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出会い編
朗報
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「お嬢様!朗報です!!」
私付きのメイド、アリスが勢い余って抱きついて来た。
天真爛漫なアリスは普段それを抑えて業務をこなしているが、たまにタガが外れるとこの様な行動をとる事がある。
他の貴族達に同じ事をすれば、かなり強く叱られるだろうが、私にとっては嬉しい事でしかない。
全身で私を好きだと伝えてくるアリスが大好きだった。
「一体何なの?ちょっと落ち着いて。」
彼女を嗜めながらそっと身体を離そうとしたら、今度は両手を捕まえられた。
勢い余ってブンブンと振り回されて肩が外れそうだ。
「ちょっと、アリス!落ち着いて!!」
「落ち着いていられませんお嬢様!!朗報です!!」
「そ、それはさっき聞いたわ!」
今度は腕を取られ無理矢理ダンスを踊らされそうになる。
必死で足を踏ん張って抵抗したが、凄い馬鹿力で私を引きずるようにダンスを始めてしまった。
私より3歳年上、20歳のアリス。
168㎝の私より15㎝も小さい小動物の様に可愛らしいアリス。
茶色の柔らかい髪がターンをするたびにフワリと揺れている。
可愛い。可愛いのだが。
「いい加減にしなさぁい!!!」
5回目のターンで私は切れた。
背が小さいアリスに合わせてダンスを踊っていたら、いや引きずられていたら、腰は痛いし掴まれた腕も痛い。
「も、も、申し訳ございません!!」
我に返ったアリスが怒涛の勢いで土下座を始めた。
ヨーロッパ風のこの世界で土下座で謝るなど聞いた事はない。
何度かアリスも転生者ではないのかと疑ったが、今の所決定的な証拠は掴んでいない。
「良いのよアリス。そんなに怒ってないわ。正気に戻って欲しかっただけ。」
アリスの腕を持って立てらしたが、彼女はしょげかえって項垂れている。
「アリス。朗報があるのでしょ?いい加減聞かせて頂戴。ね?」
優しく言い聞かせるように語りかければ、立ち直りの早いアリスの瞳には光が戻っていた。
シャキッと立つとキラキラと嬉しそうな笑顔を見せた。
「そうでしたお嬢様!舞踏会です!!お城で舞踏会が開かれるそうですよ!!」
「舞踏会?」
なぜそれが朗報なのか、私には全く分からなかった。
もう嫁に行くという名の出荷が決まっている状態だ。
そんな状態で出会いの場である舞踏会など行けるはずもない。
しかもお城で開かれるとなれば盛大なものになるだろう。私が行くなど場違いも良いトコだ。
それでもアリスはニコニコとしたまま頷いている。
「そうです!キット王子が外遊から帰っていらっしゃったのです!陛下がもう王子がを外に出したくないとおっしゃって、王子様のお嫁さんを探す舞踏会を開く事にしたらしんです!」
「…そう。」
ますます私には関係のない話しに思えた。もう私は結婚が決まっているのだから。
「もう!お嬢様!ちゃんと聞いて下さい!!参加者の条件は貴族で未婚の女子、それだけなんです!」
「貴族で未婚の女子?」
おうむ返しした私の言葉にアリスがしっかり頷いた。
「もちろん年齢制限はありますが、キット王子が19歳でしょう?それに合わせて16歳~25歳までの女子と決まったそうです。」
「まぁ、えらく幅広いのね。」
アリスの説明によると、若ければ子供をポンポン産んでくれるだろうし、年上ならばキット王子を導いてくれるだろうと陛下が考えたそうだ。
それに条件に該当しているのに舞踏会へ参加しなければらそれ相応の罰を与えるともおっしゃったそうだ。
婚約している者も例外では無く、既婚者でなければ強制参加だと言うのだ。
