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本当の始まり
悪役令嬢の躾け
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マリアは昨年の4月より入学していたが、Fクラスに入った為にイザベルとは顔を合わせる機会が無いままだった。
自分がAクラスに入るまでイザベルに会いたくなかったというのが真相なのだが、鈍感を標準装備している私には気付く事が出来ない。
そう、これが彼女達の初対面なのだ。
マリアは迷いもせず真っ直ぐイザベルの元へやって来た。
私も何かあってはマズイと、イザベルの斜め後ろに立つ。
お互いに睨み合い一触即発状態だったが、マリアがコロリと表情を変えた。
嘘っぽい笑顔を向け、淑女の礼をする。
「初めましてイザベル様。私、クレメンティー子爵の娘でマリア・クレメンティーと申しますわ。」
乙女ゲームの世界では彼女は男爵だった。子爵へと位が上がっている事は何か今後の展開に関係するのだろうか、、。私がそんな事を思っていると、マリアがとんでもない事を言い出した。
「イザベル様はヘンリー様の婚約者なんですよね?この度は大変な事になりましたよね。私も心を痛めておりましたの。」
イザベルは睨みつけるだけで返事はしなかった。
それはそうだ。大変な事になったのはお前のせいなのだから、イザベルは何と言って良いか分からないだろう。
彼女がいつブチ切れるかと思い、私はハラハラする。
返事が無くてもマリアは特に気にする様子も無く続けた。
「そういえばイザベル様は最初Fクラスだったらしいですわね。それでも数回のテストでAクラスになったとか、さすがヘンリー様の婚約者でいらっしゃいますわ。私もFクラスだったでしょ?私など1年もかかってしまいました。」
これは褒めていない。鈍感な私でも分かる、、。
イザベルのこめかみに青筋が立っている気がする。
イザベルが反撃する。
「まぁ、ありがとうございます。けれどクレメンティーさんはまだ正確にはBクラスでしたわよね?4月からAクラスになれると良いですわね。」
イザベルはマリアの事をクレメンティーさんと呼んだ。向こうはイザベル様と呼んでいるので、かなりの嫌味だろう。
マリアのこめかみにも青筋が見える気がする。
「えぇ。私、魔法を認められて入園したのです。成績が申し分無いのに、Bに落ちるなどあり得ませんわ。それにしても、王妃教育とは本当に大変なんですね?勉強する時間も無いほどだったのでしょう?それで無かったら、ヘンリー様の婚約者がFクラスだなんて、、フフッ。」
これはヤバイ、、直球の嫌味だ。
イザベルの限界を感じ私は警戒レベルをMAXに引き上げる。
「そうですわ。あなたは淑女教育が始まったばかりなのですわよね?王妃になろうなどとご冗談だったのではないのですか?撤回するのが恥ずかしいのであれば、私が代わりにお伝えしておきますわよ。いつでも相談していらして。」
イザベルも直球の嫌味を繰り出した。
マリアは鼻で笑った後、
「冗談などではありませんわ。私、ヘンリー様の妻になってみせます。聖剣を出せるようになれば、あなたの居場所なんて無くなるのですからね。しばらくの間虫除けとしてせいぜい活躍して下さい。」
彼女は言い過ぎた。
皆も彼女のあまりの言いように侮蔑した目で見ていた。
イザベルはここで何も返さなければ、被害者でいられたのだ。
しかしイザベルは一歩踏み出した。
私はすぐに気付き、彼女の前に転移した。
バシンッ!!!
