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コトウ
辺境コトウ
しおりを挟むそういう眼で俺を見るやつは珍しかねえ。
街の娼婦達、下っ端の野郎共。
俺に媚を売るやつの目にある光。
だが、あいつの目の中にそれがあるのはイラつく。
あいつの目の中にいつもあるのは戦意だ。
理由なんぞかまわねえ。いつも戦いたくてウズウズしてる。抜き身の刃みてえに人を傷つける、そういうやつだ。
俺に向ける眼は、戦意と憎悪、なのに根っ子のところにその光がある。
気にくわねえ。
どうすれば、このイラつきはおさまるんだ?
わからねえ。
よけいにイラつきやがる。
あんたになんぞ、会いたくなかった。
あんたに会わなきゃ、俺はそんなものに気づかなかった。
あんたは俺に思い知らせる。
言葉ではなく、態度ではなく、存在そのもので。
俺は──屑だ──知りたくなんぞなかった。
「やれ」
クロスの短い命令に、真っ先に飛び込んだのはスワロウだった。
双剣を振りかざし、敵の真っ只中に飛び込む。ライトシールドが展開しているとはいえ、並みの度胸で出来ることではない。
敵の機銃が火を噴いたが、おかまいなしにスワロウは飛び込む。扱いの難しいパワードパーツ『韋駄天』で加速された肉体は、瞬く間に敵に肉薄する。ライトシールド──個人用防御シールドにいくつもの弾丸が弾かれる。
無造作に束ねられた黒髪が、ひるがえる。
「いやっほう!」
奇声とともに銀色の輝きが旋回する。
シールドを無効化するヒルト鉱石で造られた長剣だ。敵に避ける間も与えず切り刻む。ライトシールドによって銃器やビーム兵器が無効化された現在、皮肉なことに『アンジェラ』で発見された鉱石を加工した剣が一番の脅威になっている。
スワロウに続いて、サザンクロスの面々が戦線に踊りこんだ。
いずれもライトシールドとパワードパーツで身を固め、ヒルト鉱石の武器を振り回す凄腕だ。
たかが銃器で武装しただけでは、敵う術もなく、一方的な虐殺が始まった。
「……俺が出るまでもねえか……」
惨劇を睥睨しつつ、クロスは煙草に火をつけた。
かつて人類は地球という惑星で派生した。
増えすぎた人類は外宇宙への移民を開始した。
だがそれは厄介払いでもあったのだろうと、クロスは思っている。
冷凍睡眠で乗せれるだけの人間を積み込み、準光速で、データだけを頼りに生存可能と思われる外宇宙の惑星に送り出すなど、死んでもかまわないと思っている証拠だ。
現に、乗り込んだものの多くは、犯罪者であったり、極度の貧困層だったという。
惑星にたどり着けなかったもの。たどり着いても、生存不可能な惑星だったものも、あるはずだ。
幸いにもクロスの先祖がたどり着いた惑星『アンジェラ』は本当に生存可能だった。
そこに人類は根付いたのだが、元々が母星に厄介払いされた者達だ。
理想的な社会など望む術はなく、秩序は崩れ、無法者の惑星となっている。
母星から出たとき持っていたテクノロジーも、いくつかは受け継がれているが、扱う技術者が育たず、失われてしまったものも多い。
とくに、星へ出て行く技術は──意図的に廃棄されたのだろう。厄介払いした連中が帰ってこないように。
この星に生まれたものは、宇宙に出て行くことは出来ない。
この星にしがみついて生きていくしかないのだ。
豊かな農地を持つコトウの権利をめぐり二つのコネクション──『マドゥ』と『カーリーン』が衝突した。
結果は『マドゥ』の戦闘集団『サザンクロス』が投入され、『カーリーン』は多大な被害を受けた。
コトウは『マドゥ』に占拠された。
「おう、ボス。最後の家のやつが忠誠を誓ったぜ」
返り血を拭うこともなく、血刀を下げたままスワロウが報告した。
スワロウはクロスの率いる『サザンクロス』のメンバーの中でも腕利きだ。
まだ若く、二十をいくつも超えていない。
秀麗な甘い顔立ちだが、そこに浮かぶのは戦意に満ちた不敵な笑いだ。
背は高いが、細身に見える。俊敏な動きを維持するために節制している証拠だ。引き締まった長身に、黒を基調とした『サザンクロス』の制服はよく似合っていた。
『カーリーン』が敗北してすぐ、各家に回り忠誠を誓わせる。どこでもやっていることだ。
血まみれの血刀を下げた姿で迫れば、誰でも我が身かわいさに従うだろう。
戦う術を知らない農民も、既に慣れている。支配者が変われば、すぐに別の支配者に忠誠を誓うだろう。
「後始末は?」
「そっちの方は、担当が違うぜ。生きてるやつはぶっ殺した。葬儀屋を呼べよ」
ケラケラとスワロウが笑った。
──その笑いが気に入らなくて──クロスは手元のグラスの中身をスワロウに浴びせた。
「なにしやがる!」
頭から──飲みかけの水──をかけられたスワロウは激怒したようだった。
「着替えて来い。血の匂いをふりまいてんじゃねえ」
クロスに睨まれたスワロウは息を飲んだが、屈辱に顔を歪ませたまま踵を返した。
「着替えたってむださ、髪一筋、骨の髄まで血のにおいが染み付いてやがる」
部屋を出て行くスワロウを、クロスはなんの感慨もなく見送った。
『サザンクロス』のリーダーであるクロスは、黒髪黒瞳のまだ若い男である。
鞭のような逞しい長身に、端正な顔立ち──ただその両頬には、目立つ傷がある。
若いのに似合わず、王者の風格と人を刺すような眼をしている。チンピラ風情では、クロスに眼を向けられただけで卒倒してしまう。
噂では『マドゥ』のボスが娼婦に産ませた子供だという。
正式に認められているわけではない。だからコネクションの相続権はない。
だが──ボスには正妻との間に出来た三人の子供がいるが、一番ボスにふさわしいのは、クロスだと密かな噂になっている。
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