「そんな無茶苦茶だわ。」
驚く私にアリスは盛大なため息をついてみせた。
「お嬢様、他人事みたいに言わないで下さい!千載一遇のチャンスですよ!!」
「チ、チャンス?」
「そうです!!私はお嬢様がどんな方とご結婚なされても必ず付いて行きますし、変わらず側でお嬢様をお守りさせて頂きたく思っています!!」
「あ、ありがとう。」
興奮しているせいかアリスがどんどん近付いてくるが、あまりの勢いに突っ込めないでいたら、もう顔と顔がくっ付きそうな所までやって来ていた。
また両手を掴まれた。
「私はお嬢様の幸せな顔を見たいのです!お嬢様が愛した方との間に出来た子供を撫くりまわして可愛がりたいのです!!」
「な、撫でくり、、まわして…?」
アリスがうんうんと大きく頷けば彼女の前髪が顔にパタパタと当たる。
不快だ。
「お嬢様は美しいです!このブロンドの髪、陶器のように白くすべすべなお肌!ぱっちりした目には宝石の様に輝くアイスブルーの瞳が収まって。あぁ、こんな可愛らしいお嬢様が目に止まらないはずがありません。」
「あ、ありがとう?」
盛大に褒められて嬉しいが、勢いが凄すぎてとにかく怖い。
早くこの時間が過ぎてくれないか、そればかり考えてしまう。
「あぁ、わたしもノイシュバンシュタイン城へお供したかったです。」
「そ、そうね。私も連れて行きたかった…って、ん?アリス今何て?」
「私も行きたかったと。」
「違う違う!!何というお城だと言ったの!?」
「えっ!?」
先程まで興奮しきりだったアリスが私のただならぬ様子に我に返ったようだ。
今度は私の方から勢い良く近付かれて目をシパシパさせていた。
「ノイシュバンシュタイン城ですか?」
「…ノイシュバンシュタイン城?」
「はい。お嬢様?今さらお城の名前など、どうされたのですか?」
「そうね。そうよ。確かに前から知っていたのにどうして気付かなかったのかしら…。」
私はその事実に呆然と立ち尽くすしか無かった。
私付きのメイド、アリスが勢い余って抱きついて来た。
天真爛漫なアリスは普段それを抑えて業務をこなしているが、たまにタガが外れるとこの様な行動をとる事がある。
他の貴族達に同じ事をすれば、かなり強く叱られるだろうが、私にとっては嬉しい事でしかない。
全身で私を好きだと伝えてくるアリスが大好きだった。
「一体何なの?ちょっと落ち着いて。」
彼女を嗜めながらそっと身体を離そうとしたら、今度は両手を捕まえられた。
勢い余ってブンブンと振り回されて肩が外れそうだ。
「ちょっと、アリス!落ち着いて!!」
「落ち着いていられませんお嬢様!!朗報です!!」
「そ、それはさっき聞いたわ!」
今度は腕を取られ無理矢理ダンスを踊らされそうになる。
必死で足を踏ん張って抵抗したが、凄い馬鹿力で私を引きずるようにダンスを始めてしまった。
私より3歳年上、20歳のアリス。
168㎝の私より15㎝も小さい小動物の様に可愛らしいアリス。
茶色の柔らかい髪がターンをするたびにフワリと揺れている。
可愛い。可愛いのだが。
「いい加減にしなさぁい!!!」
5回目のターンで私は切れた。
背が小さいアリスに合わせてダンスを踊っていたら、いや引きずられていたら、腰は痛いし掴まれた腕も痛い。
「も、も、申し訳ございません!!」
我に返ったアリスが怒涛の勢いで土下座を始めた。
ヨーロッパ風のこの世界で土下座で謝るなど聞いた事はない。
何度かアリスも転生者ではないのかと疑ったが、今の所決定的な証拠は掴んでいない。
「良いのよアリス。そんなに怒ってないわ。正気に戻って欲しかっただけ。」
アリスの腕を持って立てらしたが、彼女はしょげかえって項垂れている。
「アリス。朗報があるのでしょ?いい加減聞かせて頂戴。ね?」
