれた。

冒険者の生命線のことを聞くな、とギルマスが牽制してくれた。

戦闘力のことは、アピールしておいた。

面談は早々と終わって、解散した。

急いで男爵邸を退散しようとしたが、やはり帰してもらえない。

男爵と一緒にいた男子の片方、22歳のナントカが、私の前で待ったをかけている。


「おい女、本当にお前がゴブリンキングを倒したのか。貴様はDランクだろう」

タイミングが早すぎる。

おそらく男爵に察知される前に準備してた。

戦闘力に関しては、嘘をついてない。

男爵との面談で事実を述べたが、私の細腕を見て信じられなかったようだ。

殴り合いの、その先があるとは、明かせない。

「そうですね。たまたま死んでいたキングを拾いました」

「なに? 時期当主候補の私の前で、それを言うか」

ギルマスが割って入った。怒気含みの声。

「ガルサ様、ギルドでは、ユリナが討伐者と認定されてますぜ」

「本当に、その力があるならば、証明して見せよ」

ギルマスの方をチラリと見た。
ギルマスも興味があるようだ。

ギルド訓練場で私が何かやるときは、必ず副ギルマスのジェフリーさんが出てきてくれた。

ギルマスは私の戦い方を知らない。

「ギルマス、受けていいんですかね」

「前例はないな」

魔物の上位種を1人で討伐できる人間に仕掛けて来る馬鹿。そうそういないそうだ。

「断ってもいいぞ。ユリナは功労者だ。こんな流れは俺が絶ち切るよ」

「私、前にここの次女アイリーンとトラブってるんですよね」

「ああそうか。逆恨みだ」

ガルサと療養中のアイリーンは仲がいいそうだ。

納得。やることにした。

断ったら問題が尾を引く。

訓練場で兵士20人、魔法使い3人を相手に戦うことにした。

ガルサが自由に使える23人。仕掛けてくるなら、事故死でも怒られないだろう。

「ガルサ様、ここは私にやらせて下さい」

「いえ、私が!」
「俺に!」

「あの~~」

「なんだ、女」

「23人全員と戦いますよ。あ、夕方から用があるし、全員まとめてやりましょ、ね」

「なにを!」
「ルシア男爵家の兵力をなめているのか」

「私、ゴブリン30匹と同時でも、余裕だったし・・」

「我々、貴族家に仕えるものをゴブリンと比べるのか!」

威勢はいい。ただ・・

ランドドラゴン程度の圧力も感じない。

ほんと、悪気はなかった。

「すげえ、煽ったな」とギルマス。

普通にしゃべっただけなのに、火に油を注いでしまった。


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