16 / 19
社会人
第16話
しおりを挟む
今回の待ち合わせ場所は、丁度いい感じの大きさのオブジェと周りにあるベンチで座って待てるから、人と待ち合わせするのに丁度が良くて利用する人が多かった。
待ち合わせの場所に着くと、緊張してるかのように背筋を伸ばして立っていた憧れの人が居た。余裕を持って家を出られたと思っていたけど、遅れたかもしれないと左手につけてる腕時計を確認すると待ち合わせ時間まで余裕があった。
どこかの本で、男の人は女の人よりも早めに着いて待つシーンが多かった事をふと思い出した。
お待たせしてはいけないと憧れの人のもとへ歩いていく。私の姿を視界に捉えてからは、先程の緊張感はどこにも見えずに余裕そうに笑顔を向けて小さく左手を振ってくれた。私も利き手である右手を振って返した。
(緊張してたのは勘違いだったみたい...)
「すみません。お待たせしました」
「丁度、さっき着いたばかりなんで...待ち合わせ時間前だし気にしないで下さい」
「そうですか...」
これもどこかの本で見た事あるやり取りだ。実際に男の人はこのセリフを言った時、本当は何分前くらいに着いて待っていたのだろうか...?聞くのは野暮であるのは分かるから知らないフリするのが1番。
「行きましょうか」
「はいっ」
白の無地のシャツに紺のカジュアルスーツぽいジャケットと紺のスラックス。想像してた通りで、オシャレな服を着こなしていた憧れの人。部屋着と言われても仕方ないような服で着て来なくて良かったと思う。オシャレな人の横でそのような服を着てたら恥ずかしくて待ち合わせの時点で帰ってる可能性が高かった。
(私にしては精一杯のオシャレだっけど...これくらいのレベルのオシャレさは見慣れてるのかな...?)
色んな雑誌を購入して読み込もうと決意をしてた時に話しかけられた。
「これから食べるお店は、天ぷらが美味しいと聞くから楽しみですね」
「私、天ぷらが大好きなので本当に楽しみです」
どこへ食べに行くかをメールで話してた時、最初に天ぷらが美味しい和食の所はどうですか?と提案された時は嬉しかった。何故ならば、洋食よりも和食が好きでその中でも天ぷらが大好物だ。
待ち合わせ場所から数分歩いた先に、The和食屋さんだと分かる引き戸で暖簾が吊るされていた。中に入ると、可愛いらしい子に出迎えられた。
「いらっしゃいませ」
「予約をした_______」
「お待ちしておりました。こちらの席へ」
店内はこじんまりとして、チラホラとお客さんが席を埋めていた。座席は畳椅子に座布団が置いてあった。「和」を感じつつ、現代のテーブルと椅子の文化に慣れた生活で食事の時間を正座で過ごさなくて済む椅子に、内心はホッと息をつく。
メニュー表を見てたら全部が美味しそうで気になるけど、やっぱり食べたいと思うのは大好物の天ぷらだった。
食べたい物が決まったとメニュー表から顔を上げた。
決まった?と聞かれて頷く。
その様子を影で見てた店員は、傍に近づいてメニューが決まりましたか?と聞く。
「俺は天ぷら定食をお願いします」
「私も天ぷら定食をお願いします」
注文を繰り返し確認して厨房へと注文を通しに行った。
2人きりになって、何を喋ったら良いのか分からなくて困ってしまった。そんな私と違って、戸惑う様子もなく話しかけられる。
「趣味はなんですか?」
「資格を取る事」
(ハッ...!!資格が趣味だなんて可愛げのないことを言ってしまった)
資格を取ったりと勉強をしてないと安心出来ない性分になってて、家の中では何かしらで机に向かう事が多い生活をしている。
「確か、色んな資格を持ってましたよね。入社後に会社の人に勧められる資格を既に持ってる事も多かったですよね」
「まぁ...」
「会社に必要なスキルを既に持ってるのは凄いなと、いつも思ってました」
「そんな...」
「人の役に立つ趣味で素敵だと思います」
「え?...。あの、人の役に立つよりかは自分に役に立つ趣味ではないでしょうか?」
「...えっ?あぁ、確かに手に職で自分にも役に立ちますね...。俺の主観ですけど」
そう、前置きをして話した
「資格の学んだ知識を発揮する時は、誰かの為になってると思います。例えば...資料を凄く分かりやすく纏めてますよね?聞けば、複数の資格の知識を活用してると言ってました。資料が分かりやすく纏まってるのは、読む側からすると有難い事なんですよ。会社の先輩方も絶賛してました!!」
(そんな視点もあるんだな...)
