虐待と闇と幸福

千夜 すう

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社会人

第17話

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食事をした店の最寄りの改札前に、憧れの人に頭を下げられる。

「すみません」


「謝らないで下さい。ご家族からの呼び出しなら仕方ないですよ!」

「本当なら、もう少し一緒に過ごしたかったのですが...」

悔しそうに残念そうに言う姿に嬉しいと思った。私自身も、もう少しだけでも一緒に居たいと思ってたから同じ気持ちなんだなと思うと喜びを感じる。

私らしくないと分かるけど...勇気をだして本音で話してみた。

「私も...。一緒に過ごせて楽しかったです。あともう少しだけ、お話したかったですけど、次に取っときます」

「っ...!!」

「今度のフットサルでの活躍を期待してます」

私は、そう言い捨てると逃げるように自分の家の最寄り駅に止まるホームに駆け足で向かった。彼が向かう方向と逆と聞いていたから助かった。

(あれって、もしかしたらお世辞だったのかな?...私って勘違い女??)

冷静になると途端に本音で話した事に対して恥ずかしくなっきた。

私の目の前で勢いよく横切る電車によって起こされた風が心地よく感じる。止まった電車に乗ると...遊びの帰りであろう学生の集団がチラホラと居た。席に座る事が出来ずに入口近くにある手を掴める棒を掴んでこれから来る揺れに備える。

ドアが閉まってゆっくりと動き出した時、ドアの向こう側のホームに憧れの人が居た。びっくりした自分の顔がドアに反射して見えた。彼は、ドアが閉まった事に「間に合わなかった」  と口が動いていた。無情にも電車は止まらずに加速していった。

(なんだったんだろう...)

携帯を取り出す。

-何かありました?

なんか、違うような...。消して打ち直す。

-先程、こちらのホームに居ませんでした?

...うーん。なんて、微妙なメールだろうかと思って全ての文字を消す。

別に私に特別な用が無くて...ただ、こちら側の行先の線に行く用事が出来て、乗り遅れただけの可能性もある。

そう、思考を纏めると手に伝わる携帯のリズミカルな振動。

画面には、憧れの人の名前が表示されてメールが届いたと通知を受ける。なんだろうかとメールを開いて読んだ。

-今日は、ありがとうございました!直接で話したかったのですけど、運が悪くて電車が来ちゃいましたね。さっきの言葉は、俺と同じ気持ちで凄く嬉しいです。必ず、フットサルで活躍をするので応援をよろしくお願いします。

勝手にネガティブに動いてた思考がピタリと止まった。嬉しいって感情が溢れて携帯を握る力が強くなる。

他の人には、気持ち悪いと思われるかもしれないニヤケ顔を止められなかった。

気分が良いままに帰ってると、自分が住んでる所には不釣り合いな高級車が止まっていた。

(誰の?)

ここの住民でこの高級車を買えるような人が居るとは思えない。誰かの知り合いの人?...失礼だけど、高級車を所持してる人と友達付き合いをしてそうない人が居るとは思えなかった。

珍しいと暫くは観察をしてたら、運転席に人が乗っていた。観察をする私に対して、ギロっと睨めつけてるのを知ってからは直ぐに目線を逸らして、自分の家に帰ろうとする。


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