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■本編

LEVEL.21 魔導列車事故

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「彼女の事、帰してくれないかな?」

「うーん、ソレは駄目!」

「…何故かな?」

「“あたし”には、どうしても“やりたい事”があるの!だから、お姉ちゃんは帰せない」

「……どうしたら、帰してくれる?」


ロゼッタ(?)は顎に手を添えては、何かを考えていて何かを思いついたのか満面な笑みを浮かべながらもラヴィを見つめていた。


「じゃあ、おにいさん!“あたし”と賭けをしよう!」

「賭け?」

「そう!このギルド国家の何処かに、“あたし”は隠れるから探して捕まえてみて!そうしたら、お姉ちゃんを帰してあげるっ」

「“キミ”を見つけれたら、ちゃんとロゼッタちゃんを帰してくれるんだね?」

「うん!10分後に、探しに来てね!」


ロゼッタ(?)は満面な笑みを浮かべてから、駆け出して窓から飛び降りて立ち去っていく。

その光景を眺めていたラヴィはチラッとカルマを見ては、いつの間にかカルマは起き上がっているのを確認する。


「君なら、“すぐ”でしょ?」

「お前だって、ソレに関しては見つけるのは簡単やろ?」

「カルマは、“観た”ならソッチを頼んだよ」

「……はいはい、りょーかい」


カルマが少しだけ悔しそうな顔をしてから影の中へと消え去ると、ラヴィは欠けた月を見つめては目を細めていた。


「……わかってないな、あの“女の子”は」

「俺と“かくれんぼ”しようなんて、負け確定な事案だってのに」

「“彼女”を使うなら、容赦はしない」

「例え、“子供の霊”だろうとね」


あそこから離脱したカルマは丁度見かけたアレックスの首根っこを掴んでは、その場を留まらさせるとアレックスは驚いていた。


「ちょっ!?か、カルマかよ……」

「ちょっと、手伝え」

「はぁ??」

「お前なら、“5年前の魔導列車事故”を知ってんやろ」

「あー、“5年前”のヤツ?まぁ、知ってるというより担当だったしな」

「名簿、見せろ」

「はぁ?……ってか、なんかあったのか?」

「……おう」


カルマが一連の出来事を細かくアレックスに説明をしていると、アレックスは何かを思い出してはカルマを連れて街の中へと歩いていく。


「何か、思い出したんか?」

「おう!“5年前の魔導列車事故”では、確かに多くの犠牲者が出たのはカルマも知っているだろ?」

「あぁ……、シュヴァートもレヴァンさんも、辛い記憶として忘れない事にしているってのもあってな」


“5年前の魔導列車事故”。


あの出来事は、当時のメンバーからしたら“悪夢”でもあり“忘れる”なんて事は出来ない大きな事故だった。
魔導列車が完成して半年後に起きた“魔導列車事故”は、2000人以上の犠牲者を出して半数が亡くなった大きな事故だった。


「あの中でも悲惨だったのは……“ある家族”の事だ」

「“ある家族”?」


アレックスはカルマに話をしながらも“とある酒場”へとやってきては扉を開けると、アレックスはカウンター席の一番奥にある席を見れば酒瓶が2本あり酒が入ったジョッキを持った男性を見つける。


「その“とある家族”は、旦那と奥さん……子供が3人いる“普通の家庭”だった………そうだろう、“ロバート”さん」

「……………また、アンタか」

「未練があるとしたら、アンタしか居ない“ロバート”さん」

「なんだ、また説教でもしに来たのか?アンタらが作った“魔導列車”で俺の幸せは崩れたんだぞ!?なのに、生きるために前を向けと説教をしに来たのか!?」


酒を飲んでいた男性はジョッキに入っていた酒をアレックスの顔にかけるが、アレックスは動じず男性を見つめていれば男性は動揺する。


「なぁ、ロバートだっけ?アンタに聞きたい事があるんや」

「……あ?聞きたい事?」

「“サクラ”」

「っ!?」

「“サクラ”って名前の女の子、その女の子を知っているんやろ?何せ、アンタの“娘”さんだ」

「っ……」


カルマの1つの言葉を聞いて男性は項垂れては、ジョッキをカウンターのテーブルに置き直しては泣きそうな表情をしていた。


「あぁ、“サクラ”は……俺達の大切な子供の1人だ」


あの“5年前の魔導列車事故”が起きる少し前に、隣の大陸へとロバートの奥さんと他の兄弟達が出掛ける事を“サクラ”に渋られ口喧嘩になったしまい、仕方なくロバートの奥さんと他の兄弟と共に“サクラ”も隣の大陸へと“魔導列車”を使って旅立った。


「“サクラ”に謝る事さえも、出来ないまま見送る事にしたんだ…」

「だが、それが間違いだったっ……せめて、直ぐに謝っていたならっ」


見送った“魔導列車”は“何かの不具合”だったのかわからないが、突如として列車用の大きな橋の所で大爆発を起こしては魔導列車は海へと落ちて沈んでしまった。


「報せを“自警団”から聞かされるまで、そんな事になっているなんて思わなかった」

「どんだけ、後悔しても後悔しきれず……あの時、止めていたならっ……次回に回せって、妻に言い聞かせていたならっ!こんな事には、ならなかったんじゃないかっ?ただ、ただ……後悔をする日々になり、仕事さえもする気にもなれず………アイツらを失った家で、一人で居るのが辛く……ずっと、此処に居て酒に呑まれて忘れようと忘れようとっ………」

「だが、忘れられるわけがなかった……」





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