イザベルの渾身のビンタが私の頬を打った。
2人は何が起こったか理解出来ない。
急に現れた私が地面に吹っ飛ばされたのだ。
私もこんな力で叩かれると思っていなかったので少し呆然とする。
何てビンタの上手な女だ。
「ティーナ、、」
イザベルは我に返り私を見ながら涙目になっていた。
私は立ち上がり彼女を真っ直ぐ見る。
私の頬はすでに赤くなり腫れつつあった。口の中も血の味がする。
イサキオスが慌てて私に駆け寄ろうとしたが、私はそれを目で制した。
「イザベル!」
私は大きな声で彼女を呼んだ。
ビクッと彼女の肩が震えたのが見えた。
「最初Fクラスだったのは本当の事でしょ!嘘を言われたんじゃない、真実でしょう?それから努力して頑張ってAクラスになったんでしょ?それが恥ずかしいとでも思ってたの!?」
私は彼女に語りかける。
「過去は変えられないけど、イザベルが頑張ってきた過去だって変わったりしない。恥ずかしがるな!!何を言われても胸を張れ!!私はイザベルを誇りに思ってる。こんな事で手を出そうとした自分の事を恥じろ!もう二度とするな!!」
私はその後彼女を抱きしめた。
彼女は泣いていた。
意地っ張りな彼女が人前で泣くなんて、、。
私はマリアを敵と認定した。
カルロス先生がやって来る。
「大丈夫か?」
私は頷き謝罪した。
「開始が遅れてすみません。問題無いです。すぐ行きます。」
私はイザベルにしっかりしろと言い、手を引いてドッチボールが始まる白い枠内へと入った。
マリアが私を睨んでいたが、気付かないふりをした。
イサキオスが腫れた私の顔を治そうとやって来たが、断った。
もう二度とイザベルに軽はずみな言動をさせない為に、しばらく腫れた顔でいようと思う。
とっても悲しそうな彼には申し訳ないが、、。
さて、始まるぞ!
私は最後まで絶対残ってやる!
マリアなどに負けるものか!
お前も負けるなとイザベルを睨む。
彼女は力強く頷いた。
しばらくすると、私の顔を見た同級生達が、ボールに当たったのだと勘違いしパニックになっていた。
ボールに当たれば、あんなに腫れるし口も切れ血が出るぞと。
今さらだが治せば良かったと後悔する。
痛いし、、。
ピー!!!
遠くで笛の音がした。
始まったようだ。
何だか急に心がシオシオした私は、結界を張った後に体育座りをして小さくなっている。
ドッチボールは始まったばかりだ。
自分がAクラスに入るまでイザベルに会いたくなかったというのが真相なのだが、鈍感を標準装備している私には気付く事が出来ない。
そう、これが彼女達の初対面なのだ。
マリアは迷いもせず真っ直ぐイザベルの元へやって来た。
私も何かあってはマズイと、イザベルの斜め後ろに立つ。
お互いに睨み合い一触即発状態だったが、マリアがコロリと表情を変えた。
嘘っぽい笑顔を向け、淑女の礼をする。
「初めましてイザベル様。私、クレメンティー子爵の娘でマリア・クレメンティーと申しますわ。」
乙女ゲームの世界では彼女は男爵だった。子爵へと位が上がっている事は何か今後の展開に関係するのだろうか、、。私がそんな事を思っていると、マリアがとんでもない事を言い出した。
「イザベル様はヘンリー様の婚約者なんですよね?この度は大変な事になりましたよね。私も心を痛めておりましたの。」
イザベルは睨みつけるだけで返事はしなかった。
それはそうだ。大変な事になったのはお前のせいなのだから、イザベルは何と言って良いか分からないだろう。
彼女がいつブチ切れるかと思い、私はハラハラする。
返事が無くてもマリアは特に気にする様子も無く続けた。
「そういえばイザベル様は最初Fクラスだったらしいですわね。それでも数回のテストでAクラスになったとか、さすがヘンリー様の婚約者でいらっしゃいますわ。私もFクラスだったでしょ?私など1年もかかってしまいました。」
これは褒めていない。鈍感な私でも分かる、、。
イザベルのこめかみに青筋が立っている気がする。
イザベルが反撃する。
