エレファントの瞳

暖鬼暖

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エレファントの瞳

条件

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***

放課後、自分の部屋に帰るとエマニュエルは一糸まとわず突っ立っていた。



「な、なんではだかでいるの」

今しがた、光空から生まれた白く綺麗な天使を目の当たりにして興奮と驚きと恐怖が入り混じった気分になって、かける声が上ずった。



「え?君の部屋の鍵が開いていたから」

エマニュエルが扉を指差す。

きょとんとおどけて見せるエマニュエルに悪魔を感じた。



「答えになっていないよ、エマニュエル」



「僕を描くっていうから、“そうゆうこと”なのかな、って」



エマニュエルは僕に手を差し出す。

差し出された手は色白く、陶器のようだ。

手から腕、肩、見事な曲線美だ。

繊細な作家によって創られたかのように美しい。



「“そうゆうこと”なのかな、って…」



僕は生唾を飲み込んだ。

確かに、彼の身体や顔は妖艶で、自分のものにしてしまいたくなるようなーーーーーーーー



「こっちに、来たら?」



“そうゆうこと”



一瞬おぞましい自分の思考にゾッとした。



ーーーーー僕は人間だぞ!





「ーーー大学でも、制服があるなんて珍しいよね?」

咄嗟にわざとらしく話題を変えた。

このままでは彼に食べられるか食べてしまうか、理性を失って一騎打ちになりそうだった。



「ああ、この学園の古き伝統らしいよ。3学年しかないとこもね」



「へぇ…」



フリルの付いた白いシャツに、タイトな黒のパンツ。

そして胸元には細いタイ。

タイは学年で色が分かれていた。



新入生は赤、中学年は緑、高学年は青だ。

そして間抜けなことに、靴下や靴紐まで同系色のを身に着けるよう僕らは指示されていた。



「僕らの色は、赤か」



「…何が言いたいの?」



「このへんてこな制服を着てくれないかいエマニュエル。僕はこの変な伝統の制服を着ている君を“美しく”描きたいと思ったんだよ」



「ははは!服を脱がされても着させられたのははじめ手だよルゥオーギュスタン・ド・レオ!」



エマニュエルは僕のベットに倒れて笑い転げた。



「君の勝ちだね、最高の口説き文句だ。ルゥオーギュスタン・ド・レオ。君の言う通り、大人しく僕は服を着るとしよう」



エマニュエルは脱ぎ捨てられた制服を拾い上げて袖を通す。

僕はなぜか”もったいないな”という情欲が頭によぎった気がしたが、頭を降って振り払った。



「ただし、課題に協力するためには一つ条件がある」

エマニュエルは白い指を一本立てて僕に詰め寄った。

ギョッとして咄嗟に僕は彼の指をつかんだ。

「条件?」



「あぁ、条件だ」



僕は何の条件があるのだろうと、ぼんやりと考えたがエマニュエルはニヤリと笑うだけで”条件”については教えてくれなかった。

”条件”の中にはさらに”条件”があって、僕の絵が描きあがったら条件を開示するという内容だった。



僕にとっては彼を描ければ何の問題はない。

いじきたない僕は、彼を1枚描き上げて、条件を飲んでもう1枚、もう1枚とねだる予定だった。

彼を置いて用を足して、そうして部屋へ戻ったとき、彼はすでにいなかった。



 
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