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ドレス
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翌日からたくさんの準備が始まった。
心配していたのだが、やはり後になって彼女の“アレ”が始まる。
「あ…でもね…亮ちゃん。」
「ん?」
「わた…し…その…
バージンロード歩けないね。」
「…そんなの僕が支えるから気にしないで下さい」
「て、ていうかね、
式…を本格的に…するの?」
「んー。
知り合いにライターがいることは知ってますよね。
そいつが今度ウエディング雑誌を撮影することになったんです。
で、モデルとかを探してる話に僕が…ってこんなの嬉しくないですよね…」
お互いが落ち込み始める。
彼女は慌てて首を横に振って
「ううん!!
私…嬉しい」
そう言って笑ってくれた。
高校の時に写真部の部長と僕は仲がよかった。
卒業後は専門学校に行くと言っていたのだが
彼の叔父が経営している雑誌やパンフレットなどを発行している会社に入ったらしい。
(別に専門学校中退ではないらしい。今も通っている)
と、言ってもよく見かける『ご自由にお取りください』のパンフなんかが多いので
収入はそんなに期待できないと言っていた。
二ヶ月前、久しぶりに会った時に
お互いのことを話していた。
そして宮川(通称部長)のウエディングの話があり
モデルとして僕が名乗り出てみたのだ。
「え。何。
お前結婚とかしちゃうのか?!」
「…いや。
まだできないけどさ。
俺学生だし。今の美大は絶対卒業するって約束もしてるしな。
だから…再来月一周年なんだ。
で、どうかなーって」
部長の悩みはギャラだった。
プロのモデルに頼めず・・・と悩んでいたのだ。
「でも…うちそんなギャラ高くないし…」
「お金はいいって!
その代わりに…うん。
最初から最後までやらせてくれないかな。」
「式?」
「うん。
形だけになるけど…さ」
というわけで交渉成立だ。
「私、ドレス似合うのかなぁ」
「さー。どうでしょうか」
そう言ったあと笑う。
彼女は顔を真っ赤にして怒る。
「こういうときは嘘でも似合うって言うんだよ!?」
僕はニヤニヤ笑いながら彼女の耳元に口を持っていく。
「似合うに決まってるじゃないですか」
彼女は更に赤くして下を向いた。
「…?顔あげてくださいよー」
「ヤダ」
「どうして?」
「…恥ずかしいから・・・・・」
「たしかに」
だんだんと自分の顔も熱くなるのがわかった。
僕らは変な空気で笑いあう。
「と…にかくそろそろですかね」
「え、っと…はい」
本来ならば会場まで行くはずだったのだが
記念日当日しか許可が得られなかったのだ。
だから部長にドレスをここまで運んでもらうのだ。
「おーっす」
噂をすればなんとやらで部長が来る。
後ろには中尾の姿もあった。
「お前も来たのか」
「ん。いやー話は聞いてたからさ。
入り口で見た瞬間にビビってきたよ!!」
「亮、お前面白い友達いんなー。
一瞬で意気投合したわ」
と言って二人は笑う。
僕はそんな二人を放っておいて彼女へと向き直る。
「えーっと。
こちらが僕の恋人の瀬戸明日香さんです。」
「よ、よろしくおねがいします。」
彼女は部長に挨拶をする。
部長はニッコリと笑って
「今回は本当に助かりました。
ありがとうねー。
明日香ちゃんよろしくー」
彼女は緊張しているようで笑顔が固かったが僕はそんな姿を見て可愛いなと思いニヤける。
「亮ちゃーん。
何ニヤニヤしてんのさ」
中尾が歩み寄って来て僕をからかう。
モチロン、部長はその変な呼び名を聞き逃さない。
「ちゃん?!
お前何、ちゃんなの!!