「まぁ、ありがとうございます。けれどクレメンティーさんはまだ正確にはBクラスでしたわよね?4月からAクラスになれると良いですわね。」
イザベルはマリアの事をクレメンティーさんと呼んだ。向こうはイザベル様と呼んでいるので、かなりの嫌味だろう。
マリアのこめかみにも青筋が見える気がする。
「えぇ。私、魔法を認められて入園したのです。成績が申し分無いのに、Bに落ちるなどあり得ませんわ。それにしても、王妃教育とは本当に大変なんですね?勉強する時間も無いほどだったのでしょう?それで無かったら、ヘンリー様の婚約者がFクラスだなんて、、フフッ。」
これはヤバイ、、直球の嫌味だ。
イザベルの限界を感じ私は警戒レベルをMAXに引き上げる。
「そうですわ。あなたは淑女教育が始まったばかりなのですわよね?王妃になろうなどとご冗談だったのではないのですか?撤回するのが恥ずかしいのであれば、私が代わりにお伝えしておきますわよ。いつでも相談していらして。」
イザベルも直球の嫌味を繰り出した。
マリアは鼻で笑った後、
「冗談などではありませんわ。私、ヘンリー様の妻になってみせます。聖剣を出せるようになれば、あなたの居場所なんて無くなるのですからね。しばらくの間虫除けとしてせいぜい活躍して下さい。」
彼女は言い過ぎた。
皆も彼女のあまりの言いように侮蔑した目で見ていた。
イザベルはここで何も返さなければ、被害者でいられたのだ。
しかしイザベルは一歩踏み出した。
私はすぐに気付き、彼女の前に転移した。
バシンッ!!!
イザベルの渾身のビンタが私の頬を打った。
2人は何が起こったか理解出来ない。
急に現れた私が地面に吹っ飛ばされたのだ。
私もこんな力で叩かれると思っていなかったので少し呆然とする。
何てビンタの上手な女だ。
「ティーナ、、」
イザベルは我に返り私を見ながら涙目になっていた。
私は立ち上がり彼女を真っ直ぐ見る。
私の頬はすでに赤くなり腫れつつあった。口の中も血の味がする。
イサキオスが慌てて私に駆け寄ろうとしたが、私はそれを目で制した。
「イザベル!」
私は大きな声で彼女を呼んだ。
ビクッと彼女の肩が震えたのが見えた。
「最初Fクラスだったのは本当の事でしょ!嘘を言われたんじゃない、真実でしょう?それから努力して頑張ってAクラスになったんでしょ?それが恥ずかしいとでも思ってたの!?」
私は彼女に語りかける。
「過去は変えられないけど、イザベルが頑張ってきた過去だって変わったりしない。恥ずかしがるな!!何を言われても胸を張れ!!私はイザベルを誇りに思ってる。こんな事で手を出そうとした自分の事を恥じろ!もう二度とするな!!」
私はその後彼女を抱きしめた。
彼女は泣いていた。
意地っ張りな彼女が人前で泣くなんて、、。
私はマリアを敵と認定した。
カルロス先生がやって来る。
「大丈夫か?」
私は頷き謝罪した。
「開始が遅れてすみません。問題無いです。すぐ行きます。」
私はイザベルにしっかりしろと言い、手を引いてドッチボールが始まる白い枠内へと入った。
マリアが私を睨んでいたが、気付かないふりをした。
イサキオスが腫れた私の顔を治そうとやって来たが、断った。
もう二度とイザベルに軽はずみな言動をさせない為に、しばらく腫れた顔でいようと思う。
とっても悲しそうな彼には申し訳ないが、、。
さて、始まるぞ!
私は最後まで絶対残ってやる!
マリアなどに負けるものか!
お前も負けるなとイザベルを睨む。
彼女は力強く頷いた。
しばらくすると、私の顔を見た同級生達が、ボールに当たったのだと勘違いしパニックになっていた。
ボールに当たれば、あんなに腫れるし口も切れ血が出るぞと。
今さらだが治せば良かったと後悔する。
痛いし、、。
ピー!!!
遠くで笛の音がした。
始まったようだ。
何だか急に心がシオシオした私は、結界を張った後に体育座りをして小さくなっている。
ドッチボールは始まったばかりだ。
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