最強魔剣士が今更だけど魔法学校に通います

うずら

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第二章

17 盗賊団

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 首都ミストレアを出発したアルスたちは、北の街道を突き進んでいた。

「ママ、スゴイ! 馬車ガイッパイ!」

「こら、顔を出すと危ないわよ!」

 馬車の窓から顔を出しながら、オーキーは楽しそうにはしゃいでいた。
 膝にのせていたノエルは、今にも窓から飛び出しそうに身を乗り出しているオーキーを捕まえるのに必死だ。

 傍から見れば、ノエルがオークの人形を腹話術で操っているように見えるが、自動制御の実式が組み込まれているオーキーは、自分の意思で興味が赴くままに動きまわっていた。

 その様子を同乗者たちは微笑ましく見ている。

 因みに行商キャラバン隊の構成は、アルスたちが乗った大型高級馬車キャリッジを中心に、先頭を二台の二人乗りの軽装馬車カブリオレ、その周りを無数の荷馬車ワゴンが並走している。

「それにしてもアルスくん、行き先が魔王領アスガルズって、本当に大丈夫なのかい?」

「たしかに、魔族領に入った途端、魔族に襲われでもしたらたまりませんわ」

 アルベール部長とエリーゼは少し不安そうにアルスに尋ねる。

 魔王領アスガルズと言ったら、魔族たちの本拠地だ。
 幾ら人類対魔族の戦争が終わったとはいえ、不安になるのはわからなくもない。
 ノエルとエリーゼに至っては、魔族のテロリストに遭遇し、その好戦的な一面を垣間見ている。

「ちゃんと話は通してあるから問題ない。それに魔族と言っても、俺達と何ら変わりはないだろう。悪い奴もいれば良い奴もいる」

 窓の外を流れる景色を眺めながら、涼しげな顔でそう答えるアルス。

「そうよね……停戦を申し込んでくるくらいだから、魔族側にも穏健派がいるってことなのよね」

 一部の魔族が好戦的だからと言って、魔族の全てがそうであると考えるのは早計だ。
 ノエルはそう考えた。
 
「それに魔王領は龍脈レイラインが他の国よりも豊富だと聞く、魔導鉱石の埋蔵量も相当な物だろう」

「「!!!」」

 アルスのその言葉に、ドヴァリとアルベール部長が反応した。

 龍脈――すなわち地下に存在する魔素の流れは、その土地に生息する魔物モンスターの強さに影響を与えたり、魔力の回復速度を高めたりすると言われているが、それ以外にも様々な影響を周囲に与えている。
 その一つが、魔導鉱石の生成を促すという点だ。

「確かに、ミスリルやアダマンタイトの埋蔵量は、その土地の魔素の濃さに比例するって言うからな」

「と、ということは、ミスリルやアダマンタイトを採掘し放題ってことなのかい!?」

「ああ、もしかしたらオリハルコンの原料となるオレイカルコス鉱や賢者の石も見つかるかもしれない」

「オ、オリハルコン……それがあれば、魔法陣回路の更なる進化も可能に……!」

 アルベール部長は、あまりの興奮にふらふらとよろめいた。

「ちょっと部長、大丈夫ー?」

「部長、いつかオリハルコンを錬成してみたいって口癖のように言ってたからなぁ」

 会話には参加せず二人で窓の外を見ていたミトナとジョン先輩だったが、ふらつく部長を見てさすがに声をかける。

「だ、大丈夫だよ! あまりの興奮に気絶しかけただけだ!」

 そういって、再び席に戻るアルベール部長。

 その時だった。突如馬車の外から叫ぶ声が聞こえた。

 窓の外を見ると、先頭を走っていたはずの軽装馬車の一つが、アルスたちの乗っている馬車と並行するように近づいてきた。
 軽装馬車に乗っていたのは、エリーゼの取り巻きの二人。
 先ほどから顔が見えないと思ったら、先頭で偵察役をしていたようだ。

