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しおりを挟むそれにしてもだ、このクソジジイは今の状況を理解しているのだろうか?
何だかよくわからないけど、やったやってないとこの物騒な美人と腹黒そうな美形にいろいろ言われながら暴力まで振るわれているのに、明日以降も今まで通りにここで働けるとは思わない。
多分、会社のことで何か言われているみたいだし、何のお咎めもなく今まで通りっていうのは難しいんじゃないかなと私は思うんだけど。
というか、この物騒な美人の前でギャンギャン吠えるはちょっと危険なんじゃないのかなぁ。
こういう煩いの嫌いそうだし。
上司の聞くに堪えない言葉を呆れながら聞き流していると、先ほどまで傍観を決め込んでいた銀髪の男が小さく舌打ちをした。
男の顔を盗み見ると、これまた人一人殺してきたような凶悪な表情をしている。
せっかくの美人が台無しだ。美人がこんな表情をすると普通の顔面の人がするより恐ろしいってことを初めて知った。全く知りたくなかったけど。
そんなくだらないことを考えていると、銀髪の男がスラっと長い足を振り上げているのが目に入った。
振り上げた男の足は、そのまま近くにあったデスクチェアを勢いよく蹴り飛ばした。
ガシャンと大きな音を立てて上司の真横に倒れた椅子に、先ほどまで喚き散らしていた上司は顔を青くして押し黙った。
ちょっと待って、その椅子普段私が使ってるやつなんだけど?え、壊れてないよね?
いや、まぁ壊れててもいいか。きっともう私がその椅子を使うことはないでしょ、たぶん。
「ギャーギャーうっせぇんだよ!ぶっ殺すぞ」
男の恐ろしい声に上司何も言えず震え上がり、私は黙って男の様子をうかがった。
ただ、黒髪の男だけがやれやれといった感じでため息をついている。
いや、ちょっと待って。
そもそもの話、私はそのやったって何のことだか全然わからないんだが?
なんか勝手にやらかしたことなすりつけられそうで知らないって感じ答えたけど。あと上司にムカついているのもあるけど。
そもそもの話、やったかどうか聞かれても内容がわからないんだからやったかやってないか答えることはできなんだけど。
「あの!やったって何のことですか?それがわからないと何とも言えないんですけど」
いや、確実にやらかしてるのは上司な気がするけどさ。態度や言動的に。
「あ゛?」
私の質問に銀髪の厳つい声を出しながら恐ろしい顔で睨んできた。
すっごく怖い。
美人の怒った顔は怖いっていうけど、ホントなんだと今まさに実感した。
女顔負けの美人な男だがその瞳はどこか野生の獣じみていて、目を逸らすと襲ってきそうな雰囲気で私は目を逸らすことができずじっと男の目を見つめ返した。
どれくらい時間がたっただろうか。
体感ではとても長く感じたけど、それは数秒にも満たないと思う。
銀髪の男が先にチッっと舌打ちをして目を逸らした。
そんな私たちのやり取りを見ていた黒髪の男が、どこか楽しそうな笑みを浮かべながらことの経緯を説明してくれた。
黒髪の男曰く、うちの会社は男達が働いているところの子会社的なところらしく、ここ最近うちの会社から上がってくる決算の書類や報告書がおかしいことに気が付いたそうだ。
そこで、いろいろ調べてみると出るわ出るわ。
横領から始まって違法な取引になんかよくわからないけど敵対組織との密なやり取りなどの裏切りの数々。
で、社長にどういうことか話を聞こうとしたが、バレたことに勘づいた社長はどこかへ雲隠れして捕まらず、社長から何も知らされずにいた一応この会社で2番目に偉い上司を捕まえることができたから事実確認と裏帳簿や取引に使われた書類を探しに来た、ということだった。
いや、情報量が多すぎてびっくりなんだけど?
そもそも、ここがどこかの会社の子会社だってこと今初めて知ったんだが?
そんなこと就活してた時に聞いてなしどこにも載ってなかったんだけど。
てか、上司は社長に捨てられた?身代わりにされたってことか……ざまみろ。
それにしても、裏帳簿と取引の書類か。
多分、アレのことなんだろうなというものを私は持っている。
私に押し付けられた仕事の中で少し考えればおかしな点に気が付くものがいくつかあった。
社長や上司に作れと言われた取引に使う資料だったり、お局サマに押し付けられる決算とか帳簿の作成だったり。何も言わずに押し付けられた仕事をこなしていれば、何も言ってこないから気が付いてないと思われたのか、よく自分の仕事とは関係ないものを押し付けられるようになった。
さて、ここで私がその書類を持っていることで、今この状況が不利になるのかならないのかが問題だ。
書類を持っている=犯人、だとか安直なことを考える人達ではないだろうけど……さて、どうしたものか。
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