「後は~」
「もう、充分です。ありがとうございます」
「そう?」
何か言い足りない様子であったが、このタイミングで丁度、頼んでいた天ぷら定食が届けられた。
ふっくらと炊けられた白いご飯、お味噌汁、たくあん、ほうれん草のお浸し、天つゆと別皿で大根おろし、1番のお目当ての天ぷら。
「「いただきます」」
まずは、蓋をされてるお味噌汁の蓋を取り口元に運ぶ。丁寧に出汁の旨味が取られてるのが分かる風味で、丁度いい塩梅の味付けで美味しい。味噌汁を飲む時は、いつも日本人で良かったと思うくらいに安心をさせられる。
続いて、天ぷらを食べる。
苦いピーマンが苦手だと思ってた幼い時と違って、天ぷらのピーマンは何故こんなにも美味しいのだろうか...?肉厚でほろ苦さもあるけどそれが旨味で美味しい。
ナスのトロトロ加減と衣のサクッとした感触は、最高のコラボネーションとなってる。
主役級のエビの天ぷらを1口かぶりつく。身が大きくてプリプリで甘くて美味しい。
舞茸の天ぷらは定番で食べた事があるけど、このお店ではしいたけを天ぷらにしていた。噛むとジューシーでしいたけ特有の旨味の汁が溢れ出た。
「すっごく美味しいですね」
「はい...っ!!このしいたけの天ぷらが物凄く美味しいです」
「どれ?」
「それです」
「これか...。うん。美味しい!!なにこれ」
「凄いですよね」
「うん...!!」
無邪気に美味しそうに食べる姿は...なんか、素敵だなぁ。
一瞬、見惚れる。気付かれないように慌てて食べる事を再開する。
「「ご馳走様でした」」
全てを食べ終わって手を合わせて挨拶をする。私が食べるのが遅すぎて少しの時間を待ってもらってしまった。
どれも料理人の丁寧な仕事が施されていて美味しかった。自分の中ではもう一回食べに行きたい位だった。
食べ終わった食器を片付かれて、代わりに温かいお茶が運び込まれた。食後のお茶でホッと一息をつける。
「趣味はなんですか?」
趣味の話を返す。私の問いかけに嬉しそうに目を細ませてた。
「俺は、運動する事が好きです。最近の休日はフットサルをしてます」
確かに、運動が好きそうな雰囲気を出してるからイメージに合う趣味だった。
「そうなんですね。運動が好きなのは健康的で良いですね。フットサル...詳しくなくてすみません。サッカーと似てるイメージがあるんですけど...」
「まぁ、そうですね。室内でサッカーって感じです。あっ、次は再来週の土曜日にフットサルをやります。もし、興味を持っていただけたり、予定が空いていれば、見学をしていきませんか?」
「再来週の土曜日空いてます!!何も知らない素人が見学しに行っても邪魔では...?」
「いえ、来ていただけると嬉しいです。そして、俺を応援してくれると頑張れます」
「応援しに行きます」
もしかして...次の休日の約束が出来た??
(でも、フットサルを見に行くだけだし...2人きりって訳じゃないし...)
デートだと期待しそうになる思考を必死に食い止める。
待ち合わせの場所に着くと、緊張してるかのように背筋を伸ばして立っていた憧れの人が居た。余裕を持って家を出られたと思っていたけど、遅れたかもしれないと左手につけてる腕時計を確認すると待ち合わせ時間まで余裕があった。
どこかの本で、男の人は女の人よりも早めに着いて待つシーンが多かった事をふと思い出した。
お待たせしてはいけないと憧れの人のもとへ歩いていく。私の姿を視界に捉えてからは、先程の緊張感はどこにも見えずに余裕そうに笑顔を向けて小さく左手を振ってくれた。私も利き手である右手を振って返した。
(緊張してたのは勘違いだったみたい...)
「すみません。お待たせしました」
「丁度、さっき着いたばかりなんで...待ち合わせ時間前だし気にしないで下さい」
「そうですか...」
これもどこかの本で見た事あるやり取りだ。実際に男の人はこのセリフを言った時、本当は何分前くらいに着いて待っていたのだろうか...?聞くのは野暮であるのは分かるから知らないフリするのが1番。
「行きましょうか」
「はいっ」
白の無地のシャツに紺のカジュアルスーツぽいジャケットと紺のスラックス。想像してた通りで、オシャレな服を着こなしていた憧れの人。部屋着と言われても仕方ないような服で着て来なくて良かったと思う。オシャレな人の横でそのような服を着てたら恥ずかしくて待ち合わせの時点で帰ってる可能性が高かった。
(私にしては精一杯のオシャレだっけど...これくらいのレベルのオシャレさは見慣れてるのかな...?)