 エリーゼは窓を開けて、取り巻き達の方へと顔を出す。

「どうしたんですの、騒々しい」

「お嬢大変っス! 前方に盗賊団発見っス!」

「凄い数ですぜ! どうしますかエリーゼさま!?」

「盗賊団ですって!?」

 取り巻き達の報告を聞いたエリーゼは、驚いたように声を上げた。

◇◇◇

 停止を余儀なくされた馬車隊の前方には、およそ20人以上の盗賊たちが行く手を阻んでいた。

 周囲には山や草原が見えるばかりで、地平線を見渡しても建物らしい建物が見えない程、人里からh慣れた街道だった。

 やれやれやっと出番だぜ、といった風に、停車した荷馬車から次々とエリーゼの雇った護衛の冒険者達が降りてくる――が、その瞬間を待っていたと言わんばかりに、大量の矢の雨が空から降り注ぐ。
 前方の盗賊団たちの放った矢だった。

 これにはさすがの冒険者たちも、慌てて荷馬車の中に戻っていった。

「ちょ、ちょっとなんですの!? ちゃんと応戦しなさい!」

 護衛の冒険者たちのあまりの体たらくに、思わず愚痴をこぼすエリーゼ。
 しかし無理もない、エリーゼが雇った冒険者は全て前衛で、魔法職や遠隔攻撃のできる者は一人もいなかったのだから。

「しかたがない、俺が行って話をつけてくる」

「ア、アルスさま!?」

「え? アルスくん!?」

 アルスは高級馬車から降りると、盗賊団の元へと歩いて行った。
 明らかに無謀な行為だったが、あまりにも普通に馬車を降りて行ったので、彼を引き留める者はいなかった。

 一方で盗賊の一人は、近づいてくるアルスを目視するや否や、にやにやと笑い徐に弓矢を構える。
 ヒュンッっという音と共に、アルスの足元の地面に矢が突き刺さった。

 続いて聞こえる盗賊たちの嘲笑。

 相手は一人、しかも華奢で弱そうな少年。
 要するに盗賊たちは彼を舐めていた。
 盗賊たちは、これでアルスが怯んで馬車に逃げ戻るだろうと予想し、逃げて背中を見せたところに矢で止めを刺そうと再び弓を構える。

 しかしアルスは、地面に突き刺さった矢を踏みつけると、歩みを止めることなくそのまま前進した。

 予想外の行動に、盗賊は今度は標的の肩を狙い矢を放ったが、アルスの身体に触れた瞬間、勢いを失ったかのように、矢はポトリと地面に落ちた。

 何が起こったのかわからず、盗賊たちは動揺する。

「俺たちは急いでいる。おとなしくそこをどいてくれ」

 アルスは盗賊たちに、淡々とそう告げる。
 
 動揺していた盗賊たちだったが、アルスの言葉を聞いて、再び盗賊たちは嘲笑する。

「ギャハハ! こいつ、俺たちにどいてくれだとさ!」

「いいぜ! ただし荷物と馬車、ついでに着てるもん全部脱いで置いてったら通してやる!」

「あと若い女もいたら置いてけよ。クヒヒ!」

 盗賊たちは、目の前の少年の正体も知らずに、各々言いたいことを言い散らす。

「……どうやら、話すだけ無駄の様だったな」

 そう言い放ち、アルスは腰ベルトに差した双剣を引き抜く。

「おいおい、こいつ剣を抜いたぜ!」

「ひゃー、怖っえー! ボクちゃん怒っちゃったぁ?」

 アルスを指さしながら笑い続ける盗賊たち。

 そんな彼らに憤慨する様子もなく、アルスは更に言葉を続ける。

「一つ確認しておくが、ここを退かないということは、死ぬ覚悟は出来ているんだな、貴様ら?」

 一段と低い声で、アルスは告げる。

「はぁ? 何言ってるんだこいつ? 死ぬのはテメェの方だよ!」
 
 盗賊の一人が、湾曲鉈ククリを抜き、アルスの首筋を狙って刃を振り下ろそうとした。
 しかしそれよりも早く、アルスは双剣を一閃し、盗賊の手首を斬り落とす。

 宙を舞う湾曲鉈と盗賊の手首。

「ひっ!? お、俺の、手がぁあああっ!」

 手首から先が無くなり、狼狽する盗賊。
 切断面からはピューピューと血が噴き出し、他の盗賊たちの顔を鮮血に染める。

「どうする、まだやるのか? 次は手首だけでは済まないがな」

 アルスは双剣を構えると、盗賊たちを見据えてそう言った。
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