悲劇を招く強欲

のどか

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悲劇を招く強欲

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 あるところに、双子の王子がいました。
 美しい王子たちは、とても頭の良い兄王子と、すごく強い弟王子でした。
 いずれ兄王子が王となり、弟王子は軍を率いて兄を助けるはずでした。
 ところが、あるとき家来がいいました。
 弟王子は力ずくで王様になるつもりだと。
 一人が言い出せば、皆が弟王子様は兄王子を倒すつもりだから、殺してしまえと言いました。
 仲のよかった王子様たちはびっくりです。
 兄王子は弟王子がそんなことをするはずがないと言いました。
 弟王子は兄王子を尊敬しているので、そんなことはしないと言いました。
 双子王子の父である王様も、そんな疑いはないと弟王子をかばいました。
 それでも家来たちは黙りませんでした。
 とうとう国の民たちも弟王子を殺せと言うようになりました。
 王様は殺すことはできないと、泣く泣く弟王子を牢屋に入れました。
 するとどうでしょう。
 仲良くしていた隣の国が軍隊を差し向けてきました。
 隣の国は弟王子の力が怖くて今まで仲良くしていたのです。
 弟王子がいなくなればこっちのものだと、王子様たちの国を攻めました。
 軍を率いる弟王子を牢屋に入れてしまった王様は、弟王子を殺せと言いだした家来たちを向かわせました。
 たくさんの兵隊を連れた家来たちは隣の国の軍隊と戦いましたが、家来たちは負けてしまいました。
 家来たちは捕まるか死んでしまいました。
 さあ、大変です。
 もう守ってくれる兵隊がいません。
 国の民たちは弟王子様に助けて欲しいといいました。
 けれど、それはできませんでした。
 なぜならば、弟王子様は悪い家来に毒を飲まされてしまったからです。
 生き残った家来たちは困ってしまいました。
 民たちは弟王子様の悪口を言い、殺そうとしたことを後悔しました。
 れけど、もう、どうすることもできません。
 さあ、国はどうなるのでしょう?

「なんだ、これは?」
「いま、ここです」
 王太子の息子であるセリージャ王子に聞かれ、レシアナは書きかけの記録を指さした。
 セリージャは片手で顔を覆った。
「我が国の状況説明ですが、修正個所はございますか?」
 レシアナが問いかけると、セリージャは溜息をついて頭を振った。
「……間違いではないが……なぜ、童話風?」
 ふんっ、とレシアナは鼻を鳴らし言い捨てた。
「こんな馬鹿馬鹿しい状況、まともに書けますか」
 王弟であるレシエス将軍は、兄である王太子セリエスの暗殺を謀ったと告発された。
 レシエスは全くの濡れ衣だと抵抗したが、世論に押され、王はレシエスを投獄した。
 一時投獄して世論をおさめている間に調査して、濡れ衣を晴らそうとしたのだが、突然隣国が攻めてきたのだ。
 レシエス将軍の穴を埋めるべく、領主軍をつぎ込んだのだが、初戦で領主軍は撃破されてしまった。
 その頃レシエスは牢屋で毒をもられて重体になっていた。
 毒をもった犯人はすでに捕まっており、国のためにやったことだと言い張っていたが、隣国の侵攻を聞いて、騙されたと狂ったように泣き叫んだ。
 実はレシエスを告発した領主の後ろには隣国が控えており、国のためとそそのかされてレシエスを嵌めたのだ。
 しかしそれは、国を攻めるにあたって、一番の難敵になるであろうレシエスを排除するための罠であった。
 レシエスはいまだ生死の境を彷徨っている。
 まんまと隣国に踊らされたのだ。
 レシアナは呪いをこめて言い放った。
「あんの、忠義面した売国奴ども! 地獄に落ちろ!」
「レシアナ、レシアナ、関係者は調査中だ。容疑が固まり次第投獄し、然るべき報いを受けさせる」
 セリージャはレシアナをなだめた。
「それよりも、目の前のことを処理しないとね」
 セリージャに言われてレシアナは口を尖らせた。
「わかっていますわ。売国奴どもに報いを受けさせるためにも、今は目の前の戦に勝ちませんとね。父の名誉の回復もそれからです」
 第二皇子レシエスの愛娘レシアナは席を立った。
「……私としては、姫であるレシアナを戦場に連れていきたくないんだが……」
 セリージャがごねた。
「あら、父の無念、晴らさせてくださらないの? この怒りと屈辱、すべて敵に叩きつけてやりますわ。父の敵、この手で討ってやります」
 レシアナが得意そうに言うと、セリージャは首を振った。
「叔父上、まだ生きているから。生きてるからね!」
「わかっていますわ。それよりも、セリージャ様、わたくし達の初陣ですわ。初陣が国の存亡を賭けたものなんて、物語のようですわね。何が何でも勝ちましょう!」
「わかっているよ、レシアナ。勝とう。卑劣なる隣国に屈するわけにはいかない」
 そうして瓜二つの顔をしたいとこ同士は笑いあった。
 戦装束を翻し、彼らを待つ軍へと向かった。

 この年、後に帝国を名乗ることになるスペラードは、レシエス将軍を失うところであった。
 その黒幕たる隣国タイモナはスペラードを攻めたが、王太孫セリージヤとレシエスの秘蔵っ子、レシアナ姫の活躍により、撤退を余儀なくされる。
 散々に軍隊を叩かれた挙句、スペラードでの暗躍の罪に問われた。
 領土をとられ、なおかつ賠償金をも支払う羽目になる。
 タイモナに呼応した領主は捕えられ、罰せられた。
 タイモナが戦いの際捕えた、レシエス将軍を陥れた領主は、スペラードから受け取りを拒否され、タイモナ国内にとどまることとなった。
 その最後は歴史書のどこにも記されていない。
 この戦いが後の世の『狂乱の獅子王』と『紅の飛翔姫』の双翼の初陣である。
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