最強魔剣士が今更だけど魔法学校に通います

うずら

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第二章

15 妨害工作

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 後日アルスたちは再びドヴァリの工房へ訪れた。
 部活動の危機ということもあって、今回はミトナとジョン先輩も一緒だ。

 アルスがドアを開けると、工房内にドヴァリ以外にも三人のドワーフと一人のエルフの姿があった。

「おお、よくきたな」

「ドヴァリさん、この人たちは?」

 アルベール部長も初めて見る顔のようだ。

「ああ、こいつらはワシの古くからの知り合いだ。」

 そう言ってドヴァリは、ドワーフとエルフたちをアルスたちに紹介する。

「オレはビョルンだ。武器屋を営んでる」

「アーデルハイトじゃ、金物屋をやっておる」

「オレはヒャルマール 、兜屋だ」

「私はエレディオン、彫金師です」

 ドヴァリに紹介され、軽い自己紹介をする三人のドワーフと一人のエルフ。

 彼らの職業から察するに、ドヴァリの取引先と言ったところだろう。

「ドヴァリ、やはり仕入れはうまくいってないのか?」

「それが、つい先日、鉱石を優先的に回してくれる鉱山主が一人見つかったんだがな……」

 アルスの問いかけにそう答えるドヴァリ。

 ドヴァリの報告を聞いて、少し安堵した表情のノエル。

「じゃあ、工房を再開できる目星がついたんですね?」

「いや、見つかったんだけどな、これから取引を始めようって時に、鉱山が突然閉鎖されちまってな……」

「「「「えっ!?」」」」

 アルス以外の魔導研究部の一員は、その言葉を聞き一様に動揺する。

「なぜ閉鎖されたんだ?」

 アルスは落ち着いた様子でドヴァリに問う。

「坑道内で落盤と火災が相次いでな……未だ鎮火もままならない状況だとさ、おそらくもう廃坑だろうな」

 落胆した表情でそう返事を返すドヴァリ。
 その言葉を聞いていた他の者たちも、深いため息をついて落胆の表情を見せる。

「クックックッ、おやおや~、どうやら皆さんあいかわらず大変なようですね」

 その時、工房のドアが開き、不快な笑い声が聞こえてきた。

 姿を現したのはオルムス商会のグラハム・スネーカーと、屈強な体躯の三人の用心棒ボディーガードだった。
 流石に先日ドヴァリに殺されかけただけあって今回は警戒しているのだろう、用心棒たちを盾に、こそこそと後ろに隠れながらの情けない登場だ。

 おかげで工房内は窮屈なことこの上ない。

「まさか……貴様の仕業か、スネーカー!?」

 怒気を孕んだ目でグラハムを睨みつけるドヴァリ。
 その握りこぶしからは、血が滲み滴り落ちている。

「さて……何のことやら? 最近テロやら何やらと物騒な世の中になってきましたからねぇ」

 わざとらしくしらばっくれるグラハム。その不敵な笑みを見て、最早この場にいる誰もが、鉱山を閉鎖に追い込んだ犯人が彼であることを確信した。

「白々しいぞ、オルムスの蛇野郎が!」

 拳を握り入たえているドヴァリの代わりに、ビョルンがグラハムに殴りかかろうとするが、屈強な男たちに阻まれる。

「それほど言うのなら、証拠を見せてもらいたいものですね」

「くっ……」

 グラハムの余裕の表情から察するに、証拠隠滅は完璧と言ったところだろう。
 証拠が無ければ、憲兵や騎士団も動いてはくれない。

「それでは、今回はここらへんでおいとましましょう。次に来るときに、良い返事を期待していますよ」

 そう言ってグラハムと用心棒たちは工房を出ていった。

「確かにあいつの言うとおりだ、証拠が無ければどうしようもねぇ」

 悔しそうな表情でカウンターに拳を叩きつけるドヴァリ。
 その場にいる誰もが、もはや打つ手がないと思っていた。
 この先商売を続けていくためには、オルムス商会の傘下に入りノウハウを提供するか、高騰し続ける原材料の購入赤字を回避するために、商品の価格を今の何十倍にも値上げするしかない。

 前者は用が無くなれば切り捨てられる未来しかなく、後者は論外。

 八方塞がりの状況に、職人たちはただ項垂れるのみ。
 

「そう落ち込むことはない。手つかずの鉱山なら一つあてがある」

 重い空気を破ったのは、そんなアルスの一言だった。

「それは本当かアルス!?」

「ああ、ただし場所が問題だ。国境を越える必要があるがな」

 一瞬希望の光が見えたと喜んだドヴァリだったが、続くアルスの言葉を聞き、再び落胆する。

「つまり、鉱石を他国から輸入するってことか?」

「まあ、そう言うことになるな」

 活路が見出されたかと思われたが、ドヴァリや他の職人たちの反応はあまり芳しくなかった。
 国境を越えるということは、輸送費用や護衛費、それに関税やら何やらでコストがかさんでしまう。
 更に、この首都ミストレアが、山脈に囲まれた国の中央部に位置していることも、輸送を困難にしていた。

 か細い光明。

 言ってみれば、天空から垂れ下がった蜘蛛の糸にすがるようなものだろう。
 しかし彼らには、その蜘蛛の糸に頼るしかなかった。

「オレはその案にのったぜ。オルムスの蛇野郎に屈するくらいなら最後まであがいてみせる」

「そうじゃな、このままだと鍋一つを金貨一枚で売らにゃならんようになる」

「うむ、オレも賛成だ」

「私も、オルムス商会のやり方は気に入りませんからね」

 三人のドワーフと一人のエルフは、そう言ってドヴァリの方を見る。

「お前らがそう言うなら仕方ねぇ、頼んだぜアルス!」

 つい先日会ったばかりの学生、そんなアルスの言うことを普通ならば間に受けはしなかっただろう。
 しかしドヴァリは、目の前の少年がただ者ではないことを直感的に見抜いていた。
 
 彼ならばこの窮地を何とかしてくれるかもしれない。
 そんな確信めいた思いが、ドヴァリの中に生じていた。
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