優しく言い聞かせるように語りかければ、立ち直りの早いアリスの瞳には光が戻っていた。
シャキッと立つとキラキラと嬉しそうな笑顔を見せた。
「そうでしたお嬢様!舞踏会です!!お城で舞踏会が開かれるそうですよ!!」
「舞踏会?」
なぜそれが朗報なのか、私には全く分からなかった。
もう嫁に行くという名の出荷が決まっている状態だ。
そんな状態で出会いの場である舞踏会など行けるはずもない。
しかもお城で開かれるとなれば盛大なものになるだろう。私が行くなど場違いも良いトコだ。
それでもアリスはニコニコとしたまま頷いている。
「そうです!キット王子が外遊から帰っていらっしゃったのです!陛下がもう王子がを外に出したくないとおっしゃって、王子様のお嫁さんを探す舞踏会を開く事にしたらしんです!」
「…そう。」
ますます私には関係のない話しに思えた。もう私は結婚が決まっているのだから。
「もう!お嬢様!ちゃんと聞いて下さい!!参加者の条件は貴族で未婚の女子、それだけなんです!」
「貴族で未婚の女子?」
おうむ返しした私の言葉にアリスがしっかり頷いた。
「もちろん年齢制限はありますが、キット王子が19歳でしょう?それに合わせて16歳~25歳までの女子と決まったそうです。」
「まぁ、えらく幅広いのね。」
アリスの説明によると、若ければ子供をポンポン産んでくれるだろうし、年上ならばキット王子を導いてくれるだろうと陛下が考えたそうだ。
それに条件に該当しているのに舞踏会へ参加しなければらそれ相応の罰を与えるともおっしゃったそうだ。
婚約している者も例外では無く、既婚者でなければ強制参加だと言うのだ。
「そんな無茶苦茶だわ。」
驚く私にアリスは盛大なため息をついてみせた。
「お嬢様、他人事みたいに言わないで下さい!千載一遇のチャンスですよ!!」
「チ、チャンス?」
「そうです!!私はお嬢様がどんな方とご結婚なされても必ず付いて行きますし、変わらず側でお嬢様をお守りさせて頂きたく思っています!!」
「あ、ありがとう。」
興奮しているせいかアリスがどんどん近付いてくるが、あまりの勢いに突っ込めないでいたら、もう顔と顔がくっ付きそうな所までやって来ていた。
また両手を掴まれた。
「私はお嬢様の幸せな顔を見たいのです!お嬢様が愛した方との間に出来た子供を撫くりまわして可愛がりたいのです!!」
「な、撫でくり、、まわして…?」
アリスがうんうんと大きく頷けば彼女の前髪が顔にパタパタと当たる。
不快だ。
「お嬢様は美しいです!このブロンドの髪、陶器のように白くすべすべなお肌!ぱっちりした目には宝石の様に輝くアイスブルーの瞳が収まって。あぁ、こんな可愛らしいお嬢様が目に止まらないはずがありません。」
「あ、ありがとう?」
盛大に褒められて嬉しいが、勢いが凄すぎてとにかく怖い。
早くこの時間が過ぎてくれないか、そればかり考えてしまう。
「あぁ、わたしもノイシュバンシュタイン城へお供したかったです。」
「そ、そうね。私も連れて行きたかった…って、ん?アリス今何て?」
「私も行きたかったと。」
「違う違う!!何というお城だと言ったの!?」
「えっ!?」
先程まで興奮しきりだったアリスが私のただならぬ様子に我に返ったようだ。
今度は私の方から勢い良く近付かれて目をシパシパさせていた。
「ノイシュバンシュタイン城ですか?」
「…ノイシュバンシュタイン城?」
「はい。お嬢様?今さらお城の名前など、どうされたのですか?」
「そうね。そうよ。確かに前から知っていたのにどうして気付かなかったのかしら…。」
私はその事実に呆然と立ち尽くすしか無かった。
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