亮ちゃん…ツボだ…」
「何がツボですか!!」
「アハハハハ!!」
「へ、変ですか?」
彼女が心配そうに聞く。
その姿を見て部長は普段彼女が呼んでいる呼び方だと察したようだ。
「いや、可愛らしくて面白い」
それでも遠慮なしのコメントだ…。
「さ、さっさとしてくれ!!」
僕は慌てたようにして二人を放した。
間もなくしてお母さんが到着して彼女のドレスを着付けた。
その間僕らは外で待機だ。
30分ほどしてようやく入室の許可が下りた。
「うっわー…」
「こりゃ…また…」
「…!」
男性陣はそろって言葉を失う。
僕は思わず反対側を向いた。
「…どう…?亮ちゃん…」
「うん…」
「う…んって!
どうかな?って聞いてるのに…変?」
「変なわけないだろ・・・」
僕は振り返れない。
いや、振り返らない。
「おい、亮。
明日香ちゃんのこと見てやれよ」
「亮介?」
小声で話し掛けてくる二人の声。
モチロン彼女にも聞こえたらしい。
「…変…ていうか似合って…ないのね?
だから…見てくれないんだ」
明らかに落ち込む声。
もう…どうして勘違いするんだよ!!!
「見たくないんです」
彼女が落胆したような声を小さく漏らす。
僕はそれを無視して続ける。
「当日の…一番の楽しみであるんですから…
まだ見せないで下さい。
…けど…
一瞬見ちゃいました…。
綺麗です…とても…息をするのを忘れるくらい…」
顔が熱くなる。
横で二人がニヤっとする。
彼女は混乱した顔をしていた。
「明日香ちゃん、亮のヤツさー。
真っ赤な顔してるよー?
一瞬であんなんなら当日ぶっ倒れるかもね」
その言葉を聞いて彼女は一瞬嬉しそうな顔になり涙を流す。
「もう…亮ちゃん嫌い」
「僕も…ドレス着た明日香は嫌い…
でも好き…」
その後二人に思いっきりからかわれる。
僕は彼女がドレスを脱ぐ前に一瞬だけ目をやる。
やっぱり息が…出来なかった。
心配していたのだが、やはり後になって彼女の“アレ”が始まる。
「あ…でもね…亮ちゃん。」
「ん?」
「わた…し…その…
バージンロード歩けないね。」
「…そんなの僕が支えるから気にしないで下さい」
「て、ていうかね、
式…を本格的に…するの?」
「んー。
知り合いにライターがいることは知ってますよね。
そいつが今度ウエディング雑誌を撮影することになったんです。
で、モデルとかを探してる話に僕が…ってこんなの嬉しくないですよね…」
お互いが落ち込み始める。
彼女は慌てて首を横に振って
「ううん!!
私…嬉しい」
そう言って笑ってくれた。
高校の時に写真部の部長と僕は仲がよかった。
卒業後は専門学校に行くと言っていたのだが
彼の叔父が経営している雑誌やパンフレットなどを発行している会社に入ったらしい。
(別に専門学校中退ではないらしい。今も通っている)
と、言ってもよく見かける『ご自由にお取りください』のパンフなんかが多いので
収入はそんなに期待できないと言っていた。
二ヶ月前、久しぶりに会った時に
お互いのことを話していた。
そして宮川(通称部長)のウエディングの話があり
モデルとして僕が名乗り出てみたのだ。
「え。何。
お前結婚とかしちゃうのか?!」
「…いや。
まだできないけどさ。
俺学生だし。今の美大は絶対卒業するって約束もしてるしな。
だから…再来月一周年なんだ。
で、どうかなーって」
部長の悩みはギャラだった。
プロのモデルに頼めず・・・と悩んでいたのだ。
「でも…うちそんなギャラ高くないし…」
「お金はいいって!