色んな雑誌を購入して読み込もうと決意をしてた時に話しかけられた。
「これから食べるお店は、天ぷらが美味しいと聞くから楽しみですね」
「私、天ぷらが大好きなので本当に楽しみです」
どこへ食べに行くかをメールで話してた時、最初に天ぷらが美味しい和食の所はどうですか?と提案された時は嬉しかった。何故ならば、洋食よりも和食が好きでその中でも天ぷらが大好物だ。
待ち合わせ場所から数分歩いた先に、The和食屋さんだと分かる引き戸で暖簾が吊るされていた。中に入ると、可愛いらしい子に出迎えられた。
「いらっしゃいませ」
「予約をした_______」
「お待ちしておりました。こちらの席へ」
店内はこじんまりとして、チラホラとお客さんが席を埋めていた。座席は畳椅子に座布団が置いてあった。「和」を感じつつ、現代のテーブルと椅子の文化に慣れた生活で食事の時間を正座で過ごさなくて済む椅子に、内心はホッと息をつく。
メニュー表を見てたら全部が美味しそうで気になるけど、やっぱり食べたいと思うのは大好物の天ぷらだった。
食べたい物が決まったとメニュー表から顔を上げた。
決まった?と聞かれて頷く。
その様子を影で見てた店員は、傍に近づいてメニューが決まりましたか?と聞く。
「俺は天ぷら定食をお願いします」
「私も天ぷら定食をお願いします」
注文を繰り返し確認して厨房へと注文を通しに行った。
2人きりになって、何を喋ったら良いのか分からなくて困ってしまった。そんな私と違って、戸惑う様子もなく話しかけられる。
「趣味はなんですか?」
「資格を取る事」
(ハッ...!!資格が趣味だなんて可愛げのないことを言ってしまった)
資格を取ったりと勉強をしてないと安心出来ない性分になってて、家の中では何かしらで机に向かう事が多い生活をしている。
「確か、色んな資格を持ってましたよね。入社後に会社の人に勧められる資格を既に持ってる事も多かったですよね」
「まぁ...」
「会社に必要なスキルを既に持ってるのは凄いなと、いつも思ってました」
「そんな...」
「人の役に立つ趣味で素敵だと思います」
「え?...。あの、人の役に立つよりかは自分に役に立つ趣味ではないでしょうか?」
「...えっ?あぁ、確かに手に職で自分にも役に立ちますね...。俺の主観ですけど」
そう、前置きをして話した
「資格の学んだ知識を発揮する時は、誰かの為になってると思います。例えば...資料を凄く分かりやすく纏めてますよね?聞けば、複数の資格の知識を活用してると言ってました。資料が分かりやすく纏まってるのは、読む側からすると有難い事なんですよ。会社の先輩方も絶賛してました!!」
(そんな視点もあるんだな...)
「後は~」
「もう、充分です。ありがとうございます」
「そう?」
何か言い足りない様子であったが、このタイミングで丁度、頼んでいた天ぷら定食が届けられた。
ふっくらと炊けられた白いご飯、お味噌汁、たくあん、ほうれん草のお浸し、天つゆと別皿で大根おろし、1番のお目当ての天ぷら。
「「いただきます」」
まずは、蓋をされてるお味噌汁の蓋を取り口元に運ぶ。丁寧に出汁の旨味が取られてるのが分かる風味で、丁度いい塩梅の味付けで美味しい。味噌汁を飲む時は、いつも日本人で良かったと思うくらいに安心をさせられる。
続いて、天ぷらを食べる。
苦いピーマンが苦手だと思ってた幼い時と違って、天ぷらのピーマンは何故こんなにも美味しいのだろうか...?肉厚でほろ苦さもあるけどそれが旨味で美味しい。
ナスのトロトロ加減と衣のサクッとした感触は、最高のコラボネーションとなってる。
主役級のエビの天ぷらを1口かぶりつく。身が大きくてプリプリで甘くて美味しい。
舞茸の天ぷらは定番で食べた事があるけど、このお店ではしいたけを天ぷらにしていた。噛むとジューシーでしいたけ特有の旨味の汁が溢れ出た。
「すっごく美味しいですね」
「はい...っ!!このしいたけの天ぷらが物凄く美味しいです」
「どれ?」
「それです」
「これか...。うん。美味しい!!なにこれ」
「凄いですよね」
「うん...!!」
無邪気に美味しそうに食べる姿は...なんか、素敵だなぁ。
一瞬、見惚れる。気付かれないように慌てて食べる事を再開する。
「「ご馳走様でした」」
全てを食べ終わって手を合わせて挨拶をする。私が食べるのが遅すぎて少しの時間を待ってもらってしまった。
どれも料理人の丁寧な仕事が施されていて美味しかった。自分の中ではもう一回食べに行きたい位だった。
食べ終わった食器を片付かれて、代わりに温かいお茶が運び込まれた。食後のお茶でホッと一息をつける。
「趣味はなんですか?」
趣味の話を返す。私の問いかけに嬉しそうに目を細ませてた。
「俺は、運動する事が好きです。最近の休日はフットサルをしてます」
確かに、運動が好きそうな雰囲気を出してるからイメージに合う趣味だった。
「そうなんですね。運動が好きなのは健康的で良いですね。フットサル...詳しくなくてすみません。サッカーと似てるイメージがあるんですけど...」
「まぁ、そうですね。室内でサッカーって感じです。あっ、次は再来週の土曜日にフットサルをやります。もし、興味を持っていただけたり、予定が空いていれば、見学をしていきませんか?」
「再来週の土曜日空いてます!!何も知らない素人が見学しに行っても邪魔では...?」
「いえ、来ていただけると嬉しいです。そして、俺を応援してくれると頑張れます」
「応援しに行きます」
もしかして...次の休日の約束が出来た??
(でも、フットサルを見に行くだけだし...2人きりって訳じゃないし...)
デートだと期待しそうになる思考を必死に食い止める。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる