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第五話 一二○八計画
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クーデターより約二週間が経とうとしていた。そして、それは運命の日が間近であるということでもあった。
伊藤はハル・ノートへの返事を出した際に、それに対する返答の期限を12月8日午前零時と定めた。
また返答が無かった場合、日本帝国は期限である12月8日午前零時をもってアメリカ合州国に宣戦布告するという旨も伝えた。
──横須賀鎮守府──
「……大分冷え込むな」
「この季節でありますから…海沿いは特に冷え込みます」
東京湾に位置する、帝国海軍の一大拠点である横須賀軍港。
ここでの準備状況を確認するため、高野は訪れていた。
ここ数日、横須賀軍港は特に忙しない。
集結する無数の艦艇。
動き回る工員達。
正しくそれは、“戦”の準備であった。
「作業の進み具合はどうだ?」
12月の寒風に身を震わせながら、高野は案内役の橋本優香中将に聞いた。
橋本中将はここ横須賀軍港に集結した艦艇の半分──第四艦隊を指揮する役目を担う艦隊司令官である。
「はい、物資の搬入も殆ど終わり兵装の点検、改修も完了致しました。全工程の九割は完了しております」
「そうか…順調に進んでいるようで何よりだ」
「あの…総長」
「なんだ?」
「先程総長がお持ちになった司令書を拝見致しましたが、その…大丈夫なのでしょうか?これだけの戦力を南西方面に展開させてしまって」
現在横須賀に集結する戦力は、共和国海軍だった頃の主力艦艇ばかりであり、その数は戦艦6空母7を基幹に巡洋艦、護衛艦、駆逐艦、その他小艦艇合計40隻であった。
「確かに台湾、シンガポールの速やかな占領は重要です。しかし、これでは米太平洋艦隊を撃滅する決戦部隊の戦力が足りないのでは…?」
不安気な橋本の問いに、高野は笑みを浮かべながら答えた。
「そういえば、君はまだ知らないんだったな」
「と、言うと…?」
「他言無用だ。米太平洋艦隊撃滅を担う艦隊は、その大半が秘密裏に建造された新造艦によって構成される」
「新造艦…でありますか…!?」
橋本が驚くのにも無理はない。
共和国時代の海軍は軍備を疎かにする一方であり、主力艦艇も20年以上前に建造されたものを無理矢理な近代化改修したものや、他国から購入した中古艦ばかりであった。
「いつの間にそんなものを…して、その艦隊は今何処に…?」
「択捉島の単冠湾だ」
「択捉島…?あそこに大きな港は無かったと思うのですが」
「何年も前から密かに工事は進んでいたんだ。まぁ当時の上層部は知らなかったがね。工事が完了した今では一大軍港だ」
得意気な高野の表情に、橋本は感嘆の息を漏らした。
「…帝国海軍は、一体どれだけの秘密を隠しているのです?」
橋本のその問いに、高野は人差し指を口元に当ててわざと子供っぽく微笑んだ。
「それはヒミツ、だ」
──択捉島単冠湾──
その夜、この港を出港する艦隊があった。
しかし艦隊は灯りを一切点けておらずその全貌を把握することは不可能。
まるで宵闇に溶けるかのように艦隊は沖へ消えて行く。
実に静かな夜であったが、それは戦いの火蓋が切られた瞬間でもあった。
そして、運命の12月8日。
ついに米国政府からの返答は無く、日本帝国大使館は宣戦布告書をホワイトハウスに突き付けた。
この事はリアルタイムで世界中に大々的に報じられることとなった。
伊藤はハル・ノートへの返事を出した際に、それに対する返答の期限を12月8日午前零時と定めた。
また返答が無かった場合、日本帝国は期限である12月8日午前零時をもってアメリカ合州国に宣戦布告するという旨も伝えた。
──横須賀鎮守府──
「……大分冷え込むな」
「この季節でありますから…海沿いは特に冷え込みます」
東京湾に位置する、帝国海軍の一大拠点である横須賀軍港。
ここでの準備状況を確認するため、高野は訪れていた。
ここ数日、横須賀軍港は特に忙しない。
集結する無数の艦艇。
動き回る工員達。
正しくそれは、“戦”の準備であった。
「作業の進み具合はどうだ?」
12月の寒風に身を震わせながら、高野は案内役の橋本優香中将に聞いた。
橋本中将はここ横須賀軍港に集結した艦艇の半分──第四艦隊を指揮する役目を担う艦隊司令官である。
「はい、物資の搬入も殆ど終わり兵装の点検、改修も完了致しました。全工程の九割は完了しております」
「そうか…順調に進んでいるようで何よりだ」
「あの…総長」
「なんだ?」
「先程総長がお持ちになった司令書を拝見致しましたが、その…大丈夫なのでしょうか?これだけの戦力を南西方面に展開させてしまって」
現在横須賀に集結する戦力は、共和国海軍だった頃の主力艦艇ばかりであり、その数は戦艦6空母7を基幹に巡洋艦、護衛艦、駆逐艦、その他小艦艇合計40隻であった。
「確かに台湾、シンガポールの速やかな占領は重要です。しかし、これでは米太平洋艦隊を撃滅する決戦部隊の戦力が足りないのでは…?」
不安気な橋本の問いに、高野は笑みを浮かべながら答えた。
「そういえば、君はまだ知らないんだったな」
「と、言うと…?」
「他言無用だ。米太平洋艦隊撃滅を担う艦隊は、その大半が秘密裏に建造された新造艦によって構成される」
「新造艦…でありますか…!?」
橋本が驚くのにも無理はない。
共和国時代の海軍は軍備を疎かにする一方であり、主力艦艇も20年以上前に建造されたものを無理矢理な近代化改修したものや、他国から購入した中古艦ばかりであった。
「いつの間にそんなものを…して、その艦隊は今何処に…?」
「択捉島の単冠湾だ」
「択捉島…?あそこに大きな港は無かったと思うのですが」
「何年も前から密かに工事は進んでいたんだ。まぁ当時の上層部は知らなかったがね。工事が完了した今では一大軍港だ」
得意気な高野の表情に、橋本は感嘆の息を漏らした。
「…帝国海軍は、一体どれだけの秘密を隠しているのです?」
橋本のその問いに、高野は人差し指を口元に当ててわざと子供っぽく微笑んだ。
「それはヒミツ、だ」
──択捉島単冠湾──
その夜、この港を出港する艦隊があった。
しかし艦隊は灯りを一切点けておらずその全貌を把握することは不可能。
まるで宵闇に溶けるかのように艦隊は沖へ消えて行く。
実に静かな夜であったが、それは戦いの火蓋が切られた瞬間でもあった。
そして、運命の12月8日。
ついに米国政府からの返答は無く、日本帝国大使館は宣戦布告書をホワイトハウスに突き付けた。
この事はリアルタイムで世界中に大々的に報じられることとなった。
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