その代わりに…うん。
最初から最後までやらせてくれないかな。」
「式?」
「うん。
形だけになるけど…さ」
というわけで交渉成立だ。
「私、ドレス似合うのかなぁ」
「さー。どうでしょうか」
そう言ったあと笑う。
彼女は顔を真っ赤にして怒る。
「こういうときは嘘でも似合うって言うんだよ!?」
僕はニヤニヤ笑いながら彼女の耳元に口を持っていく。
「似合うに決まってるじゃないですか」
彼女は更に赤くして下を向いた。
「…?顔あげてくださいよー」
「ヤダ」
「どうして?」
「…恥ずかしいから・・・・・」
「たしかに」
だんだんと自分の顔も熱くなるのがわかった。
僕らは変な空気で笑いあう。
「と…にかくそろそろですかね」
「え、っと…はい」
本来ならば会場まで行くはずだったのだが
記念日当日しか許可が得られなかったのだ。
だから部長にドレスをここまで運んでもらうのだ。
「おーっす」
噂をすればなんとやらで部長が来る。
後ろには中尾の姿もあった。
「お前も来たのか」
「ん。いやー話は聞いてたからさ。
入り口で見た瞬間にビビってきたよ!!」
「亮、お前面白い友達いんなー。
一瞬で意気投合したわ」
と言って二人は笑う。
僕はそんな二人を放っておいて彼女へと向き直る。
「えーっと。
こちらが僕の恋人の瀬戸明日香さんです。」
「よ、よろしくおねがいします。」
彼女は部長に挨拶をする。
部長はニッコリと笑って
「今回は本当に助かりました。
ありがとうねー。
明日香ちゃんよろしくー」
彼女は緊張しているようで笑顔が固かったが僕はそんな姿を見て可愛いなと思いニヤける。
「亮ちゃーん。
何ニヤニヤしてんのさ」
中尾が歩み寄って来て僕をからかう。
モチロン、部長はその変な呼び名を聞き逃さない。
「ちゃん?!
お前何、ちゃんなの!!
亮ちゃん…ツボだ…」
「何がツボですか!!」
「アハハハハ!!」
「へ、変ですか?」
彼女が心配そうに聞く。
その姿を見て部長は普段彼女が呼んでいる呼び方だと察したようだ。
「いや、可愛らしくて面白い」
それでも遠慮なしのコメントだ…。
「さ、さっさとしてくれ!!」
僕は慌てたようにして二人を放した。
間もなくしてお母さんが到着して彼女のドレスを着付けた。
その間僕らは外で待機だ。
30分ほどしてようやく入室の許可が下りた。
「うっわー…」
「こりゃ…また…」
「…!」
男性陣はそろって言葉を失う。
僕は思わず反対側を向いた。
「…どう…?亮ちゃん…」
「うん…」
「う…んって!
どうかな?って聞いてるのに…変?」
「変なわけないだろ・・・」
僕は振り返れない。
いや、振り返らない。
「おい、亮。
明日香ちゃんのこと見てやれよ」
「亮介?」
小声で話し掛けてくる二人の声。
モチロン彼女にも聞こえたらしい。
「…変…ていうか似合って…ないのね?
だから…見てくれないんだ」
明らかに落ち込む声。
もう…どうして勘違いするんだよ!!!
「見たくないんです」
彼女が落胆したような声を小さく漏らす。
僕はそれを無視して続ける。
「当日の…一番の楽しみであるんですから…
まだ見せないで下さい。
…けど…
一瞬見ちゃいました…。
綺麗です…とても…息をするのを忘れるくらい…」
顔が熱くなる。
横で二人がニヤっとする。
彼女は混乱した顔をしていた。
「明日香ちゃん、亮のヤツさー。
真っ赤な顔してるよー?
一瞬であんなんなら当日ぶっ倒れるかもね」
その言葉を聞いて彼女は一瞬嬉しそうな顔になり涙を流す。
「もう…亮ちゃん嫌い」
「僕も…ドレス着た明日香は嫌い…
でも好き…」
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やっぱり息が…出来なかった。
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