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友人と2人でお茶会

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私はその日、親友のシャルロット・カッセル侯爵令嬢とお茶会をしていた。
お茶会と言っても、2人でお菓子をつまみながらお茶を飲んでいるだけなのだけど。

「はぁー。ティーナと一緒に学園に通えると思ってましたのに。」

彼女は今日何度目かの言葉を口にした。
燃える様な赤い髪に、淡い茶色の瞳、色白の彼女が頬をピンクに染め、可愛らしい唇を突き出し拗ねている姿は、私の萌え心を鷲掴みにする。

彼女は数少ない私の友達で、5歳からの付き合いになる。
私の事をティーナと呼び、私はそのままシャルロットと呼んでいる。
最初シャルと呼んでいたのだが、可愛く無いと彼女が怒って結局シャルロットに戻った。

シャルロットの父親は魔法省で働いている。魔法薬学の研究で素晴らしい功績を残しているらしく、今はかなりのお偉いさんだ。

私やシャルロットの親の様に、特殊な仕事に就く者達は、領地を持たない事が多い。
普通貴族は領地を与えられ、領地を守り経営し財をなして行く。
しかし特別な力を持った者達を、王都に留めておくのに、領地を与えてしまうのは得策では無い。

そこで国にとって有益な仕事をする貴族達は、給金という形で国よりお金を貰う。

「聞いていますの?ティーナ?」

そんな事を思っている時に、シャルロットが私に話しかけていたらしい。
頬を膨らませて怒っている。

「ごめん、何だったかしら?」

「もう!やっぱり聞いてませんのね。」

シャルロットはため息をついてから話し出した。

「この間辺境地で魔物が出たらしいの。」

「魔物が?たまに出ることがあると聞くけれど、、。」

この世界に魔物はいない。
しかし別の世界には存在している。
その別世界とこちらの世界が、時空の歪みにより繋がる事がある。
その時魔物がこちらの世界へやって来てしまうのだ。
乙女ゲームでそんな設定があっただろうか、、。

「それが、とーっても強い魔物だったらしくて、王都から転移魔法で応援に行かなければならないほどだったみたいなの。」

「被害は出たの?」

「ええ、応援が着くまでの間に辺境地の騎士が怪我を、、。幸い死んだ人はいなかったのだけど、お父様にも回復薬を大量に作るように要請があったみたいだから、結構被害は深刻だったみたいなの。」

「、、そう。」

被害を想像し、沈黙が落ちる。

この国で、怪我を治すヒールという魔法を使える者は限られている。
光魔法の使い手で、鍛錬を重ねる事でようやく使えるものなのだ。
しかし、よっぽどのセンスがあれば、火、水、土、闇魔法の使い手だろうが枠を超えて自分とは違う種類の魔法を使える人が稀にいる。
ちなみに私は闇魔法の使い手だが、ヒールを使う事が出来る。
自慢ではない。

それでもやはり使える者は少ないので、魔法薬学の登場である。
魔法薬学では、怪我を治す、毒消し、麻痺を消したり等、薬草に魔力を込める事でさまざまな薬を作る研究をしている。

「時空の歪みが王都で起きていれば、被害はもっと大きかったでしょうね。」

シャルロットはそう言って身体をブルっと震わせた。

「そうね。私達は魔物を見た事も、もちろん戦った事もないし。今急に現れたらひとたまりもないわ、、。これから学園で必死に勉強しなくてわね。」

私達は見つめ合い大きく頷いた。

「学園で思い出したわ。それにしてもティーナと学園生活を送れないのは悲しいわ。いないなら諦めもつくのだけど、すぐそばでいるのにと思うとやるせないわ。」

私は苦笑いしながら答えた。

「ごめんなさい。こればかりは私にはどうにも出来ない事だけど、でも何かあれば、隠密の魔法を使ってでもシャルロット事守るわ。それに、あなたが近くでいると思うと、それだけで私は嬉しいの。」

私がそう言うとシャルロットは真っ赤になった。

「もう!ティーナは可愛らし過ぎるわ。そんな可愛い顔で可愛い事言ってたら、いつか襲われるわよ!」

私は訳が分からずに首を傾げたが、シャルロットはもういいわと言って笑っていた。

それにしても、秘密の任務だというのに、、。
学園には私の昔からの友達が数名入学する。
その友達に事情を話し口止めしている段階で、どこが秘密の任務なのだと思い、これこそ首を傾げずにはいられないのであった。


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